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北方領土と日ロ平和条約締結問題   
投稿者:橋本 宏 (東京都・男性・日本国際フォーラム顧問/元駐シンガポール大使・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-11-15 11:50 [修正][削除]
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4290/4290
 11月14日にシンガポールで行われた日ロ首脳会談について、今後日本では専門家を中心にいろいろな角度からの議論が行われることでしょう。恐らく日ロ両国政府は、話し合いの細部を公表しないでしょうから、識者の間の不安は募る一方、この問題を巡って国民的議論がどれほど盛り上がるものか、国民はかなり冷めた目で見ているのではないかと、危惧の念も生まれてきます。

 このような状況で、歴史的事実として強く印象付けられることは、これまで71年にわたって関係者が多大な努力を払ってきたにもかかわらず、北方領土と日ロ平和条約締結の問題は、再び1956年の日ソ共同宣言の線にまで戻るということです。

 日本人として心すべきは、我が国がアジア太平洋戦争への突入という、悔やんでも悔やみきれない誤った国策を遂行してしまったことです。この度の日ロ首脳会談は、いまだに我が国がここから生じた諸影響から離れることのできないことを改めて示すものです。明治150周年を機に、近代の歴史を振り返り、これからの日本の進むべき道について、広く議論が高まることが望まれます。

危うい歯舞、色丹の「2島先行返還論」   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-11-15 06:47 [修正][削除]
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4289/4290
 日露首脳会談の焦点は言うまでもなく、北方領土問題であったが、首相・安倍晋三の成果を急ぐ姿勢が目立ち、プーチンに「技あり」を取られかねない側面が生じた。なぜかと言えば日本が「四島返還」より「歯舞、色丹の2島先行」に傾斜したと受け取れるからだ。安倍は56年の日ソ共同宣言の「日ソ両国は引き続き平和条約締結交渉を行い、条約締結後にソ連は日本へ歯舞群島と色丹島を引き渡す」に回帰して、とりあえずは二島返還で平和条約交渉を先行させる構えを垣間見せている。しかし、したたかなプーチンが先行返還と言っても他の2島を返還する可能性はゼロに近いと見るべきだろう。問題は、56年共同宣言に盛られた北方領土は「歯舞群島と色丹島」だけであり、国後、択捉への言及がないことだ。ロシアの「二島での食い逃げ」は当然予想できることである。にもかかわらず2島返還で平和条約を締結することになれば、ロシア側は日本の譲歩と国内的に喧伝する意図がありありだからだ。なぜならプーチンはかねてから「国後、択捉は議論の対象にならない」と主張してきており、それが実現したと受けとれるからだ。

あきれたことにプーチンは、歯舞群島と色丹島についても「日本に引き渡された後の2島に日露どちらの主権が及ぶかは共同宣言に書かれていない。今後の交渉次第だ」と、引き渡した後もロシアの主権が及ぶという姿勢を貫こうとしている。したたかにも交渉のハードルを上げてロシアの主権を主張する意図がありありだ。クリミア併合で国内の評価が急上昇した“甘い汁”を北方領土でもう一度という魂胆が垣間見える。プーチンは国際的にウクライナの領土と見なされていたクリミア自治共和国、セヴァストポリ特別市をロシア連邦の領土に加えることに成功した。1991年にソビエト連邦が崩壊し、ロシア連邦が成立した後、ロシアにとって本格的な領土拡大となった。北方領土で譲歩すればクリミアで得た国民の評価を、一挙に灰燼に帰することになるのが構図だ。さらに重要なのはロシアには北方領土を日本に渡せば、米軍が常駐しないまでも、一朝有事の際は島々が米軍の不沈空母となりかねないと言う危惧がある。地政学的には極東における日米の安全保障上の立場を強化することになる。当然予想される事態だ。

 最近の対露交渉で懸念されるのは、プーチンの「食い逃げ」である。プーチンの狙いは、日本の経済協力であり、その発言から見る限り領土問題での譲歩は、そぶりすら見せていない。日本側には通算22回も会談するのだから「めどくらい立つだろう」との期待が強いが、表だって目立つのはプーチンのしたたかさだ。安倍の会談の目的は領土問題だが、プーチンには会談すること自体を重視しているかに見える。加えて、プーチンは10月に公的な会合で「日露間に領土問題は存在していない」と言明、交渉姿勢を分析すれば「ゼロ回答」ばかりが透けて見える。今後安倍は、月末のブエノスアイレスでの主要20か国首脳会議でも首脳会談を行うし、来年には早い時期に訪露する方針である。ロシア経済は原油価格の低迷によって2015年、16年と2年連続で景気後退に陥ったものの、価格の持ち直しで2017年の同国の実質国内総生産が前年比で1.5%増え3年ぶりのプラス成長を達成。2018年も2年連続のプラス成長が見込まれている。したたかなプーチンは堅調なロシア経済を背景に強気の外交姿勢を維持するものとみられ、突き崩すのは容易ではあるまい。安倍としては、来年夏には参院選があり、急進展があれば別だが、対露外交はよほどの進展がない限り選挙のプラス材料にはなりにくいのが実情だ。

ヨーロッパの良識のピンチ   
投稿者:船田 元 (東京都・男性・衆議院議員(自由民主党)・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-11-14 10:14 [修正][削除]
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4288/4290
 2005年以来13年にわたってドイツの首相を務めてきたアンゲラ・メルケル氏が、出身母体であるCDU(キリスト教民主同盟)・CSU(キリスト教社会同盟)の党首を辞任することとなった。先般の州政府議員選挙で両党の凋落がはっきりして、その責任を取るためである。ただし首相はもう少し続けるようなのでやや安心はしたが、影響力は残念ながら落ちてしまうだろう。

 G7構成国のほとんどがこの数年首脳交代を経験しており、メルケル首相が辞めると次に長いのは安倍総理ということになる。今ヨーロッパではシリアなどからの難民を受け入れるか否かで、各国とも苦労しているが、メルケル首相は数少ない受入れ派の代表格。しかしドイツ国民の多くはこれに不安を抱き、その母体であるCDU・CSUを選ばず、反対する緑の党や新興政党AfD(ドイツのための選択肢)を選んだのである。

 メルケル首相の影響力低下は難民問題に限らず、EUの存在価値そのものにも及ぶ。EUの屋台骨はドイツとフランスだが、フランスのマクロン大統領はまだ経験が浅く、いきおいEUの力が弱くなることが懸念される。ブレグジットで揺れるイギリスとEUとの厳しい交渉においても、力関係に変化が現れるかも知れない。

 さらに世界の潮流は、トランプ大統領に象徴されるように、一国繁栄主義や多様性を認めない排外主義が横行し始めている。つい先日も南米の大国ブラジルで ボルソナロ氏という極右で乱暴な言動を行う大統領が誕生したばかりだ。世界を席巻するポピュリズムがどこまで勢力を拡大するのか、とても恐ろしくなってきた。

 我が国は従来から国際協調主義を標榜しており、一国主義が蔓延して争いが絶えない世界にならないよう、良識を持ちスタンスを同じくするヨーロッパやアジアの国々との連携を強める必要がある。メルケル氏にはもう少し頑張ってくれることを祈らざるを得ない。

シエラレオネについて考える   
投稿者:篠田 英朗 (東京都・男性・東京外国語大学大学院教授・40-49歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-11-13 13:42 [修正][削除]
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4287/4290
 シエラレオネが中国からの融資で新空港を建設する計画をキャンセルした。このニュースが、日本で少しでもシエラレオネを語る理由になりうるのであれば、とても嬉しい。私自身はシエラレオネには数えきれないくらい行っているのだが、日本大使館もなく、日本での知名度はゼロに等しい。学生相手に話題にする際には、「『ブラッド・ダイアモンド』って映画あったでしょ、ほらレオナルドディカプリオが出ていた・・・」、という話題の切り口だけはある。しかし、話が続くことはない。私ですら、日本人向けの文章でシエラレオネを話題にすることは少ない。それでもなぜ何度も行くのかと言えば、重要だからである。国連の公式サイトにでも行ってほしい。国連の平和活動は紛争社会を平和な社会に変えた!と主張する際に、真っ先に証左として例示するのが、シエラレオネである。今年の大統領選挙で、中国寄りとされたコロマ前政権に代わり、ビオ新政権ができた。そこで中国へのスタンスにも見直しが入った。私自身は、シエラレオネ大学の平和紛争学部と共同研究をしたり、学生もこれまで10人近く受け入れたりしてきている。

