公益財団法人日本国際フォーラム

I.中国対外融資と債務の罠

1.中国の国際影響力の源泉・南南協力

米中対立の尖鋭化する中、中国の国際的影響力、特に国連システムでの影響力の高さが 注目される。典型は、2020年6月末の、国連人権理事会での「香港国家安全維持法」を巡る対応で、西欧、日本などの先進27ヵ国の反対に対し、キューバが主導し、アフリカやアジアなど53ヵ国が中国を支持したことである。このような構図の背景には、中国が、最大の途上国と自称し、その経済、政治、軍事、種々の方法により、多くの途上国へ影響力を高めてきたことに起因しようが、特に、対外援助・資金を梃子に支持を高めている状況がある。

2.中国援助への評価と批判

中国は、アフリカを始め、多くの途上国へ「南南協力」を行ってきた。その象徴は、中国の首脳が、アフリカとの協力会議や外遊の時に行う、巨額の援助約束である。南南協力には、無償・無利子援助、優遇借款などの狭義の対外援助資金の他、中国輸出入銀行や国家開発銀行の資金も含まれるが、今や、アフリカ、アジアのみでなく、中東、中南米、太平洋島嶼諸国の他、欧州の一部にも及んでいる。南南協力とはいうが、中国の援助は、ひも付き融資で、中国の財、労働力の輸出に貢献して来た。政治体制を問題にせず、速度を売りに、拡大してきた南南協力は、被供与国の資源開発、インフラ開発に貢献したという評価がある半面、最近は、スリランカの中国への港湾使用権の長期の供与が典型だが、巨額の援助の返済につまり、「債務の罠」に陥る国が続出することに、新植民主義の国際的な非難も出ている。

3.パンデミックを機とする世銀の「債務問題」への接近

この様な状況で、中国の債務問題の実態を明らかする機会となったのは、中国発のパンデミックである。コロナウイルスは、世界経済に甚大な悪影響を与えているが、特に、アフリカなどに多い低所得途上国への打撃は大きい。世銀が音頭を取り、IMFとともに、G20、G7、パリクラブなどを通じ、2020年3月から債務の繰り延べ構想(DSSI, Debt Service Suspension Initiative)を進めているが、その過程で中国からの融資の巨大さと不透明さが浮き上がった。世銀は、DSSI対象の重債務国68ヵ国の状況を調査し、初めて、債権国の融資状況を7月に公表し、更に、10月のIMF、世銀総会でDebt Report21を公表したが、その結果、重債務国の二国間公的債務の63%が、中国の債権となっていることが判明した。10月のG20財務相会議や世銀開発委員会は債務の繰り延べと削減を提案した上で、債務問題での透明性の重要性を指摘した。マルパス世銀総裁は、債務削減には政府のみでなく、政府保証の金融機関や国有企業も含まれるべきとし、中国国家開発銀行の参加を名指しで要求すると共に、中国の債務契約の秘密条項を批判している。

4.中国方式援助は継続できるか?

筆者は、中国が繁く行う、巨額の約束が、2015-6年以降、中国の国際収支が潤沢でない状況で、いかにして可能か、どの位継続できるのか疑念を持っていた。また、相次ぐ債務の罠を輩出する状況で、中国にも、大きな金融負担となるのではないかとの疑念ももった。しかし、中国の南南協力・援助は、ひも付き資金であり、中国企業が仕切り、中国の労働者が行う状況で、中国の過剰生産、過剰労働の吸収になっている面がある。特に、中国の輸銀の融資がドル建てで行われ、その返済が、ニューヨークの支店に行われる状況は、ドルを稼ぐ手段になっているとも考えられる。南南協力は、中国外交の支えであるが、経済的にもペイし、継続できる事業となっている面がある。

しかし、今回の世銀報告の衝撃は甚大なものがある。中国が第3世界の代表として、無頼国家をかばい、アフリカなどの途上国を援助してきたことが、中国支持の源泉だったわけだが、ここまで大きく貸し込み、しかも、マルパス世銀総裁が指摘するように、中国の援助契約が、高金利で、債務国に不利な裏条項を持った状況であることが、明らかになったことは中国のイメージに大きなダメージとなったと思われる。

