メモ

- 日 時:2026年4月10日(金)午後5時半〜午後7時
- 形 式:ZOOMによるオンライン会合
- 出席者:パネリスト含め75名
- プログラム:
司 会 伊藤和歌子 日本国際フォーラム研究主幹・常務理事
開会挨拶 高畑 洋平 日本国際フォーラム上席研究員/慶應義塾大学SFC研究所上席所員
上川陽子衆議院議員によるビデオメッセージ
基調報告 髙橋 若菜 日本国際フォーラム上席研究員/宇都宮大学教授
報 告A 廣瀬 陽子 日本国際フォーラム上席研究員/慶應義塾大学教授
報 告B 上野 友也 岐阜大学教授
報 告C 北村美和子 東北大学スタートアップ事業化センター特任准教授
報 告D 三牧 聖子 同志社大学教授
質疑応答
総 括 髙橋 若菜 日本国際フォーラム上席研究員/宇都宮大学教授
閉 会
- 概要
(1)高畑 洋平 日本国際フォーラム上席研究員/慶應義塾大学SFC研究所上席所員による開会挨拶
(2)上川 陽子 衆議院議員によるビデオメッセージ
2022年9月、ニューヨークで開催された女性平和リーダーシップに関するシンポジウムに日本を代表して参加したことを契機に、WPSの推進に取り組んできた。国会議員とともに「WPS議会人ネットJAPAN」を立ち上げ、政府への提言を重ねた結果、WPSは骨太の方針や男女共同参画の重点方針に位置づけられるに至った。さらに外務大臣就任後は、WPSを日本外交の柱の一つとして掲げ、二国間・多国間外交、ウクライナ復興支援、アジア諸国との連携などを通じてその推進に努めてきた。政府内でも、防災や災害対応にWPSの視点を組み込む独自の取組や、関係省庁における体制整備が進められている。2025年の安保理決議1325号採択25周年に際しては、日本がWPSフォーカルポイント・ネットワーク共同議長国を務め、国際議論を牽引してきた。日本におけるWPSはようやく芽を出した段階にあり、今後は実証から実行へと移行し、科学的根拠に基づく政策立案と多様な主体の連携を一層進める必要がある。とりわけ、WPSの視点と行動が平和と安全保障の基盤に果たす意義を、各専門分野から多角的に研究することは極めて重要であり、混沌とする国際情勢の中で、日本が国際社会と連携し大きな役割を果たせるよう、研究成果に基づく政策提言が強く求められている。本研究プロジェクトがWPS研究の裾野を広げ、内外のネットワーク構築に寄与することを期待する。
(3)髙橋 若菜 日本国際フォーラム上席研究員/宇都宮大学教授による基調報告
WPSの実装と課題-環境ガバナンスの視座
専門は環境政治学であり、持続可能な移行を支えるガバナンスについて、欧州と東アジアの比較研究を行っている。その過程で、環境政策上の課題はジェンダーや安全保障と切り離して捉えることができず、異分野の観点から見てもWPSの重要性は明らかである。とりわけ、WPSとは何を変える概念なのか、そしてそれをいかに実装していくのかを検討する必要がある。WPSは、単に女性の参画を促進する枠組みにとどまらず、誰の安全が見落とされているのかを問い直し、不可視化されてきたリスクを可視化する知的枠組みとなり得る。とりわけ重要なのは、紛争、気候変動、生物多様性の喪失、格差拡大といった複合的リスクが、社会の中で不均等に現れる点である。日本においても、エネルギー価格高騰や災害の影響は、高齢者、子ども、女性などに見えにくい形で集中している。
こうした視点を示す事例の一つが、スウェーデンのマルメ市である。マルメでは、社会経済的に厳しい条件に置かれた地域においてこそ、グレイインフラからグリーンインフラへの転換を進めるとともに、再生可能な熱エネルギーの活用や、資源循環型の廃棄物リサイクルを実装しやすい都市設計を通じて、生活環境の質の向上を図ってきた。重要なのは、環境的・社会的価値を政策の中で統合し、ジェンダーを含む幅広い参加と多様な社会的ネットワークを確保している点である。それが、安全保障と経済の双方に好循環をもたらしている。しかし、このような先進事例においても、資源やエネルギーをめぐる国家戦略が地域社会、労働、先住民の権利と衝突し、その負担が特定の人々や女性、先住民族に偏在するという問題は避けられない。日本にも災害対応や地域コミュニティ、相互扶助の蓄積は存在するが、政策と現場、分野と分野、科学と実践がなお十分につながっているとは言い難い。したがって、見えにくいリスクを既存政策の中に埋め込み、分野横断的に知を接続し、多文化的な公共圏を育成していくことこそが、WPSの実装に向けた鍵であると考える。