 シエラレオネが成功例とされるのは、単に15年にわたって戦争が起こっていないからではない。戦争が終わってから、平和裏に選挙を通じた二回の政権交代を果たした。内戦後の社会では、これは大変なことなのである。特に2009年、選挙後に暴動が発生した後、二大政党が建設的な政党政治のありかたについて定めた「共同宣言」を発出し、その後の安定につなげたのは、世界の平和構築の事例の中でも特筆すべき、輝かしい記録だ。地方部に行ってワークショップなどをすると、「戦争は苦しかったが、戦後に人権がよりよく守られる社会になったのは良かった」と女性たちが口をそろえて言う。人権や法の支配といった、国際社会の主流の価値観を標榜する形で、紛争後の平和構築が進められた。その成果を現地の人々が好意的にとらえているのが、シエラレオネである。だから国際機関や主要な援助国は、シエラレオネを評価するのである。世界最貧国の一つである。国連開発計画の人間開発指標で、189か国中184位である(これでも15年前より少しマシになった)。近年多くのアフリカ諸国は、中国も利用して、高い経済成長を維持してきている。シエラレオネも例外ではない。近年中国との関係を深め、5%前後の経済成長率を維持している。現在のルンギ空港の不便さは並大抵ではない。シエラレオネに、中国との関係を悪化させる余裕はない。しかしシエラレオネのような国だからこそ、多角的な外交関係を基盤にした政治リーダーの役割は大きい。

 それにしても、日本は、「大使館がないから」といった理由で、簡単にシエラレオネを軽視しようとする。ないなら、作ればいいだけなので、あまり説得力のある言い訳ではない。要するに、軽視しているだけだ。中国の一帯一路は、アフリカに到達した後も、大陸を貫いて大西洋岸にまで到達している。日本が推進する「インド太平洋」戦略は、かろうじてアデン湾くらいをかすめて、それで終わりか。「戦略」の戦略的内実が問われている。

日本の海洋安保プレゼンスに評価   
投稿者:鍋嶋 敬三 (神奈川県・男性・評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-11-12 12:11 [修正][削除]
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4286/4290
 海上自衛隊が2018年8月下旬から2ヶ月間にわたってインド太平洋方面に派遣した部隊とアジア諸国や米英との共同訓練が日本の地域での存在感を高めた。派遣地域は南シナ海からマラッカ海峡を経てベンガル湾からインド洋へつながる広大な海域だ。米第7艦隊(横須賀)の守備範囲と重なる。ロンドンに本拠を置く国際戦略研究所(IISS)のアジア戦略専門家W.チューン氏は、地域の「不確実性と不安定化の中で日本は秩序の強化に誠実に励んで」おり「地域安定のための勢力である」と、こちらが面はゆいほどの高い評価をした。海自は最新鋭のヘリ空母型の最大級護衛艦「かが」(基準排水量19,500トン)に護衛艦「いなづま」と「すずつき」を随伴させ、800人の海上自衛官を送り出した。「かが」に乗艦した同氏は真珠湾攻撃に出撃した旧海軍の空母「加賀」と異なり、現代の「かが」は「地域の平和と安定に積極的に貢献する日本の努力の好例」と描写している。

 海自部隊はインド、インドネシア、シンガポール、スリランカ、フィリピン5カ国を訪問、南シナ海でベトナム軍と対潜訓練、スマトラ島西方沖のインド洋で英軍と戦術運動、インド洋北部のベンガル湾でインド軍と共同訓練の帰路、ベトナム南方の南シナ海で米海軍の補給艦から「かが」と「いなづま」が同時に洋上補給を受けた。この時は、9月末に米イージス駆逐艦に異常接近事件を起こした中国のミサイル駆逐艦が追尾を続け、中国の関心の強さを見せた。習近平政権下で人工島の建設、軍事基地化で南シナ海の緊張が高まり、貿易摩擦の激化とともに米中間の対決機運が強まった。ペンス米副大統領が10月、ワシントンでの対中政策演説で「中国に対する新たな取り組みの導入」に基づいて「強力で素早い措置」を取ってきたことを明らかにしている。

 トランプ政権は最近、南シナ海における「航行の自由作戦(FONOP)」の頻度を上げている。米中軍艦の異常接近もこのような情勢の下で発生した。FONOPについてチューン氏は「行きすぎた海洋上の主張に対する法的、技術的な異議申し立てで、外交的に中国に圧力をかけるもの」と定義している。FONOPを続けなければ、やがて自由な航行という国際法上の権利を失い「米軍が南シナ海から手を引けば、地域での米国の信頼は失われる」ところにその戦略的意義があるとしている。11月9日にワシントンで開かれた米中外交・安保対話でも、特にFONOPを巡る激しい対立は解けなかった。ちょうど1ヶ月前の北京での外相会談での激しい応酬の際、ポンペイオ国務長官は「米中間に根本的な不一致がある」と語ったものがそのまま持ち込まれたのだ。

 日本はFONOPには参加していないが、理念は共有している。日米安保同盟を補うように准同盟国、友好国との連携強化を急いでいる。米、英、仏の他に外務・防衛閣僚協議(2+2)の拡大が急ピッチだ。オーストラリアとの2+2(10月)では初の戦闘機訓練を2019年に実施する。「物品役務相互提供協定(ACSA)」も米国に次いで発効させた。日本とインドは10月30日の首脳会談で2+2の立ち上げとACSAの交渉開始で合意。日米豪印4カ国による安全保障の協力関係の環がつながる。自衛隊と各国との共同訓練も活発になってきた。英国とは陸海空とも実施、フランスやカナダの海軍とも行っており、日米同盟を補完して地域の安保強化に役立っている。トランプ政権の同盟国に対する「負担増」要求に応える意味もある。安倍晋三政権が呼び掛けてきた「自由で開かれたインド太平洋戦略」を推進するための関係国との連携は地域の安定に役立ち、日本の外交発言力の強化につながることは疑いない。

(連載2)プーチン氏の平和条約提言の問題点 ← (連載1)プーチン氏の平和条約提言の問題点  ツリー表示
投稿者:袴田 茂樹 (東京都・男性・日本国際フォーラム評議員・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-11-08 13:31 [修正][削除]
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4285/4290
 2、日露間の平和条約と中露間の善隣友好条約は全く性格を異にし、比較するのは無意味だ。というのは、平和条約(講和条約)とは、戦争をした国の間で領土問題を含む戦後処理が最終的に終わったことを意味するものである。しかし、善隣友好条約は戦争とは関係のない異質の条約である。プーチン氏は中国とは40年間領土問題で議論してきたと述べたが、中ソ間、中露間には武力衝突はあったが国際法上の戦争はなく、したがって平和条約とは無関係だった。この事例を日露間の平和条約の「手本」とすること自体、未意味だ。

 3、ロシアと中国が2004年に領土問題に終止符を打ったのは、友好関係が高まったからではない。逆にプーチン大統領は、経済的にも軍事的にも急速に強大化している中国が将来ロシアに領土要求を突きつけることを恐れていたからである。中国は1858年の璦琿条約、1860年の北京条約で日本の面積の4倍にあたる150万㎢の領土を帝政ロシアに奪われた。そして中国は、19世紀のこれらの条約を今日でも力によって強いられた「不平等条約」と称している。ロシアはその奪回の動きが将来出ることを恐れて、領土問題の解決を急いだのだ。つまり、中露間では、信頼の高さ故ではなく、ロシアの中国への恐れあるいは不信感ゆえに、プーチンは一定の譲歩をしても領土問題を早く解決しようと決心したのである。

