外交円卓懇談会プラス(通算第222回)
「2026年の米国中間選挙—世論調査の誤差、政治的不確実性、日本への示唆を中心に」
2026年10月27日(火曜日)
公益財団法人 日本国際フォーラム
グローバル・フォーラム
東アジア共同体評議会
日本国際フォーラム等3団体の共催する第222回外交円卓懇談会は、「外交円卓懇談会プラス」として開催された。本会合は、「日米協力の基盤強化研究会」との連携のもと、ポール・スラシック(Paul Sracic)ハドソン研究所非常勤シニアフェローを講師に迎え、「2026年の米国中間選挙――世論調査の誤差、政治的不確実性、日本への示唆を中心に」と題して、下記1.~5.の要領で開催されたところ、その概要は下記6.のとおりであった。
1.日 時:2026年10月27日(火)10:30~12:00(日本時間)
2.場 所:日本国際フォーラム会議室における対面、オンライン形式(Zoomウェビナー)
3.テーマ:2026年の米国中間選挙 ―世論調査の誤差、政治的不確実性、日本への示唆を中心に
4.講 師: ポール・スラシック(Paul Sracic)ハドソン研究所非常勤シニアフェロー
5.出席者:21名
6.講師講話概要
ポール・スラシック(Paul Sracic) ハドソン研究所非常勤シニアフェローによる講話の概要は次の通り。
その後、出席者との間で活発な質疑応答が行われた。
(1)中間選挙の構図と上下両院の見通し
(2)過去の世論調査の誤差と今回の選挙への含意
今回の選挙では、世論調査の正確性が大きな焦点となる。2016年、2020年、2024年の大統領選挙では、いずれも世論調査が共和党支持の実態を過小評価した。2016年はトランプ氏の勝利を捉え損ね、2020年はバイデン氏の勝利幅を過大に見積もった。2018年の下院選挙では比較的正確な調査結果が出されたが、2022年の上院選挙では共和党支持をやや過大評価するなど、世論調査の誤差の大きさは一定しない。
特に、トランプ氏が2016年と2024年で勝利した州では、共和党支持が約4ポイント過小評価されてきた。今回、テキサス、ミシガン、オハイオでは民主党候補がリードしているとみられるが、いずれも差は4ポイント未満で、もし同様の誤差が生じていれば共和党が勝利し得る。ただし、過去の誤差が再現されるとは限らず、数字を確定的な予測とみることはできない。
(3)世論調査が外れる要因と投票率の不確実性
世論調査の誤差が生まれるのは、特定の政治的傾向を持つ層が回答しない「無回答バイアス(Non-response Bias)」が原因として考えられる。例えば、ピュー・リサーチ・センターの電話調査の回答率は、1997年の36%から2021年には4%に低下しているが、その理由として、メディアに不信感を持つ共和党支持者が回答を避けていることが予想される。このような偏差は、性別や学歴による補正では修正しきれない。近年は、前回の投票先(Recalled Vote)を尋ねることで調査結果を補正する手法も使われているが、投票の秘密があるため正確性を保証できない。
世論調査は多数の要因によって左右される。中間選挙は投票率が低く、その中でも共和党支持者は、非大卒の白人労働者層が増えたことで投票への参加率が低下している。さらに中間選挙では、政権への失望から与党支持者は投票意欲を弱め、反発から野党支持者が投票に向かいやすい傾向にある。選挙運動による意識の変化もある。調査はあくまで、有権者のその時点での意向に過ぎない。期日前投票も、有権者の政党登録はわかっても投票先がわからないため、慎重な解釈が必要になる。
(4)選挙結果のシナリオと2028年への影響
