公益財団法人日本国際フォーラム

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「変わりゆく国際秩序における日本の外交戦略―中国の対外行動分析枠組みの構築を踏まえて―」2021年度第4回定例研究会合

当フォーラムの「変わりゆく国際秩序における日本の外交戦略―中国の対外行動分析枠組みの構築を踏まえて―(主査:加茂具樹慶應義塾大学教授・当フォーラム上席研究員)は、さる9月2日、定例研究会合を開催した。講師として招いた竹原美佳石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)調査部調査課上席研究員より「中国のエネルギー需給、市場の変化」と題して報告を受けたところ、その概要は以下のとおりである。

  1. 日 時:2021年9月2日(木)19時~21時
  2. 場 所:日本国際フォーラム会議室およびZoomによるオンラインを併用
  3. 出席者:33名
    [主 査] 加茂 具樹 慶應義塾大学教授 / 日本国際フォーラム上席研究員
    [メンバー] 飯田 将史 防衛研究所地域研究部米欧ロシア研究室長
    井上 一郎 関西学院大学教授
    林 載桓 青山学院大学教授
    江口 伸吾 南山大学外国語学部教授
    大澤 武司 福岡大学人文学部教授
    熊倉 潤 法政大学法学部准教授
    下野 寿子 北九州市立大学外国語学部教授
    城山 英巳 北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院教授
    内藤 寛子 日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員
    廣野 美和 立命館大学グローバル教養学部准教授
    真家 陽一 名古屋外国語大学教授
    Vida Macikenaite 国際大学国際関係学研究科講師
    山﨑 周 キャノングローバル戦略研究所研究員 (五十音順)
    [ご報告者] 竹原 美佳 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)調査部調査課上席研究員
    [JFIR] 渡辺 まゆ 理事長※
    菊池 誉名 理事・主任研究員 ほかゲストなど多数。
  4. 報告内容:

人口増加と経済発展に伴い中国のエネルギー消費は増加が続くが、省エネ、エネルギー消費の多角化は進展した。

石炭は大気汚染抑制策により製造業における石炭天然ガスへの燃料転換が進展した。

一方、石炭消費抑制策、貿易管理(豪中関係悪化による豪州炭の輸入停止)により需給ひっ迫、価格上昇が加速した。政府は石炭備蓄放出による鎮静化と備蓄の増強を図る構えだ。

石油の消費抑制、燃料代替政策(燃費規制、高速鉄道普及、NEV促進)は進展し、消費の伸びは鈍化しており、輸送燃料を中心に2025年頃ピークアウトする可能性がある。

米国のイランやベネズエラ原油貿易への制裁、OPECプラスの生産調整など供給が不安定化するなか、政府は国有石油企業に供給の強化を働きかけている。しかし油田は成熟化が進み生産は頭打ちで需給ギャップは拡大している。

国有石油企業独占打破と環境対応の観点で地方製油所の原油輸入が許可されたが、石油製品の供給過剰、米制裁対象の原油貿易横行を招き、政府は取り締まりと貿易の監理強化に転じた。また初めて国家石油備蓄を入札により放出する方針を公表した。

天然ガスは化石燃料の中で低炭素かつ排出が少なく、再生可能エネルギーとならぶクリーンエネルギーとして政府が石炭から天然ガスの転換を含む利用拡大を奨励している。製造業における石炭からの燃料転換や発電、都市ガスの利用が進む。ガス利用の増加によりピーク差が拡大し、政府は輸送・貯蔵システムの整備など需要ピークへの対応を強化している。天然ガス供給の3割を占める輸入LNGのサプライチェーンは地方・民間の都市ガス事業者ならびに地域グリッド(ガス・電力)事業者の参入が進み、調達・販売手法が多角化した。輸送・貯蔵を統一管理するPipeChinaが設立され、LNG受入基地への第三者アクセスが進展しつつある。

電力消費が進む中、非化石化が進んでおり、2020年には発電設備容量の4割、電源の3割が原子力・再生可能エネルギーとなった。しかし電源の6割は石炭火力であり、電力会社と地方政府は石炭火力発電の増強を続けている。

2021年上半期は経済と高気温により電力需要が急増、増加の7割は機動的な火力で対応した。

7月に始まった全国版の温室効果ガス排出権取引制度(ETS)は現状低調に推移しているが排出削減のツールとして期待がもてる。

中国は2020年9月に2060年までの温室効果ガス排出実質ゼロ(カーボンニュートラル)を表明した。欧米や日本より達成時期を10年先送りした目標であり、ロードマップは未公表だが、電源の非化石化、EVの普及、水素やCCSの開発など脱炭素化への対応を進めている。習主席が表明した「2030年排出ピークアウト、2060年排出実質ゼロ」は必達目標だが、国内の安定、市場やエネルギーを取り巻く環境の変化を見据えながら、脱炭素化や産業構造転換を着実に進めると思われる。

以上、文責在事務局