当フォーラムの実施する「変わりゆく国際秩序における日本の外交戦略―中国の対外行動分析枠組みの構築を踏まえて―」事業の一環として、当フォーラムは中国社会科学院日本研究所と慶應義塾大学SFC研究所日本研究プラットフォーム共催による座談会「新型コロナウイルス感染症下の日本内外情勢と日中関係」を後援したところ、その概要は以下のとおりである。
- 日 時:2020年9月17日(木)14時~18時
- 場 所:Zoomによるオンライン
- 出席者
【中国側】 楊 伯江 中国社会科学院日本研究所所長 高 洪 中国人民政治協商会議全国委員会委員、中国社会科学院日本研究所研究員 張 伯玉 中国社会科学院日本研究所政治研究室副主任 帰 泳濤 北京大学国際関係事務学院副院長、准教授 江 新鳳 中国人民解放軍軍事科学院研究員 廉 徳瑰 上海外国語大学日本文化経済学院教授、日本研究センター主任(発言順) 呉 懐中 中国社会科学院日本研究所副所長、政治研究室主任 盧 昊 中国社会科学院日本研究所総合戦略研究室副主任 張 曉磊 中国社会学院政治研究室副研究員 常 思純 中国社会科学院日本研究所外交研究室副研究員 田 正 中国社会学院日本研究所経済研究室副研究員 喬 林生 南開大学日本研究院副教授 邱 静 中国人民大学国際関係学院政治学部副教授 程 縕 南開大学日本研究院副教授 【日本側】 加茂 具樹 日本国際フォーラム上席研究員/慶應義塾大学総合政策学部教授 小嶋 華津子 慶應義塾大学法学部教授 清水 唯一朗 慶應義塾大学総合政策学部教授 中山 俊宏 慶應義塾大学総合政策学部教授 神保 謙 慶應義塾大学総合政策学部教授 細谷 雄一 慶應義塾大学法学部教授 (発言順) 菊池 誉名 日本国際フォーラム理事/主任研究員 - 内容:
(1)代表者挨拶
冒頭、中国側代表として楊伯江・中国社会科学院日本研究所所長、日本側代表として加茂具樹・日本国際フォーラム上席研究員/慶應義塾大学総合政策学部教授が挨拶を行った。
(イ)楊伯江 中国社会科学院日本研究所所長の挨拶
新型コロナ感染症のパンデミックを経て生じつつある両国関係の変化に強い問題意識をもっている。昨年6月のG20大阪サミットにあわせて行われた日中首脳会談において確認された10項目の合意は、新しい時代の日中関係の目標を明確にしたものであったが、現在この合意を実施するために必要な空気が日本社会のなかで失われつつあることを憂慮している。そうした両国の状況を踏まえて、以下の点について議論を行いたい。一つは、安倍長期政権のもとで日中関係は安定していたわけであるが、では今後どのような条件のもとで長期政権は可能なのかについてである。二つは、日本経済がマイナス成長を続けるなか、安倍政権では日本の企業が中国から移転することに補助金を出すなど「脱中国化」といえる施策を取り始めていたが、今後日本経済の行方がどうなっていくのかについてである。三つは、10項目の合意で明確になった両国関係の目標を、如何にして実施していくのか、その方法論についてである。
(ロ)加茂具樹 日本国際フォーラム上席研究員/慶應義塾大学総合政策学部教授の挨拶
日本外交の要諦は、良好で安定した日米と日中関係を構築することである。戦後、日本は日米同盟を基軸としながら、安定した対中関係の形成に努め、それは今日の日本の平和と繁栄を支えている。この度の新型コロナ感染症のパンデミックを経て、日本外交は大きな挑戦に直面している。一つは、日本国内の対中認識が急速に悪化し、建設的な対中外交を展開するための基盤が失われていることである。昨年9月に発生した日本人研究者の拘束事案や香港における国家安全維持法の立法、また東シナ海の海洋秩序をめぐる動向をふまえて、日本は、大国化した中国の国内政治と対外行動が強硬化していると評価し、その動向を警戒している。二つは、通商摩擦に起因し、パンデミックを経て急速に悪化した米中関係である。米中関係の悪化の文脈と日中関係の展開が完全に同期することはないだろうが、日本外交は、米中対立を前提とした国際秩序の下で、安定した日中関係を構築するという課題に直面している。本会議を通じて、日中の2国間関係や国際情勢認識についての評価の共通点と不一致の点について、日中双方の研究者の間であらためて共有できることを期待している。
(2)参加者からの報告
以上の問題意識を踏まえて、次のテーマについて、日中双方の参加者からそれぞれ報告が行われた。
(イ)「ポストコロナ時代の日中関係」
高 洪 中国人民政治協商会議全国委員会委員、中国社会科学院日本研究所研究員
小嶋 華津子 慶應義塾大学法学部教授
(ロ)日本政治と「ポスト安倍」時代
張 伯玉 中国社会科学院日本研究所政治研究室副主任
清水 唯一朗 慶應義塾大学総合政策学部教授
(ハ)米国大統領選挙と日米関係
帰 泳濤 北京大学国際関係事務学院副院長、准教授
中山 俊宏 慶應義塾大学総合政策学部教授
(ニ)日本の国家安全保障戦略とその変化
江 新鳳 中国人民解放軍軍事科学院研究員
神保 謙 慶應義塾大学総合政策学部教授
(ホ)パワーバランス変容期の日本外交
廉 徳瑰 上海外国語大学日本文化経済学院教授、日本研究センター主任
細谷 雄一 慶應義塾大学法学部教授
(3)討論および総括
その後、コメントや討論が行われ、最後に中国側から呉懐中・中国社会科学院日本研究所副所長、政治研究室主任、日本側から加茂上席研究員より総括が行われた。
以上、文責在事務局