世界不況についての分析

昨年米国の不動産と金融部門に始まった不況はすぐに実体経済に波及した。その影響は世界に広がり、各国はその対応を迫られることとなったが、今や「出口戦略」も議論されるようになっている。日本においても輸出の大幅減や株価の大幅下落が生じ、経済は大きな打撃を受けた。カナダも日本と同様輸出産業は大きく影響を受けたが、金融部門は安定しており金融危機も回避した。これは慎重な経済政策の効果の現れである。このような事態が生じた原因は何か。安全資産と考えられてきた欧州や米国の国債は近年高い投資リターンを求める投資家にとってリターンの低い資産と見なされた。こうした投資家の利益追求の動きは新しい金融商品の開発につながり、その中で規制を銀行のように受けない様々な業種(ノン・バンク)が現れ、更に不安定な状態を作り上げたのである。
そこで政府が取った対策とは何か。国内政策としては、財政刺激、金融緩和、金融部門の改革などが挙げられる。政府は従来の金融機関への規制と共に金融システムの規制へ本腰を入れなければならない時期に来ている。ロンドン・サミットの作業計画にみられるような各国の協調が不可欠である。
最近「グリーン・シューツ(新しい芽吹き)」と呼ばれる動きが報じられている。これは、株式市場の回復や貿易増の見込みをもとに、景気は既に底を打ったという見方である。しかし、一方で失業者数は増加し、企業への貸付も十分できていない景気の現状は、「W」の文字の真ん中の山の辺りにあると思われる。たとえ中国やインドなどの新興国の購買力が上昇しても世界経済に対して日本やドイツのような貢献はできない。
中期的に取り組む課題として次の三つが挙げられる。景気回復を妨げることなく財政の持続性を保持し、金融政策の舵取りを行なわなければならない。グローバル・インバランスを是正し、アジアの経済成長モデルを再考することも重要である。また新興国と連携し、金融部門の規制を強化する。長期的な問題は高齢化問題である。特に日本は高齢化が顕著で労働人口の減少は経済に大きな影響を与えるので対策を講じなければならない。

日本とカナダの関係について

 このような世界不況の中で日本とカナダ両国政府はそれぞれの状況に合った適切な方法で対処してきた。一方、環境政策においても共に環境保護とエコ産業育成に取り組んでいる。
両陛下のカナダご訪問は、思い出の地を巡る旅であると共に、ハイテク企業ご視察など両国の新しい関係を示すものとなり、最後のご訪問地ビクトリアでは平日にもかかわらず約2千人の市民が出迎えた。

(文責、在事務局)