(1)米国政治の現在

現在の米国では、共通の基盤が弱まり、政治的な対立がますます深刻化している。各選挙区では、共和党を支持する「より濃い赤色」と、民主党を支持する「より濃い青色」への再編が進行し、多様な有権者が存在することで、両党に妥協を促す役割を果たしてきた「紫色」の選挙区は減少傾向にある。

政治的分極化は、情報バイアスやソーシャルメディアによる情報の「サイロ化」によってさらに助長されている。その結果、連邦議会の議員は分極化を扇動することで、注目や資金、政治的影響力を獲得するインセンティブを有するようになっている。

(2)高市首相とトランプ大統領の蜜月関係

このような米国政治の状況の中で、高市首相は、第二次トランプ政権との協力という観点から一定の成果を上げている。高市首相は、ハードロックのドラマーやオートバイ愛好家という異色の経歴、対中強硬姿勢、防衛力強化への積極的な姿勢、総選挙での勝利を通じて、トランプ大統領が好む「強いリーダー」としてのイメージを示してきた。

2025年10月の首脳会談では、「合意の実施―日米同盟の新たな黄金時代に向けて―」が発表されるとともに、経済安全保障、重要鉱物・レアアース、防衛などの各分野における日米協力の深化が確認され、石破政権下の2025年7月に合意された15%の関税枠組みと5,500億ドル規模の対米投資枠組みも再確認された。2026年3月の高市首相の訪米では、対米投資の具体的な案件が発表されるとともに、重要鉱物や深海鉱物資源に関する協力が具体化され、対中政策をめぐる連携についても協議が行われた。高市首相は、自らの存在感を損なうことなくトランプ大統領との関係を構築・維持し、日本経済や防衛体制の整備において成果を上げ、日米同盟の強化に寄与している。

(3)持続可能な日米関係の構築

第一次トランプ政権からバイデン政権への移行が示したように、仮に2028年の大統領選挙で民主党候補が勝利したとしても、米国がかつての「標準」であったグローバリゼーションや移民、国際機関への支持へと単純に回帰することはない。したがって、政権交代の影響を受けにくい協力分野や「制度的な支点」を特定し、日米関係を持続的な制度構造として支える必要がある。そのため、いずれの政党が政権を担っても支持し得る政策を提示することが重要となる。今後の日米関係を発展させる鍵となるのは、政府が産業の選択を過度に左右するのではなく、市場や資本市場に基づく企業の自律的な判断を尊重する「統合的産業政策」を展開することである。

(4)市場・事業レベルで日米が協調する「統合的産業政策」

「統合的産業政策」の実現に向けた動きはすでに進展している。2023年3月の「日米重要鉱物サプライチェーン強化協定」を皮切りに、2025年10月には「採掘及び加工を通じた重要鉱物及びレアアースの供給確保のための日米枠組み」や「日米間の技術繁栄ディールについての協力に関する覚書」が締結された。これらの枠組みにより、重要資源の供給源の多角化やパートナー国との協調が進むとともに、最先端技術の保護やサプライチェーンの強靱化が図られている。

その具体的な動きが、台湾の半導体大手TSMCによる熊本と米国アリゾナ州での工場建設である。また、日本の半導体コンソーシアム「ラピダス」は、北海道千歳市に新たな「シリコンバレー」となる半導体産業拠点の形成を目指している。ただし、国際人材の確保、サプライヤー・エコシステムの構築、収益化などの課題も残されている。このように、日米両国には従来の政策調整にとどまらず、事業レベルでも連携を深める「統合的産業政策」の構築が求められる。

(5)企業主体の生産チェーンの構築

中国が、自国の意に沿わない政策をとる相手国に対し、経済的な懲罰を課す姿勢をとっている限り、各国が重要物資の供給源を多様化させることは、必須の政策課題である。また、そうした政策は、台湾有事が起きた際の市場の混乱を軽減させることにも繋がる。日米両国に求められるのは、採掘・資金調達・技術標準・調達先の確保までを包含する共同の生産チェーンの構築である。技術標準の形成や調達先の選定については、政府よりも、市場で実績を積み、専門性を培ってきた企業が中心的な役割を担うべきであり、これは政府間の取り決めを企業主体の共同事業に転換することを意味する。中国による経済的威圧の影響を軽減し、アジア太平洋地域やグローバルサウスの国々が、適切な産業・労働基準の下で鉱物の採掘、精製、販売に参加し、自国経済を発展させる機会を創出できれば、日米のみならず世界全体にとって大きな利益となる。

(文責、在事務局)