さしあたり、世銀やIMFが融資を増やし、債務国は公的機関からの債務の延期を認められたが、債権の大宗を占める中国がどう対応するかがカギとなる。世銀の報告は、この問題での、重債務国を挟んで、中国対国際機関及びその他の債権国の利害の対立を明確にしたが、今後、世界経済の回復が遅れ、重債務国の負担が増加すれば、この対立は深まる可能性がある。中国的特色を持った援助方式の行き詰まりといえる状況だが、日本も第2位の公的債権国であり、今後、G20の委員会や世銀開発委員会などでの国際債務問題の審議が、誤った方向にいかないように主張する権利がある。

II.中国の対外援助・南南協力の発展

1.アフリカ重視・インフラ重視の援助

中国は、2011年、初めて、対外援助白書を出した。極めて包括的なものだが、中国が1950年代の経済逼迫、物資欠乏の時期にもかかわらず、第三世界との連帯から、対外援助を始めたと誇る。中国は、早期から、平和五原則(領土不可侵、内政不干渉など)を掲げ、第三世界との連携を唱えてきたが、これは核開発による自主独立とともに、米ソの覇権に対抗するうえで必要であった。1956年、タンザニア、ザンビア間の鉄道敷設が典型だが、特にアフリカへの援助を重視した。1960年代はアフリカの年といわれ、国連への加盟が相次ぐ中、中国は、アフリカ諸国の支持を得て、台湾を追い出して、1971年、国連安全保障理事会常任理事国の地位を獲得した。

その後の文革などの停滞期には中国の援助も低迷したが、改革開放後には、対外援助も復活した。2000年には中国・アフリカ協力フォーラムを設立し、アフリカへの援助を強化した。2011年援助白書は21世紀に入り、中国の持続的経済成長が続き、向上する総合国力を背景に、対外援助資金が2004年から2009年にかけて、年率30%の急増をしたとするが、2014年白書も2010-12年の対外援助の急増を誇る。

中国の援助資金は、無償援助、無利子借款、優遇借款に分類されるが、いずれも元建てである。無償援助は中小型福祉プロジェクト、人的資源開発、技術協力などに充てられ、無利子援助は返済期間20年で社会インフラや民生プロジェクトの開発が主である。両者とも財政資金で、久しく中国援助の中核だった。優遇借款は金利2〜3%、返済は15〜20年だが、1994年設立の中国輸出入銀行が行い、経済インフラや大型プラントが対象で経済性を重視して供与された。

2009年までの援助総額は2562.9億元だが、無償援助、無利子借款が7割を占めた。2010-12年の援助資金総額893.4億元の内訳は、無償援助(36.2%)、無利子借款(8.1%)と比重を低めたのに対し、優遇借款(55.7%)で、対外援助の過半を占めるに至った。2010-12年の援助の方式は、フルセット型インフラ建設が78%(経済44.3%、社会27.8%、農工業5.6%)を占め、残りは物資供給15%と人的開発などである。地域としてはアフリカ52%と過半を占め、アジアが31%で、ラ米8%、オセアニア4%とつづく。国数でも121ヵ国のうち、アフリカ51とアジア30が過半を占め、ラ米19、オセアニア9、欧州12ヵ国と続く。

2014年白書で示された、フルセット型インフラ建設、アフリカ・アジア重視の傾向は、中国の南南協力の原型として、その後も続くが、中国企業が引き受け、中国人労働者を帯同するひも付き援助が大半である。また、中国の南南協力では、人材の派遣と受け入れも重要な要素である。中国は、現在も、多くの人員を派遣する一方、途上国から年々4万人の研究員と留学生の5万をうけいれている。

2.対外資金の大宗:中国輸出入銀行、開発銀行

北野教授は、DACのODAと比較すべく、中国の援助に、国際機関への出資を加えるなどの調整を行ったが、その結果は表2のようである。2010年代には、優遇借款が急増し、無償援助・無利子借款と並び、更に、国際機関への資金供給が拡大した。これらODAに匹敵するものの合計は、2018年72億ドルとなるが、DAC方式では減額され、2018年の中国の援助額は米、独、英、日本に劣り、8位となる(北野2020)。しかし、中国輸出入銀行が2003年から供与し、商業性は高いが、準援助資金ともいうべき優遇バイヤーズクレジットを加えると、2018年の中国の援助額は160億ドルになり、日本を上回るものになる。

