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2026-02-18 11:06

新テーマに、AIと安全保障および人道問題が関連した案件はどうか?

河村 英太崚 外交評論家
 去る1月20日に開催された『公開シンポジウム:多極秩序の狭間で:日本外交と「狭間国家」の生存戦略』にて、当フォーラムが今後取り組むべきテーマについてのアンケートがあった。その返信に私が記したテーマよりも、拙先稿で議論したAIと安全保障および人道問題に関連したテーマの方が日本のグローバル政策に意味がありそうだと思えてきた。先稿では英王室国際問題研究所上級相談役フェローのリチャード・バロンズ元英陸軍大将による“The UK and Germany should combine their strengths to address weaknesses in European defence” (2025年11月19日)という論評を主に参照し、AI兵器をめぐる英独間立場の違いから日本の防衛についても言及した。そこから派生して、以下のテーマを議論に挙げてみたい。
 
 第1に直接的なテーマとして、AIの軍事利用と経済安全保障が挙げられる。特にウクライナでの戦争より得られた知見は、軍事面でのAIの活用に重要になる。しかしこれではあまりに単純で、どこの研究機関でも手掛けそうなテーマである。ここからさらに派生して、第2にAIをめぐる軍事と倫理というテーマも検討してみるのは、どうだろうか?古くから大量破壊兵器や対人地雷など、様々な兵器が人道的な観点から軍備管理や廃止が模索されてきた。AI兵器についても、将来のグローバルな管理体制を模索することも有意義と思われる。また戦争と倫理という観点からAIの軍事利用について、当フォーラムのWPS(女性・平和・安全保障)や他の課題とも複合的に関連付けられたグローバル・ガバナンスを研究できるとも思われる。
 
 第3に日本に限定のテーマとして、テック産業と連携した国産防衛産業の強化も考えられる。こうした政策は直近の米NSSや英SDRとも類似しているが、以前から防衛族議員ら。しかし防衛産業の輸出力を向上させ、日本経済を牽引させるとまで言えば、高市政権の大風呂敷になっていないか?そもそも日本の防衛産業に米英の軍事産業ほどの実力があるのだろうか?非現実的な政策なら、批判的に検証されるべきである。
 
 以上のように先稿で述べた課題から派生して様々なテーマが考えられる。上記の内、日本一国を超えた国際社会の普遍的な課題で、しかも目先の政局に囚われぬ長期的な案件となれば、第2の案に基づくテーマが望ましいと思われる。現在、トランプ米政権のドンロー・ドクトリンによって、グローバル・ガバナンスは機能不全の状態である。しかしMAGA後のアメリカの動向次第では多国間主義の復活も有り得る。ダボス会議でのカナダのマーク・カーニー首相の演説は、あくまで「トランプのアメリカ」を前提としている。ただしMAGA後のアメリカが世界秩序にどこまで関わるか定かではない。その時代になると東京大学の故猪口孝名誉教授が提唱したように、カーニー演説とは違ってアメリカを含めたパックス・コンソルティスになるかも知れない。ともかくAI兵器と人道問題に関するグローバル・ガバナンスを、WPSのような他の案件とも組み合わせられれば、かなり興味深いテーマになると思われる。拙稿が当フォーラムの新たなテーマを考えるうえで、何らかの原案となればと願う。
 
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