(1)日本の宇宙開発の歴史とJAXA

日本のロケット開発は、第二次世界大戦後に東京大学の糸川英夫教授がペンシルロケットを開発したところから始まったと言われている。戦後、GHQの占領下では航空宇宙技術に関する開発が禁止されていたが、その後、条約改正によって日本のロケット開発は開始されることになる。歴史的に見れば、日本のロケット打ち上げは、ソ連(当時)、米国、フランスに次ぐ、世界4番目であり、高い水準にあるといえる。このことは、日本のロケット開発が、戦争直後の苦難の時期を乗り越えて、着実に進歩してきた証左でもある。また、JAXAは、2012年の「国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構法(略称はJAXA法)」改正に伴い、内閣府、総務省、経済産業省の共同所管となった。現在では、これら4省にとどまらず、防衛省、外務省、国土交通省など多くの省庁に加えて、様々な国内・国際機関との連携も強化されるなど、オールジャパンで取り組む体制が構築されつつある。

(2)日本の安全保障政策とその目的

1960年代から続いてきた日本の宇宙開発は、長らく宇宙科学研究所、航空宇宙技術研究所、宇宙開発事業団(いずれも当時)、JAXAを中心に研究・技術開発を目的としてきた。しかし、日本の宇宙開発の水準は、上記(1)のとおり高い水準を維持し、ある分野では宇宙先進国に追いつき又は追い越すことができた一方で、産業としては国際的な競争力が十分ではなく、また1969年の「宇宙の平和利用国会決議」によって、安全保障目的の宇宙利用が制限されるという状況が続いていた。こうした状況を打破するべく、2008年に超党派による議員立法で「宇宙基本法」が成立し、憲法の下で安全保障での宇宙利用が可能となった。

(3)世界的に商業化が進む宇宙開発:日本の課題とは

世界の宇宙産業全体の売上規模は30兆円超で、そのうち衛星ビジネスの売り上げが多くを占めている。これまで、宇宙開発は各国政府や宇宙関連機関が担ってきたが、世界的な商業化の流れなどにより、民間企業も参入できるようになってきた。例えば、米国では、電気自動車で有名なテスラ社の創設者でもあるイーロン・マスク氏が設立した「SpaceX」や、ジェフ・ベゾス氏率いる「Blue Origin」など、資産を持つ起業家が世界の新たな宇宙ビジネスプレーヤーとして台頭している。他方、日本では、依然として、大手有名企業が宇宙開発の主要プレーヤーになっているものの、最近では多くの宇宙ベンチャー企業が立ち上がり、宇宙産業が拡がりつつある。今後、宇宙ビジネスにおける日本の国際競争力を高めるためには、もっと国内外において、日本版「SpaceX」のような新しいビジネスプレーヤーが台頭しなければならない。そのために重要なことは、「スピード感」と「資金力」である。

(文責、在事務局)