(4)廣瀬 陽子 日本国際フォーラム上席研究員/慶應義塾大学教授による基調報告
「価値戦争時代のWPS 包摂性と国家レジリエンス」
現在のロシア・ウクライナ戦争は、単なる領土をめぐる戦争ではなく、「価値の戦争」としての性格を強めている。その中で、WPSがいかに変容しているのかという点に着目する。ロシアでは、LGBTの排除が国家統合の装置として位置づけられている一方、西側に位置づくウクライナでは、多様性と包摂の理念の下でWPSが欧州統合の条件の一つとして機能している。すなわち、WPSはもはや単なる「女性の問題」ではなく、「価値秩序の問題」へと拡張している。ロシア・権威主義国家圏と西側とで価値が対立する中、双方が異なる価値基準の下でWPSを政治的に利用しているという二重性にも留意する必要がある。
その上で、3月に実施したポーランド調査は、戦時下およびその周辺地域においてWPSがいかなる実践的意味を持つのかを示すものであった。ポーランドは戦争当事国ではないが、ウクライナに隣接し、多数の避難民受入れと人道支援を担っている点で、WPSの最前線の一つとして位置づけられる。ルブリンでは、女性主導による難民支援が顕著であり、女性が支援される側から支援する主体へと転換していた。ワルシャワでは、WPSが国家安全保障政策の一環として理解されており、社会の安定性や包摂性そのものが安全保障の基盤とみなされていた。さらにロッズでは、社会主義期以来の女性労働の歴史も踏まえつつ、平時のジェンダー構造が戦時の社会対応を規定するという点が示され、WPSが社会構造の問題として把握される必要が明らかとなった。これら三地域の比較から、WPSは単なる理念ではなく、社会レジリエンスを形成する政策であると指摘する。
さらに、旧ソ連諸国やポーランドの事例から、価値、社会、国家の三層を統合するモデルとして、WPSを「包摂性を通じた国家レジリエンスの形成」と捉え直す必要がある。とりわけ、大国間で生きる狭間国家においては、WPSは「弱い国家の戦略」となり得る。今後の安全保障において重要なのは、誰を守るかだけでなく、誰を包摂するかである。トップダウンの包括的安全保障だけではなく、社会や個人に着目するボトムアップの包摂的安全保障を併せて捉えることが重要であり、WPSはその中核に位置づくものである。
(5)上野 友也 岐阜大学准教授による基調報告
「WPS支援のグローバルな危機と日本の役割」
現在、WPS支援をめぐりグローバルな危機的状況が進行している。とりわけ、第二次トランプ政権の成立により、アメリカでは援助機関の解体と対外援助の大幅な縮減が進み、国際機関は厳しい状況に置かれている。2025年1月には対外援助が90日間停止され、米国国際開発庁(USAID)は解体のうえ国務省に一部吸収された。援助予算も、2025年度におけるバイデン政権下の予算要求額約644億ドルに対し、第二次トランプ政権では約315億ドルとなり、41%削減された。加えて、援助政策の主軸からジェンダー平等が外され、家族計画、リプロダクティブ・ヘルス/ライツ、ジェンダー平等推進、ジェンダー・アイデンティティに関わる支援が停止・縮減されるなど、WPSに対して攻撃的な政策転換が進んでいる。
この影響は国際機関にも及んでいる。国連合同エイズ計画(UNAIDS)は、HIV予防に加え、WPSに関連するメンタルヘルスやジェンダーに基づく暴力への支援を行っているが、2024年時点で総収入の48%を占めていたアメリカからの支援が停止された。国連人口基金(UNFPA)は、母体保護、人道危機下における女性と少女の保護、ジェンダーに基づく暴力からの保護支援を担っているが、2024年に総収入の18%を占めていたアメリカからの支援が失われる状況にある。さらに、UN Womenは、紛争・避難下の女性保護、女性の経済的エンパワーメントと生計支援、災害・気候変動の影響を受ける女性への支援を進めるとともに、各地の女性団体への資金供与も行っているが、2025年総収入の5%を占めていたアメリカからの支援が打ち切られ、各地の女性団体の資金不足と閉鎖が懸念されている。
