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(連載2)欧州で日本の人口減少を考える ← (連載1)欧州で日本の人口減少を考える  ツリー表示
投稿者:篠田 英朗 (東京都・男性・東京外国語大学大学院教授・40-49歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-09-21 10:54 [修正][削除]
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4248/4248
 なぜこうなったのか。ヨーロッパで実感するのは、やはり「規模の経済」ということだ。欧州単一市場の成立によって、ヨーロッパ人は、5億人以上の規模の共通市場を獲得した。「規模の経済」が、各国の特性を活かし、弱点を補い、全体的な底上げを図ったことは確かだろう。日本は1980年代後半に1億2千万人規模の人口を擁するに至ったが、当時の世界人口はようやく50億人になるところだった。しかし世界人口は、2011年に70億人を突破し、さらに現在も増え続けている。その反面、日本は減少し始めている。日本の国内市場の基盤が、相対的に低下しているのは、不可避的な現象である。
 
 あたかも日本が一人当たりGDP世界一の四半世紀前の水準にあるかのように言いながら、人口減少時代について語る人がいる。もちろん幻想である。「対米従属からの脱却」といったイデオロギー言説をつぶやき、あらためて核武装やら自主防衛体制の整備などを夢想したりするのは、合理性を欠いている。

 同時に、憲法9条は世界最先端で、世界各国は日本を模倣すべきだ、といった言説も、「日本は世界有数の先進国だ」、という団塊の世代に典型的に見られる思い込みに依拠したものではなかったか。世界の人々は、画期的な経済成長を果たした日本に魅了され、絶対平和主義としての憲法9条を模倣するだろう、という思い込みは、やはり失われた過去にしがみついた幻想でしかない。

 絶対平和主義として憲法学者によって解釈された憲法9条は、冷戦体制の産物でしかなかった。冷静終焉とともに、そのような幻想とあわせて、経済成長も、同時に止まった。このことは偶然ではなく、現実だ。日本もそろそろ現実を直視したうえで、仕切り直しの国家像を構想する時期に来ているのではないか。(おわり)

安倍はひしめく重要日程で成果を   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-09-21 05:53 [修正][削除]
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4247/4248
 自民党総裁選は今は盛りの横綱に小結がかかったようなもので、勝負は初めからついていた。総裁・安倍晋三が石破茂の倍以上553票を獲得し、議員票では82%に達したことは、今後の政権運営にとって紛れもない安定材料であり、内政・外交に亘る安倍路線に何ら支障は生じない。20日で2461日目を迎えた安倍は2021年9月までの3年の任期中に伊藤博文の2720日、佐藤栄作の2798日、桂太郎の2886日を越え史上最長の政権となる。安倍を支持した政調会長・岸田文雄がポスト安倍の最有力候補となり、たてつく石破は今回の254票は限界だろう。岸田が出馬したら安倍支持票の大勢は岸田に向かうからだ。

 総裁選は党員・党友による地方票と合わせて開票された結果、安倍が69%にあたる553票、石破は254票となった。安倍はほとんどの派閥の支持を集め、国会議員票(402票)では8割を超える329票に達した。その一方、地方票(405票)では224票と伸び悩みを見せた。事務総長甘利明が55%と予想していたが、55.3%で辛うじてクリアした。安倍の勝因は何と言っても国会議員の大半の支持を得る流れを5年半の政権運営で定着させ、それによって党員票も掘り起こした結果であろう。地方票は従来からポピュリズムに流れる傾向があり、石破の「善戦」は、政治判断力が未熟な地方党員には石破の存在が大きく映った結果であろう。常に反安倍傾向の強いテレビ朝日、TBSなど民放番組は、悔し紛れの論評が多かった。コメンテーターが「終わりの決まったリーダーは求心力が弱くなる」としたり顔で述べていたが、相変わらずの素人の淺読みだ。民間会社でも3年もの任期がある社長が軽んじられることはない。経営権と人事権を握っているから社員は従来同様に従うのだ。安倍も毎年改造して引き締め、3年の任期中での解散を断行すべきだろう。勝てば中曽根が党規約改正によって総裁任期を1年延長した例もあり、延長してもおかしいことではあるまい。

 しかし、今後の政治日程を見れば、政局にうつつを抜かしているときは終わった。重要政治日程がひしめいている。まず来週には日米首脳会談があるし内閣改造も想定内だ。安倍は25日には国連総会出席を契機にトランプとの首脳会談を行う方向で日程を調整している。欧州、中国に黒字削減で厳しい要求を繰り返しきたトランプが、安倍と仲が良いからといって日本だけ例外にする可能性は少ない。経済再生担当相茂木敏充が、米通商代表部(USTR)代表ライトハイザーとの21日の閣僚協議でどこまで事前調整できるかがカギだ。安倍は国連総会から帰国後10月にも、内閣改造に着手し、安倍改造内閣を発足させる方向だ。副総理・麻生太郎、幹事長・二階俊博、官房長官・菅義偉は続投となりそうだ。石破派からも人材を閣僚などに起用して党内融和を取り戻すことが必要だろう。小泉進次郎は、安倍批判が目立ちすぎた。そろそろ入閣待機児童だが、閣内不一致を招く危険がある。30日には沖縄県知事選がある。安倍としては与党候補を勝利に導き、普天間基地の辺野古への移転を推進したい考えだろう。訪中も重要テーマだ。安倍は12日、訪問先のウラジオストクで、中国国家主席の習近平と会談、10月の訪中に向けて調整することで一致した。10月23日が平和友好条約発効40年となるため、これに合わせて訪中することになろう。安倍は来年6月に大阪で開く20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせた習の来日を想定しているようだ。

 改憲問題も安倍政権の重要テーマだ。10月26日にも招集する臨時国会で論戦の火ぶたが切られる。安倍は「いつまでも議論だけを続けるわけにはいかない」と、秋の臨時国会への自民党改憲案提出を明言している。今後、改憲論議を加速させる構えだ。しかし、各種世論調査では国民の間に改憲志向が生じていない。共同の調査によると、秋の臨時国会に改憲案を提出したいとする安倍の提案に「反対」が49%で、「賛成」の36.7%を12.3ポイント上回った。日経の調査はもっと厳しく、「反対」が73%で「賛成」の17%を大きく上回っている。国民の間には改憲イコール9条という認識が強く、改憲内容をどうするかによって変わってくる。改憲論議は、もともと安倍が昨年5月、9条1項(戦争放棄)、2項(戦力不保持)の規定を維持して自衛隊を明記する案を提起したことから始まっている。改憲アレルギーを除去するためには9条を後回しにして、石破の主張するように、参院選での合区の解消や、大規模災害など非常事態の際に政府に権限を集中させ、国民の権利を制限する緊急事態条項などを手始めに考えるのも良いかも知れない。

(連載1)欧州で日本の人口減少を考える  ツリー表示
投稿者:篠田 英朗 (東京都・男性・東京外国語大学大学院教授・40-49歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-09-20 12:39  
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4246/4248
 イギリスのブレグジット交渉が大きなヤマを迎えているという報道が連日続いている。EC加盟以降40年にわたって積み重なったEUの仕組みを取り外す作業は、並大抵のことではない。これまでのイギリスの様子を見ると、EUの負の側面が広まっているように見えるかもしれない。しかし実際には、経済を見れば、EU加盟諸国は堅調な経済成長を果たしている。イギリスもまた例外ではない。

 ここ数年、ヨーロッパにしばらく滞在すると、実感することがある。それは、ヨーロッパは豊かになっている、ということだ。特に昨年から政治分析部門の客員専門家の肩書で出入りしたICC(国際刑事裁判所)があるオランダ経済は、すこぶる好調だ。私は、かつてイギリスで博士課程に在籍していたほか、論文提出後の非常勤講師や学術雑誌編集長の仕事をしていた時期も含めると、1990年代に約5年間、ヨーロッパで過ごした経歴がある。その頃は、バブル崩壊直後とはいえ、日本の経済状態も今とはだいぶ違っていたので、日本の相対的な豊かさと比較して、ヨーロッパを見ることが多かった。周囲の人々も、そのような感覚を持っている人が多かった。その頃の記憶があるからだろうか、隔世の感がある。富裕層の数だけでなく、平均的な人々の生活水準が、明らかに向上しているように見える。

 1993年当時、日本の一人当たりGDP(名目)は3万5千ドルの水準にあった。他方、当時のオランダの一人当たりGDPは2万2千ドル程度にしかすぎなかった(もっとも購買力平価一人当たりGDPは日本も2万2千ドル程度だったのだが)。それが今ではオランダの一人当たりGDPは5万5千ドルの水準になっており、4万ドル前後の日本を大きく引き離している。日本は依然として世界第3位の経済大国ではあるが、一人当たりGDPでは、30位程度の水準にいるに過ぎない。

