(1)習近平体制の特徴

今日、中国のGDPは日本の2.5~3倍の規模に達しており、圧倒的に大国としての様相を呈している。中国では経済成長に伴う社会変化に対応すべく、胡錦濤政権時代には、複数の指導者の多数決に基づく集団指導体制による運営で、民主主義ではないものの、一定の柔軟性をもって対応することで社会の変容を吸収することができていた。他方、集団指導体制は、政策を一定の方向性に進めることには不向きであり、「モノを決められない」というデメリットがある。そのような中、習近平政権は、中国共産党内部からも、強いリーダーシップを求められ、党は「一定の力」を習近平国家主席に集約させ「決められる」政権を目指しているふしがある。近年、習氏が人民解放軍を味方につけ、反腐敗運動を進めることで、習氏に対する大衆人気は高まった。しかしその一方で、このような習氏のやり方について、知識人層から疑問視されるとともに、反腐敗運動に萎縮する中堅以上の党員の間では不満の声がある。

(2)中国の対外戦略の行方

中国外交は習近平体制下で、新たな段階に入った。習氏は、中国が世界第二位の大国であると同時に発展途上国でもあるという独自の国情の定義を行いつつ、「世界秩序のルールは欧米が作ったものであり、それにそのままに従うことは出来ない」との修正主義的な主張を打ち出している。その中で、中国は、グローバル空間では米国に逆らうことはないが、東ユーラシアという地域空間は自国の影響下に置こうとする対外姿勢をとっている。現在、中国はインフラ面や衛生面などの公共財を提供することでアジア諸国に進出しているが、日本については「経済力で言うことを聞かせられない国」であり、日米同盟の存在ゆえに軍事面でもやりにくい存在として認識している。この日米同盟よって、中国は、第一列島線および第二列島線によって動きを遮られ、抑圧されているとの意識がある。事実、米国が全世界に展開している3-4隻の空母のうち1隻(日本に母港がある)が現在、東アジアに配置されており、日米同盟もあって、中国は東方への進出が困難である。そのため中国は西進論になびきつつも、ロシアとの関係から陸上での西進が困難であるため、海上での西進を進め、ジブチに海軍基地を、カンボジアやスリランカに港湾をそれぞれ確保するなど「海の道」を作りだすことに成功している。このような中国の動きに対し、たとえばインドは、一帯一路には反発しつつも、上海協力機構には参加するなどと、政経分離の方向で対応する構えを見せる一方で、韓国などは中国経済と密接な関係にあるため中国に逆らいにくい状況にある。

(文責、在事務局)