加えて、第二次トランプ政権はジェンダー規範を「危険なイデオロギー」と位置づけ、WPS推進を国際機関本来の任務からの逸脱として批判している。そのため、国連の実務レベルでも、WPSやジェンダーという用語の使用自体に慎重な対応が求められる状況が生じている。こうした中で、日本の役割は重要である。日本の国連合同エイズ計画(UNAIDS)への拠出は2024年総収入比で1%未満、国連人口基金(UNFPA)への拠出は3%であるが、今後はこれらの機関への関与を強化し、アメリカの後退によって生じた空白にどう対応するかが課題となる。UN Womenに対しても、日本は災害・気候変動の影響を受ける女性への支援といった分野で、より積極的な関与が期待される。WPS支援とジェンダー規範が危機にさらされる現下の国際環境において、日本には、それらを擁護する外交を積極的に追求することが求められている。
(6)北村 美和子 東北大学スタートアップ事業化センター特任准教授による基調報告
災害対応という実践の場から、WPSの意義について3点から検討する。
今WPSを災害対応の文脈において捉えることの重要性:WPSはこれまで主として紛争予防や平和構築の文脈で発展してきたが、今日の安全保障課題は、気候変動に伴う災害の激甚化、複合危機、エネルギー問題、地域社会の脆弱性へと広がっている。災害は単なる自然現象ではなく、社会に内在する不平等や脆弱性を顕在化させる出来事である。誰が避難しやすいのか、誰がケアを担い、誰が意思決定から取り残されるのかという問いは、「誰の安全が守られ、誰の声が政策や制度に反映されるのか」というWPSの問題意識と重なる。したがって、WPSを災害対応に接続することは、現代の安全保障課題に即してその実践的意義を深める試みといえる。
日本の災害経験から見える課題と示唆:日本は多くの災害経験を蓄積してきた。東日本大震災では、女性、高齢者、障がい者、介護を担う人、外国人がそれぞれ異なる困難に直面したことが明らかになった。他方で、脆弱性の高い生活条件に置かれた人々ほど把握されにくく、表面的に公平に見える支援の下でも必要な支援が十分に届いていない可能性がある。能登半島地震でも、高齢化が進む地域社会の中で、女性や高齢者が避難生活や生活再建の負担を大きく担っていた。これらの経験は、一律の対応ではなく、置かれた状況の差異を踏まえた支援設計と、多様な当事者を意思決定の担い手として位置づけることの重要性を示している。
日本の科学技術と経済的発展を誰も取り残さない災害対応へ結びつける視点:この点で、海外の知見は重要な示唆を与える。イタリアでは、避難所や地域支援において人々の尊厳と地域コミュニティのつながりを守る発想が重視されている。台湾の慈濟基金では、科学技術と市民連携を組み合わせ、日常的な支援を通じて災害時に迅速に支援へ接続できる基盤を築いている。技術を効率化の手段としてだけでなく、誰が情報や支援から取り残されやすいのかという視点と結びつけて活用することが重要である。日本には災害経験の蓄積に加え、科学技術、医療インフラ、地域防災、経済的基盤がある。今後はそれらをジェンダーと多様性の視点と統合し、最も支援を必要とする人に確実に届く仕組みとして再構成することが求められる。真に安全な社会とは、平時においても有事においても誰も取り残されない社会であり、WPSを災害対応の文脈で捉えることは、安全保障を人間の尊厳を中心に据えた政策へと深めることにつながる。
(7)三牧 聖子 同志社大学教授による基調報告
「『フェミニスト外交』のさらなる推進のために−その批判的な検討」
