近年、気候変動の急速な進行と地政学的競争の重層化を背景に、北極は環境・科学の対象領域を超え、国際秩序の再編と戦略的利害が交錯する新たな地政空間へと変容しつつある。北極圏における温暖化は地球平均の数倍の速度で進行し、海氷減少は新たな航路や資源開発の可能性を開く一方で、生態系や先住民社会に深刻な影響を及ぼしている。
こうした環境変化に加え、2022年のロシアによるウクライナ侵攻を契機として、北欧諸国のNATO加盟、ロシアの軍事的再配置、中国の制度的関与の進展などが重なり、北極をめぐる国際環境は大きな転換点を迎えている。従来、協調と科学協力を基軸として機能してきた北極評議会はその活動の制約を余儀なくされ、北極ガバナンスは今や、競争と分断を内包した新たな秩序形成の過程にある。
このような変化の中で、日本の北極関与もまた新たな段階に入りつつある。日本はこれまで、観測・研究を基盤とする科学的貢献や国際協力を通じて、北極における信頼されるパートナーとしての地位を築いてきた。しかし、航路、資源、安全保障、さらには制度形成が複合的に絡み合う現在、従来の科学協力中心の枠組みを超え、外交・安全保障・経済を統合した戦略的関与が求められている。とりわけ、北極政策の発表から10年という節目、ArCS IIの完了、新たな砕氷研究船の就航を控える今日、日本の北極政策を総括し、次段階の関与を構想することが喫緊の課題となっている。
そこで本事業では、北極をめぐる国際秩序の構造的変容を、地政学、安全保障、資源・エネルギー、国際制度といった複合的視座から総合的に分析する。その際、北極を単なる地域的課題としてではなく、アジア太平洋を含む広域秩序との連続性の中で捉え、非北極圏国を含む多様な主体の関与のあり方を検証する。さらに、日本が科学的知見、法の支配、多国間協調を基軸として、北極ガバナンスにおいて建設的役割を果たすための政策的選択肢を提示する。
以上の目的を達成するべく、本研究会は、学際的かつ実務的視座を備えた専門家の参画の下、調査・研究活動を体系的に推進する。
メンバー構成
コメンタリー
【2026年度】
活動日誌
【2026年度】

2026年7月31日
読売新聞、高畑洋平上席研究員の「分有化」研究を取材
読売新聞編集委員室室長・竹腰雅彦氏が高畑洋平上席研究員が提唱する国際秩序論「分有化」について約1時間にわたりインタビューを行った。インタビューでは、北極を国際秩序変容の先行モデルとする分析をはじめ、「対立か協力かではなく、対立しながら協力する世界」という分有化の考え方や、日本の北極政策・外交戦略への示唆について意見交換が行われた。

2026年7月21日
高橋主査と今後の研究会活動について意見交換
渡辺まゆ理事長、高畑洋平メンバーおよび伊藤和歌子研究主幹が北海学園大学を訪問し、本研究会主査である高橋美野梨准教授との間で、北極をめぐる国際情勢や研究会の進捗を踏まえつつ、今後の研究活動や政策提言の方向性について幅広く意見交換を行った。

2026年7月21日
ユハ准教授と北極政策を議論
渡辺まゆ理事長、高畑洋平メンバーおよび伊藤和歌子研究主幹が北海道大学北極域研究センターを訪問し、同研究会メンバーであるユハ准教授との間で、北極をめぐる安全保障環境や地域協力、北極研究の国際的な動向などについて意見を交わした。

2026年5月11日
高橋美野梨主査・高畑洋平統括による事前会合
高橋美野梨主査と高畑洋平上席研究員は、「北極圏を巡る情勢の変化と対応」研究会の始動に先立ち、北極をめぐる国際政治・安全保障・経済環境の変化を踏まえつつ、今後の研究の方向性や主要論点について協議を行った。








