気候変動がもたらす異常気象、自然災害、海面上昇などの環境変化は、複雑な因果のプロセスを経て、時に反政府暴動、民族紛争、内戦、さらには国家間の衝突につながる危険があると考えられている。しかし、気候変動による異常気象や自然災害は、必ずしも紛争に結びつくわけでもない。異常気象や自然災害と武力紛争とは、特定の社会条件下において、稀に結びつくものと指摘されている。例えば、2007年から2009年に中東地域を襲った深刻な干ばつは、シリアでは内戦発生に影響したと多くの研究で指摘される一方で、その南隣ヨルダンでは内戦を招いていない。このような事例から、同じような異常気象や自然災害に晒された社会でも、一方は紛争に至り、一方はそうならないことがある。
以上の問題意識を踏まえ、本研究会では、気候変動によって激甚化・頻発化が予想される異常気象や自然災害が民族間・集団間の武力紛争を招く社会的条件を明らかにすることで、そうした紛争リスクの評価や予測を可能とする分析フレームワークを構築していく。