冒頭、渡辺まゆ理事長、朱民元副総裁より、それぞれ開会の挨拶が行われた。朱民元副総裁からは、JFIRが、中日関係が困難な時も中国側と対話を重ね、日中関係の進展に尽力してきたことへの感謝が述べられた。続いて、参加者から特に政治、経済分野の日中関係について意見交換がなされたところ、その主な発言は以下のとおりである。

日本側:国際社会では、中国がスリランカやアフリカ諸国に対して返済できないほどの貸付を行っているいわゆる「債務の罠」の問題が懸念されている。日本は、たとえばG20においてこうした債務問題を解決するための国際枠組みの構築などを進めているが、中国もこうした動きに積極的に関与するべきであろう。日本も中国も世界有数の対外債権国であり、債務問題について協力する意義は大きい。
日本側:日中間に政治的課題があることは確かであるが、その一方で経済関係をどう進めていくのか、両国で議論を続けていく必要がある。とくにCPTTPへの中国の加盟申請に対して、日本側としてそれを放置するのではなく真剣に取り組んでいかなければならないだろう。また両国が加盟しているRCEPをどう進展させるのか、その機能の強化や参加国の拡大について、日中は対話を重ね、また協力するべきである。
日本側:日中間の有識者交流は重要である。政府レベルでの対話は国益にしばられてしまうし、とは言え若者や市民レベルの対話ではそれぞれの関心事にばかり目がいってしまいがちになってしまうからである。両国の有識者が、日中が歩み寄れる政策や課題について探求し、それを政府レベルで進めていくことを模索するべきであろう。

中国側:現在の中米対立は、米トランプ政権が中国に対して貿易戦争を仕掛けてきたことに起因する。米国は世界を分断し、中国をそのもう一方の側に押しやりたがっているようである。しかし、世界は一つのシステムのもとにあるべきだ。現在の国際社会をかつての米ソ冷戦時代のように隔ててしまったならば、その影響は過去よりも深刻なものになるだろう。我々は平和を希求し、戦争を絶対に避けなければならない。
中国側:債務の問題について、中国は二国間ベースで一部の国において多くの債権をもっているだけであり、必ずしも対外債権大国ではない。中国の債権はインフラが主なものであり、相手国の債権を免除するのではなく、返済期間を延長する方法をとって対処している。債権を免除して相手国の信用や評価を落としてしまえば、今後その相手国は国際社会から融資を受けづらくなってしまうだろう。
中国側:中日は、より経済分野での関係を深化させることができる。中国では、カーボンニュートラルの進展、高齢化への対処、製造業からデジタル産業への移行などが進められているが、これらについて日本には経験があり、同分野の日本企業にとって、中国へのビジネスを拡大するチャンスになるのではないか。また、自動車をはじめ水素を用いた技術への期待も膨らんできている。中日は、水素の活用についても協力できるだろう。
中国側:CPTTPについて、中国はすでに加盟申請している。早急にこの件のワーキンググループによる議論を進めるべきである。

以上