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米国と日本には、官民を問わず世界レベル、国レベル、準国家レベルでの広範な協力を含む、環境に関する協力の長い歴史がある。多くの協力関係の主要な特徴は、それらがもたらす「三方よし」の利益である。金融や環境の分野では、こうした投資は、人、地球、利益を支えるトリプルボトムライン投資と呼ばれることもある(Khan, Ahmad, and Majava 2021)。日本では、学者、政府関係者、活動家たちが、この種のプロジェクトを説明するために、三方よしという古くからある概念を使うことが増えている(Ohno and Uesu 2022)。
三方よし投資は、企業の収益だけでなく、企業の長期的な経営にも有益であるため(Yamaoka and Oe 2021)、多国籍企業はしばしばその主要なサポーターとなってきた。例えば、トヨタ自動車は2015年に「トヨタ環境チャレンジ2050」を発表し、「ネット・ゼロ(二酸化炭素排出量)」を目指すだけでなく、事業と環境に加えて社会にプラスをもたらす「ネット・ポジティブ・インパクト」を達成することを目指した(Toyota Corporation 2018, 7)。過去20年にわたりトヨタ自動車はほぼ毎年、世界最大の自動車メーカーとしての地位を維持しており、気候に配慮した政策が極めて高い収益性を持ちうることを示す説得力のある証左となっている(Simão and Lisboa 2017; Haddad 2021, 142–5)。
トヨタ自動車は自動車の環境負荷を低減するだけでなく、北米の製造施設や販売拠点においてもエネルギー効率の向上や排出量削減に取り組んでいる。たとえば、北米トヨタ自動車のスコープ1およびスコープ2の排出量は、2024年時点で2019年比14%減少した(Toyota North America 2025)。一例として、ノースカロライナ州に建設中の新たなEVバッテリー工場は2025年に稼働予定であり、雇用創出や経済効果といった成果に加え、同社の「ネット・ポジティブ」目標に資するよう多数のパートナーと連携している。2021年以降、トヨタ自動車は花粉媒介者の生息地拡大に取り組むカリフォルニア拠点のNGO「ポリネーター・パートナーシップ」と提携し、ノースカロライナ州の新EV工場近くの2カ所を含む、北米の1万5,000エーカー以上の生息地を強化している(Pollinator Partnership 2025)。さらに、現地の技術系州立大学の学生と協働し、新工場隣接の300エーカーの森林を活用した環境教育のための森づくりを進めている(Norman 2024)。
別の例として、フェデックスは1984年から日本で事業を展開しており、2014年には関西国際空港に北太平洋地域のハブ拠点を設立した(FedEx 2016)。2021年11月には、2040年までにカーボンニュートラルを達成する目標を発表し、ゼロエミッションのEVによる配送網の構築、持続可能な包装材の導入、持続可能な航空燃料の使用、燃料効率の向上、すべての施設における再生可能エネルギーおよび省エネルギー管理の推進を含む包括的な取り組みを掲げている(FedEx 2021)。日本では、2016年にEV充電ステーションおよびゼロエミッション配送トラックを導入している(Parcel 2016)。
フェデックスはまた、日本における環境活動を支援するため、現地のNGOとも連携している。2024年12月には、海洋プラスチックごみ削減の取り組みの一環として、90名以上のフェデックス社員がNPO法人ハンズオン東京と協力し、東京の荒川河川敷で海に流れ込む前の廃棄物を28kg回収した(FedEx 2024)。また、フェデックスは「みらいの森」と協力し、恵まれない日本の青少年を対象としたさまざまな環境教育と森林保護活動を支援している(Mori 2024)。
米国と日本の金融機関は、グリーン・ファイナンスの世界的な成長を促進している。持続可能性が企業の社会的責任や地域価値に合致するという理由もあるが、民間資金がサステナブルな投資に向かう大きな要因は、これらの投資が一般的にリスクが低く、なおかつ良好なリターンをもたらすからである(UNCTAD 2023, 125; Bodhanwala and Bodhanwala 2020)。この民間投資の規模を示す例として、民間市場にすでに投資された持続可能なファイナンスの総額は6兆ドルを超えており(UNCTAD 2023, xii)、2024年にバクーで開催されたCOP29で各国政府が掲げた目標額3,000億ドルの20倍以上に達している(United Nations 2024)。