フェミニスト外交の意義を前提としつつ、その批判的検討と、今後それを発展させる上で日本が果たし得る役割に着目する。フェミニスト外交は、2014年にスウェーデンの元外務大臣マーゴット・ファルストームが提起し、Rights(権利)、Representation(代表)、Resources(資源)という三つのRを軸に、女性やマイノリティの権利保障、意思決定への参加、資源の公正な配分を掲げた。この概念は、言葉として提示されたこと自体により、多様な主体による実践と新たな解釈を可能にした点でも重要であった。
しかし、その概念と実践の展開には問題もみられる。アメリカではフェミニスト外交が明確な外交目標として定着せず、ときに戦争と結びついてきた。アフガニスタン戦争では、女性解放の語りが介入の正当化に用いられた一方、20年間で多数の市民犠牲が生じたにもかかわらず、アメリカの記憶においては、女性の権利向上という肯定的な語りが前景化し、女性や弱者を含む市民の犠牲は周縁化されている。また、ドイツはフェミニスト外交を概念としても実践としても積極的に発展させてきたが、ガザにおけるイスラエルの軍事行動をめぐっては、それを是認するような発言がフェミニスト外交を掲げる外務大臣からなされたことは、重く受け止めるべき論点である。こうした事例は、欧米のフェミニスト外交が非西洋社会の女性や子どもを十分に射程に収めていないのではないかという、いわゆる「ホワイト・フェミニズム」やダブルスタンダードへの批判につながっている。
日本はWPSおよびフェミニスト外交の概念と実践を、より普遍的なものへ発展させる上で重要な役割を担い得る。とりわけ、グローバルサウス諸国との協力関係を深め、その視点を取り入れながら、欧米とアジアの双方と深い関係を持つ立場を生かし、架け橋として機能することが求められる。日本には、欧米中心の枠組みに内在する偏りを乗り越え、より包摂的で普遍的なフェミニスト外交を構想することが期待されている。
(8)質疑応答
(a). 日本におけるWPSの重要性と伝え方
Q. 日本では安全保障の概念が日常生活から遠く捉えられがちであり、WPSの意義も伝わりにくい面がある。労働、ジェンダー、ケアといった論点はWPSを用いずとも議論可能である中で、なぜあえてWPSの視点が必要なのか。安全保障に関心の薄い人々に対して、WPSの重要性をどのように伝えるべきか。
A. 三牧メンバー:フェミニスト外交は有用な概念である一方で、暴力を正当化する語りに利用され得る危うさも持っている。したがって重要なのは、戦争の中で女性や子どもをいかに守るかという視点と同時に、戦争や軍事力そのものをいかに乗り越えるかという視点を持つことである。とりわけ日本の文脈では後者が重要であり、大国の恣意的な軍事行動や暴力そのものをどう克服するかという問題意識の中で、フェミニスト外交に新たな意味を与えていく必要がある。
(b). 価値対立の揺らぎと日本の位置付け
Q. アメリカが反自由主義的な方向に転じつつある中でも、なお権威主義諸国と西側の価値対立という図式は有効なのか。あるいは、そうした矛盾を抱えたまま「価値の戦争」という構図が続いているのか。さらに、日本自身も自由主義的価値の実現に課題を抱える中で、価値対立の構図をどのように捉えるべきか。
A. 廣瀬副査:現在は、冷戦期のような自由民主主義対権威主義という単純な図式が崩れ、価値外交そのものが揺らいでいる。他方で、価値が消失したわけではなく、ヨーロッパはなお価値に基づく結束を模索しているが、その維持も容易ではない。そうした中で、WPSは単なる理念ではなく、社会の分断を抑え、レジリエンスを高める実践的な装置として重要性を持つ。日本に求められるのは、どの価値を選ぶかではなく、価値を維持しつつ社会の分断を最小化し、多様な価値を共存させる調整国家としての役割を果たすことである。
(c). ポーランドにおけるWPS実践の背景
Q. 髙橋主査:ポーランドの事例では、女性が支援される側から支援する側へと転換していた点が印象的だが、この転換を可能にした制度的・文化的条件は何か。また、それは日本でも応用可能か。
A. 廣瀬副査:ポーランドの事例は、歴史的条件と現在の戦争状況が絡み合った結果だと考察する。社会主義期には、女性の就労と社会参加が重視され、女性が働くことを前提とする社会条件が形成されていた。他方で、ウクライナ戦争の開始後、とりわけルブリンのような難民受入れの結節点では、支援の必要性が高まり、その中で女性が女性を支える実践が自然に形成されていった。こうした歴史と現状の重なりが、ポーランドにおけるWPSの実践を支えている。