 ほんの四半世紀前までは世界のトップを争っていたのだから、その停滞ぶりには目を覆いたくなるものがある。日本を抜き去ったのは、実は復活を果たしたアメリカや主要なヨーロッパ諸国などである。一人当たりGDPが世界30位でありながら、GDP総額では世界3位の地位を保っているのは、日本の人口規模がまだ世界10位レベルにあるからだ。GDP世界3位と言っても、今や日本と米国・中国との差は数倍単位の圧倒的なもので、人口が3分の2以下のヨーロッパ諸国との差のほうが小さいのが現状である。(つづく)

民主主義を正しく機能させるには   
投稿者:船田 元 (東京都・男性・衆議院議員(自由民主党)・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-09-19 10:14 [修正][削除]
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4245/4248
 先の通常国会終盤、参議院議員定数を6増する公職選挙法改正案が突然提出された。一票の格差を3倍以内に留めることと、合区により選出されない県から議員を出すことが狙いである。合区解消のための憲法改正案は自民党として準備したものの、審議すら行われず忸怩たる思いである。しかし消費税アップを来年秋に控え、自ら身を切るどころか党利党略と受け止められる法案には、どうしても賛成出来なかった。選挙制度は言うまでもなく民主主義の根幹に関わる。したがってその改正には出来る限り多くの政党が賛成することが望ましい。かつて私が座長を務めた選挙権年齢の引き下げにおいては、多党間で粘り強い交渉の末、ほぼ全会一致で可決出来た。もちろん、いつもこう上手く行くとは限らないが、今回の改正においては野党との交渉も不十分のまま、与党が押し切ったことは民主主義のルールに馴染まない。

 ところで、第二次安倍政権が発足してから6年近くが経過したが、経済運営や外交において一定の成果が得られた。安倍総理のリーダーシップや官邸主導というファクターで政治が動いて来たことは評価すべきである。しかし一方で党内でものが言いにくい、党内民主主義がどんどん萎んでしまったこともまた事実である。小選挙区制度により党中央の力が強まる傾向があり、官邸の責任だけに帰せられないが、民主主義はとても壊れやすく、常にケアが必要なことを、総理周辺や官邸は心がけるべきである。

 海外に目を転じると、民主主義の先進国とも言える欧米各国でポピュリズムが蔓延し、右派勢力が台頭している。特にヨーロッパでは難民の受け入れに不安や嫌気を感じる国民の多くが、時の政権を信頼出来なくなり、新しい勢力に宗旨替えする傾向が見られる。さらにこの動きを増幅する要因として、SNSの普及を背景としたフェイクニュースなどの動向がある。誤った情報を意図的に流布させ、世論をいとも簡単に曲げてしまうことも可能だ。まさに民主主義の危機が目前に迫っていると言っても過言ではない。

 民主主義は手間と時間のかかる装置である。しかしこの装置のお陰で、深刻な対立やファシズムの台頭を防いでくれる。民主主義を正しく機能させるためには、正しい情報を国民が入手できる環境が必要である。また受け売りや大衆迎合ではなく、世の中のあらゆる現象に対して自分自身の考えをきちんと持つこと、自分の頭で考えることが重要である。選挙権年齢の18歳への引き下げに際して、高校生などの若年者に対する主権者教育の重要性が叫ばれる昨今だが、大人のためのそれもまた、極めて重要な時代になった。

安倍3選につけいる隙がない自民総裁選   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-09-19 05:29 [修正][削除]
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4244/4248
 政局が自民党総裁選を軸に動き始めた。総裁・安倍晋三が20日に再選される方向は間違いないが、水銀柱の下降と反比例するかのようにボルテージが上がりはじめた。対立候補石破茂派の農水相斎藤健が「安倍陣営から石場さんを応援するなら辞表を書いてやれと言われた」と「圧力」を暴露。安倍は石破とのテレビ党論で「あるはずはない。そういう人がいるのであれば名前を言ってもらいたい」と全面否定したが、石破は「被害者に名乗り出よというのは財務相のセクハラ疑惑に似ている」とかみついた。自民党幹部らが「まあまあ」とおさめたが、近頃にない“茶番”が見られて、茶の間は喜んだ。

 それでは総裁選の展開を予想すると、石破にとっては200票を上回るかどうかが今後の展望が開けるかの分岐点となる。総裁選は議員票405票と地方票405票の合計810票の奪い合いとなる。安倍の圧勝は決まっているが、得票によって政治的効果に大きな違いが生ずる。安倍は議員票では80%350票を突破する勢いであり、石破は自派と竹下派を加えて50票前後がよいところだろう。地方票で安倍は、70%突破を目指すことになる。少なくとも国会議員票と地方票の合計は70%に達したい考えだ。安倍が70%をとれなければ石破に200票獲得を許すことになる。安倍が55%を下回った場合は石破が250票を上回り今後に存在感を示すと言って良い。従って焦点はまず石破の200票超えが実現するかどうかだ。しかし、石破人気が沸くにはほど遠く、超えなければ石破は政治的に大打撃を受ける。地方票の動向も最大の見所だ。6年前の総裁選で石破は55%を獲得している。安倍選対事務総長の甘利明が「55%を超えたい」という理由はここにある。しかしこのパーセントは安倍がまだ首相になっていない時点であり、首相・総裁としての存在感を示している現在ではラインを低く設定しすぎだろう。議員票で80%取っておきながら、地方票で55%そこそこでは、永田町と一般党員との乖離(かいり)が目立つことになる。

 投票結果がどうあれ総裁選後の内閣改造はあるのかが焦点となる。安倍は16日のNHK番組で「来年は皇位の継承もあり、G20(主要20カ国・地域首脳会議)と、その先に東京五輪・パラリンピックがある。しっかりした人材を登用したい」と述べ、3選を果たした場合、内閣改造・党役員人事を行う方針を表明した。人事をほのめかされては入閣候補らの動きは当然安倍に向かう。巧妙なる“一本釣り”だ。首相の信任にとって最も重要なポイントは景気の動向だが、安倍の就任以来戦後まれにみる好景気が継続しており、石破はつけいる隙がない。昨年末には、安倍が首相に就任した2012年12月に始まった景気回復局面が高度成長期の「いざなぎ景気」を超えて戦後2番目の長さとなったことが確定した。今の景気回復が2019年1月まで続けば、02年2月から73カ月間続いた戦後最長の景気回復を抜く。戦後最長の景気を維持しようとする首相を降ろそうとすれば、降ろす方が“悪人”となる。石破の人相はどうみても良いとは言えず損している。

 一方安倍の地球儀俯瞰外交は、歴代首相の中でももっとも活発であり、これもつけいる隙がない。同外交は安全保障と経済の両面から戦略的見地に立って推進している。その「積極的平和主義」路線は「一国平和主義」から脱して、世界平和を俯瞰して、必要ならば自衛隊の活用を含め貢献する形だ。しかし難題は日米関係だ。トランプは、中国からの輸入品すべてに制裁関税を課す可能性に再び言及した。3弾の関税発動を24日にも最終判断するが、早くも「第4弾」をちらつかせている。トランプの対中関税攻撃はとどまるところを見せない。中国も対抗措置を取っており、貿易戦争がさらに激しくなる危険をはらむ。日本も対岸の火災視できない。中国で製品を作って対米輸出している日本企業も多いし、トランプは例外を認めない姿勢だ。この“荒ぶる”トランプをどうなだめるかは、安倍とトランプの個人的な関係が重要となるだろう。日米両国は首脳会談を9月25日に米国で行う方向で調整に入った。米ニューヨークでの国連総会に首相が出席するのに合わせて開くが、これまでにない難問を抱え、世界が注視する会談となりそうだ。

移民反対の正当な根拠とは   
投稿者:倉西 雅子 (神奈川県・女性・政治学者・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-09-18 12:33 [修正][削除]
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4243/4248
 全世界を一つの市場に統合し、国境の消滅を理想とするグローバリズムは、経済合理性を根拠として「人の自由移動」、すなわち、移民の増加を全面的に肯定しています。このため、移民反対の立場にある人々は十把一絡げにポピュリストと称され、経済合理性を理解できない反理性的な愚か者と見なされがちです。ここに、移民反対=衆禺政治=ポピュリズムの構図が定式化され、マスメディアは、ステレオタイプ化されたこの構図に当て嵌めて、レッセ・フェールなグローバリズムに対する一般国民の不満を無理矢理にでも説明しようとしています。しかしながら、移民問題に対する既存の諸国民からの反発は、ポピュリズムの一言で片付けるのではなく、ナショナリズムの文脈で理解した方が適切なのではないかと思うのです。

