(1)我が国財政の変遷

我が国の戦後財政の変遷は、債務残高累増の歴史といえる。終戦直後の混乱期を経て、高度成長を背景に均衡財政を維持してきたものの、東京オリンピック後の昭和40年不況に際し、昭和40年度においては、歳入不足を補填するために戦後初の特例公債(いわゆる赤字国債)を発行するに至った。その後、昭和41年度より建設国債の発行が始まり、昭和40年後半のオイル・ショックや高度経済成長の終焉等を受けて、財政悪化は加速し、昭和50年度より、建設国債に加え、赤字国債の発行が始まった。政府は、赤字国債ゼロを目指すべく、厳しい行財政改革などを断行し、およそ15年の歳月を要して、ようやく平成2年度に赤字国債からの脱却を達成した。以後3年間は赤字国債ゼロを維持することができたが、いわゆる「バブル経済の崩壊」に伴い、平成6年度には再び赤字国債の発行に追い込まれることになる。こうした中で、平成14年度以降、財政の健全性を表す基本指標である、「プライマリーバランス(基礎的財政収支)」の黒字化目標を設定するなど、財政健全化への取組も着実に進めてきた。

(2)一般会計歳出・歳入の現状と歳出構造の変化

わが国の一般会計歳出だが、社会保障関係費や国債費が年々増加する一方、その他の政策的な経費(公共事業、教育、防衛等)の割合が年々縮小傾向にある。また、国債の元利払い等に充てられる国債費と社会保障関係費および地方交付税交付金等で歳出全体の7割以上を占めている。平成3年度と比較すると、平成30年度予算では、社会保障関係費が大幅に増え、その穴埋めを赤字国債で賄っているのが現状である。社会保障については、昭和36年の国民皆保険・皆年金制度の確立以降、医療技術の発展および経済発展に伴う国民1人当たりの所得水準の向上と並んで、社会保障の充実により、我が国の平均寿命は大きく伸長してきた。他方、日本の高齢化が進行することに伴い、社会保障関係費が大幅に増加し、我が国の歳出増加の大きな要因になったのも事実である。社会保障制度は長期にわたるものであり、今後、わが国は将来の人口動態や受益と負担のバランス等について長期的な見通しをもって改革を行う必要がある。

(3)消費税増収分の使途と今後の対応策

消費税の引き上げによる増収分については、いわゆる社会保障4経費(子ども・子育て、医療・介護、年金)」に充当される。具体的には、5%から10%への引き上げに伴う増収5%分(約14兆円)について、1%分相当(2.8兆円程度)は「社会保障の充実」として、残りは、「基礎年金国庫負担2分の1へ引上げ」、「後代への負担の先送りの軽減等」などに充当される。また、消費税率8%から10%への引上げに伴う対応策としては、以下の項目について検討を進めている。①幼児教育無償化の10月1日実施、年金生活者支援給付金の支給など、②軽減税率制度の実施、③低所得者・子育て世帯向けプレミアム商品券、④耐久消費財(自動車・住宅)の購入者に対する税制・予算措置、⑤消費税率の引上げに伴う柔軟な価格設定、⑥中小小売業に関する消費者へのポイント還元支援、⑦マイナンバーカードを活用したプレミアムポイント、⑧商店街活性化、⑨防災・減災、国土強靭化対策。消費税は社会保障の財源であることは言うまでもないが、今後、わが国としては、消費税率のみを引き上げて、社会保障問題を解決するのではなく、将来的な人口構造の変化などを踏まえた制度の見直しが急務といえる。

(文責、在事務局)