 4、平和条約が領土問題を含む戦後処理が最終的に終わったことを意味する以上、平和条約締結後に、領土問題の交渉を続けるということは、現実的には有り得ない。ではなぜプーチン氏は、「われわれは領土問題は存在しないと考えている」と言いながら、平和条約締結後に、さらに信頼関係を高めて領土問題の議論を続けようと口にするのか。その理由は、領土問題をロシアが全く無視していると日本が思ったら、ロシアとの経済協力などに日本は無関心になると恐れているからだ。ロシアの主要紙は、ウラジオストクでの平和条約に関するプーチン発言の翌日に、「領土問題がなければ、日本はアジアにおける英国、すなわちアジアで最も反露的な国になっただろう」と述べている。さらに同紙は次のようにも述べた。「ロシアにはひとつのコンセンサスがあった。すなわち<将来には>領土論争は解決できるとの希望を、見かけだけにせよ日本側に与える、ということだ。」(『コメルサント』2018.9.13)「見せかけだけにせよ、希望を与える」というのがポイントで、ロシア側は北方領土問題を、馬の前にぶら下げる人参と見ているのである。

 最後に、ロシアの元外務次官で日露の領土交渉にも深く携わったG・クナーゼ氏のプーチン提案(領土問題の解決を抜きにした平和条約の締結)に対する評価を伝えて、締めくくりとしたい。「日本は時にプーチン氏が公然と日本を愚弄しても、ロシアの好意を求めてくる。最近の平和条約提案に関しては、これほど侮辱的な提案は、ブレジネフのソ連時代でさえも日本に対して行わなかった。」(『セヴォードニャ』2018.9.25)首相官邸やその周辺の人たちは、「東方経済フォーラムにおけるプーチン発言は、平和条約締結に対する前向きの姿勢と理解したい」と述べている。苦し紛れの言葉だとは思うが、彼等はクナーゼ発言のニュアンスをどのように理解するだろうか。(おわり)

トランプが直面する「決められない政治」   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-11-08 06:17 [修正][削除]
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4284/4290
 中間選挙の結果米国は、民主党が下院を奪還し、多数党が上院は共和党、下院は民主党という「ねじれ議会」となった。この大統領と下院の多数派が異なる政治状態は、戦後の議会ではレーガン政権、ブッシュ政権、オバマ政権で生じている。とりわけオバマ政権の二期目は、「決められない政治」で有名だが、トランプも多かれ少なかれ「決められない」状況に落ち込むだろう。2年後の大統領選は、奇跡の逆転でトランプ再選がないとは言えないが、その可能性は低い。勢いづいた民主党が反トランプの攻勢をかけることは必定であり、大統領弾劾の事態もあり得ないことではない。米国の政治は流動化の傾向を強くする。民主党にとっては8年ぶりの下院奪還であり、ねじれを利用してトランプ政権への攻勢を強め、大統領の弾劾訴追も視野に入れるとみられる。そのための圧力は、法案の成立数となって現れるだろう。米議会における法案成立数は毎年通常400~500本で推移しているが、議会がねじれた政権ではその数が著しく減少する。レーガンの成立率は6%、ブッシュ4%、オバマ2%といった具合だ。

 法案は通常、上下両院でそれぞれ同時期に審議され、内容が一本化されて成立の運びとなる。民主党は今後ポイントとなる重要法案の成立を阻むものとみられ、トランプは議会対策で苦境に陥る公算が強い。とりわけ下院が主戦場となる。民主党の狙いは言うまでもなく2年後の大統領選挙でトランプを引きずり下ろすことにある。2年間でトランプをボロボロにして、再起不能にしようというのだ。民主党はトランプの弱点を突く戦術を展開するものとみられる。弱点は山ほどある。外交では北朝鮮の金正恩やロシアのプーチンとの親密ぶりばかりを露骨に誇示して、同盟国である日本やカナダをないがしろにして、高関税をちらつかせる。内政では元女優との不倫に口止め料を支払ったのが露呈したかとおもうと、女性やマイノリティに対する侮辱的な発言。議会が指摘する「嘘つき政治」は日常茶飯事である。よくこれで大統領職が務まると思えるほどの問題ばかりが山積している。他国に対する制裁関税も、製造業が大不況で息も絶え絶えのラストベルト地帯にこびを売るものにほかならない。トランプは国全体を見る視野より、自分への支持層だけを大切にしているかに見える。「我々はグローバリズムを拒絶し、愛国主義に基づき行動する」という発言は、国際協調路線とは決別しているかに見える。現実に環太平洋経済連携協定(TPP)や、地球温暖化対策の「パリ協定」からの離脱表明は、釈迦も驚く唯我独尊ぶりだ。

 この結果米国民に分断傾向が生じている。国内に医療制度や移民問題をめぐって対立が生じているのだ。もともと共和党支持層は地方の有権者や白人が多く、民主党は若者や、有色人種、女性が支持する傾向が強い。本来なら複雑な社会形態を統合するのが米大統領の重要な役割だが、トランプは分断が自らを利すると考えているかに見える。よくこれで大統領が務まると思えるが、米国政治の懐は深く、弾劾などはよほどのことがない限り実現しそうもないのが実態だ。米国では大統領と議会の多数派が異なることを分割政府(divided government)と言う。米国の政治制度の特質は、大統領と議会の多数派が異なる分割政府の常態化を前提として政治運営や立法活動が複雑な駆け引きの下に行われる。大統領が利害調整を行はざるを得ない場面が過去の政権でも見られた。その傾向が常態化するのであろう。さすがに心配なのかトランプはさっそく「ねじれ」状態を踏まえ、「いまこそお互いが一緒にやるときだ」と述べ、民主党に連携を呼びかけたが、ことは容易には進むまい。トランプの政治姿勢が続く限り、西欧や日本などの同盟国の国民は心理的な離反傾向を強めかねない。そうすれば喜ぶのはプーチンや習近平だけであろう。トランプの対中対立路線が原因となる米中離反は、中国による対日接近姿勢を強めており、国家主席習近平の来年の訪日など今後交流が強まる傾向にある。トランプの唯我独尊政治は、単に米国内にとどまらず、極東外交にも大きな影を落としているのだ。しかし大統領が誰であれ、日米関係は重要であり、同盟関係を堅持し、通商関係の維持向上を図るべきであることは言うまでもない。

(連載1)プーチン氏の平和条約提言の問題点  ツリー表示
投稿者:袴田 茂樹 (東京都・男性・日本国際フォーラム評議員・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-11-07 11:58  
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4283/4290
 10月18日にロシアのソチでプーチン氏と国内外の専門家とのヴァルダイ会議が開催された。私が注目したのは、9月12日の東方経済フォーラム(ウラジオストク)での平和条約に関するプーチン提案についての彼自身の説明だ。わが国のメディアは、この時のプーチン発言については簡単に紹介しているが、それが我が国にとって如何なる意味を有しているか、また論理的に如何に無理な発言をしているか、といった点の分析や指摘はほとんどなされていない。本稿で9月の東方経済フォーラムでの平和条約に関するプーチン発言を、プーチン自身がどのように説明しているか、また彼の説明の問題点を指摘しておきたい。

 ヴァルダイ会議で日本の質問者はプーチン氏に次のように尋ねている。私は2年前に「近い将来、つまりこの2-3年の間における平和条約締結はどれほど現実的か」と質問したが、あなたは「期間を決めるのは不可能だし有害だ。そのための信頼関係が不十分だからだ」と答えた。最近あなたは、今年末までに平和条約を締結しようと提案した。この2年の間に信頼関係が出来たということか。それとも、その提案は何か別のことを意味しているのか。

 これに対しプーチン氏は、まずロシアは北方領土への墓参の簡易化など信頼を高める努力をしているのに、日本側が両国の信頼関係を壊しているとして、シリアやクリミア問題などで日本が対露制裁に加わったことを非難した。遠く離れたシリアやクリミアと日本は何の関係があるのか、と(Где Сирия, где Крым, где Япония?)。そして、それでもロシアは日本との領土対話もコンタクトも拒否しない、と恩を着せるように述べている。次いで、ロシアと中国との間では友好条約が締結され(中露善隣友好協力条約2001.7)、友好関係が構築されたので、(2004年に)領土問題が解決したとした。この例を挙げてプーチンは「まず平和条約に署名しようではないか。そして信頼関係の水準を高めて、この領土問題についてさらに議論しようではないか」と述べている。以下、このプーチン発言の問題点を指摘する。