 ナショナリズムという表現の方が相応しい理由は、それが、国家の枠組と関連しているからです。経済分野のみを切り取り、かつ、自らを専らグローバリズムの利得者の視座に置けば、経済合理性の主張にも一理がないわけでもなく、それ故に、移民反対者は愚か者、進歩から取り残された人、あるいは、不要な人といった酷な言い方をされています。しかしながら、移民の是非に関する論争の場を政治分野に移しますと、両者の立場は逆転します。何故ならば、移民反対の人々には、民主主義や言論の自由といった内政上の諸価値に加えて、民族自決を原則とする国民国家体系そのものが、国境を否定する経済合理性に対抗する強力な武器となるからです。すなわち、多元主義に立脚すれば、ポピュリズムとして見下されてきた移民反対の主張も、ナショナリズムという正当なる根拠、あるいは、砦を得るのです。国民国家体系とは、数万年もの年月を経て形成されてきた人類における民族的な多様性に則した国際体系であり、大航海時代以降に建国された多民族国家も併存するものの、人類史を考慮すれば最も自然な国際体系です。近代以降、ナショナリズムは、この国民国家体系の形成期において各民族が帝国や植民地化による異民族支配から脱し、主権を有する独立国家を建設する推進力ともなりました。ナショナリズムに対する否定的な態度は、即、民族自決の原則の否定、並びに、異民族支配の容認をも意味します。

 移民を当然視するグローバリストに従えば、歴史的に形成されてきた民族の枠組みは無視され、国民の枠組は融解してゆきます。たとえ国家の領域や主権が残されたとしても、移民の増加を放置すれば、将来的には国民が異民族と入れ替わってしまう、あるいは、少数の異民族に支配されてしまう事態に発展しかねません。数千年来、ユダヤ人は、世界各地に離散し、移住先で権力と結びついてきましたし(選民意識に基づく政経両面における他民族支配志向が排斥や迫害の原因であったのでは)、イスラム教の『コーラン』では、全世界へのイスラム教徒の移民を奨励していますし、13億の人口規模を抱える中国における主要民族である漢民族もまた、全世界に華僑が移り住んで中華街を形成しています。人の自由移動が全世界レベルで原則化すれば、その先に何が起きるかは容易に予測することができます。祖国や母国といった言葉も死語となり、人々は、アイデンティティー・クライシスに悩んだ末に、雑多な烏合の衆と化すことでしょう。

 マスメディアが慎重にナショナリズムという表現を避け、敢えてポピュリズムとして侮蔑している理由も、おそらく、移民反対の主張が政治分野において正当性のある地位を獲得してしまうことを怖れているからなのでしょう。共産主義とグローバリズムの急先鋒である新自由主義とが同類と見なされるのも、双方とも、経済を唯一の決定要因とする一元主義にあるからであり、反面しか視界に入らない一元主義では全体を見渡すことができません。ここで政治を固有の領域とする多元主義に視点を変えれば、全く別の光景が見えてくるのでないでしょうか。

略奪が起きない日本の姿を世界に発信せよ   
投稿者:中村 仁 (東京都・男性・元全国紙記者・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-09-14 13:40 [修正][削除]
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4242/4248
 北海道の大地震、全道停電のニュースを見て、米国での勤務が長かった知人がコメントを寄せてきました。「全く略奪が起こっていない。略奪どころか店員が一人一人にペットボトルの水を手渡している。これこそ日本が世界に誇る姿なのだ。思わず涙ぐみました」。知人は続けます。「日本の民意の高さ、秩序維持の良識の表れだ。この姿を世界に発信し、世界平和の推進に貢献すべきではないでしょうか」。6日の地震発生後、テレビや新聞は被災地の惨状、被害者の救出、自衛隊の出動、全道停電の様子などはくまなく報道してはいました。何かが足りない。

 自民党総裁選を直前にして、安倍首相が北海道に向かい、操業が止まっている苫東厚真火力発電所の前などで状況を聞き、何やら指示を出している様子が放映されました。私は知人がいう「略奪が起きない日本の姿を世界に発信せよ」まで、官邸や側近も頭が回らなかったのでしょうか。官邸もテレビも新聞も、国内向けの頭での行動、報道に終始しているのです。「惨事は惨事でも、惨事の裏側に日本の別の姿が浮かび上がっている。それを世界に知らせよう」と、考える政府関係者、メディア関係者がいなかったのですかね。

 居合わせた外国人は「こんな時に略奪が起きないのは、日本くらいではないか」と、思ったに違いありません。6日の夕刊の記事には、「停電した真っ暗な札幌中心部を歩く人たち」の写真が掲載されています。記事でも「コンビニ店の前に約30人が列を作り、食べ物や飲み物を求めた」とあります。2011年3月の東日本大震災の際、米国紙は「日本ではなぜ略奪が起きないのか」と、日本社会の秩序正しさを称賛する記事を書きました。別の米国報道機関は、「2005年のハリケーン・カトリーナや2010年のハイチ大地震などでは住民による略奪が付きものだったのに、無法状態が日本では見られない」と。

 ABCテレビは「スーパーやコンビニの前で、静かに整然と住民が並び、長蛇の列が乱れない」との報道です。阪神大震災の時は、「日本人の我慢。われわれも日本から学ぶべきだ。同情の気持ちと深い尊敬の念を表したい」と書いた米紙がありました。日本人からすると、当然の行動でも、外国人からみると、尊敬に値する行動となります。もっとも、復旧が長引くと、留守宅への空き巣や店舗荒らし、募金詐欺などが起きます。それに比べ、外国のは、ギャングか暴徒による襲撃、略奪といっていいのでしょう。日本の対外イメージは、このところよくありません。古くは太平洋戦争当時の残虐な行動、なにかと蒸し返される従軍慰安婦、閣僚の靖国参拝の問題といい、日本を悪者にしたがる勢力があります。今からでも「現在の日本の国民の姿は、災害で街や生活が大混乱に陥っても、スーパーの前で我慢強く、整然と並び、順番を待つところに表れている」と、報道すべきです。

(連載2)停滞が続く米朝交渉 ← (連載1)停滞が続く米朝交渉  ツリー表示
投稿者:古村 治彦 (埼玉県・男性・愛知大学国際問題研究所客員研究員・40-49歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-09-13 13:53 [修正][削除]
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4241/4248
 その後、連邦下院外交委員会のスタッフ(海外援助予算、貿易政策、ヨーロッパ担当)、連邦上院外交委員会のスタッフ(1994-1998年)、首席スタッフ(1999-2000年)を務めました。共和党のジョージ・W・ブッシュ大統領(在任:2001-2009年)が誕生すると、ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)事務総長(2001-2003年)、国家安全保障問題担当大統領補佐官コンドリーザ・ライスの上級スタッフを務めました。ホワイトハウスでは国家安全保障会議の運営を取り仕切っていたそうです。その後は、連邦上院議員で共和党連邦上院院内総務を務めた、重鎮ビル・ファーストの国家安全保障問題担当アドヴァイザーを務め、フォード社の副社長に就任しました。ビーガンはアジアの専門家でもなく、国家安全保障問題を中心に活動してきたことを考えると、今回の人事は不思議な感じがします。

 北朝鮮担当特別代表にはこれまで、韓国系、アジア系の人物が就いていました。今回ロシア専門家が就任したということは、北朝鮮問題をアジア系の人々の手から離して、新たな道筋を探そうとしているのではないかと考えられます。そして、ロシアを引き入れて、中国の北朝鮮に対する影響力を減少させ、相対的にアメリカの影響力を増大させようという考えがあるのではないかと思います。

 更に言うと、ビーガンの前歴を考えると、ビーガンの特別代表就任は北朝鮮に対する圧力とも考えられます。これまでのように甘やかして下手(したて)には出ない、北朝鮮問題を国家安全保障上の専門家であり、かつ、非民主国家の民主化の専門家が、北朝鮮を国家安全保障上の問題として捉え、民主化のアプローチから交渉の場に立つ、というのは、北朝鮮からすれば「体制保障をもらっているのに、これでは話が違う」ということになります。更に、ビーガンがロシア専門家ということを考えると、ロシアの影響力を使おうというトランプ大統領の意図が感じられます。

 米朝交渉が停滞気味のまま、中間選挙ということになると、北朝鮮に対する弱腰(appeasement toward North Korea)という形での批判が起こり、共和党内部からもトランプ大統領に対する批判が出て来てしまう可能性が考えられます。そうなると選挙戦は難しくなってしまうということになってしまいます。ですから、それまでに何とか形だけでもなんとか進展のようなものが見えるようにしたいということだろうと考えられます。(おわり)

(連載1)停滞が続く米朝交渉  ツリー表示
投稿者:古村 治彦 (埼玉県・男性・愛知大学国際問題研究所客員研究員・40-49歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-09-12 16:06  
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4240/4248
 今年の6月に米朝首脳会談が行われ、共同宣言が出されました。「これで、北朝鮮はすぐに核兵器を放棄する、良かった良かった、金正恩もドナルド・トランプもいい人だ」という雰囲気が醸成されました。これ以降、どのような進展があったのか、よく分からない状況です。北朝鮮が積極的に核兵器放棄に向けた動きを行っているようには見えないからです。マイク・ポンぺオ国務長官が4度目の訪朝をするという発表がなされました。アメリカという国家のこれほどの高官がこのような短期間でこれほどの頻度で北朝鮮を訪問するというのは異例なことです。しかし、直前になって、トランプ大統領がポンぺオ長官の訪朝を中止させました。

