設立の当初より、政策提言の活動は、当フォーラムの活動の中核を成すものであった。政府から独立した民間・非営利の立場から外交国際問題というもっとも公共性の高い問題について、公平・中立な権威ある意見を発表し、政府に建言するとともに、国民世論の形成に資したいというのが、当フォーラムの目的である。
当フォーラムの政策提言活動は、「政策委員会による政策提言」、「緊急提言委員会による政策提言」、「調査研究活動に伴う政策提言」の3つのカテゴリーからなる。設立当初は、いわゆる冷戦時代で、当フォーラム内部の世界観や外交戦略の集約は比較的に容易であり、「政策委員会」および「緊急提言委員会」における政策提言の取りまとめについても同様であった。しかしながら、その後、国際社会の多極化や無極化が進行するポスト冷戦時代に突入するにつれ、世界秩序の分析や地域情勢の判断には多様な研究者の複眼的なアプローチが求められるようになり、それに伴い、「政策委員会」や「緊急提言委員会」における政策提言の取りまとめにもそれなりの困難が伴うようになった。かかる状況にあって、近年、当フォーラムが注力しているのが「調査研究活動に伴う政策提言」である。これは、当フォーラムが組織・運営する各種の調査研究プロジェクトにおいて、その成果を踏まえ、そのプロジェクトの名において作成される政策提言であり、「多様な研究者の複眼的なアプローチ」にもとづく当フォーラムの政策提言の新しいかたちとして注目されている。
なお、当フォーラムは、外交・国際問題に関する審議、研究、提言を促し、もって内外の世論の啓発に努めることを目的とするが、それ自体が組織として特定の政策上の立場を支持し、もしくは排斥することはない。当フォーラムが作成・発表する政策提言の内容に対して責任を有するのは、その政策提言に署名する者のみであって、当フォーラムならびにその政策提言に署名しない当フォーラム内外の関係者は、その内容に対していかなる責任を負うものでもない。
政策委員会による政策提言
政策委員会は、設立当初から当フォーラムに設置されている常設委員会の一つであり、対外関係および国際問題等に関して中長期的な提言を行うことを目的としている。 政策委員会は、テーマ毎に通常3~4回の委員会審議を経て「政策提言」を取りまとめ、その内容に賛成し、署名する政策委員の連名で発表してきた。「政策提言」は、時の内閣総理大臣に提出されるとともに、内外記者会見で発表され、また、和英両言語の「政策提言」全文を意見広告として複数の全国紙に発表されるほか、内外の指導者、有識者、オピニオン・リーダー等に直接送付されている。これに対しては、クリントン米大統領(当時)からの直筆の礼状をはじめとして、世界各国、各方面より多数の激励や反響が当フォーラムに寄せられている。
これまでの政策提言
NO. | テーマ | 提言起草委員/主査 | 発表日 |
---|---|---|---|
37. | 「積極的平和主義と日本の針路」 意見広告(日本語版) (2014年8月6日 全国紙3紙掲載) |
伊藤憲一 日本国際フォーラム理事長 |
2014年8月5日 |
36. | 「グローバル化時代の日本のエネルギー戦略」 意見広告(日本語版) (2012年6月20日 全国紙3紙掲載) 意見広告(英語版) (2012年6月20日 英字紙1紙掲載) 報道記事 |
伊藤憲一 日本国際フォーラム理事長 |
2012年6月18日 |
35. | 「膨張する中国と日本の対応」 意見広告(日本語版) (2012年1月27日 全国紙3紙掲載) 意見広告(英語版) (2012年1月27日 英字紙1紙掲載) | 伊藤憲一 日本国際フォーラム理事長 |
2012年1月20日 |
34. | 「グローバル・テロと日本の対応」 第34政策提言 中間案 |
山内昌之 東京大学教授授 | 2011年1月7日廃案 |
33. | 「外国人受入れの展望と課題」 意見広告 (2010年11月25日 全国紙3紙掲載) |
平林博 前駐フランス大使 井口泰 関西学院大学教授 |
2010年11月24日 |
32. | 「積極的平和主義と日米同盟のあり方」 意見広告(日本語版) (2009年10月23日 全国紙3紙掲載) 意見広告(英語版) (2009年10月23日 英字紙2紙掲載) |