 1.日本側がロシアとの信頼関係を壊している理由として、日本が対露制裁に加わっていることを挙げ、「はるか離れたクリミアなどと日本は何の関係があるのか」と非難している。法律の専門家を自称するプーチンとしては、信じられない発言だ。つまり、対露制裁は、ロシアが国家主権侵害という国際秩序の基本を侵したことに対する国際的な制裁であり、日本とクリミアの距離の近さや結びつきの深さとは無関係だ。それは、サウジアラビアのジャーナリスト殺害に関して、地理的な位置や被害者との関連とは関係なく、世界各国が同国の行動を批判していることと同じだ。ロシアは一ジャーナリストの殺害とは比較にならないほど深刻な行動をとったので、国際制裁の対象となった。(つづく)

香港「一国二制度」は終焉間近か   
投稿者:四方 立夫 (東京都・男性・エコノミスト・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-11-06 17:00 [修正][削除]
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4282/4290
 11月1日、香港貿易発展局主催のシンポジウム「think Global, think Hong Kong」に参加した。林鄭月娥香港特別行政区行政長官が香港並びに中国本土の21に及ぶ政府、役所、企業から約200名を率いて来日し、日本側からも100を超える政府、役所、企業から経産省副大臣を含む約2,000名が出席する大イベントであった。メインシンポジウムの後に金融、技術、法務などの分科会も開催され活況を呈していた。林鄭月娥長官は、香港~マカオ~珠海を結ぶ港珠澳大橋の開通、並びに香港~広州を繋ぐ高速鉄道の開業により「広州~香港~マカオ大湾区構想」が大きく進展し、「一帯一路」において香港は中国大陸と日本の架け橋として益々重要な役割を果たすことを強調した。しかしながら、従来どの行政長官も強調していた「一国二制度」に関する言及はなく、ビンセント・ロー香港貿易発展局会長を始め、他の主な香港側の登壇者の発言ももっぱら「中国大陸との緊密性」を強調するものであった。

 1997年香港返還式に招待された際、董建華行政長官が繰り返し「一国二制度は50年間継続する」と述べていたことを思うと隔世の感があり、もはや「一国二制度」は形骸化し、香港は名実ともに中国の一部となったしまったとの印象を抱かざるを得なかった。林鄭月娥長官は香港が人民元の金融センターであることを指摘し、日本の新興企業が香港で新たに技術、サービス、ベンチャーキャピタル等の分野において、ビジネスチャンスを見出すよう促していたことも印象的であった。まさに、米中貿易戦争が事実上の先端技術を巡る覇権争いとなり長期化が予想され、また「一帯一路」に対する「受恵国」の反発が強まる中、中国が日本の技術、資金、そして高評価を利用しようとする戦略が見て取れる。

 林鄭月娥長官は河野外相の招きにより長官としては初来日とのことであったが、2014年の反政府デモに強硬姿勢で臨んだ同氏がスピーチの冒頭、満面の笑顔で日本語で挨拶し、さらに日本式のお辞儀までして会場を沸かせたことは、1978年の日中平和友好条約締結後、中国から多くのデリゲーションが来日し、皆、異口同音に「日本人は中国の老朋友である」、「中国人は井戸を掘った人のことを忘れない」と繰り返し日本人の琴線に触れるパフォーマンスを行ったことを思い起こさせるものであった。もはや香港は後戻りできない所まで来ており、日本としては「新しい香港」との付き合い方を再検討すべき時である。

危機に直面する自由貿易体制   
投稿者:船田 元 (東京都・男性・衆議院議員(自由民主党)・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-11-05 14:14 [修正][削除]
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4281/4290
 トランプ政権は中国との貿易赤字が巨額であるとして、中国からの輸入物品に関税を掛け始め、現在では取り扱い量の半数がその対象となった。中国もこれに反発して同様の報復関税を掛け、さながら「米中貿易戦争」の様相を呈している。現在のアメリカ経済は拡大基調にあるが、この影響は今後じわじわと実態経済に影響を及ぼしてくるに違いない。また日本をはじめ世界の企業は、「世界の工場」と言われてきた中国国内での製造拠点のメリット減少を見越して、他の国へのシフトを考えはじめている。世界経済の見通しがどんどん暗くなってきている。

 自由貿易、自由市場の存在は比較劣位の産業の撤退と比較優位の産業への転換を後押しして、世界経済を拡大して来た。劣位の産業には厳しい試練を与えてしまうが、優位な産業に人材と資源を首尾よくシフト出来れば、世界経済は成長する。第二次世界大戦の終盤にスタートしたブレトン=ウッズ体制、GATTとその後継のWTOは、まさにこれを実現することが目的であった。

 しかし世界は時々この試練に我慢できず、景気後退期には二国間取り決めやブロック化に走る誘惑に晒されて来た。もっとも顕著な例は1920年代の大恐慌の後、アメリカがスムートホーレー法などにより、ブロック経済の先頭を走って、第二次世界大戦の遠因を作ったと言われている。経済は政治や軍事をも動かしてしまうのだ。

 大恐慌時のアメリカ経済と現在のそれの状況は全く違うが、トランプ政権のTPP離脱、NAFTAの再構築、対中制裁などを見ると、大戦前の風景を再現しているようで恐ろしささえ覚える。世界経済の安定のためにも、トランプ政権には目の前の貿易赤字に吠えるのではなく、その先の世界経済を静かに見据える度量を持ってもらいたいのである。

アメリカでの奨学金削減と中国の留学生誘致   
投稿者:古村 治彦 (埼玉県・男性・愛知大学国際問題研究所客員研究員・40-49歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-11-02 13:48 [修正][削除]
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4280/4290
 中国が文化外交の一環として、中国への留学生増加を推し進める一方、アメリカは留学生のための予算を削減しています。戦後冷戦期、自由主義国ではアメリカ留学、共産主義国ではソ連留学がエリートへの近道でした。アメリカやソ連で最先端の学問を学ぶと同時に人脈を形成し、価値観や思想を習得して、母国に帰り、政治、経済、学術などの分野で偉くなる、と言うのがどこの国にもあった出世物語です。日本でも戦後、フルブライト奨学金を得て、アメリカに留学することはエリートへの近道でした。日本は皆が貧しくて御飯を食べるのが精一杯という時代に、毎日ステーキを食べ、蛇口をひねればお湯が出るという夢の国アメリカに優秀な若者たちが渡っていきました。日本からのアメリカへの留学生は1990年代後半には3万人を超えましたが、現在は1万5000人程度にまで半減してしまいました。

 冷戦期、アメリカは各国の優秀な学生たちを生活費まで保証する奨学金付きで自国の大学で学ばせました。それは親米的なエリート層を形成するという目的もありました。その当時、ソ連の成功で光り輝いていた社会主義計画経済に対抗するための、「近代化理論」の実践のための人材として活用しようと考えていました。アメリカからの資金や技術の援助、そして人材育成によって、発展途上国を近代化し、経済成長させようとしました。しかし、その試みは多くの場合、それぞれの国の事情を無視して行われ、アメリカからの資金援助は有効に使われず、アメリカで博士号を取得したような人材も母国に帰っても働き口がなく、タクシー運転手になるしかないというような状況を生み出しました。

 現在、アメリカでは留学生に対する奨学金の予算を削減しています。それに対して、中国はアジアやアフリカの発展途上国、また、一帯一路計画の参加国からの留学生を増やそうと様々な試みを行っています。その結果、中国への留学生は増加の一途を辿っています。今なら、中国に留学して学問を学び、人脈などを広げておけば、母国に帰った時に中国関係の仕事に就くことができるからです。