 トランプ大統領は北朝鮮との交渉が進展しておらず、それは中国の責任だというツイートをしています。しかし、これは、6月の米朝首脳会談と共同宣言を発表した時点で、中国が北朝鮮への制裁を骨抜きにすることは容易に予想が出来たことで、もしトランプ大統領がそのことを今頃になって怒っているということであれば、それはトランプ大統領の不明ということになります。ですから、トランプ大統領の中国に対する発言は、中国に対して北朝鮮に対してもっと強く影響力を行使して、とりあえず、核兵器関連を急速に解決できる方向に勧めて欲しいという意図があると考えられます。中国を批判しているように見せながら、何とかならないかとお願いというか、依頼、説得をしているということだと思います。中国がこれでどう動くかが注目されます。

 ポンぺオ国務長官は、幻と終った訪朝発表の際に、スティーヴン・ビーガン(Stephen Biegun)という人物を特別代表に任命して、帯同させると発表しました。これからビーガンがアメリカの対北朝鮮交渉で重要な役割を果たすことになるという意味の発表でした。ビーガン(1963年生まれ)は、自動車メーカー大手のフォード社の外国政府担当副社長を務めています。ですが、政府機関で仕事をしていた時期が長い人物です。1984年にミシガン大学を卒業、専攻はロシア語と政治学だったそうです。その後、1992年から1994年まで国際共和研究所(International Republican Institute、IRI)のロシア駐在部長を務めました。IRIは共和党系のNGOで、はっきり言えば、世界各国で民主化(democratization)を進めるため、NGOの外見を持った準政府機関です。民主党系には全米民主研究所(National Democratic Institute、NDI)というNGOがあります。

 IRIとNDIに資金を提供しているのは、こちらもNGOの外見を持っているが、実質的にはアメリカ連邦議会から資金を提供されている、全米民主政治体制のための基金(National Endowment for Democracy、NED)です。NED、IRI、NDIはアメリカの介入主義のための準政府機関です。このことについては、拙著『アメリカ政治の秘密』(2012年、PHP研究所)で取り上げています。ビーガンは「非民主国家の民主化(democratization of nondemocratic states)」のための人材ということになります。(つづく)

党員・党友票でも安倍が優勢   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-09-11 05:54 [修正][削除]
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4239/4248
 次期首相を狙う以上、安倍政治の欠陥をつき、自らの主張を鮮明にすべきだと思うが、石破の10日の発言からはそれがうかがえなかった。むしろ主張があいまいで「挑戦の限界」すら感ずる立ち会い演説会であった。肝心の改憲論にしても自衛隊条項新設の姿勢を鮮明にさせた首相・安倍晋三に対して、石破茂は参院選の合区解消など緊急性の薄い問題を取り上げ9条問題の本質に迫ることを避けた。相次ぐ災害など緊急事態を前にして、挑戦者が首相交代という“政争” ばかりにうつつを抜かせない現状を鮮明にさせた演説会であった。首相の座に挑戦する政治姿勢について石破は「なにものも恐れずただ国民のみを恐れて戦っていく」と意気込みを述べたが、当初の「正直・公正」をキャッチコピーとして打ち出すことには陣営内で個人攻撃に対する異論が生じ、結局採用を避けた。安倍のどこが不正直でどこが不公平なのかは指摘しにくく、もともとこのコピーには無理があり、最初からつまずいた形だ。安倍の「現職がいるのに総裁選に出るというのは現職にやめろと言うのと同じだ」という主張に対しても、石破からは明確な理由の説明がなかった。石破の「政治の信頼を取り戻す」と言う発言からは、意気込みばかりが先行して、具体策に欠ける姿勢が鮮明になるだけだった。石破は記者会見で「安定した政権運営は特筆すべきだ」と安倍政権をたたえたが、賞賛しながら立候補という矛盾は総裁選の歴史から見ても珍しい。

 焦点の憲法改正について、安倍は「あと3年間でチャレンジしたい」と、任期中の9条改正に意欲を表明。これに対し、石破は「丁寧に説明していかないといけない」と拙速な動きをけん制、首相との対立軸を明確にした。改憲論議は、もともと安倍が昨年5月、9条1項(戦争放棄)、2項(戦力不保持)の規定を維持して自衛隊を明記する案を提起したことから始まっている。石破は従来「9条改正が緊急性があるとは考えていない。9条改正は国民の理解を得て行うべきであり、スケジュールありきで行うべきではない」との立場である。しかし、安倍は「いよいよ憲法改正に取り組むときがきた。自衛隊が憲法違反ではないと言いきることができる憲法学者はわずか2割に過ぎない。自衛隊員が誇りを持って任務をまっとうできる環境を作るのは政治家の使命だ」と9条の改正に踏み込んでおり、石破の姿勢とは異なる。憲法改正をめぐって、安倍が意欲を示す「自衛隊の明記」について、石破は、かねてから「緊急性があるとは思わない」と指摘している。

 石破は「憲法改正は必要なもの急ぐものから取り組むべきだ」として参院選での合区の解消や、大規模災害など非常事態の際に政府に権限を集中させ、国民の権利を制限する緊急事態条項などを「喫緊の課題」とした。石破は従来から9条改正について「国民の理解を得て世に問うべきだ。理解なき改正をスケジュールありきで行うべきではない」と、その緊急性を否定している。しかし、9条改正は自民党の結党以来の党是であり、改憲する以上は9条に取り組むべきであろう。石破が主張している「防災省」の設置についても、安倍は「防災省を作っても、自衛隊や海上保安庁、厚生労働省を動かすには総理大臣が指示しなければならない。そこをどう考えるかだ」と指摘するとともに、「スピーディに政府を糾合できるのは首相だけだ」と屋上屋を重ねることに否定的な考えを示した。

 総裁選の進展状況は、まず国会議員票で安倍が石破を圧倒的にリードしている。選挙は議員票405票と地方票405票で争われる。安倍陣営には党内7派閥中、安倍の出身である細田派など5派と竹下派の一部が参加。国会議員405人の85%は安倍支持に回るとみられている。一方、石破に接近しているのは参院竹下派。尾辻秀久元参院副議長が選対本部長として旗振り役を演ずる。尾辻は「武士道を真ん中に据え、正々堂々、真正面から戦おう」と宣言しているが、広がりが見られないようだ。一方石破が唯一活路を見出そうとしている地方党員・党友票についても首相が先行しているとみられている。6年前は石破を大きく下回ったが、今回は完勝を目指して安倍は47都道府県のうち7割超の地方議員と面会するなど先行している。安倍選対の事務総長を務める元経済再生担当相甘利明は10日、党員・党友票について「6年前に石破茂元幹事長が取った得票率は超えたい」と述べ、55%以上の得票率を目指す考えを示している。安倍の圧勝は動かない情勢だ。

疑問符が付く安倍対露外交   
投稿者:鍋嶋 敬三 (神奈川県・男性・評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-09-10 09:55 [修正][削除]
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4238/4248
 ロシアのV.プーチン氏が3月の大統領選挙で圧勝、4期目に入り2024年までの長期政権になる。同氏にとって米国との冷戦に敗れた結果のソ連邦の崩壊がトラウマである。ロシアの民族主義に訴えた「失地回復」をうたうところは、中国の習近平国家主席の「中華民族の再興」に通じるものがある。そのプーチン外交に対する欧米からの批判は実に厳しい。主要7カ国(G7)外相会合(4月)はルールに基づく国際システムを守らないロシアの「悪行」を列挙して非難する共同声明を出した。ウクライナ南部クリミア半島の併合、英国での神経剤を使った元ロシアスパイ暗殺未遂事件、シリアでの化学兵器使用疑惑の調査に対する国連安全保障理事会での拒否権行使などだ。その後も3年前のウクライナ上空でのマレーシア航空機撃墜事件がロシア軍ミサイルによるものとオランダなど5カ国共同チームが発表(5月)、7月には米連邦大陪審が米大統領選挙にサイバー攻撃で介入した諜報機関であるロシア軍参謀本部情報総局(GRU)の12人を起訴した。

 このようなロシアに対して安倍晋三首相の姿勢には大きな疑問符が付く。暗殺未遂事件に対して米欧諸国は一斉にロシア外交官の国外追放、領事館の閉鎖やロシア資産の凍結などの制裁措置を科した。しかし、G7の中で日本だけが制裁に同調しなかったことは、ロシアの行動を黙認したと受け取られかねない。6月のG7首脳会合では外相会合の共同声明を再確認、ロシアに脅かされているウクライナの主権と独立を擁護し、必要ならさらなる「制限的な措置を取る」ことを首脳宣言で明確にした。一方で、トランプ米大統領がロシアの「G8復帰」を口にした。安倍首相は記者会見で「ロシアの建設的関与も必要だ」と首脳宣言とは方向の違う発言をしている。

 ロシアはクリミア併合によって2015年以降G8から追放された。安倍氏がトランプ氏のロシア復帰論に反対せず、「ロシアの関与」に言及することはロシアにも欧米にも誤ったシグナルを送ることになる。首相は「プーチン大統領との深い信頼関係の下」、北方領土問題を解決して日ロ平和条約を締結する方針を示してきた。北方4島での共同経済活動によって信頼関係を深める図式を描いているようだが、ロシア側は「ロシアの法律の下で」との方針を変えることはなかった。21回目となった5月26日の首脳会談で安倍首相は平和条約交渉について「着実に前進する決意を2人で新たにした」と述べたが、プーチン氏は「両国民に受け入れられる解決策を辛抱強く探す」と全くかみ合わないのだ。首相は「信頼関係」を頼りに打開を試みるが、現実は信頼を裏切るロシアの行動が目に余るものがある。安倍氏の対露外交はプーチン氏への「片思い」で空回りしているのではないか?

