(1)これまでのアベノミクスへの評価

IMFでは、これからの世界経済の成長率を3.4~3.6%の間で推移すると予測しており、世界経済はある程度回復の傾向がみられているといえるだろう。ただこうした回復傾向の中にはあるが、世界経済は下方リスクなど多くのリスクを抱えており、特に最大のものが保護主義の台頭によって経済が抑制されることである。こうした国際経済状況の中、日本ではアベノミクスにより、20年近く続いたデフレを脱却しつつあり、雇用率も上昇している。また、アベノミクスによる企業のコーポレートガバナンス改革、女性の雇用や労働環境の改善なども成果をあげ、経済にとどまらず日本社会全体が良い方向に進んでいるといえるだろう。かつて、国際的に著名なエコノミストなどが、景気低迷とデフレから脱却出来ない状況を所謂「ジャパナイゼーション」と呼んで「日本のようになるな」と指摘していたが、今や「景気低迷などを避けるためには、日本の事例を学ばねばならない」と指摘している。

(2)アベノミクスはさらに進展することが可能か

とはいえ、今後アベノミクスがさらに進展していくには、多くの課題もある。たとえば、日銀の目標である2020年までにインフレ率2%を達成するには、更なる財政・金融体制の改善が必要だろう。特に日本では、高齢化によって労働力が落ち、潜在的成長力は低下していく。こうした中で日本が完全にデフレを脱却するには、現在の弱い消費、低調な民間投資、低迷する輸出、といった点の改善が必要となる。日本の労働者の内の40%程度は非正社員であり、賃金が上がらず、消費につながっていない。これには、政策として、企業が賃金を引き上げるインセンティブの強化や柔軟な労働契約の促進などが必要であろう。また、日本の企業はより資本を投資に振り分けるべきである。これには、政策として、短期的な成長と財政の持続可能性・金融の安定性という中期的な目標との間で慎重にバランスをとりながら、財政・金融政策による需要下支えによって補完することが重要であろう。

(文責在事務局)