(1)「徴用工」判決の経緯と実態

文在寅政権になってから、慰安婦合意の見直しの動きが強まり、両国の合意に基づいて設立された「和解・癒やし財団」が解散し、また韓国大法院によって日本企業に対する損害賠償を命じる所謂「徴用工」の判決がだされ、これらによって日韓関係は行き詰っている。これまで日韓の歴史問題というと、日本側の発言に対して、韓国の世論が刺激されて悪化するというパターンであった。しかし今回は、韓国側から日本を刺激し、それに日本側が過剰に反応しているという、これまでとは反対の状況になっている。韓国では、日本に対して慰安婦や「徴用工」の個人の賠償は残っているという考えが強く、それが今回の大法院の判決にもなっている。日本では、それらは1965年の日韓請求権協定で解決済みとしており、両者の考え方は平行線である。「徴用工」の判決に対して日本の一部市民から、韓国は果たして法治国家なのかといった疑義がだされていることは理解している。しかし、韓国からすると、法治国家として三権分立は守られなければならず、司法である大法院が下した判決を覆すことは困難である。ただ、韓国の歴代政権も、日本との間では一貫して65年の協定で解決済みという立場をとってきたことは確かである。韓国国内では、65年の協定には秘密の条項があるのではないかとの世論が高まり、官民合同の委員会が設置され、2005年に慰安婦、原爆被害者、サハリン強制移住者については1965年条約の対象外であり、請求権が消滅していないとの結果を出した。反面、「徴用工」に関しては1965年協定により解決済みであり、韓国政府がこれらの人々に600億円規模の救済金を拠出した経緯がある。しかしその後も韓国国内ではこの問題が蒸し返され、先送りされていたが、それが今回大法院で判決がでたという経緯である。大法院の判決に対して、本来であれば文在寅政権からすぐに何らかの意見表明を行うべきであったが、無反応に徹し、現状の両国関係の悪化に至っている。

(2)今後の日韓関係について

残念ながら、今日まで問題の解決はなされていない。現在まで、各方面から色々な意見がだされている。例えば韓国側からは、「徴用工」に対して日本と韓国企業が1対1の割合で支払いを行うなどの解決策が提起されているが、日本側からの反応はない。日本でも韓国でも、国際司法裁判所に持ち込むべきとの意見がみられる。しかし、これは現実的ではないだろう。というのも、国際新法裁判所の最終的な判決がでるまで数年間またなければならない。この間、日韓はずっと対立を続けるのは適切ではない。また数年後に判決がでても、両国ともに100%納得できる内容になることは保証できないだろう。その時、両国とも違う政権になっている可能性が高く、前の政権のやったとことして、その時の政権が責任を負う皮肉な結果になることもありえる。

今回日本は、輸出管理における「ホワイト国」から韓国を外す動きにでている。日本は「徴用工」判決に対する報復ではないと主張しているが、韓国では報復と捉えている。15年認めてきた「ホワイト国」をなぜ今の段階で否定するのか、問題があったのであれば、これまでも指摘できたはずである。安全保障上理由で韓国を外すというのであれば、もはや韓国は国際社会におけるパートナーでないと日本が宣言していると同じことではないか。特に日本の措置は、韓国のGDPを支えているサムスンなどの主要企業にとっての影響が大きい。サムスンは、日本企業との関係が密接なグローバル企業である。日本の措置は、こうした韓国の対日協力派への攻撃にもなっている。いずれにしても、両国の対立は、ある程度までは続いていくが、その先は国際社会への影響も大きく、両国にとって損失である。

(文責在事務局)