 9月10日予定のウラジオストクでの首脳会談を前にロシアは択捉島で対日戦勝記念式典を開き、軍艦や軍用機を動員して日本をけん制した。平成30年版防衛白書は地対艦ミサイルの配備、択捉島空港の軍民共用化など北方領土での軍事活動の活発化を指摘した。防衛省が計画している地上配備型ミサイル迎撃システム「イージスアショア」もロシアは非難している。自らも核戦力の拡充に努める「力の信奉者」のプーチン大統領は第二次大戦終戦後にどさくさに紛れて犠牲も払わずに奪取した北方領土を返すほど甘くはないであろう。安倍首相は欧州との関係強化に乗り出し、欧州連合(EU)と経済連携協定(EPA)を締結、北大西洋条約機構(NATO)への日本政府代表部設置などの実績を上げてきた。その欧州にとって「プーチンのロシア」は最も危険な安全保障上の存在であるからこそ、厳しい対露G7宣言が出たのである。日本国の指導者である安倍氏の対露外交が政権維持の利益になるとしても、日本と同盟、友邦関係にある米欧から日本に対する疑惑が深まるなら、国家としての損失を招く「利益相反」になりかねない。    

安倍首相はウラジオストクでプーチン大統領と何を話すのか   
投稿者:飯島 一孝 (東京都・男性・ジャーナリスト・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-09-07 15:02 [修正][削除]
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 安倍晋三首相は9月3日、ロシアの極東・ウラジオストクで開催される「東方経済フォーラム」に出席するため、10日から13日まで訪露し、プーチン大統領と会談すると発表した。大統領と北方領土問題の共同経済活動について協議し、平和条約締結を前進させる考えとされるが、大統領は最後の任期途中で、早くもレイムダックの兆しが見えており、とてもそんな余力はない。逆に利用される可能性の方が高い状況だ。安倍首相は自民党総裁選渦中に産経新聞との単独インタビューに応じ、プーチン大統領との会談で「北方領土の帰属問題を協議し、平和条約を締結したい」と述べた。この時期に特定の新聞とだけ、インタビューに応じるというのは世論の反発を受けかねないリスクがある。それを度外視して単独インタビューに応じたのは、何故なのか。

 憲法改正問題で読売新聞と単独インタビューした時と同様、政府寄りのメディアしか相手にしないという意思表示なのかもしれない。それだけでも、国家の指導者としての認識のズレを感じざるを得ない。さらに、この時期に訪露しても、プーチン大統領とまともな議論ができないことは明らかだ。ロシアの年金制度改革問題で年金支給年齢の引き上げを提案し、世論の猛反発に遭い、肝心の年齢引き上げ案を一部修正したばかりだ。この問題で高率を保ってきた大統領の支持率も70%台から60%台に低下し、早くもレイムダック状態に落ち込みつつあるとの見方が出ている。その上、米国のトランプ政権が発足してから一層悪化している米露関係が足かせになり、プーチン政権は軍事力強化の方向に動きつつある。その一つの現れが、極東やシベリアで中国と共同で実施中の大規模軍事演習「ボストーク(東方)2018」だ。この軍事演習は旧ソ連時代の1981年以来の規模で、中国軍も3000人以上参加しているという。まさに軍事面の中露連携を内外に示すとともに、日米軍事同盟へのけん制であることは疑いない。

 そんな状況の中で、国家の威信がかかった領土問題を首脳同士で協議しても、事態打開に向かうような結論が出るはずはない。まして、ロシアは領土問題に関して「これは第二次世界大戦の結果だ。それを認めようとしない日本はおかしい」との論調を強めている。冷静に考えれば、安倍首相は日本側の領土返還への熱い想いを真剣に受け止めようとしないロシア相手に、無駄なパフォーマンスをしようとしているとしか言いようがない。安倍首相は自民党総裁を2期務めたが、経済はそれほど良くならず、かけ・もり問題では依然として世論の不信を買っており、頼みの綱は外交だけといっても過言ではない。今回の訪露でも、プーチン大統領との会談をなんとかして外交の成果につなげようという、安倍政権の狙いが垣間見える。自民党員はこうした現状をきちんと把握し、総裁選び、つまりは首相選びをしないと、そのツケは必ず国民に返ってくることを肝に銘じるべきだ。

(連載2)カスピ海サミットと問われる日本人の国際感覚 ← (連載1)カスピ海サミットと問われる日本人の国際感覚  ツリー表示
投稿者:袴田 茂樹 (東京都・男性・日本国際フォーラム評議員・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-09-06 16:04 [修正][削除]
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4236/4248
 トルクメニスタンとアゼルバイジャンを結ぶカスピ海海底ガスパイプライン敷設の可否が、今最重要の問題となっている。トルクメニスタンにとって、海底パイプラインとアゼルバイジャンを経由して、ロシアを迂回する欧州へのエネルギー輸出路の確保が、国の死活問題になっているからだ。というのは、同国には欧州への輸出ルートがないため――かつてロシアが購入して欧州に輸出していたが、両国の対立で中止された――豊富なエネルギー資源の大部分を中国に輸出し、同国は中立を掲げながら、実際には中国依存国の状況に陥っている。したがってこの海底パイプラインは、単なる経済的意味だけでなく、むしろカスピ海沿岸諸国をロシアや中国依存から独立させ、またロシアの中近東への影響力を制限するといった戦略的、地政学的意義の方が大きいとも言える。だからこそ欧米諸国は熱心にカスピ海海底パイプライン建設を支援しようとしてきたのだ。

 これに対して、ロシアはこれまでイランと組んで「カスピ海パイプラインの建設には沿岸5カ国の同意が必要」だとしてその建設には断固として反対してきた。エネルギー問題と絡めて、カスピ海周辺国だけでなく、中近東やさらにはパキスタン、インドへの地政学的な影響力を確保するためである。ここでは詳しく述べないが、カスピ海問題は世界の戦略や地政学にそれだけ大きな意味を有しているのである。では8月12日の「協定」では、この問題はどうなったか。今回の協定においては、隣国や対岸国など2国だけの合意で、パイプラインやケーブルを敷設する権利を認めている。しかし、そのためには、環境保護問題に関する5カ国の同意が必要だ。つまり、ロシアは「サハリン2」の場合のように、環境問題を口実に、今後もパイプライン敷設に介入できるのである。ロシア紙もそれを次のように認めている。

・環境問題を口実にしてロシアは海底パイプラインの建設を阻止できる。パイプラインだけでなく、各国がカスピ海で進める大型のガス採掘、石油採掘その他多くのプロジェクトに関しても環境問題を口実にロシアは今後も介入できる。(『エクスペルト』誌 2018.8.20)
・「これまで四半世紀以上続いている紛争は、今後も続くということである。」(『コメルサント』紙2018.8.13)
・協定において、パイプライン敷設に関しては、曖昧な(両義的な)表現になった。それは、全ての沿岸諸国の妥協の産物だからである。(『独立新聞』紙2018.8.14)
 
 協定では、海底の地下資源の帰属問題も、関係国が交渉で決めるとしている。これらの記述が、単にカスピ海周辺国の問題ではなく、欧米や中近東とロシアや中国との問題にも密接に結びついていることはお分かりと思う。わが国の主要なメディアは、8月12日のカスピ海サミットについて簡単に報じているが、そこでの協定や合意が、国際政治においてどれだけの意味を有しているのかをきちんと分析し解説したものは、筆者の知る限りでは存在しない。わが国では、この問題は殆ど知られていないか、せいぜい、一地方の小さな特殊問題と見られている。日本人の国際意識や安全保障意識が問われていると言える。(おわり)

