オバマ政権の下でアメリカの外交政策は大きく変貌を遂げようとしている。その第一のポイントは、ナイ教授が提唱した「ソフト・パワー」の重視であり、国際協調の姿勢である。クリントン国務長官はスピーチ中で「アメリカは世界の問題を単独では解決できず、そして世界もアメリカ抜きでは解決できない」と述べ、その言葉に象徴されるように、アメリカは他国との新たなパートナー・シップを強固に築き、地球温暖化、保健、饑餓、核問題などのグローバルな問題に対して積極的に対応していくことになろう。

 日本のマスコミは、当初、オバマ大統領はブッシュ前大統領よりも、日本を重要視しないのではないかという見方が支配的だった。しかし、クリントン国務長官は、就任後初めての外遊で最初に日本を訪問し、オバマ大統領は、最初にホワイトハウスへ招待した首脳として麻生総理を迎えた。これらの行動は、日本重視の姿勢を明確に示すものであり、今後の日米関係が「変化」よりも、ブッシュ政権以降の変わらない「継続性」の象徴なのである。また米国は日本と様々な面で共に協力していきたいと思っており、クリントン長官の日本滞在中、「地球温暖化」問題を強調した。米国は12月にコペンハーゲンで開催されるCOP15に向けて、中国とインドも削減の義務を負う「包括的な合意」が重要だと考えている。日本は、世界で一番優れた温暖化ガス削減や環境技術を保有する「完璧なパートーナー」であり、地球温暖化対策は経済面でもプラスになることを証明し、中国やインドに対しても共に説得したいと考えている。グローバル・ヘルスの分野では、途上国のインフラ整備、対応能力の向上が重要であり、アフリカに重点を置いた「新しい日米協力の枠組み」について意見交換をした。アフガニスタンについては、クリントン長官は日本のこれまでの多大な支援に対して非常に評価しており、オバマ大統領も今後の状況に応じて日本のさらなる支援を期待している。クリントン長官は、指名承認の公聴会で、日米同盟に関し、「日本は米国のアジアにおける安全保障政策の『礎石(corner stone)』である」と述べた。来日中には米軍再編の一環である「在沖縄海兵隊のグアム移転に関する協定(GIA)」に署名したが、これはオバマ政権の極東地域の安全保障強化と日本の米軍駐留の負担を軽減するSACO合意の実施に向けた強い意志の表れである。

 オバマ政権の核軍縮への取り組みは、ブッシュ政権時と大きな違いとなろう。オバマ氏は、選挙キャンペーン中のインタビューで、「大統領として、核兵器政策において新しい方向性を打ち出し、アメリカがNPT等の体制の下で、最終的なすべての核兵器の廃絶(ultimate elimination of all nuclear weapons)に向けてリーダーシップを発揮していきたい。私は、シュルツ元国務長官等が提唱した『核のない世界』を全面的に支持する」と明確な方針を打ち出した。しかし一方で、オバマ大統領は現実主義に立ち、「核兵器が存在する限り、アメリカは、自国と同盟国を守るために有効な核の抑止力を保持する」とも述べている。日本には米国の日本防衛について疑問視する声があるが、ライス元長官もクリントン長官も、あらゆる手段を使って日本を防衛する旨述べている。オバマ政権になって、地球温暖化、イラク、NPT、核廃絶、ソフト・パワーとスマート・パワーの活用など外交政策に大きな変化が起きようとしているが、一方でブッシュ政権から変わらないのは、対アジア政策であり、重要な対日政策である。

(文責、在事務局)