伊藤憲一 日本国際フォーラム理事長 |
2009年10月22日 |
31. | 「グローバル化の中での日本農業の総合戦略」 | 本間正義 東京大学大学院教授 |
2009年1月14日 |
30. | 「ロシア国家の本質と求められる日本の対露戦略」 座談会記事 (2008年2月26日付 読売新聞朝刊15面掲載) |
袴田茂樹 青山学院大学教授 |
2008年2月20日 |
29. | 「インドの躍進と日本の対応」 座談会記事 (2007年9月14日付 読売新聞朝刊 15面掲載) |
榊原英資 早稲田大学教授 |
2007年9月7日 |
28. | 「変容するアジアの中での対中関係」 座談会記事 (2006年11月5日付 読売新聞朝刊 13面掲載) |
小島朋之 慶應義塾大学教授 |
2006年10月30日 |
27. | 「国際エネルギー安全保障体制の構築」 座談会記事 (2006年5月19日付 読売新聞朝刊 28面掲載) |
内藤正久 日本エネルギー経済研究所理事長 |
2006年5月18日 |
---|---|---|---|
26. | 「新しい脅威と日本の安全保障」 座談会記事 (2005年8月15日付 読売新聞朝刊11面掲載) |
佐瀬昌盛 拓殖大学教授(政策委員) |
2005年8月10日 |
25. | 「世界の中の日本:その文化と教育」 座談会記事 (2004年12月23日付 読売新聞朝刊13面掲載) |
袴田茂樹 青山学院大学教授(政策委員) |
2004年12月13日 |
24. | 「新しい世界秩序と日米同盟の将来」 座談会記事 (2004年5月2日付 読売新聞朝刊11面掲載) |
伊藤憲一 日本国際フォーラム理事長 |
2004年 4月28日 |
23. | 「東アジア経済共同体構想と日本の役割」 座談会記事 (2003年6月26日付 読売新聞朝刊17面掲載) |
吉田春樹 吉田経済産業ラボ代表取締役 |
2003年 6月20日 |
22. | 「東アジアにおける安全保障体制の構築」 座談会記事 (2002年12月22日付 読売新聞朝刊8面掲載) |
田中明彦 東京大学教授 |
2002年12月18日 |
21. | 「リオ+10と日本の環境外交」 座談会記事 (2001年11月11日付 読売新聞朝刊14面掲載) |
山本良一 東京大学教授 |
2001年10月24日 |
20. | 「新しい国際主義-集団的人間安全保障を目指して-」 座談会記事 (2001年7月16日付 読売新聞朝刊13面掲載) |
猪口邦子 上智大学教授 |
2001年 7月 6日 |
19. | 「グローバル化経済とアジアの選択」 座談会記事 (2000年6月2日付 読売新聞朝刊17面掲載) |
トラン・ヴァン・トゥ 早稲田大学教授 |
2000年 5月26日 |
18. | 「対米中露関係の展望と日本の構想」 座談会記事 (1999年5月1日付 読売新聞朝刊11面掲載) |
伊藤憲一 日本国際フォーラム理事長 |
1999年 4月19日 |
17. | 「情報革命時代における世界と日本」 座談会記事 (1998年8月27日付 読売新聞朝刊27面掲載) |
公文俊平 国際大学グローバル・コミュニケーション・センター所長 |
1998年 8月24日 |
16. | 「発展途上国支援の新方向を探る」 座談会記事 (1998年3月10日付 読売新聞朝刊14面掲載) |
草野 厚 慶応義塾大学教授 |
1998年 3月 5日 |
15. | 「WTO体制と日本」 座談会記事 (1996年12月1日付 読売新聞朝刊15面掲載) |
坂本正弘 中央大学教授 |
1996年11月27日 |
14. | 「アジア・太平洋地域における安全保障体制の可能性と役割 」 | 渡邉昭夫 青山学院大学教授 |
1996年 6月 5日 |
13. | 「日米経済摩擦の本質と対応 」 | 島田晴雄 慶応義塾大学教授 |
1995年 8月 3日 |
12. | 「中国の将来とアジアの安全保障:新しい日中関係をめざして」 | 小島朋之 慶応義塾大学教授 |
