公益財団法人日本国際フォーラム

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JFIR-AEI国際シンポジウム「ウクライナ戦争下のチャイナリスクとチャイナオポチュニティ:日米の対応」

当フォーラムと米国アメリカンエンタープライズ研究所(American Enterprise Institute; AEI)の共催により、国際シンポジウム「ウクライナ戦争下のチャイナリスクとチャイナオポチュニティ:日米の対応」が、下記1. ~4. の日時、場所、登壇者、参加者で開催された。その議事概要は下記5. のとおりである。

  1. 日 時:2023年3月14日(火)13:30-15:30
  2. 場 所:イイノカンファレンスセンター
  3. 登壇者:9名
    [日本側] 渡辺 まゆ JFIR理事長
    神谷 万丈 JFIR副理事長/防衛大学校教授
    川島 真 JFIR上席研究員/東京大学教授
    大庭 三枝 神奈川大学教授
    小谷 哲男 明海大学教授
    中尾 武彦 みずほリサーチ&テクノロジーズ理事長/
    元アジア開発銀行総裁
    [米国側] ザック・クーパー アメリカンエンタープライズ研究所(AEI)シニアフェロー
    ニコラス・セーチェーニ 戦略国際問題研究所(CSIS)日本部上席研究員/
    アジア担当副部長
    パトリシア・M・キム ブルッキングス研究所デビッド・M・ルーベンスタイン・フェロー
    クリスティ・ゴヴェラ ハワイ大学マノア校インド太平洋地域研究センター所長
  4. 参加者:88名(登録者数)
  5. 議論概要:

冒頭、渡辺まゆJFIR理事長による開会挨拶があり、神谷万丈JFIR副理事長、ザック・クーパーAEIシニアフェローからの趣旨説明の後、各登壇者による報告および全体討論が行われた。特に注目すべき議論は以下の通り。

  • 中ロは既存の国際秩序に挑戦するという点では利益を共有するも、ロシアは軍事力に偏重した大国、中国は世界第二位の経済大国というように置かれている状況が異なるため、個々の行動で意見が一致するわけではない。
  • 既存の秩序に挑戦しようとしているロシアや中国にはそれぞれの論理や考え方があり、その論理を理解することが必要であること、また日米は経済安全保障の面で連携を強化しなければならないが、中国には米国には向けないが、歴史問題など、日本には向ける論理がある点に留意すべきである。
  • 日米がルールに基づく秩序の守護者として果たすべき役割は、ウクライナにおける戦争が2年目を迎えた今、ますます重要性を増していること、対中戦略成功のカギは抑止と交流の絶妙なバランス感覚のマネージにあること、日米以外の国とのパートナーシップ強化においてはインド太平洋地域での同盟ネットワークの構築が重要である。
  • 日米両国にとって、中国は最大の戦略的挑戦であり、拡大する中国とロシアの戦略的連携は懸念事項となっている。近年、グローバルサウスが存在感を増してきているが、グローバルサウスの中には中国・ロシアに近い国もおり、日米はG7やQUADなどを通じて、グローバルサウスへの働きを強化すべきである。
  • インド太平洋地域の多くの国々は米中それぞれとの関係を維持しており、「チャイナオポチュニティ」「チャイナリスク」の両方を追求している。ウクライナ戦争では、ルールに基づく秩序の重要性と、力による現状変更は許されないことが明らかになり、インド太平洋地域の国々もこのことに共感しつつも、中国との経済的な結びつきの強さや、世界経済への影響などから台湾有事等の紛争への共同対応は困難な面がある。
  • ASEAN諸国において中国の投資受け入れの比率が高まっているが、注目すべきは、ASEAN諸国は中国からの投資を魅力的であると判断して受け入れている点である。ASEAN諸国が主体的に判断し、動いているという前提で見なければ日米の対応にズレが生じてしまう。ASEAN諸国は米国と中国、どちらか片方を選ぶのは難しく、EUや日本の重要性が増している。
  • 安全保障、経済、技術、グローバル・ガバナンスなどの異なる領域で、インド太平洋地域では、QUAD、IPEF、Chip 4等の提携関係が構築されているが、これらすべてに属している国は日米だけであり、両国にとって、二国間関係のみならず世界のさまざまな国を巻き込み、いかによりよい関係をつくるかが重要となる。
  • 日米は中国との間で安全保障のジレンマに陥る可能性がある。QUADの活用も含めて、中国への抑止を強化していくやり方もあるが、他方で中国を解きほぐす方法も存在する。

(文責在事務局)