トランプ暴露本の波紋広がる   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-09-06 05:50 [修正][削除]
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4235/4248
 ワシントンポストの著名記者ボブ・ウッドワードが、短気で予測不可能なトランプを制御しようと苦闘する米政府高官の実態を暴露した。11日に出版される「Fear(恐怖)」は、米政府高官らの生々しいトランプ批判を報じている。ウオーターゲート事件以来の内部告発である。内容はトランプの愚かさを告発しているが、一種の“舌禍事件”であり、政権にとってはイメージダウンになっても致命傷にはなるまい。ウッドワードは74歳になるが、ウオーターゲート事件でカール・バーンスタイン記者と共に内部告発者“デイープスロート”から数々のスクープを掲載、ニクソンを退陣に追い込んだ。筆者はワシントンポスト紙が販売になる午前零時過ぎにワシントンの街角で購入、両記者の署名入りの特ダネ記事を度々転電したものだ。

「Fear(恐怖)」の抜粋を報じたウオールストリートジャーナル紙などによると、トランプ側近らが、いかにトランプを軽蔑しているかが分かる。抜粋はまずトランプが、今年1月の国家安全保障会議(NSC)で、在韓米軍の常駐に関し「あの地域にどうして軍事資源を投入する必要があるのだ」と疑問を提起。これに対してマティス国防長官は「我々は第3次世界大戦を防ぐためにやっている」と米軍のプレゼンスの重要性を説いたが、トランプの退席後、側近に「行動も理解力も、まるで小学5年生か6年生だ」と漏らしたという。この席でトランプはあきれたことに「我々は愚かなことをしなければ、もっと金持ちになれる」など発言して、不満気であったという。「金持ち」になることが政権運営の尺度であるとは恐れ入った。トランプはダンフォード統合作戦本部長に対して北朝鮮への先制攻撃計画を策定するよう指示するという、驚くべき行動もとった。 政権発足当時から問題になったロシア疑惑に関しても、マーラー特別検察官の事情聴取を想定して弁護士と打ち合わせたが、事実認識が全くなく、作り上げでお茶を濁そうとして、弁護士をあきれさせた。

 こうしたトランプについて、「Fear(恐怖)」は、トランプの側近や閣僚からも不満の声が漏れ聞こえるようになっているという。大統領首席補佐官のジョン・ケリーまでがトランプを「ばか」「錯乱している」「かれに何かを理解させるのは無理」と述べたという。これについてケリーは声明で、自身がトランプ氏をばか呼ばわりしていたというのは事実ではないと打ち消した。「トランプ氏との関係は強固で率直に何でも言い合える」とも述べ、不和説の打ち消しに懸命になっている。トランプも4日のツイッターで「Fear(恐怖)の証言は嘘ばかりで国民をだますものだ」と憤りをあらわにした。

 この舌禍事件はトランプ政権の裏側を余すことなく伝えていて興味深いが、その本質はニクソン政権が倒れたウオーターゲート事件とは天地の違いがある。ウオーターゲート事件は1972年6月17日にワシントンD.C.の民主党本部で起きた盗聴侵入事件に始まったアメリカの一大政治スキャンダルである。盗聴、侵入、司法妨害、証拠隠滅、特別検察官解任、大統領弾劾発議、大統領辞任と続いたが、盗聴、侵入は犯罪であり、今回の側近の不平不満とは性格を異にする。久しぶりに名前が登場したウッドワードも、老記者の健在ぶりを示したが、本人が「この本で政権は終わる」と予言するほど簡単には政権は倒れまい。ただ2か月後に控えた議会の中間選挙には民主党が下院で過半数を取る可能性が出てきており、そうなればトランプの政権運営は苦しくなる。

(連載1)カスピ海サミットと問われる日本人の国際感覚  ツリー表示
投稿者:袴田 茂樹 (東京都・男性・日本国際フォーラム評議員・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-09-05 13:41  
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 8月12日にカザフスタンの港湾都市アスタウで1996年以来5回目のカスピ海沿岸5カ国(ロシア、カザフスタン、イラン、アゼルバイジャン、トルクメニスタン)によるサミットが開催され、「カスピ海の法的地位に関する協定」(以下「協定」)が合意・調印された。協定では次の3点で合意したが、実際には多くの問題を含んでいる。第1に、カスピ海は海か湖かという論争が続いたが、海でも湖でもない特別な内陸水域とされ、特別の法律が適用される。第2に、沿岸5か国以外の国のカスピ海での軍事的プレゼンスが禁止された。これにより、ロシアが最も神経を尖らせていた米軍やNATOの軍事プレゼンスが排除された。第3に、水上、水中の境界は定められたが、海底の分割に関する条文は除かれた。したがって、やはり紛争の原因になっていた海底資源の保有問題は、今後は直接の当事国の交渉に委ねられる。

わが国では十分自覚されていないが、カスピ海問題はロシアや中央アジア、コーカサスなどカスピ海周辺国のエネルギーや漁業問題だけでなく、欧州、米国、中近東、中国、パキスタン、インドを含む地域、すなわちほぼ世界全体の戦略問題やエネルギー問題に深く関わっている。この協定の成立により、カスピ海の領有権問題や経済紛争も解決に向かい、より安定的で平和な地域になりつつあるとの印象を与える誤報もある。実際には、カスピ海を巡る根本問題は解決していないし、日本メディアも問題の重要性を認識していない。

 ソ連邦時代にはカスピ海は牧歌的といえるほど平和だった。しかしソ連邦が崩壊して様相は一変した。沿岸5カ国がカスピ海の資源や漁業に関して利己的な行動をとって各国の利害対立は深刻化し、軍事衝突に至るまでの深刻な紛争を引き起こしている。したがって、笑い話ではないが近年沿岸5カ国は、カスピ海の自国「海軍」を強化し真剣に軍事演習をして他国を牽制しているのである。こうして、あの平和なカスピ海は「紛争(不和)の海море раздора」とさえ呼ばれるようになった。今回のカスピ海サミット開催の直前にも、全ての沿岸国がカスピ海でそれぞれ軍事演習をし、トルクメニスタン大統領は、演習場から直接カザフスタンのサミット会場に行った。サミット参加の他国への牽制のためだ。ロシアがクリミアを軍事力で「併合」した翌年、2015年の10月にロシアはカスピ海の最新のミサイル艦4隻から、26発のやはり最新巡航ミサイルをシリアの反体制勢力支配地域の11の標的に撃ち込んだ。イラン、イラク上空を1500kmも飛んでのミサイル攻撃だ。シリアでのロシア空軍の戦闘機による空爆とカスピ海からのミサイル攻撃で、ロシア国民によるプーチン支持率は2015年10月に、これまでで最高の89.9%を記録した。

 外の世界に対する被害者意識の強いプーチン大統領やロシア政府は、カスピ海に関する今回の協定の最大の成果を、カスピ海から外国軍が排除されるとの合意が成立したことに見ている(TASS通信)。プーチン大統領は今回のサミットに関して次のように述べている。「重要なことは、サミット参加国が軍事的・政治的な相互協力の諸原理を決定し、カスピ海を専ら平和目的に利用すること、そしてこの地域外の軍事力がこの海に存在しないことを保証することである。それに劣らず重要なことは、環境および生物資源の保護に関するカスピ海沿岸諸国の協力である。カスピ海の安全を脅かすインフラ建設に関して、環境保護の観点からの厳しい検査が求められる。」(大統領府サイトより)(つづく)

台湾呼称問題について考える   
投稿者:山崎 正晴 (東京都・男性・危機管理コンサルタント・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-09-03 23:48 [修正][削除]
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 2018年4月、中国の航空行政を管轄する中国民用航空局は、世界の航空会社44社に対し、同年5月25日までに、台湾を中国の一部とする「一つの中国」原則に反する表記を正すよう要求し、変更しない場合は、法的処罰を含む対応を行うと警告した。これに対し、米国ホワイトハウスは「ばかげた要求だ」とコメント、国務省は「強い懸念」を表明し、共同して中国への不満を表明するよう友好国に呼びかけた。このような米国政府の反発にもかかわらず、ルフトハンザ、英国航空、カナダ航空、エアフランス等、欧州とカナダの主要航空会社は、ほとんど抵抗することなしに中国の要求に応じ、台湾の国名表記を「Taiwan」から「Taiwan, China」に変更した。オーストラリアのビショップ外相は、中国からの呼称変更要求に強い怒りを表明する一方で、「この問題について、政府は民間航空会社に圧力をかける立場にない」と述べ、カンタス航空が中国の要求に応じる道を開き、結果的にそのようになった。

 その後、7月25日には米国のアメリカン航空が、台湾に関する表記を変更した旨を発表したほか、ユナイテッド航空とデルタ航空もこれに続いた。これらの航空各社のウェブサイトでは現在、台北の空港コードと都市名のみが記載され、「台湾」という表記はなくなった。米国政府の意向に反したこれら動きに対して、ホワイトハウスは何もコメントしていない。では日本の航空各社はどうだろうか。日本航空と全日空は、この問題に対し、中国の要求にも応え、かつ親日国である台湾の立場をも考慮した独自の解決策を打ち出した。それは、中国、韓国、台湾に関しては国名を表示せず、「東アジア」という地域名でくくり、その中で都市名のみを表記するという方式だ。これまでのところ、中国からも台湾からも異論は出ていない。ちなみに、大韓航空とアシアナ航空はエージェント経由の予約サイトで引き続き台湾の国名表記を続けている。