企業分野と同様に、日米両政府による協力もまた、経済的、社会的、環境的な利益を生み出す三方よしのイニシアチブに重点を置いて展開されてきた。選挙の結果によって政策の優先順位が大きく変わることがある貿易や安全保障の分野とは異なり、日米の環境協力は一貫して持続性を示しており、アメリカでは共和党政権・民主党政権のいずれの下でも、日本では歴代の異なる首相の下でも新たな取り組みが形成されてきた。近年においては、こうした協力は特にクリーンエネルギーやグリーンテクノロジーの開発に重点が置かれる傾向にあり、通常、民間セクターを巻き込んだ精緻な官民連携の枠組みを通じて実施されている。
最近の二国間イニシアチブには、日米気候パートナーシップ(2022年)、日米重要鉱物サプライチェーン強化協定(2023年)、地熱エネルギーに関する協力覚書(2023年)、核融合発電の開発と商業化を加速するための共同パートナーシップ(2024年)などがある。これらは政府主導ではあるが、一般的には特定の場所で活動する個々の企業によって実行されている。EVバッテリー開発を促進する国家レベルの合意は、前述のトヨタ自動車のノースカロライナ州リバティへの1400万ドルの投資で一部実現されている(Economic Development Partnership of North Carolina 2023)。これに関連して、こうしたイニシアチブは日米の企業・大学間のパートナーシップを活性化させ、特定の学校(例えば、テネシー大学、カーネギーメロン大学、マイクロンの日米大学ネットワーク)に関係する学生、教員、研究者に利益をもたらしている。
日米両国の州、都道府県、市、町といった準国家政府は、三方よしの原則に基づき、地域のリーダー、企業、学校、住民が相手国の協力者と協力し、地域社会に経済的、社会的、環境的利益をもたらすような協力関係を育むケースが増えている。最近の傾向として、地方自治体が覚書を起草し、協働を計画している分野を明記することが挙げられる[1]。覚書には、双方の役割と期待を明記し、アイデアを思いついた熱意ある個人だけでなく、地方自治体全体がその実行に関与することを保証するという利点がある。
その好例が、米カリフォルニア州ランカスター市と福島県浪江町の間で進展している協力関係である。2011年に発生した東日本大震災によって浪江町は甚大な被害を受けたが、同町は2020年東京五輪を見据えて水素エネルギーの開発に注力し、地域経済の復興を図った。一方、2028年ロサンゼルス五輪におけるクリーンエネルギー需要の高まりを見越し、ランカスター市は浪江町の経験を活かして独自のグリーン水素インフラ構築を進めようとした。2021年、レックス・パリス市長は、在ロサンゼルス日本国総領事館の仲介により、吉田数博町長をランカスター市に迎え、水素利用の共同取り組みを促進するための「スマート姉妹都市」覚書に調印した(Consulate-General of Japan in Los Angeles 2021)。
両首長と地元自治体に加え、浪江町とランカスター市の協力関係には、以下のような多くの企業パートナーが名を連ねている: Heliogen(カリフォルニア州の再生可能エネルギー企業)、Hitachi Zosen Inova(有機物を水素ガスに変換する嫌気性消化プラントを建設するスイスと日本の廃棄物エネルギー企業)、岩谷産業株式会社(水素の流通を担当する日本のエネルギー企業)などだ。浪江町とランカスター市の関係は、H2 Twin Citiesプログラムを通じて発展している。H2 Twin Citiesプログラムは、水素エネルギーの経験を持つ「メンター」都市(浪江町とランカスター市)と「メンティー」都市(ハワイ郡)、「兄弟」都市(イギリスのアバディーン市と日本の神戸市)をつなぐものである。このように、浪江町とランカスター市の地域プロジェクトは、日米協力の輪を都市、さらには国へと広げる役割を果たしている。
過去6か月の間に日米の両国政府は政権交代を経験しているものの、両国の環境協力は今後も継続される可能性が高い。なぜなら、これらの取り組みがすべての関係者に利益をもたらしているからである。いくつかの二国間イニシアチブは名称を変更する可能性があり、たとえば「日米気候パートナーシップ」が「日米革新エネルギーパートナーシップ」などに再編されることも考えられるが、その本質的な内容は維持されると見込まれる。
多国籍企業は引き続き自然環境の保全に取り組むとともに、再生可能エネルギーの活用を拡大していくであろう。これらの取り組みは、気候関連リスクの低減に資するだけでなく、コストの削減にもつながる。日米両国の政府は今後も、経済的、社会的、環境的な国民の幸福を実現するための協働を推進していく可能性が高い。また、地方自治体においても、住民の利益となるような革新的な協力のかたちを引き続き模索していくと予想される。日米が連携し、三方よしの原則に基づいた取り組みに注力することで、両国の企業の経済的成果を高め、国民の生活水準を向上させ、地球環境の健全性を守るという「三方よし」の成果が実現されるのである。