1995年 1月25日 |
11. | 「地域経済圏形成の動きと日本の対応」 | 小林寛 日本興行銀行顧問 |
1994年 6月17日 |
10. | 「日欧政治関係:21世紀への展望」 | 中西輝政 静岡県立大学教授 |
1993年11月16日 |
9. | 「アジア社会主義経済の変化と日本の対応」 | 佐藤経明 日本大学教授 |
1993年 6月 8日 |
8. | 「国連の平和機能の強化と日本の役割」 | 佐藤誠三郎 東京大学教授 |
1992年 10月7日 |
7. | 「新段階を迎える市場開放」 | 竹中一雄 国民経済研究会顧問 |
1992年 2月27日廃案 |
6. | 「変貌するソ連と日本の対応」 | 田久保忠衛 杏林大学教授 |
1991年 4月10日 |
5. | 「国際通貨貿易システムの安定化への貢献」 | 真野輝彦 東京銀行常任参与 |
1990年 8月14日 |
4. | 「日米協力のあり方-責任分担を中心として」 | 猪口孝 東京大学教授 |
1990年 4月 5日 |
3. | 「日本の経済力を世界経済の発展のためにいかに活用するか」 | 金森久雄 日本経済研究センター会長 |
1989年 7月25日 |
2. | 「北東アジアの長期的安定と協力のビジョン」 | 神谷不二 慶応大学教授 |
1989年 3月15日 |
1. | 「日、米、アジアNICS間の構造調整」 | 渡辺利夫 筑波大学教授 |
1988年 3月 3日 |
政策委員会と緊急提言委員会の共催による「拡大政策委員会」
緊急提言委員会は、政策委員会の取り上げる中長期的な問題だけでなく、激動する内外情勢のなかでその変化に対応し適時適切な緊急提言を行なうことも必要ではないか、との問題意識から、1992年6月4日に当フォーラムの常設委員会の一つとして設立された。緊急提言委員会による政策提言として、これまでに、4本の「緊急アピール」を作成・発表している。
【これまでの開催実績】
- 第8回:「日ロ関係はどうあるべきか」(2016年11月14日開催)
- 第7回:「『戦後70年安倍首相談話』に関する意見交換」(2015年7月30日開催)
- 第6回:「『尖閣諸島沖での漁船衝突事件』に関する意見交換」(2010年10月6日開催)
- 第5回:「対露領土交渉の基本的立場について」(2009年4月21日開催)
- 第4回:「『歴史認識』に関する意見交換」(2007年3月22日開催)
- 第3回:「北方領土問題に関する麻生外務大臣について」(2006年12月21日開催)
- 第2回:「韓国・中国における反日騒動の拡大と日本の対応について」(2005年4月25日開催)
- 第1回:「イラク・北朝鮮問題について」(2003年2月19日開催)
緊急提言委員会による政策提言
緊急提言委員会は、政策委員会の取り上げる中長期的な問題だけでなく、激動する内外情勢のなかでその変化に対応し適時適切な緊急提言を行なうことも必要ではないか、との問題意識から、1992年6月4日に当フォーラムの常設委員会の一つとして設立された。緊急提言委員会による政策提言として、これまでに、4本の「緊急アピール」を作成・発表している。なお、緊急提言委員の名簿は委員の名簿を参照ありたい。
1.緊急アピール「コメ輸入の関税化受け入れを決断しよう」(1993年2月5日)
ウルグアイ・ラウンド交渉が最終段階に入っていた1993年2月5日、本邦主要4紙に5段抜きの意見広告「『コメ輸入の関税化』受入れを決断しよう」を賛同する113名の連名で掲載し、その後のわが国の最終的政策決定に大きな影響を与えた。
→ 緊急アピール「コメ輸入の関税化受け入れを決断しよう」(1993年2月5日)
2.「対露政策に関する緊急アピール」(2001年6月29日)
政府の対露政策のぶれに危機感を高めた緊急提言委員会は、2001年4月9日同委員会の傘下に「対露政策を考える会」(末次一郎座長)を設置して、議論を重ね、同年6月29日「日本は二島先行返還論にこれ以上拘わるべきでなく、あくまでも東京宣言を原点として四島の帰属問題を解決せよ」との「対露政策に関する緊急アピール」を発表した。その後、袴田茂樹座長のもとで、同会は2004年2月13日、緊急提言委員会より独立し、「特別研究活動」の一つとなった。