 国名表記に関して、中国が厳しい態度で臨んでいるのは航空業界だけではない。2018年1月、マリオットホテルは、同社のウェブサイト上でチベット、香港、マカオ、台湾を国として表記していたことから、同社の中国総代表がサイト上で公式謝罪するまで、予約サイトが1週間閉鎖された。ファストファッションの「ZARA」と「GAP」も「不適切な国名表示」で公式謝罪に追い込まれた。5月には、日本の無印良品が「生産国台湾」と表記したことで罰金20万元(約340万円)の行政処分を受けた。やや旧聞に属するが、2001年には、パナソニックが中国で販売した携帯電話の国番号選択機能の一覧表示で、台湾を“ROC”(Republic of China、中華民国)と表記していたことで中国当局の怒りを買い、携帯電話の販売停止に追い込まれるという事件が起きている。

 台湾の呼称は、場合によって異なったものが用いられている。台湾の正式名称は「中華民国」だが、日本を含む多くの国が「台湾」と呼んでいる。オリンピックなど国際競技の場では「チャイニーズタイペイ」の名称が使われている。一方で、在日台湾人の国籍は、外国人登録原票上「中国」となっている。2012年の制度変更で新たにスタートした「在留カード」では、「国籍・地域欄」への「台湾」表記が認められるようになったが、登録原票では依然として「中国」のままだ。中華人民共和国と紛らわしいため、台湾政府は「台湾」表記に変更するよう日本政府に陳情しているが、今のところ改訂の動きはない。ちなみに、他国での台湾国籍の表記を見ると、米国「Taiwan」、ドイツ 「Taiwan」、イギリス「Taiwan-ROC」、韓国「タイワン」、以下フランス、カナダ、シンガポ-ル、南アフリカ、ニュ-ジ-ランド等すべて「Taiwan」で、「中国(China)」と表記している国はない。

 台湾呼称問題は、中国人にとって格好なナショナリズム発揚の場であるため、外国企業攻撃の材料として使われる危険性が高い上、運悪く攻撃されたら、いくら抵抗しても勝ち目はない。筆者が確認しただけでも、中国に進出する日本の大企業の中で、台湾表記に関して不備を指摘される可能性のあるところが、少なくとも10社存在することが判明した。中国に進出する企業は、自社の電子及び紙媒体での台湾に関する表記をすべてチェックし、不注意なミスで大損害を被ることがないよう留意すべきだ。

中東の優等生・トルコの混乱   
投稿者:船田 元 (東京都・男性・衆議院議員(自由民主党)・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-09-03 16:26 [修正][削除]
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4232/4248
 この数日間トルコのリラが暴落している。トルコ国内で拘束されたアメリカ人宣教師をなかなか解放しないとして、鉄鋼やアルミなど輸入品に上乗せ関税をかけるという、制裁を加えたことが直接の原因だ。「同盟国なのに何故だ?」「NATO加盟国なのにどうして?」という疑念が世界を駆け巡り、実態以上にトルコリラの価値が下がっているのである。

 トルコはアメリカにとって、中東で最も信頼してきた国だ。同様に信頼してきたサウジアラビアとの関係がギクシャクしている中では、その存在はさらに重みを増していたはずだ。両国関係の急速な悪化には、 アメリカ側に2つの理由があると指摘されている。一つは中東政策の「つまづき」である。7、8年ほど前にこの地域で民主化の波が押し寄せ、「アラブの春」と言われた。いくつかの独裁的政権が倒れたのだが、この動きを過大視したオバマ政権が民主勢力に肩入れし過ぎたため、かえって中東に混乱を招いたと言われる。このような一連の動きが、トルコのアメリカへの懐疑心を高めた可能性が高い。

 もう一つは中東政策の「方針転換」である。トルコはISの掃討とシリアのアサド政権打倒において、アメリカと協力関係を築いてきた。ところがアメリカはクルド人勢力を利用して、ISを封じ込める作戦を採用した。トルコとイラクの国境周辺に住むクルド民族の存在は、トルコを常に悩ませてきたという歴史がある。 アメリカの作戦に反発して、トルコはロシアに接近し、イランとも近づいているという情報もある。

 先般、再選を果たしたエルドアン大統領は、以前に比べて大変強権的に変容し、思想抑圧や人権侵害にも手を出すようになってきた。このことにもアメリカは警戒し始めているが、中東の優等生で第一の親米国が混乱していることは、中東情勢全体を極めて不透明、不安定に陥れてしまった。だからこそ経済の実力以上に、トルコ・リラの価値が下がり続けているのだ。さらにトルコの混乱は、新興国全体に波及している。彼らの対ドル通貨価値の下落は、多額の債務返済をより困難にしている。手を拱いていると、リーマン・ショック以来の混乱を招きかねない情勢である。あの時はアメリカが必死になって世界経済の大混乱を食い止めたが、今回トランプ政権は動こうとしない。国際社会全体が動かなければならない。

シンガポールに学ぶ「民主主義」   
投稿者:四方 立夫 (東京都・男性・エコノミスト・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-08-31 09:53 [修正][削除]
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 民主主義が揺れている。トランプ大統領誕生に続き、イタリアではポピュリスト政権が誕生し、ドイツでも極右政党が野党第一党となった。民主主義国であるはずのタイやフィリピンも独裁体制になりつつあり、カンボジアは最早独裁政権である。一方、シンガポールでは1965年の建国以来「開発独裁」と欧米からは批判を受けながらも、建国の父リークアンユーの確立した「シンガポール式民主主義」を貫いている。シンガポールにおける「独裁」は他の新興国における独裁とは大きく異なる。シンガポールでは常にその国の”Best & Brightest”が政府の要職に就き、汚職も殆ど皆無であり、自国を”Singapore Incorporated”と認識し、政府の要職に就く者に民間企業の役員並みの高給を払い、国の発展の為に昼夜をおかず尽力している。そのお蔭で同国の一人当たりGDPは世界のトップクラスであり、同国の最も貧しい人々は欧米各国の最も貧しい人々より遥かに豊かである。

 欧米流の表現の自由は制限されているが、一般国民の大多数は現在の政治体制に満足している。ブータンでは”Gross National Happiness”(GNH)により国民の幸福度を計っているが、それが世界的にも適用できるものであるとすれば、シンガポールの一人当たりGNHは世界のトップクラスであろう。リークアンユーはその著”From Third World to First”の最後を以下の文言で締めくくっている。”We stand a better chance of not failing if we abide by the basic principles that have helped us progress: social cohesion through sharing the benefits of progress, equal opportunities for all, and meritocracy, with the best man or woman for the job, especially as leaders in government.”

 我が国では”meritocracy”は「エリート主義」として歓迎されないが、シンガポールでは幼少期から指導者候補の選抜、教育、競争、が奨励され、能力/人格共に卓越した人物が国のリーダーとなってきたことが、マレーシアから「追放」される形で独立を余儀なくされたシンガポールが僅か数十年の間に一流国となった最大の理由である。現在ではその選抜方法も従来の一発勝負を改め、全ての国民に複数のチャンスが与えられるようになり、特にIT時代に入り従来型の優秀な人材とは異なる人材が求められるようになったことから、リーダーとなるべき人材も多様化している。日本では、学校群制度~「ゆとり教育」などにより健全なる競争が阻害され、一時は運動会の徒競走で順位を付けることすら禁止されたこともあり、今日でもなお「悪平等」が蔓延していることに危惧を覚える。平等とはリークアンユーの言葉の通り“equal opportunities for all”であり、結果の平等ではない。国の指導者たらんとの強い志を抱いた若者が学生時代から健全なる競争によって鍛え抜かれ、指導者候補たる分厚い人材の層が形成され、その中で勝ち抜いていった者こそがトップとなるに相応しい。民主主義の根幹は教育であり、幼少の頃から常に切磋琢磨される中でこそ人材が育成されるのであり、まさに「玉磨かざれば光らず」である。

