馬英九政権の対外政策にとって、対日関係は非常に重要である。日本では、マスコミなどを中心に、馬政権のスタンスを「親中反日」とみる向きが多いが、馬政権は「親台」である。「反日」と判断される理由の一つは、馬総統が学生時代に尖閣諸島の領有を主張していたためと考えられるが、それは若い時代のワン・イシューの話であり、台湾の総統として責任ある立場に立つ現在は、周辺国との領土問題を前面に出さないこととしている。「反日」と決めつけるのは一方的である。ギャラップの世論調査では、日本人の65パーセントが台湾を「信頼できる国」としているが、交流協会が台湾で行った調査では、台湾人が「最も好きな国」として選んだのは日本であり、2位の米国の5%に対し、38%であった。

 馬政権は、①統一しない、②独立しない、③武力行使をしない、という「3つのノー」を対中政策として掲げている。陳水扁政権が中国との交流に消極的であったのに対して、馬政権は「三通(通信、通商、通航)」の開放に積極的で、この点も日本では馬政権を中国寄りと批判する声が出てくる理由の一つになっている。しかし、8年前はわずか100億ドルだった台中間の貿易額が現在では13倍の1300億ドルに増大していることに示されているとおり、台湾にとって中国は最大の貿易相手国となった。台湾からの中国への投資は拡大しており、こうした台湾人投資家の便宜を図るための「三通」開放は当然のことである。馬政権は、中国への投資拡大を奨励しているのではなく、中国への投資を行う台湾人を保護しているのである。

 これまで台湾は、国交を結ぶ国の数を拡大しようと中国と競ってきたが、今後そうした活動を控えて、中国と「外交休戦」に入ることにした。米国は、台湾を脅威から守ってくれており、台米関係は理性的、現実的関係である。これに対し、日本には親近感を感じている。日本との関係は情緒的、心情的な関係である。過去9ヶ月の間に、羽田と台湾の松山間の直行便の開設、日台間のワーキング・ホリデーの合意、台北経済文化代表事務所の札幌事務所開設を行った。

(文責、在事務局)