→ 「対露政策に関する緊急アピール」(2001年6月29日)
3.「イラク問題について米国の立場と行動を支持する」(2003年2月20日)
2003年、イラクの大量破壊兵器保有疑惑、北朝鮮の核開発疑惑など国際情勢が危機的状況を迎える中、「イラク問題について米国の立場と行動を支持する」との緊急提言を有志39名の連名により、2月20日付けで新聞発表した。この反響は大きく、21日朝の読売、産経、ジャパンタイムズ等各紙が本件を大きく報道したほか、雑誌『世界週報』にもアピール全文と署名者名が掲載された。
→ 「イラク問題について米国の立場と行動を支持する」(2003年2月20日)
4.「緊急アピール『対露領土交渉の基本的立場を崩してはならない』」(2009年4月30日)
当フォーラム緊急提言委員会は、4月30日の内外記者会見において、国民各界を代表する92名の連名で、緊急アピール「対露領土交渉の基本的立場を崩してはならない」を発表した。この緊急アピールは時事通信により即日内外に配信されたほか、翌朝の読売新聞、朝日新聞、産経新聞、日本経済新聞、北海道新聞、The Japan Times等によって広く報道され、また、緊急アピールの全文およびその署名者名簿は、5月11日付けの全国紙4紙の朝刊に意見広告として掲載された。
→ 緊急アピール「対露領土交渉の基本的立場を崩してはならない」意見広告(2009年5月11日)
調査研究活動に伴う政策提言
当フォーラムは、その組織・運営する各種の調査研究活動の副産物としても政策提言を作成・発表している。2015年以降に、政策提言を作成、発表した調査研究活動のテーマおよび主査の名前は、以下のとおりである。
【これまでの政策提言】
NO. | テーマ | 研究会主査 | 発表年 |
---|---|---|---|
18. | 「グローバル・ヘルス・ガバナンスと日本外交」 | 佐藤禎一 上席研究員 |
2016年 |
17. | 「積極的平和主義の時代の日米同盟」 | 神谷万丈 上席研究員 |
2015-2016年 |
16. | 「ウクライナ危機と日本の地球儀俯瞰外交」 | 六鹿茂夫 客員上席研究員 |
2015-2016年 |
15. | 「領土海洋問題と危機管理メカニズムの構築」 | 伊藤剛 客員上席研究員 |
2015-2016年 |
14. | 「少子高齢化と日本の安全保障」 | 佐藤禎一 国際医療福祉大学大学院教授 |
2014-2015年 |
13. | 「『人間の安全保障』の課題と日本の外交戦略」 | 小浜裕久 静岡県立大学教授 |
2014年 |
12. | 「アジア太平洋地域の新たなシンクタンク・ネットワーク形成」 | 伊藤剛 上席研究員 |
2013-2014年 |
11. | 「新空間の日中信頼醸成」 | 青木節子 上席研究員 |
2013年 |
10. | 「価値観外交を基軸とした日本外交の活性化」 | 伊藤剛 上席研究員 |
2013年 |
9. | 「ネパールの廃棄物管理の評価」 | 廣野良吉 上席研究員 |
2013-2014年 |
8. | 「新段階の日米同盟のグランド・デザイン」 | 神谷万丈 上席研究員 |
2013-2014年 |
7. | 「宇宙に関する各国の外交政策」 | 青木節子 主任研究員 |
2012年 |
6. | 「東アジア地域の安全保障環境:日欧間の認識共有にむけて」 | 添谷芳秀 政策委員 |
2012年 |
5. | 「環境・エネルギー協力の新たな展望とその可能性 ~ 東アジアにおける低炭素社会の構築にむけて~」 | 廣野良吉 上席研究員 |
2012年 |
4. | 「海洋秩序の『非伝統的安全保障化』への試みとその具体的共同施策」 | 伊藤剛 主任研究員 |
2012年 |
3. | 「ビジネスと外交」 | 古城佳子 主任研究員 |
2011年 |
2. | 「「「新興国の台頭とグローバル・ガバナンスの将来」 | 神谷万丈 参与・主任研究員 |
2011年 |
1. | 「日米中関係の長期的展望」 | 高原明生 主任研究員 |
2011年 |