1.国内標準を国際標準形成に組み込むことを目的とした制度設計である

2021年の「国家標準化発展綱要」および2024年の行動計画(2024–2025年)では、国内標準と国際標準の整合が重視されている。とりわけ後者では、全国専門標準化技術委員会(TC)と国際標準化機関の技術機関との整合度を90%以上とする目標が掲げられた。TCの組織構造や作業プロセスをISO等に対応させることで、国内標準と国際標準を同時並行的に形成し、国際標準の策定段階から関与する体制の構築が企図されている。

2.標準は地方→国家→国際の一方向ではなく、双方向に循環する

地方政府は国家標準の受動的実施主体ではなく、標準形成の能動的主体として位置づけられている。上海市では、「標準化発展行動計画」や「2025年標準化工作要点」に基づき、重点産業や都市ガバナンス分野で地方標準や技術指針を先行的に形成し、それらを国家標準や業界標準へ格上げする仕組みが整えられている。さらに長江デルタ地域では、区域統一地方標準や「地方標準の共有・転換」を通じ、地方標準を国家標準の素材として蓄積する制度が構築されている。

他方で、中国では「国際標準採用管理弁法」[2]により、国際標準を同一内容で採用、または修正して国家標準として制定する制度が設けられている。また、上海市の「一網統管」を支える都市デジタル基盤の技術導則において、ISO/IEC規格やそれに整合する国家標準が要求仕様として参照されている事例は、国際→国家→地方という逆方向の実装経路を示している。

3.国際標準化は「制度・人・組織」の三層で成立している

ISO/TC 197(水素技術専門委員会)の水素パイプライン特別作業部会は、同委員会の開発途上国担当特別顧問を務め、中国の全国水素エネルギー標準化技術委員会副主任でもある鄭津洋氏を召集人として設立された。これは国内標準化で蓄積された成果が、専門人材を介して国際標準化の作業段階へと接続された事例である。国際標準化は、国内実装を前提とした制度・人材・国際組織の結合により成立している。

以上から、中国の標準化戦略は、地方・国家・国際標準を循環的に接続する制度設計として構築されていることが示唆される。従って中国の国際標準化を理解するには、国際議場での動向のみならず、国内における標準形成と実装の制度的連関を併せて捉える視点が不可欠であろう。

(初出:2026年3月30日、ROLES Report No. 62「『ユーラシア諸地域の内在論理』研究会報告書」)
[1] “China leads research in 90% of crucial technologies — a dramatic shift this century,” Nature, 12 December 2025. https://www.nature.com/articles/d41586-025-04048-7
[2] 2001年制定、2025年改定。