日台間のきずなと協力関係の進展

日本と台湾の間には公式的な外交関係はないものの、現在まできわめて良好でかつ緊密な協力関係を築いてきたと言える。その根底にあるのは、地理的に隣接していることもさることながら、長い交流の歴史によって培われてきたお互いの親近感であった。その象徴的な例として、2009年台湾中部が大地震に見舞われた時、いち早く手を差し伸べてくれたのは日本だったことが挙げられる。また最近では、日本の各地方都市と台湾を結ぶ航空路線の開設や投資協定の締結、そして4月上旬には、約17年におよぶ交渉を経て、台日漁業協定が結ばれるなど、相互の緊密な協力関係が進展している。
こうした中で、将来の対日関係の更なる発展を考えた場合、最も力を入れたいのは人材の育成であり、今後とも台日相互の青少年の交流について、より積極的に推進していきたいと考えている。

台湾外交の理念とその実現に向けた取り組み

台湾を取り巻く近年の国際情勢は決して安定したものとは言えないが、2008年5月に台湾総統となり、昨年1月に再選を果たした馬英九総統は、台湾をアジア・太平洋地域におけるリーダー国として捉えると共に、国際社会の「ピースメーカー」としても位置付け、同地域だけでなく世界全体の平和構築と自由で開かれた国際社会の創出に取り組んでいる。アジア・太平洋地域における主要な海域では、近年様々な問題が生じているが、馬政権は2012年8月に提起した「東シナ海平和イニシアチブ」を基本理念に台湾外交を積極的に推し進めるものである。台湾はまた、国際機関・国際的枠組みへの参加にも積極的に取り組んでおり、すでにAPEC(アジア太平洋経済協力)やWTO(世界貿易機関)、ADB(アジア開発銀行)への参加は実現しているが、2009年にはWHO総会でのオブザーバー参加も認められた。更に、2020年までには、環太平洋パートナーシップ(TPP)への参加を目指し多方面と協議中である。

アメリカと日本との外交関係

 政治経済ならびに外交・安全保障分野において、米国、中国大陸、日本の三者は台湾にとってきわめて重要な交渉相手であり、馬総統はこの三者に対する台湾の立場をそれぞれ「親米」「友日」「和中」と表現している。米国はいわば台湾にとっての家族のようなものであり、台湾の存続と安全保障を確保する上で欠くことが出来ない存在である。2008年以前の一時期、台米関係は、相互の立場の食い違いから、一部信頼関係が損なわれたこともあったが、これに対し馬政権は、信頼関係に回復に尽力し、結果、両者は以前のような親密な関係に立ち戻った。日本は、約3世代以上にわたり良好な関係を築いてきた友人であり、特別なパートナーである。今後は、更なる協力関係の構築に向け、草の根レベルでのより多面的な連携にも取り組んでいきたい。また釣魚台列島(日本名:尖閣諸島)海域における問題では中国大陸とは手を組まずに、馬政権が提起した「東シナ海平和イニシアチブ」に基づき、関係する各方とともに平和的な解決策を模索ながら、同海域における安定性の実現を図りたいとしている。

(文責、在事務局)