この2年間、EUは様々な施策や制度を導入してきたが、いずれもその少し前までは考えもしなかったものだ。市場圧力に晒されている加盟国のために、最近ではファイアウォールと称されている強力な支援を提供した。2010年の春には、4400億ユーロの資金で欧州金融安定基金(EFSF)を設立した。いずれ同基金を後継することになる欧州安定メカニズム(ESM)は恒久的スキームであり、5000億ユーロの融資能力を有する。すでにギリシャに拠出した金額を合わせると、1兆ユーロ近い資金を、市場へのアクセスを失った国々を安定させるために提供した。国庫からの融資に加えて、加盟国の金融システムに1兆ユーロの流動性供給を行った長期資金供給オペ(LTRO)など、ECBの政策にも助けられている。今述べたような革新的かつ大胆な政策の実施にEUは前向きに取り組んでいる。

6月に開催された欧州理事会の主な結果は、ユーロ圏の救済資金を政府経由ではなく銀行に直接注入することが可能になったことである。これにより、スペインは恩恵を受ける。おそらくアイルランドにも裨益するであろう。この決定は、銀行とソブリン債との悪循環を断ち切ることへの大きな前進として、賞賛されている。

ガバナンスの枠組みにも大幅な改善が加えられている。最近導入された法的措置により、既存の財政規律と調整を規定する安定成長協定が強化される。欧州委員会は、これまで欠けていた加盟国における競争力低下などの指標を早期に特定する機能を盛り込んだ、新たなマクロ経済不均衡手続きのもとで、初めての「警告メカニズム報告書」を作成した。財政協定の交渉も行われ、今はその批准を進めている。これにより、加盟国の国内法には必ず財政均衡規定が含まれることになる。もう一つの重要な動きが、いわゆる「純粋な経済通貨同盟(EMU)」の実現に向けた作業の開始だ。欧州理事会議長には、欧州委員会委員長、ユーロ・グループ議長、欧州中央銀行総裁とともに、今後10年間で、金融セクター、予算、経済政策のための統合された枠組みをベースに、より強力なEMUへの道をどのように進むかを提案する任務が与えられた。

EUは、成長を促進する政策にも力を傾注している。成長か緊縮財政かの選択を想定した議論が横行したが、この対比は人為的なものである。政策立案担当者の中で、持続可能な成長が財政赤字と負債が拡大の一途をたどる中から生まれ得ると考えている人はいないはずだ。6月の首脳会議において、「成長と雇用のための協定」に関する重要な合意が形成された。この協定の柱のひとつが、競争力の強化に不可欠な構造改革の導入を促す国別勧告(CSR)である。また、欧州投資銀行(EIB)の資本増強、構造基金の再配分、プロジェクト債の試験的導入による、1200億ユーロの対象を絞った資金投入のパッケージにも合意した。

結論として、現下の危機にとって特効薬はなく、むしろ、複層的な改革や施策を継続することにより、より強く、より統合した欧州連合を目指すことが必要なのである。

(文責、在事務局)