日本・リトアニア関係の現状

3月11日はリトアニアの独立回復記念日であるが、その日に東日本大震災の追悼式典に出席することができ名誉に感じかつ大変感動した。
両国は国の規模と両国間の距離にもかかわらず、6,000人のユダヤ人の命を救った杉原千畝領事の業績、ハイテク産業、エネルギー問題等共通項が多い。リトアニア経済は、15%もGDPが下がったリーマンショック後に回復し、今日では3.5%成長し、ユーロ圏加入を控えて大事な時を迎えている。

EUが抱える課題

欧州は(イ)信頼に足る(credible)、(ロ)成長し続ける、そして(ハ)開かれた地域でなければならない。
信頼性については財政規律の強化が、成長については高い若年失業問題への対処が、開放性についてはグルジア、アルメニア、アゼルバイジャン、モルドバ、ベラルーシ、ウクライナとのEU-Eastern Partnershipの確立が懸案である。このうち、ウクライナとは従来選挙制度と司法改革(特に、政治からの独立およびティモシェンコ元首相収監に見られるような選択的司法)が懸案となっていた。アゼルバイジャンとベラルーシとは人権問題が主要懸案である。アルメニアはロシアからの圧力を受けてロシアとの関税同盟に方針変更している。

ウクライナ情勢の分析とリトアニアのとるべき対応

(イ)EUとウクライナは連合協定の合意署名に向けたロードマップまで作っていたにもかかわらず、昨年11月、ヤヌコビッチ大統領(当時)はリトアニア(当時EU議長国)訪問時にこれを拒否し、ロシアとの関税同盟とEUとの連合協定の双方を締結しようと考えたようだが、両協定のFTA上のルールは異なるから同時に署名はできない。ウクライナ経済が成長し(注:2011年は5.2%成長)、平均給与も上昇したのは、EUとの連合協定を見越してのことであり、双方にとり良いことであるにもかかわらずである。

(ロ)その理由は、政治が絡んだからである。すなわち、ロシアは現実をゼロサム・ゲームと捉えるのに対し、EUはWIN-WIN関係をもたらすと説いたが、ロシアは頑としてWIN-LOSE関係だと主張し、脅迫・圧力をEastern Partnership諸国に加えた。

(ハ)ウクライナ情勢の始まりは単に経済のツールの問題であった。昨年12月のデモも静かで理性的であり、人々は単に政府に説明を聞きに行っただけにもかかわらず、政府側がすぐ横の広場で政府支持集会を開くなどの挑発を行った。そして正体不明の第三勢力がデモ側政府側双方を殺し始めた。大統領は少なくともそのような状況を作った責任がある。

(ニ)グルジア問題発生の際には、議論している間にどんどんとロシアによる軍事占領が進んでしまい、クリミアについても同様で、すべての国境入り口が占拠され、軍が武装解除され、自衛軍と称してロシア軍が入っている。
ロシアは、同国が国際法に違反し、ヘルシンキ最終文書(1975年)にも違反しているとの指摘に答えず、さらに1994年のブダペスト覚書により、「ロシアも米英も(ウクライナの)国土保全の保障人である」との指摘に対しても、議論の呼びかけに応じていない。

(ホ)我々に何ができるのかについては、状況に対して一致した評価を下し、ロシアが孤立しているのとシグナルを送り続け、ヴィザ発給停止等を実施することである。さらにロシアがdeescalateしない場合にはロシア高官に狙いを定めた措置を講じる。対話のチャネルを維持しつつ、21世紀にこのようなことは受け入れられないと明確にして、可能な限り団結することである。
我々もエネルギー等でコストを払うことになるが、利害、価値観、原則にかんがみ行動しないと、ナゴルノ・カラバフの二の舞となり、また今後もたやすく繰り返されることになる。我々欧州は以前ほどナイーヴではない。
ちなみに、リトアニアは現在国連安保理非常任理事国であり、今年2月には議長国を務めた。非常任理事国としてのプライオリティは「紛争下の女性と子供」および「法の支配」である。

(文責、在事務局)