 健全なる競争が必要であることは国の指導層に限らず、全ての国民に対して当てはまることは言うまでもない。「好きこそ物の上手なり」との言葉があるが、各人が自分の好きな分野で切磋琢磨し合うことにより、国民全体のレベルが向上し国の発展に繋がるのである。同時に、競争に敗れた者に対しSafety Netを用意し、再教育し、第二/第三の機会を与えていくことも必要不可欠である。米国がかつて”American Dream”を謳歌し、「子供の世代は親の世代より豊かになる」を実現していった背景には、競争とそれを補完する制度が用意されていたからである。合わせて重要なことは”sharing the benefits of progress”であり、富が各人の成果に応じて公正に分配されることである。現在の自由世界の最大の問題点は、2016年の米国大統領選において盛んに唱えられた”1% vs 99%”、すなわち「豊かな者は益々豊かになり、貧しい者は益々貧しくなる」ことにある。「著しい富の分配の不公正」の改善なくして自由主義経済の未来はない。我が国はバブル期において”Japan as No.1”と煽てられ、「最早欧米に学ぶことは何もない」と驕るに至り、その後の20年余りに亘る不況へと繋がった。宮本武蔵は「我以外皆我師」と言う言葉を残したと伝えられているが、我が国が繁栄を謳歌してきた土台である米国を中心とした自由主義経済の根幹が揺らいでいる今こそ、民主主義の基盤である人材育成を虚心坦懐に見直すと共に、自由と対になる概念である「公正」を回復すべき時である。

”グローバリズムの格差是正は再分配で”は正しいのか   
投稿者:倉西 雅子 (神奈川県・女性・政治学者・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-08-29 11:30 [修正][削除]
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 グローバリズムへの主要な批判点の一つは、富の少数への集中とそれに伴う格差の拡大です。こうしたグローバリズムの格差問題に対する解決策として提唱されているのが、再分配機能の強化です。”再分配”の実施主体は、凡そ政府と民間の二つ大別され、前者はさらに国内レベルと国際レベルの二者に分かれます。しかしながら、何れの方法にも難点があるように思えます。最初に民間による再分配について見てみます。民間主体の再分配とは、富裕層による自発的な慈善事業や寄付活動を意味します。マイクロ・ソフトのビル・ゲイツ氏やフェイスブックのマイケル・ザッカーバーク氏など、アメリカのIT長者の多くはこの立場にありますが、富裕層の節税対策としての側面がある上に、支援や救済の対象は、これらの人々が自らの好みで選別するため、その恩恵がグローバリズムの負の影響を受けた全ての人々に及ぶわけではありません。この側面は、アメリカの中間層が破壊されるがまま冷たく放置された姿を見れば明らかです。それでは、政府による再分配機能を強化すればこの問題は解決するのでしょうか。

 政府主体の解決方法の内、最も一般的な方法は国内における財政移転政策です。この方法は、累進課税制度を強化し、高額所得者に対して税率を高くする一方で、政府が、低所得層を中心に家計支援的な意味を持つ給付を増額させるという方法です。中間層が崩壊した諸国では、全国民に一律同額の給付を実施するベーシック・インカムもこの類型に含まれるかもしれません。グローバリズムの”勝ち組”を抱える先進国や中国等の途上国にあっては一定の効果は期待できますが、それでもグローバル化の時代ですので、パナマ文書等が暴露したように、富裕層は、節税のためにタックスヘイブンに財産を隠したり、居住国を変えてしまう可能性があります。また、もとよりグローバリズムの煽りを受けて”負け組”となってしまった国では高額所得者の層も薄く、財源の確保にさえ苦しむことになりましょう。何れにしても一国の単位での再分配政策には問題が山積しているのですが、その理由は、先述したように、グローバリズムのメカニズムが働くと、国境を越えて富が偏在、あるいは、少数に集中するところにあります。それでは、”勝ち組”となった国が、”負け組”の国に対して財政移転を行えばよいのでしょうか。この点は、EUが既に経験済みです。EUでは、共通税源の下で、地域政策など、様々な再分配機能を有する共通政策を実施してきました。ところが、ソブリン危機は今日なおも完全には収束しておらず、マクロン仏大統領によるさらなる財政統合の提案も、EUの再分配機能不足に対応したものです。メルケル独首相は賛意を示すものの、財政負担が増すドイツ国民がこの案に快く同意するとは思えません。ましてや、EUのような枠組もないにもかからず、中国が、アメリカの中間層のために再分配政策を実施するといった展開はシュールな幻想でしかないのです。

 以上に再分配に関する問題点を述べてきましたが、そもそも再分配は、人類にとって望ましいのでしょうか。この基本問題に立ち返ってみますと、あらゆる”仕事”というものは、他者の必要とするものやサービスを提供することであり、所得とは、その対価を得ることですので、単なる給付金の提供には、人と経済や社会との繋がりがありません。社会保障や福祉政策としての意味での再分配政策には弱者救済という意義はありますが、一般の人々が何もせずして給付金のみを受取るという状態は、人類がこれまで経験していない未知の世界の出現なのです(再分配機能の”権化”のような社会・共産主義でされ労働を基礎としている)。そしてそれは、人々から生き甲斐やこの世に存在する意義を見失わせ、アパシーへと導くかもしれないのです。

 このように考えますと、グローバリズムに付随する格差問題に対する解決策の一つは、各々の”仕事”の適正評価や収益分配の見直しかもしれません。AIに対して、経済全体の成長を実現する条件を問うてみれば、企業利益の分配は、株主配当よりも一般消費者でもある社員の給与に重くすべきと答えるでしょうし、CEOや投資家の報酬水準は、その業務内容からすれば高すぎる、と回答するかもしれません。富の集中が問題なのですから、その最もシンプルで合理的な解決方法とは、”仕事”の意義に応じて、富の分散を積極的に図ることなのではないでしょうか(おそらく、AIもこのように”考える”はず)。共産主義が誕生して以来、資本主義か共産主義かの二者択一を迫られる嫌いがありましたが、経済体制としては、共産主義にも、資本主義にも重大な欠陥があります。グローバリズムがもたらした格差問題は、国際社会、国、企業、個人によって織りなされる経済という活動分野の、将来に向けた在るべき姿をも問うているように思えるのです。

日本外交はどうあるべきか   
投稿者:篠田 英朗 (東京都・男性・東京外国語大学大学院教授・40-49歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-08-28 11:21 [修正][削除]
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 ある雑誌の企画で、松川るい参議院議員と対談する機会があった。自民党総裁選の話から、朝鮮半島の話までカバーする予定だったが、「インド太平洋」戦略の話で盛り上がっているうちに終わってしまった。それにしても実際の自民党総裁選で、大局的な外交戦略が語られていくことがあるか。人口減少時代に突入した日本だからこそ、柔軟性を持ちつつも、計算された外交戦略が求められていく。内政問題に精力を注ぐためにも、合理的で安定感のある外交政策が必要になっている。北東アジアの人口の停滞を尻目に、世界の他の多くの地域では、人口の激増が続いている。この文章はバングラデシュで書いているが、首都ダッカの交通事情はかなり危機的だ。世界の多くの地域で、人口増による都市化の弊害が見られている。

 バングラデシュは、非常に親日的な国だ。しかし2016年のダッカ・レストラン襲撃人質テロ事件があり、めっきり日本人が来なくなってしまったという話も聞く。その一方で、中国の強烈な攻勢が強まっている。中国企業によるバングラ政府高官への賄賂が大きな問題になったが、氷山の一角だろう。インドを取り囲む地域では、中国の一帯一路イニシアチブがもたらす摩擦が激しい。日本と米国は、インドを特別視する海洋国のネットワークを「インド太平洋」戦略として打ち出しているが、スリランカやモルディブのような島国だけでなく、バングラデシュのようなインドに隣接する周辺国との関係は、微妙だが、重要だ。ただし、このように言うことは、意図的に一帯一路を封じ込めるべきだ、と提唱することではない。むしろ単に構造的に発生している不可避的な状況を、より意識化したうえで、間違いがないように管理していく、ということでもある。

 バングラデシュでは、ロヒンギャ問題が深刻だ。100万人にのぼると言われる「難民」を受け入れたバングラデシュは、人道的対応を強調するが、果たしてこの甚大な負担にどこまで耐えられるか、不安に駆られている。日本への期待は、非常に大きい。ロヒンギャの人々を追い立てたミャンマー政府は、伝統的に中国と深い関係を持つ。ロヒンギャ問題で欧米諸国に非難されればされるほど、中国の後ろ盾を求めるようになるという構図もある。ミャンマー西部の天然資源開発が、ロヒンギャ問題の背景にあることは、周知の事実であり、中国にミャンマー政府を切り捨てる動機はない。ただし中国にとっては、バングラデシュも切り捨てることができない重要国だ。二国間交渉を尊重する態度を強調し、慎重に行動している。

 日本は、正攻法で、ミャンマー政府とバングラデシュ政府の双方を尊重する態度をとるが、国連を通じた人道援助への資金提供以外に、何をしているのかは、よくわからない。21世紀の国際政治では、一帯一路とインド太平洋がにらみ合う広範な領域で、解決策が見いだせない困難な状況が多発するだろう。実は北朝鮮の問題も、同じなのだ。願わくは、ロヒンギャ問題のような焦眉の課題で、構造的対立を創造的に発展させる国際的枠組みを作る実験ができないか。安定感のある日本の外交は、現実感覚のある外交ということであり、それは消極的に押し黙る外交のことではないはずだ。

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