中国の対外貸し付けの大宗は、中国輸出入銀行と中国開発銀行が行う貸付である。両行は、1994年政策銀行として設立されたが、2015年、国務院方針により、一帯一路支援も視野に入れ、外貨準備を活用した資本増強が行われた(中国開銀480億ドル、中国輸銀450億ドル)。輸出入銀行の総貸出残高は、2018年4846億ドルだが、国内企業向け貸し付けを引くと、海外貸付残高は上記、優遇借款約250億ドル、優遇バイヤーズクレジット620億ドルを含み、3383億ドルと巨額である。また、国家開発銀行の貸付残高総額は2018年1兆6769億ドルだが、国内貸し付けが多い。海外貸付残高は現地貸し、一帯一路融資を含み、3095億ドルである。

3.活性化する対外資金供与と世界の工場

中国の対外活動は、対外援助資金、輸銀、開銀の充実もあり、21世紀に入り、活性化した。アフリカとは、2000年の中国・アフリカ協力フォーラム設立以来、数次にわたる首脳会議が行われ、債務免除を含む協力が行われている。上海協力機構、中国・アセアンとの首脳会議、中国・カリブ経済協力フォーラム、中国・太平洋島嶼諸国経済発展協力フォーラムなどが設けられ、中国の発展がつづいた。

2012年の習政権の登場と陸海にわたる一帯一路構想の推進は、更に、中国の対外進出を強めたが、中国の対外投資、対外融資は各地のインフラ整備を核に拡大した。シルクロード基金680億ドル、BRICS銀行、AIIBのほか、中国南南協力基金、中国アフリカ開発基金、中国・アフリカ生産能力基金、中国・ユーラシア経済協力基金構想、中国東欧投資協力基金、中国ラ米開発基金など多彩である。陸のシルクロードは、東南アジア、中央アジア、欧州への投資を活性化し、海のシルクロードは、真珠の首飾りといわれるスリランカ、パキスタン、ギリシャとともに、ジブチ、エチオピア、ケニアなどのアフリカ諸国、更に、ベネズエラ、パナマなどのラ米諸国への展開を拡大した。

国際機関への資金供出も急増したが、国連システムへの食い込みは激しいものがある。本誌2020年6月号に紹介したが、国連専門機関の15の専門機関のうち、4つの機関のトップを抑え、WHOなどにも強い影響力をもつ。トップを獲得するには、加盟国の支持が必要だが、アフリカは、多数決を制するには不可欠の戦略地域である。国連本体にも、安保理理事国の地位を利用し、影響力を高めているが、中国の2億ドルの寄付で設立した国連平和発展信託基金(2016年)は事務総長直属の機関であり、中国影響力の象徴である。

4.中国の債務の罠

中国の、フルセット型ひも付き援助は、中国の財サービスの輸出を促進し、中国の輸出は、2007年以来、世界No.1となり、世界の工場の生産、労働力のはけ口ともなり、ドル建て契約は、外貨稼ぎの手段となった。中国の対外資金供与は、途上国にも、政治体制などへの制約がない、契約成立が早く、実行も早いなどの評価があった。中国のインフラ投資に関しては、特にアフリカなどで評価がある。資源開発、鉄道、道路敷設などの急激な展開が、21世紀に入ってのアフリカの開発を促進し、経済成長を高めた効果は否めない。

しかし、一帯一路構想が急激に進む中、中国モデルは、現地への恩恵は少なく、新植民主義だとの批判も出てきた上、対外融資は債務の罠だとの批判が高まってきた。2017年、米国・ウイリアム・メアリー大学の援助データー調査研究室が、中国の援助は慈善ではなく、利益追求だと喝破した上、その巨額さ、金利の高さ、返済期限の短さを指摘した。更に、中国の援助には、隠れた債務条項があり、返済不能になれば、鉱物資源での返済や、港湾の使用権譲渡の条件があるなどの批判だが、スリランカでの港湾施設の権益譲渡、アフリカのザンビア、アンゴラなどでの鉱物資源獲得などの例が出てきた。IMFは、2018年3月、アフリカ重債務国8ヵ国に関する中国の債務持続性に疑問を呈した。2018年12月のG20や2019年の大阪でのG20では、債務の持続性問題が取り上げられた。中国も、2018年4月、国家国際発展協力署(CIDCA)を設立し、援助政策を検討し、無利子借款の債務免除や現地調達の拡大の例も出ていた。