両院の多数党の組合せは4通りあるが、現時点では民主党が下院、共和党が上院を制する展開が見込まれる。仮に民主党が両院を制しても、大幅な政策転換は困難である。大統領の拒否権を覆すには両院で3分の2の多数が必要だが、民主党がその議席を得る可能性は低い。下院が大統領を弾劾する公算は大きいが、上院での有罪判断に必要な多数を確保することも困難だ。議会の役割は、政権に対する調査・監視が中心となる見込みであり、両党の対立が激化すれば、立法活動の停滞や党派間の分断が一層強まることが予想される。
いずれの党が勝利しても、2028年の大統領選挙に向けた課題が残る。共和党が世論調査を上回る結果を得れば、調査やメディアへの不信が強まり、有権者は自らの立場に近い情報源にますます偏っていく。民主党が勝てば、自党の政策が広く支持されていると過大評価するおそれがある。中間選挙に参加しない、政治的関心が低い有権者も2028年には投票する可能性がある以上、今回の勝利は大統領選挙の勝利を保証するわけではない。
(5)通商政策と在日米軍駐留経費負担への示唆
日本にとって重要な論点の一つは通商政策である。米国の通商制度は、議会の保護主義的な圧力を抑えるため大統領に権限を委ねつつ、安全保障上の脅威への対処(通商拡大法第232条)や、不公正な貿易慣行に対する関税措置(1974年通商法第301条)を認めてきた。議会が権限を取り戻す法律を可決しても大統領の拒否権があり、選挙結果だけで関税政策が大きく転換するとはいえない。
とはいえ、選挙結果は議会共和党の行動を左右する。共和党の議席が世論調査の予測を上回れば、政権への反対は選挙上のリスクとみなされ、関税政策への異議は出にくくなる。逆に議席を失えば、一部の共和党議員が民主党と協力して政策の修正を迫る可能性がある。その際、政治的な駆け引きや交渉が重要になってくる。
もう一つの重要な論点は、在日米軍駐留経費負担の特別協定である。現行協定は2027年3月末に期限を迎えるため、2026年8月から交渉が開始している。政府間の交渉であるが、選挙後の大統領の立場如何によっては、日本への交渉姿勢にも影響が出る。
(6)選挙後の議会運営と日本が注視すべき点
選挙後も新議会の発足までは、現議員による「レームダック会期」が続く。12月11日期限の暫定予算への対応、国防権限法(NDAA)の成立、債務上限の見直しなどが課題で、これらは日米の共同活動を支える米国の予算・政策に関係する問題である。共和党が選挙で敗北した場合、新議会が始まる前に法案の成立を急ぐかもしれない。ただし、共和党内にも財政赤字や債務上限引上げに反対する議員がおり、多数党になることは必ずしも政権の方針が通ることを意味しない。また、接戦州で訴訟などが起これば、上院の多数党が選挙当日に確定しない可能性もある。
日本は単一の選挙予測を前提とせず、世論調査の誤差や投票率の変動を織り込みながら、両院の異なる組合せに備える必要がある。テキサス、オハイオ、ミシガンなどの上院選挙、選挙後の予算・国防関連法案の処理、関税措置の運用、駐留経費負担協定の交渉を注視し、選挙結果とその後の両党の行動を捉えることが今後の日米関係を見通すための鍵となる。
(文責、在事務局)
中間選挙は大統領任期の折り返しに行われる連邦議会選挙で、今回は第2期トランプ政権への評価が問われる。対象は下院の全435議席と上院の35議席で、これに上院補欠選挙の2議席が加わる。毎回、大統領の所属政党は下院で議席を減らす傾向にあるが、第1期政権下の2018年に、共和党が下院で議席を減らしつつも上院では増やしたように、両院の結果は必ずしも連動しない。
現在、下院は共和党が僅差で多数を占めている。世論調査では民主党が平均約9ポイントリードしており、民主党の下院多数奪還はほぼ確実とみられる。他方で、上院は共和党が53議席を有し、改選議席の構成も異なるため、多数派を維持する可能性が残っている。その帰趨は、テキサス、オハイオ、ミシガンなどの接戦州によって左右される。