中国の発展をどう捉えるかという問題は、各国が対中政策を決定する上で非常に重要である。その中でも特に以下の3点が重要である。

① 中国の発展が今後行き詰まるのではないかと見る向きもあるが、困難を乗り越えてきたこれまでの歴史を振り返れば、中国の特色のある社会主義政策は成功に向かっていると証明されている。中国は、国家目標を少なくとも100年間の単位で設定するが、1840年のアヘン戦争から1949年の中華人民共和国建国までの約100年間を近代化への模索期間とすると、現在は復興と発展の100年間の中にいる。中国は、自国がこのような段階に到達していることを十分に理解しており、今後も繁栄を続けていくことができる。
② 金融危機にもかかわらず、中国の今年度第3四半期までの経済成長率は平均で7.7%に達している。こうした持続的発展の原動力は、2020年を目標とした総延長5万キロの高速鉄道、8.5万キロの高速道路の建設をはじめとする巨大な公共事業に加え、マイカー、マイホーム、年平均4500万人を超える海外旅行などの民間需要にある。中国には、沿岸部と内陸部の収入格差が10倍に及ぶなど、激しい経済格差の問題がある。中国はこれらの問題をはっきりと認識しており、「科学的発展観」を提出し、全面的かつ調和の取れた持続可能な発展を目指して、地域間、都市農村部の間の格差を是正し、自然環境との調和を追及している。
③ 「ゼロ・サム」の思考で論じるならば、中国の発展は近隣諸国の脅威であり、その存在は排他的であると結論づけられてしまう。しかし中国は、WTOに加盟して以来、毎年約6千億ドル以上の輸入を行い、世界経済の成長率への寄与率で22%、貿易の伸び率への寄与率で9%を占めるまでになった。いまや中国の発展を抜きにして、世界経済の繁栄は成り立たないといえよう。今後も中国は、世界と「Win-Win」の関係を維持し貢献していく。ただ、一部の政治勢力による中国分裂主義者に対する支援など、中国国民の利益を損なう内政干渉に対しては断固拒否する。各国には、歴史的、客観的事実に基づいた中国認識の上に立って、対中政策を策定して欲しいと願っている。

 国交正常化して37年になる日中関係は、一貫して重要な関係である。孔子曰く「30にして立つ、40にして惑わず」というが、日中関係も「惑わず」の段階に近づいてきており、総括すると以下の4点が重要である。

① 現在の日中関係は政治的な基礎が強化されつつある。2008年に胡錦濤国家主席が訪日した際、福田総理と「『戦略的互恵関係』の包括的推進に関する日中共同声明」を発出し、日本の新政権誕生後、鳩山首相とニューヨークの国連総会期間中に会談し、その後も北京で日中韓首脳会談を行うなど、両国関係はよいスタートを切り、よりいっそう発展するチャンスに直面している。
② 日中両国の経済貿易関係は持続的に発展している。日中貿易の総額は、10年連続で史上最高記録を更新し、2008年は13%増の2661億ドルとなった。今や中国は、日本にとって最大の貿易輸出相手国であるのみならず、対外投資においても、今年の上半期は25%増であり、全体の第2位となっている。
③ 日中両国の文化交流も密接となっている。特に両国民の往来は年間500万人を超え、姉妹都市も242組が締結されるに至っている。
④ 日中両国による国際社会への貢献が増大している。日中両国はエネルギー、気候変動、感染症、テロ対策など地球規模の課題に対して協力するとともに、ASEAN+3、東アジアサミット、ARF、APECなどの地域的な枠組みを強化し、具体的な成果を挙げてきた。

 現在、国際政治も大変革、大調整の時期にある。日中両国はこの歴史的な時期において、はっきりと情勢を認識、把握し、両国の戦略的互恵関係を絶えず前進させるべきである。そのために重要な点として次の4点を挙げておきたい。

① 日中両国は、チャンスを把握し、共同発展するべきである。中国にとって、日本のこれまでの経験、そこで培われた能力は中国の発展の模範となり有益である。また中国の発展は、他国のチャンスを広げることにつながる。
② 日中両国は多国間協力を戦略的に構築すべきである。金融危機など国際システムの変化の中で、アジアの地位向上が起こっており、こうした歴史的な流れを利用し、アジアの多国間協力を構築するべきである。
③ これまでの伝統を受け継ぎ、より人的交流と往来を活発にし、相互理解を強め、友好関係を強化するべきである。
④ 大局に着目し、現実的な問題解決を図るべきである。日中両国は意見の相違、係争を抱えているが、共通利益の方が遥かに大きいことを認識するべきである。両国間の具体的問題は解決できるはずであり、双方が協力し発展していくという大局の妨げになってはならない。

(文責、在事務局)