III.世銀、債務報告の衝撃

1.世銀債務報告2021

中国発パンデミックは近代文明を支える人人交流を中断する未曽有の衝撃を世界に与えているが、低所得国債務の深刻性を深めるとともに、中国の低開発国への債権の巨大さと厳しさを明確にした。世界銀行は、低所得国の半数は債務危機にあるとし、2020年3月、DSSI(債務繰り延べ構想)をIMFと共にG20に提案し、4月には、最低所得国68ヵ国の債務の元利の支払いを2020年末まで繰り延べする承認を得た。

2020年7月、世銀はDebt Report 2020を公表したが、報告は2018年の債務国の状況を明確にしたのみでなく、これまで把握の困難だった債権国の状況、特に中国の債権の大きさを明確にした。債務国報告から積み上げれば、債権国の債権状況がわかるはずだが、世銀が債権者として情報を集め、蓄積をした中、米国出身のマルパス総裁の下での公表であった。

2.巨大で、高金利の中国債権

世銀は、更に、2020年10月の総会時にDebt Report 2021を公表した。DSSI対象の重債務国73ヵ国の債務総額は、2019年7440億ドルでGNIの33%という債務危機にあるとした。うち、公的保証の長期債務は5230億ドルだが、世銀などの国際機関への債務は2410億ドル、二国間債務は1780億ドルで、公的保証のある民間債務は1020億ドルだとする。二国間公的債務のうち、中国の債権が63%(約1120億ドル)と過半を占め、2013年の45%から大きく増加したと指摘する。第2位の日本の割合は2013年から15%(約270億ドル)と変わらない。公的保証のある民間債務には、政策銀行や国有企業などの債権が含まれる。公的保証のない民間債権は約1860億ドルだが、社債保有者が多い。また、重債務国の短期債務は350億ドルである。

世銀が、日本を引き合いに出し、中国だけを指摘することを避けたが、二国間公的債務で圧倒的な比重を占める中国が債務問題の鍵で、中国の十分な参加がなければ、問題は解決しないことを指摘したが、更に、上記公的保証の民間債権である政策銀行も参加すべしとする。しかし、中国は、DAC加盟国でなく、参加に協力的ではない。

表3は、重責債務国の長期公的債務の2019年末の残高と2020、21年の元利支払いの状況である。

第一に目につくのは、DSSI国の全債務のGNI比の異常な高さである。多くの国が3割を超えるが、120%というのはまさに債務危機で、経済は破綻しているといえる。第二に、DSSI対象国での中国の債権は公的二国間全債務の63%の高さであるが、表3の個別債務国では、中国の比率が驚異的に高く、Angola, Zambia, Cambodiaの3ヵ国では、全国際機関の債権をも超える状況である。第三に、中国への元本支払いは高いが、利子支払いが、すべての債務国で異常に高いことである。上記3ヵ国は言うまでもないが、エチオピア、ケニヤ、カメルーンでは、国際機関全体の債権より、中国の債権は少ないのに、利払いや元本返還は中国が多い状況である。日本の二国間債権は、中国に次ぐ高さだが、これら諸国に限ると、その利払いは極めて低い状況である。

3.債務の透明性を求めるマルパス総裁

マルパス総裁は、10月12-18日の一連の会議に関連し、次の点を述べる。すべての債権・債務に関する情報の開示が必要だが、なお、多くの障害がある。第一に、すべての国家、公的債権者の十分な参加が必要だとする。それは①世銀は、IMFとこれからも救済融資を行うが、その救済融資の資金が参加不十分な債権国への支払いに流れるとすれば不公平で、②誠実な債権国は損をする。③二国間債務の圧倒的多額債権者・中国の十分な参加がなければ、債務問題は解決どころか、緩和もしないということである。この点、第二に、政策金融機関、民間の債務者もただ乗りでは許されない。中国の政策銀行、特に国家開発銀行や国有企業の債権をDSSI-債務繰り延べや債務削減の対象に含めるべきだが、中国の同意がない。第三に、債務問題解決には、透明性の確保が必須の条件だが、(中国の)二国間契約の中には、秘密条項が多い。(中国への)債務の優先支払い条項や、債務の返済不能な時の、石油や鉱物資源、電力での代替支払い条項や港湾使用などの条項が入っている。第四に、返済猶予計画(DSSI)に参加すれば、参加国は緊急融資や支払い繰り延べなど利益を得るはずだが、不参加の低開発国がかなり存在し、情報の十分な提供がないのは不可解であるとした(中国などの債権国が妨害している)。返済猶予未申請の国には、バングラデッシュ、カンボジアなどが入っている。とされる。