(d). トランプ政権下のWPS支援の変容
Q. トランプ政権下では、軍事戦略や同盟外交の混乱に加え、WPSを含むエンパワーメントへの配慮も大きく後退しているように見える。こうしたアメリカ外交の変質を踏まえたとき、MAGA以後にWPSやエンパワーメントが再評価される可能性はあるのか。
A. 三牧メンバー:トランプ政権下では、WPSや軍における多様性・包摂性が大きく後退している。しかし、軍内部では多様性を維持しようとする動きも残っており、政権交代があれば、同盟関係の修復とあわせて、多様性政策やWPSが再び重視される可能性はある。トランプ政権の残りの任期を見据えつつ、準備が進められている点も重要だ。
A. 上野メンバー:トランプ政権下では、対外援助の削減の中で、気候変動やWPS、ジェンダー平等に関わる分野が優先的にカットされている。他方で、アメリカがWPSそのものを否定しているわけではなく、軸足が変化しているといえる。援助削減により、WPSのうち「参加」は後退している一方、武力紛争下の人道支援や女性の「保護」はなお重視されており、今後もアメリカのWPS支援の重点や援助の方法は変化し得る。
(e). WPSとインターセクショナリティの視点
Q. WPSは民族・宗派や社会経済的階級におけるマイノリティ問題とどのように関係しているのか。
A. 髙橋主査:環境分野の事例からみても、WPSを考える上では、性別だけでなく、民族や階級が重なり合うインターセクショナリティの視点が重要である。スウェーデンでは、ゴミ政策の主体として努力してきた女性の中に、中東からの難民が多くみられる。中産階級の女性と、少数民族や移民で貧困層にある女性とでは直面するリスクが大きく異なっており、こうした複合的な脆弱性を捉える必要がある。
(f). 日本のWPSの強みとウクライナ支援への示唆
Q. JICAのプロジェクトで、ウクライナの地雷対策関係者を招いてWPS研修を実施する予定であるが、日本のWPSの強みはどこにあると考えられるか。
A. 北村メンバー:災害多発国である日本の経験は、WPS研修における重要な強みとなり得る。災害リスクをどう把握し、防災や政策に生かしてきたか、またその中で女性や地域コミュニティがどのような役割を担ってきたかを共有することには大きな意義がある。地域や被災地の女性たちとの学び合いは、日本における女性のリーダーシップの強化にもつながる。
A. 廣瀬副査:ウクライナのWPSが戦時の最前線における実践であるのに対し、日本の強みは平時におけるWPSの実践にある。具体的には、災害対応の経験、社会の安定調整を通じたレジリエンスの形成、そして子ども、高齢者、外国人を含む包摂の実務である。したがって、戦後の復興とWPSを接続していく視点から、日本の経験を共有することが重要である。
(以上、文責在事務局)
本研究会「日本の強みを生かした『女性・平和・安全保障(WPS)』における貢献の在り方」は、本年度で2年目を迎え、研究成果を政策的・実装的段階へ接続する重要な局面にある。現在の国際社会では、紛争の長期化・複合化に加え、気候変動や災害、情報空間の分断など、新たな安全保障上の課題が深刻化しており、WPSの意義が改めて問われている。特に、WPSとは何を変えるための概念であり、政策や社会構造を動かす力となり得るのか、という問いは本研究の中心にある。初年度の研究会合や国内外ヒアリングを通じて、WPSの制度化は進む一方で現場での実効性には課題が残ること、日本は国際的に評価されつつも国内のジェンダー構造との緊張関係を抱えること、さらにWPSと人間の安全保障の関係整理が重要であることが明らかとなった。同時に、WPSは単なる「女性の問題」ではなく、「誰の安全が守られ、誰の声が意思決定に反映されるのか」という、国際政治の根本に関わる問いでもある。本日のシンポジウムでは、こうした論点を踏まえ、WPSの現在地と可能性、日本の果たし得る役割について検討する。