 昔から遅れた国は進んだ国に若者を送り、学問や技術を学ばせてきました。日本でも、遣唐使と一緒に留学生や留学僧を派遣し、勉強させていました。帝国には最新の知識や情報、思想が生まれ、集まります。中国も1970年代末に改革開放を打ち出してから、アメリカに多くの優秀な若者を送り、勉強させてきました。そして、その成果を利用して、現在のように経済発展を遂げてきました。そして、中国がアメリカに追いつき追い越し、世界の中心、世界帝国になるという話が現実味を帯びるまでになってきました。アメリカの留学生に対する奨学金削減と中国の留学生誘致という現象は、帝国の交代ということを印象付けるものとなっています。

日中 「第三国でのインフラ開発協力」は経済原則に則って   
投稿者:四方 立夫 (東京都・男性・エコノミスト・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-11-01 10:00 [修正][削除]
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4279/4290
 「日中新時代へ3原則」が確認され日中関係が改善の方向に向かいつつあるかのように見える。しかしながら、今回の「日中関係改善」は1978年の「日本国と中華人民共和国との間の平和友好条約」の時とは異なり同床異夢である。中国の意図はあくまで中国主導の「一帯一路」並びに「中国製造2025」の推進であり、そのために日本の技術、資金、評価を利用しようとするものに他ならない。その中心となる「第三国でのインフラ開発協力の推進」は、我が国の民間企業が主体となるものであり、あくまで経済原則に則り「前のめり」になることなく是々非々で実行されなければならない。特に以下の点が担保されていることが必須である。

 1.昨年秋の中国共産党大会において「外国の民間企業を含む全ての在中国企業は共産党の指導に服する」旨を定款に記載しなけれならないことが決定されたが、第三国での日中合弁企業においてはかかる共産党の影響を排除し、あくまでコマーシャルベースの契約に基くものであること。
 2.合弁会社のビジネス上並びに技術上の機密は保持されること。
 3.日本の民間企業の目的はあくまで営利あり、合弁会社が当初計画された収益を上げることが困難であると判断した場合、当初の契約に則り政治的配慮無しに速やかに撤退できること。
 4.日中両企業間で係争が生じた場合は、契約書に記載の準拠法並びに仲裁裁判所の決定に従うこと。

 これに加え、出来る限り現地企業の合弁企業への参加を促し、日本企業と現地企業の合計の議決権比率が中国のそれを上回ることも肝要である。中国は国内経済において過剰債務(特にシャドーバンキングに多く散見される簿外債務)、合併により肥大化した国有「ゾンビ企業」の経営効率の低下など深刻な問題を抱え、「市場経済VS独裁体制」の本質的な矛盾が拡大する中、海外での事業展開においてもその矛盾が露呈し、「受恵国」において反発が強まっている。

 現在我が国はTPP11に合意しさらにこの拡大を図り、将来的には米国の復帰を目指すと共に、RCEPの合意に向けて鋭意交渉中であるが、段階的に中国を自由主義経済の高い水準に近づかせ、最終的にはTPP並みの高度なFTAAPを目指すべきである。日中「第三国でのインフラ開発協力」もその長期目標に沿って、日本の民間企業が主導的役割を果たし中国企業を高いレベルに導いていくことが求められている。

新聞の社会的役割が終わる日   
投稿者:中村 仁 (東京都・男性・元全国紙記者・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-10-31 11:43 [修正][削除]
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4278/4290
 秋の新聞週間に合わせて、新聞に対する国民の意識調査(世論調査)を各紙が実施しています。新聞がメディアの主軸であった時代はともかく、情報社会が多様化したにもかかわらず「新聞の役割は何ですか」、「新聞は信頼できますか」などと、読者に尋ねるというのは、奇妙な慣行です。たとえば、自動車メーカーが「車の役割は何ですか」、「車は信頼できますか」と、ユーザーに聞くようなことはしません。役割がなくなれば売れなくなる、信頼できなくなれば買われなくなるというだけのことです。メーカー自身が売れない理由を考え、社会的なニーズにあった製品を造るのです。売れ行き、得られる利益から、その製品が社会から評価されているかどうかを判断するのです。それに対して、新聞業界は「新聞はあなたが必要としている情報を提供していると思いますか」、「新聞は事実を正確に伝えていると思いますか」(読売新聞、14日)などについて世論調査をしています。そして「新聞が事実を公平に伝えている68%」、「新聞報道は信頼できる76%」との結果がでてくると、業界関係者は安心するのです。自分に対する評価を聞き、それを自分の紙面で紹介するという慣行から、いつまで経っても、抜け出せないところに新聞の焦りがあるのでしょう。「公平」「信頼」などで高い点数をもらっても、新聞をとる人が減っているところに本当の危機があります。

 新聞経営者からすると、「ニュースを知る上で、どのメディアを信頼していますか」は64%で、ソーシャルメディアやポータルサイト(ツイッター、グーグル、フェースブック、ヤフーなど)を圧倒しています。それにもかかわらず、信頼性の高低と普及率・利用率の高低はますます無関係になり、新聞は苦戦を強いられています。新聞週間の恒例の調査で、以前から気になっていたのは、新聞をとっていても、購読時間がいかにも短く、その分析がないということです。読売新聞調査では「1日平均でどのくらいの時間、読みますか」の問いに、「10分が18%」、「20分が16%」、「30分が22%」で「1時間」、「2時間」となると、1桁に落ちます。10分、20分では、恐らくラジオ・テレビ欄、天気予報、目立つ大きな見出しをざっと眺めるくらいでしょう。「読んでいる」とは言えない短さです。その上、「全く読まない」は23%ですから、50%以上の人が実質的に新聞を読んでいないに等しい。では、どんな情報産業に脱皮するかこそ重要なのです。インターネットの利用時間調査が行われています。「1時間が23%」(新聞は9%)、「2時間が18%」(同1%)と、やはり新聞を圧倒しています。新聞を購読しない若い世代を対象すると、この数字は倍近くに跳ね上がるでしょう。新聞を読む時間が「10分」「20分」「全く読まない」というデータを新聞の紙面に載せること自体が自己否定を宣伝することに気がつかないのでしょうか。参考になる項目はあります。「新聞に期待していることは何ですか」に対し、「権力を監視する29%」、「世の中の不正を追及する34%」です。権力の監視や不正追及はずっと新聞メディアの中核的な役割でした。それよりも「情報を正確に伝える73%」、「分かりやすく伝える62%」への期待値が高い。

 「権力を監視する」といいつつ、新聞は政権寄りと反政権で対立しています。読者は新聞に「権力の監視」を求めるのはもう無理だから、「正確な情報伝達」、「分かりやすく伝達」を優先してくれればよいに変わってしまった。「新聞社の主張を提示する」への期待はわずか8%にすぎません。「権力の監視」ついていえば、政権首脳の巨悪を暴き、政権を打倒したのは、相当な昔です。最近、目立つのは森友学園、加計学園、官僚による文書改ざんなどで、まあ小悪でしょう。今年の新聞協会賞は朝日新聞がこれらの問題で受賞しました。ついでに言えば、自動車業界では、自動車メーカー自身が投票で年間最優秀車を決めるなどということはしていません。電機業界にも、そんなものはありません。お互いが熾烈な競争をするライバルだからです。同業他社が集まって、業界の最優秀作品を決めるなんという慣行をいまだに引きずっているのは新聞業界くらいでしょうか。新聞週間の華である新聞協会賞の表彰式などという過去の遺物を引きづっていることが、新聞業界の同業者体質の象徴です。どの新聞社をみても、同じような紙面構成、同じような取材体制、同じような販売体制をとっています。最も虚偽が多い政界取材を最高位に位置付けて、取材合戦明け暮に明け暮れ、「真実の報道を目指す」でもあるまいと思います。