マルパス総裁は、さらに、透明性の必要な理由として、例えば、中国の援助が、独裁国首脳と少数の参加者で行われた場合の弊害を指摘する(2020c)。中国が、アフリカの大統領に大統領官邸やスポーツ施設を、秘密裡に供与の契約をした場合、大統領は国民に胸を張るだろう。しかし、援助の額の決定、支払条件が、中国に優位に決まり、優先返済や代物返済の秘密条項の設定も容易になり、更に、援助額の決定も中国に優位となる。しかし、透明性が確保され、国民への情報が開示されれば、自国への不利な契約は避けられるとする。

2020年10月14日G20財務相会議は途上国債務問題につき、債務の返済猶予を2020年末から、半年延期するが、更なる延期は次回決定する。民間債権者の支配猶予は進まないことに失望しており、参加を強く要請するとした。世銀は、IDAの優遇金融500億ドルを含む、1600億ドルの金融支持を向こう15ヵ月行う予定と公表した。

IV.中国的特色ある援助、南南協力の行き詰まり

以上が、中国の対外援助・南南協力の状況を巡る情況であるが、戦後、反覇権、第三世界との連帯を掲げながら行ってきた、極めて利益誘導な、中国的特色のある社会主義経済方式が行き詰っている印象がある。即ち、これまでの援助の対象は、無頼国家も含まれたが、小国で、数が多く、国連システムでの支持獲得の費用対効果は悪くなかった。また、儲けにくい相手であるが、ひも付き融資、一括請け負い方式で、中国企業が契約し、インフラを作れば、中国経済を利し、中国方式を継続できた。ドル建ての契約だと、貴重なドルを稼げた。中国の資金供与が、大きくないときはこれが可能だった。

しかし、中国の資金供与が、大規模になり、情勢は変わってきた。第一に、資金供与国は貧しすぎて、投資の回収はできない。第二に、中国の大きな融資が、厳しすぎて、元利の回収が困難になった。第三に、不良債権が大きく、つなぎ融資で糊塗できない情況になった。第四に、かかる情況で国際的批判が厳しく、コロナが事態を悪化させている状況ではないか?

今後も、世界経済の回復が遅れそうだが、低開発国の経済状況の更なる悪化は、中国の債権回収をさらに困難にする。秘密条項への批判が高まっており、その実行の困難度が増大する。債務の処理を巡り、債務国、国際機関、他の双務債権国との対立が激化する。債務問題の処理を巡り、アフリカを始めとする途上国の信頼を損うおそれすらある。

中国の二国間債権1120億ドルは、重債務国には致命的だが、中国にとっては、対応できない額ではないといえよう。しかし、秘密条項の処理や、マルパス総裁の言うように、中国開銀やその他の金融機関、国有企業融資への波及はある。更に、重債務国以外の途上国への債権に響く。国内の債務累積も続く中、苦渋の決断は容易ではなかろう。

中国の習近平総書記は、最近、内外で高姿勢だが、折から、中国共産党5中全会が10月開かれ、第14次五ヵ年計画が審議される。中国の対外援助、南南協力も検討されると思われるが、どの様な対応となるか、注目されるところである。

V.日本の立場

日本も、かつてひも付き援助が多く、利益主体だと、世界の批判を浴びたことがあった。しかし、DACの一員であり、その後、ひも付きを解消したことが、平成不況の一因だとの意見もあるくらい利益から離れた。そして、アフリカの援助には力を入れ、1993年の第一回のアフリカ開発会議(TICAD)以来、2018年まで7回の会議を開催して、アフリカの発展に寄与してきた。このような経緯が、今回の世銀の債務調査で、重債務国への二国間公的債権国では、中国に次ぐ、債権国としたことであろう。しかし、日本の債権は、上記の表でも示されるように、苛斂誅求とは程遠いものであり、アフリカ諸国の信頼も高いものがあると聞く。

日本の立場は、透明性をはじめ、上記、マルパス世銀総裁のスタンスに共感するものが多いと考える。第2位の債権国として、今後も、世銀との連携を深め、G20、G7、世銀開発員会などでの審議において、債務問題の処理を誤らないように貢献する権利と義務があるはずである。