公益財団法人日本国際フォーラム

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「『自由で開かれたインド太平洋』時代の チャイナ・リスクとチャイナ・オポチュニティ」研究会

 当フォーラムの実施する「『自由で開かれたインド太平洋』時代のチャイナ・リスクとチャイナ・オポチュニティ」研究会内、欧州班の第3回定例研究会合が、下記1.~3.の日時、場所、出席者にて開催されたところ、その議論概要に関しては下記4.のとおり。

  1. 日 時:2021年7月2日(金)17:00-19:00
  2. 場 所:オンライン形式 (Webex)
  3. 出席者:31名
  4. 議論概要

当フォーラムとCHOICE(China Observers in Central and Eastern Europe)共催の国際ワークショップとして本研究会合を実施し、中国が近年世界的に影響力を強めていることについて中東欧諸国と日本の専門家がお互いの洞察を共有した。特に、参加者において対中国政策における留意すべき点について意見交換し、下記内容を中心に一定の収穫を得た。

(1) 報告概要

会合冒頭、「中国と中東欧諸国の『17+1』」をテーマに、当フォーラムおよびCHOICE側からそれぞれ2名ずつ報告が行われた。JFIR側からは、まず欧州における中国に対する日本の戦略的優先事項について報告がなされ、続いて、欧州での一帯一路イニシアティブに対して日本の視点から報告がなされた。CHOICE側は報告を通じて、EUが中国を純粋な経済パートナーとしてではなく、戦略的なライバルとして認識するようになったことを指摘した。また、欧州内における中国への懐疑的な姿勢への変化はCOVID-19の危機によって加速したと主張した。人権問題への関心の高まりは中東欧諸国における中国に対する認識を悪化させ、リトアニアが17+1(現在は16+1)プラットフォームから離脱したことにも表れている。

しかしながら、中東欧諸国はドイツ経済と密接な結びつきがあり、ドイツ政府は中国との経済面における継続的な関与の主要な推進者であることも指摘された。また、西バルカン諸国が中国政府の影響力行使のためのプラットフォームとなっていることも指摘された。西バルカン諸国はEUに加盟していないため、中国からの投資を制限するEUの基準に縛られず、一般的に中国との協力関係を築きやすいのが要因である。

(2) ディスカッション

両者のディスカッションの特徴の一つとして、CHOICE側は経済を中心とした視点で議論を展開したが、日本側は安全保障を重視した議論が多かったことだ。また、日本は人権問題や経済問題についてはあまり積極的ではないことがCHOICE側から指摘された。これには、JFIR側から日中関係の複雑な歴史や中国との経済的利益相互依存が影響している点が説明され、多くの中東欧諸国はそのような背景を持たないことが、人権面に対する強硬姿勢に繋がっていると指摘された。

最後に、中東欧地域における中国のプレゼンスというトピックが日本では重要度をもって広く共有されていない問題が指摘された。欧州における中国の存在感については、西欧のEU諸国に過度に焦点が当てられており不完全なものが多いという指摘がCHOICE側からなされた。これに対し、JFIR側は情報の非対称性に対処する必要性を強調した。また、EUのインド太平洋戦略は、中東欧諸国のほとんどの言説において政策課題として認識されていない。その中で、2021年7月にはスロベニアが、2022年にはチェコが閣僚理事会議長国に就任する。このことは、中東欧諸国の国際的な活躍が期待される中で、日本に対しても中東欧諸国の確固たる存在感をアピールする重要な機会になるということで意見が一致した。

以上、文責在事務局