中国の対日大接近は「強国路線」の一環   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-10-30 04:36 [修正][削除]
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4277/4290
 単なる貿易戦争と言うより米中二大超大国の覇権争いが始まったとみるべきだろう。中国は米国との冷戦状態に入ったが、日本とは関係改善に動くなど二股柔軟路線だ。加えて今年は日中平和友好条約締結40周年の節目の年であり、首相・安倍晋三訪中の極東安定に果たした役割は大きい。背景には米中貿易戦争が、中国の態度に変化を促したことがあるのは確かだろう。中国が日本との関係を強化しようとするのはパワーバランス上の狙いがあるからであり、喜んでばかりはいられない。日本は米中のはざまで、ただでさえ流動化している極東情勢が波乱の激動期に突入しないようラジエーター役を好むと好まざるとにかかわらず求められるからだ。日中関係は安倍訪中により戦後まれに見る良好な関係へと入りつつある。安倍との会談で習近平は「この歴史的なチャンスをつかみ中日関係発展の歴史的な指針とすべきだ」と強調した。さらに加えて習は「日本訪問を真剣に検討する」と来年の訪日を確約した。過去には日本など眼中にないとばかりに、安倍と会っても何かくさい臭いでも嗅いだかのような表情をしていたが、こういった態度をがらりと変えたのだ。これに先立ち下準備のために来日した首相李克強も関係改善の必要を説いており、中国の対日大接近は習政権挙げての大方針として固まっていたことが明白だ。首脳会談で安倍が「競争から協調へ、日中関係を新たな時代へと導いて行きたい」と応じたのは、まさに日中蜜月時代の到来を予測させるものであった。

 世界も安倍訪中を固唾をのんで見守っており、仏の国営ラジオ放送局RFI(ラジオ・フランス・アンテルナショナル)は27日、中国語版サイトで、日中関係について「米中の関係悪化により日中は対抗状態から抜け出す」とする記事を掲載した。記事は、「米国と中国との間の貿易戦争が、世界の『長男』である米国と『次男』中国との関係を全面的に悪化させた。一方で『次男』の中国と『三男』の日本が手を差し伸べ合うことを促し、日中関係を7年間に及ぶ低迷期から抜け出させた」と明快に分析している。 日中関係は1972年の国交正常化で極めて良好な関係に入ったが、以来、絶えず起伏があった。とりわけ、2012年から13年にかけては、尖閣問題や歴史問題で最悪の状態にまで冷え込んだ。安倍は今回経済界リーダー500人を率いて訪中し、500件を超える協定に署名し、「その価値は計26億ドル(約2900億円)に達する」とした。 中国の態度激変の背景には、米中貿易戦争のエスカレートがある。貿易戦争の結果経済は悪化しており、安全保障の分野にまで対立の構図ができつつあり、長期化する様相を見せている。筆者がかねてから指摘しているように中国と米国は、「新冷戦時代」に突入しているのだ。こうした背景を見れば対日接近が、経済的利益につながると同時に対米牽制の狙いがあることは明白であろう。日米関係にくさびを打ち込もうという狙いが透けて見えるのだ。

 この超大国の覇権争いに多かれ少なかれ日本は巻き込まれるだろう。地政学上から言っても、それが宿命だ。だが、日米同盟の絆はいささかも揺るがしてはならない。中国ばかりでなくロシアのプーチンまでが喜ぶことになりかねないからでもある。米中貿易戦争は始まったばかりであり、米国は矛先を緩める状態にはない。対中関係を過剰に緊密化すれば、良好なる安倍・トランプ関係にも影響が生じかねない要素である。その線上で、日米関係が悪化すれば習近平の思うつぼにはまることになる。安倍は日米同盟関係を維持しながら、対中関係改善で経済的利益を最大化するという、サーカスでの“空中ブランコ”を演じなければならないのである。時には習近平の「強国強軍路線」という「新覇権主義」に手を広げて「まった」をかける必要も出てこよう。国連の場などを通じて世界世論に働きかける手段なども必要となろう。

日本主導のTPPがイギリスの危機を救う   
投稿者:赤峰 和彦 (東京都・男性・自営業・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-10-29 13:10 [修正][削除]
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4276/4290
 イギリスのEU離脱まであと半年、イギリスはEU離脱後の国家経済の行方に不安を抱いています。メイ首相はEUとの離脱交渉で、「EUの関税同盟と単一市場からイギリスを離脱させ人の移動の自由を終わらせる」、「モノに関しては自由貿易圏を創設する」などの条件を掲げています。これに対し、ヒト、モノ、カネ、サービスの四つの移動の自由を基本理念に掲げるEUは、メイ政権の提示条件が妥協的であると批判し、交渉は膠着状態に陥っています。しかし、EUの本音は別のところにありそうです。実はEUは、域内2位の経済力と最大の軍事力を誇るイギリスの離脱と、イギリスに追随する他国の動きを警戒し、イギリスに嫌がらせをしているのです。その顕著な例が、メイ政権のモノの移動の自由に関する条件を逆手にとり、アイルランド国境管理問題を持ち出し、北アイルランドがEUとの関税同盟に残留せざるをえないよう仕向けています。つまり、北アイルランドに経済的国境を作るという圧力をかけイギリスの提示条件を拒絶しているのです。これに対し、メイ首相はEUに「合意なき離脱」という脅しをかけ、自らの離脱計画案の再考をEU側に求めています。仮にメイ首相の案をEUがのんでも、あるいは合意なき離脱となった場合でも、イギリス国会で批准されるかどうかは不透明で、メイ政権は厳しい舵取りを余儀なくされています。

 もともとイギリスはEU加盟に積極的ではありませんでした。EUの前々身であるEECにはフランス主導であることを理由に加盟を拒否し、EU加盟時には共通通貨のユーロを使わなかったことなどの事例がそれを物語っています。自国に対するプライドもあるし、EU経済圏に入ることのメリットも少ないと考えていたようです。ただ、ヨーロッパ全体が一つの経済圏としての機能を持ち始めたため貿易の面で加入せざるを得ない事情があったようです。しかも、イギリスはEUの盟主であるのなら離脱はなかったと思われますが、イギリスがEUの大統領を輩出しているわけでもないし、フランス、ドイツなどにリーダーシップを握られていることが面白くなかったわけです。イギリスがリーダーシップを取れなかった理由は国内経済の低迷にあります。イギリスは国家の伝統ばかりを後生大事に抱えていてイノベーションができていなかったことに起因します。イギリス国内の一部には離脱以降、世界経済の中でイギリスが新たな立ち位置を築くことができるのではないかとの期待もあります。しかし、その一方で、メイ首相の構想ではEUの規制から逃れられず、世界各国と自由にFTAを結ぶことができなくなると危惧する意見が出るほど国論が混乱しています。いずれにせよイギリスが歴史的な変化の前に苦悩していることだけは間違いありません。

 先日の英経済紙フィナンシャルの一面に「英国のTPP加盟を歓迎する」との安倍首相のインタビュー記事が掲載されました。内容は「日本は諸手を上げて英国のTPP加盟を歓迎する。英国は合意なきEUを回避するため妥協してほしい」「英国のEU離脱による、日本のビジネスを含むグローバル経済に対するネガティブなインパクトが最小化されることを心底願っている」というものでした。実際、イギリスの窮状を救うことができるのは日本だけのようです。TPP交渉でアメリカの離脱後も粘り強く推進してきた日本が、イギリスをTPPの枠組みに入れることでEU離脱後のイギリス経済の破綻を防ぐことが出来ると考えます。

 さらに、TPPのもう一つの本質的な機能は中国包囲網の形成にあります。TPPへのイギリスの加盟は、海洋国家の日米英の連携が一層強まり、中国政府と中国海軍による違法行為の封じ込めに役立つものとなります。(ヨーロッパでもイギリスの領海、領有は広く、軍事戦略上きわめて有効です)イギリスのTPP加盟はEU離脱後のイギリス経済のマイナス面を補うだけでありません。日本は積極的にイギリス支援に向かうべきだと思います。

英中および英欧関係に関して三船恵美教授に質問 ← (連載2)中国・欧州関係から日本の安保への影響を考える  ツリー表示
投稿者:河村 洋 (東京都・男性・外交評論家・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-10-26 23:17 [修正][削除]
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4275/4290
 駒澤大学教授の三船恵美先生による本欄への寄稿「中国・欧州関係から日本の安保への影響を考える」(10月15日ー16日付掲載)で取り上げられたブレグジットと対中安全保障について質問させていただきます。三船先生の投稿では武器輸出の問題が中心に述べられていましたが、英中間には原発問題をはじめ多くの安全保障問題があります。そしてブレグジット如何にかかわらず、英中の問題はヨーロッパ全体の安全保障に大きな影響を及ぼすと思われます。この問題に関しては本欄に2015年11月25日付けの拙論稿を連載寄稿したこともあり、大いに関心を抱いています。

