公益財団法人日本国際フォーラム

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第6回定例研究会合

山添博史メンバー(防衛省防衛研究所主任研究官)による報告「ウクライナをめぐるロシアの論理」(要旨)

ロシアの軍事侵攻が迫っている事実と、ロシアが交渉妥結を望む意図は、両立しないわけではなく補完する関係にある。ロシアの第一優先の選択肢は有利な安全保障条件を米国に合意させることだが、撤退する選択肢がプーチン政権の受け入れられない損害となるならば、ウクライナを打撃する選択肢で双方に被害が出るほうがよりよい選択肢であり、実行する価値がある。その実行の可能性が高まるほど、米国がそれを避けるには交渉妥結を強いられることになる。ただし、ウクライナを打撃するにも、予期させている大規模侵攻になるとは限らず、ロシアの損害が少なく退きやすい限定的打撃やサイバー攻撃も実行しうる。

最近のロシアの行動の特徴からは、一定の言説を繰り返して事実を有利に印象づける、相手の混乱・分断を狙う、意図を明確にせず予想を裏切る、双方に損害が出る行動も実行する、などが指摘できる。

現在ロシアが仕掛けているのは心理戦の段階であり、この中で西側諸国を混乱させ分断しつつ、その出方を見て、より有利な条件を米露交渉で提示するのを探っている。ロシアの次の手は、相手の出方を見て探って変化していく。

ベラルーシ、カザフスタンの内政混乱は現地の要因だが、結果として彼らはプーチン政権の協力を引き込んでロシアの影響力は増した。ロシアは旧ソ連での権威強化に勢いづいている状況である。

引き続く意見交換において、強要戦術でロシアがすでに得た外交成果、このタイミングでの撤収の可能性、通常戦争の場合のコスト、ロシアの主要関心の変化、ウクライナ東部紛争とミンスク和平合意の重要性、プーチン大統領の政治的レガシーと心理的側面、メディアにおける論じ方の問題、などについて活発な討議が行われた。