 第一点は対中関係におけるブレグジットの二律背反性とイギリス政局の動向についてです。三船先生がご指摘の通り、ブレグジットがヨーロッパ諸国の中国に対する連携を弱体化させる懸念があります。その一方でイギリスの政局を見ると、逆の動きもありました。ブレグジット前のキャメロン政権においてはジョージ・オズボーン財務相という名うてのパンダ・ハガーが英中関係緊密化の音頭取りをしていました。当時のイギリスはヨーロッパ諸国の先頭を切ってAIIB加盟を表明しただけでなく、オズボーン氏は軍部や情報機関などからの強い懸念の声を強引に押し退けてヒンクリー・ポイントおよびブラッドウェル原子力発電所の再建を中国に託しました。当時のオズボーン財務相はデービッド・キャメロン首相後継者の最有力候補であり、保守党の諸議員も彼の親中路線に追従していました。皮肉にもブレグジットによるキャメロン政権退陣により、オズボーン氏も一議員に下りました。しかしながら、ブレグジットをめぐるメイ政権の混乱と人民元を金融市場で取り扱いたいシティの利権を考慮すれば、英政界において親中派が巻き返してくる懸念はないのかという点について三船先生の見解をお伺いできれば幸いです。

 第二は中国が請け負った原発再建がイギリスおよびヨーロッパ全域の安全保障に及ぼす影響についてです。テリーザ・メイ首相はキャメロン政権で内相を務めていたこともあって、中国による原発受注に対する懸念を情報機関と共有していました。しかしメイ政権に代わったからといって前政権が外国と成した合意を容易に覆せるわけではありません。ブラッドウェル原発については中国が全額出資するのでイギリス政府の出資は求めないとの条件には、中国によるイギリスの原子力産業支配との懸念の声が挙がっています。中国にはイギリスでの原発再建事業を契機に世界の原子力産業で支配的な地位を築こうとしていると言われます。中国が一帯一路政策に基づいてヨーロッパに築きつつある拠点の内、最も危険視すべきはイギリスでの原発ではないかと私は考えています。それは原発と核兵器の関連、そして両原発が中国のスパイ拠点になる可能性があるためです。中国に対する航行の自由作戦で大きな役割を担うイギリスに、そのような拠点が存在することは由々しき事態と思われます。以上より、両原発が中国の一帯一路構想およびヨーロッパの安全保障に与える影響について、三船先生の見解をお伺いできれば幸いです。

 第三はブレグジットがヨーロッパ諸国の共同防衛に及ぼす影響についてです。三船先生の寄稿文の通り、イギリスの政局がどうあれ域内で最強の軍事大国のEU離脱によってヨーロッパの共同防衛が弱体化することは否めません。現在のヨーロッパでは従来からのロシアとイスラム過激派に加え、一帯一路構想でこの地に進出してくる中国という三つの勢力が主要な脅威になると思われます。そうした中でアメリカのドナルド・トランプ大統領はNATO防衛に消極的かつ懐疑的な言動を繰り返しています。となるとブレグジットがあってもイギリスをヨーロッパ共同防衛体制に留めておく必要性が増すと考えられますが、現実にはEU側の対応は案件ごとに違っている模様です。例えば次世代戦闘機FCAS(Future Combat Air System)計画ではイギリスは除外され、独仏両国が中心になって開発が行なわれることになりました。他方でフランスのエマニュエル・マクロン大統領は自らが提唱する欧州共同対外介入軍にイギリスを積極的に迎え入れ、実際に他諸国とともにこの合意への署名にいたっています。そうした中で中国に対するイギリスとEUの共同防衛体制も分野によって異なってくると思われます。それは武器禁輸の他に中国からの域内投資、情報活動、サイバー戦から南シナ海での航行の自由作戦への参加まで多岐にわたると思われます。こうした各分野で、ブレグジット後も対中安全保障での英欧協力がどの分野で進み易いあるいは進み難いか、先生の見解は如何でしょうか?ヨーロッパと日本の対中安全保障について、以上3点、先生のご考察を伺えれば幸いです。よろしくお願いいたします。

「一帯一路」構想と日本のインフラ支援   
投稿者:倉西 雅子 (神奈川県・女性・政治学者・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-10-26 17:50 [修正][削除]
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4274/4290
 習近平国家主席が自らの威信をかけて打ち出した「一帯一路」構想ですが、当初はその終着地となる英国をはじめとする欧州諸国からも熱い期待が寄せられ、プロジェクト融資の中核となるAIIBも曲がりなりにも順調に発足しました。しかしながら、その実態が明らかになるにつれ、今や全世界レベルで同構想に対する強い逆風が吹き始めています。ところが、日本国政府の動きを見ますと、奇妙なことに中国と一緒になって逆風に抵抗しているように見えます。何故ならば、「一帯一路」構想の名称は外してはいるものの、中国との間で第三国に対するインフラ融資の協力事業を実施する方針を示しているからです。

 政府の説明によれば、中国一国に任せておくと、融資先国を「借金漬け」にし、政治的要求を突き付けたり、借金の形に人民解放軍の軍事拠点を獲得するケースが頻発するため、こうした中国の阿漕で高利貸し的な手法に歯止めをかける必要があるそうです。いわば日本国政府は、評判のすこぶる悪い中国を外部から監視するための「お目付け役」の役割を買って出たのであり、一見、財政支援を受けるインフラ・プロジェクト実施諸国にとりましては「救世主」のようにも見えます。言い換えますと、日本国の対中インフラ協力の主たる目的は、中国を援けるのではなく、中国の脅威に直面している融資先国を援ける、保護するところにあるとされたのです。ここに、日本国政府は、一体、誰の「救世主」になろうとしているのか、という問題が提起されるのですが、果たして、日中協力の先にはどのような事態が待ち受けているのでしょうか。

 少なくとも、風前の灯となった「一帯一路」構想が延命されるという側面においては、日本国政府は、「中国の夢」の実現に手を貸すことになります。その理由は、「一帯一路」構想とは「全ての道は中国に通ず」と言わんばかりの中華思想に基づく中国の世界覇権プロジェクトであり、上述したように名目上は同構想との関連性を否定しても、結果的には、中国発案の構想の枠内での協力となるからです。外貨準備の減少に悩み、かつ、米中戦争の激化によってさらなる景気後退が予測される中国側ら見れば、日中協力は、資金面での負担軽減を意味します。たとえ、日本の協力によって相手国に対する貸付金利の利率が低めに設定され、「高利貸し」が抑制されたとしても、プロジェクト自体が実現すれば、貸付資金も無事に回収できます。また、仮に、現在進行中の高金利の貸付によるプロジェクトにおいて相手国側が債務不履行に陥ったとしても、その損失は、共同出資者である日本国政府の肩にのしかかります(あるいは、現時点で、日本の協力を求めてきていることは、既に資金回収が不可能となりそうプロジェクトがあり、その損失を日本に肩代わりさせるためか)。何れにしましても、中国としては御の字なのです。

 その一方で、融資先国を支援する結果をもたらすのか、と申しますと、そうとばかりは言えないように思えます。日本国政府が参加するとなれば、低利融資により財政負担や債務不履行のリスクが軽減されることは確かです。しかしながら、「一帯一路」構想の目的、並びに、将来的ヴィジョンとしての華夷秩序の再来を考慮しますと、日本国の協力によるプロジェクトの推進は、中華経済圏に取り込まれ、属国扱いされかねない融資先諸国、特に一般国民にとりましては「悪夢」となるかもしれません。つまり、日本国政府は、「救世主」どころか、これらの諸国を中国に差し出す役割を演じてしまうかもしれないのです。こうしたリスクがある限り、日本国政府は、海外諸国に対してインフラ面における支援を行うならば、中国と組むよりも「一帯一路」構想とは一線を画し、独自の判断で単独支援を実施した方がより安全なように思えます。あるいは、同盟国であるアメリカのトランプ政権も同地域におけるインフラ支援プロジェクトを提唱しておりますので、アメリカのプランに協力するという選択肢もあるはずです。少なくとも、中国の「救世主」となるような日中協力につきましては、日本国政府には対中協力の義務もありませんし、日本国民にも財政負担のみならず、将来的には安全保障上の重大なリスクが生じる可能性があるのですから、人類に災禍をもたらしかねない覇権主義国家への協力は見直すべきではないかと思うのです。

サウジの米、トルコとの軋轢深刻化   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-10-25 06:29 [修正][削除]
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4273/4290
 なんともはやアラビアンナイトの千夜一夜物語を読むような凄惨さである。サウジ人記者ジャマル・カショギ殺害事件は、サウジ皇太子ムハンマド・ビン・サルマンの意向と深い関係なしでは考えられない。本人は「下の者がやった」と日本のヤクザの弁明のような発言をしているが、信ずる者はいまい。目撃者も多く真相はやがて確実に日の光を見るだろう。当然国連でも採り上げるべき問題だろう。サウジは最も重要な同盟国である米国、および中東で有数の軍事力を誇るトルコ双方との間で大きな軋轢を抱えることとなった。米国はサウジとの同盟関係を維持しつつ、皇太子の暴挙を批判しなければならない二律背反状態に陥っている。

 サウジ側の声明ではカショギが「けんかと口論の末殺された」としているが、59歳の分別あるジャーナリストが、多勢に無勢のけんかを本当にしたのか。トルコ当局によると「殺害されその場で死体はバラバラにされた」としているが、死体の解体によって隠ぺいできるという判断自体が幼稚で度しがたい。実行犯は15人でそのうち5人が皇太子の護衛であったという。護衛と言えば戦闘訓練を積んだプロであり、素人の殺人事件とは性格を異にする。外相アデル・ジュペイルは「皇太子はもちろん情報機関の幹部も感知していない」と関与を頭から否定しているが、信ずる者はいない。カショギは従来から皇太子の独裁的な手法を非難してきており、殺害はその報復と見て取れるからだ。ムハンマドも「自分は事件とは関係なく、下のレベルで行われた」と述べているがこの発言も語るに落ちた。「下のレベル」とは部下だからだ。大使館内とはいえ国内で事件を起こされたトルコの大統領エルドアンは「情報機関や治安機関に責任を負わせるのでは誰も納得しない」と、サウジ側の発表に強い不満を表明している。加えてエルドアンは「殺害は偶然ではなく、計画的なものだ。我々は動かぬ証拠を握っている」とも発言している。

 米大統領トランプも「目下のところ現地では皇太子が取り仕切っている。上層部の誰が関与したかと言えば彼だろう。史上最悪の隠ぺいを行った」と述べていたがその姿勢は揺れに揺れてる。関係者のビザ取り消しなど厳しい対応を示唆したかと思うと、サウジへの武器輸出は推進。しまいには「下の者がやったと皇太子は言っていた」皇太子を擁護までした。まさに右往左往の醜態を示した。米CIA(中央情報局)は、まさに活躍の場を得たとばかりに、膨大な情報をホワイトハウスに送り込んでいるに違いない。トランプは皇太子の発言を信ずるかCIAを信ずるかと言えば、いうまでもなくCIAだ。一方米議会からは「米国の基本的な価値観は自由を守り民主主義を維持することであり、マスコミ関係者を殺害するという行為を認めるわけにはいかない」とのスジ論が巻き起こっている。

 米国にもジレンマがある。もし制裁で武器輸出を禁止した場合には、喜ぶのはプーチンと習近平だからだ。サウジをロシアや中国からの武器輸入に追いやることはなんとしても避けなければならないのだ。なぜなら中東安定の構図にマイナスの要素が入り込むからだ。しかし、米国内世論は圧倒的に皇太子への何らかの制裁を求める空気が濃厚であり、トランプは中間選挙を目前にして苦しい選択を強いられる状況だろう。 ムハンマド皇太子は24日、国際社会から激しい批判を浴びる中、サウジ政府として、犯人を裁く考えを示した。皇太子は、「忌まわしい出来事で、正当化されるものではない」と語っているが、今後国連などでのサウジ批判噴出は避けられず、皇太子は外交面で困難な状況に直面した。

鄧小平の柔らかな手   
投稿者:鍋嶋 敬三 (神奈川県・男性・評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-10-24 12:02 [修正][削除]
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 安倍晋三首相が10月25日から3日間、日本の首相として中国を7年ぶりに公式訪問する。日中平和友好条約が1978年10月23日発効して40年。思い出深いのは1年後、79年12月の大平正芳首相の中国訪問である。首相に同行した当時の取材メモを繰ってみると、北京の人民大会堂で首相と会談した最高実力者・鄧小平副首相のこんな言葉が残されていた。鄧氏「首相の訪中は、両国関係の発展(だけでなく)、国際的に非常に重要な意義を持つ」。中国にとって条約の最重要ポイントは「反覇権条項」であり、当時厳しく対立していた対ソ連戦略上、欠かせないものだった。79年初頭の米国との国交正常化と相まって、大平訪中は中国にとって極めて大きな意味があった。

 大平首相が「近代化を進める中国の将来について、どういう自画像をお持ちか?」と問い掛けたのに対して、鄧氏は「今世紀末までに国民所得を持ち上げたい。(1人当たり国民総生産=GDP)1,000ドルくらいにもっていければと思う」と具体的な数字で答えた。1978年の所得が229ドルだった。鄧氏の改革・開放政策で中国経済は躍進、世紀末の2000年には959ドルと想定通りに飛躍した。2017年には8,836ドル(IMF統計)と38倍に跳ね上がった。日中関係の安定と通算3兆円以上の日本の政府開発援助(ODA)は中国の世界戦略上も大きな意味を持ったのである。その鄧氏と握手する機会があったが、筆者よりも小さく、柔らかな娘のような手の感触に驚いた。3回にわたる失脚と復活を経て最高実力者として権力を掌握した人物の手とは思えなかったからである。しかし、第二次天安門事件(1989年6月)で民主化を求める学生などの大規模デモを多数の犠牲者を出して弾圧したのは軍を掌握した鄧氏といわれる。民主派にとっては「魔手」でしかなかった。

 10年前の条約30周年時にもe-論壇「百花斉放」に書いたことがある。条約交渉が4年もかかったのは 中ソ対立が絡む「反覇権条項」を巡って難航したためだが、当時の交渉責任者だった中江要介外務省アジア局長はこの条約の一番の意味は「日中相争わず」にあると指摘していた。しかし、その後の反日暴動、日本製品不買運動、尖閣諸島領海侵犯など中国の対日強硬策を見る限り、中国の側には「相争わず」の意思があったのか、問われる。当時の小論は、中国が直面する問題として内政面では経済格差の拡大、幹部の腐敗への国民の不満、社会の不安定化、外交面では軍備拡充によるアジア安全保障環境の悪化、さらに対日外交では歴史問題を背景にした反日気運、緊張の繰り返しを指摘した。

 これらの問題は10年後の今日も変わらないどころか、尖閣問題や南シナ海での中国の行動を見れば深刻さを増している。最大の問題は中国の大国化につれて露わになってきた覇権国家志向である。鄧小平氏は条約批准のため来日した当時の記者会見で「覇権主義こそが国家間の不安定をもたらす根源だ」として「中国は強大な国になったとしても、決して覇を唱えません」と断言した。しかし、世界第2位の経済大国となり、軍備を大拡張している現在、習近平国家主席が「太平洋を米国と二分する」意思を示し、弱小国に返済不能な融資をして「債務の罠」に陥れて新手の「植民地主義」と批判されている。日本の世論も条約締結当時の「日中友好」ムードは冷め切っている。内閣府調査(2017年10月)では「中国に親しみを感じる」人は18.7%に対して、「感じない」は78.5%と圧倒的多数が否定派だ。中国共産党政権による反日政策や攻撃的拡張主義を日本国民は経験を通じて学んだのである。日中間で「平和」「友好」「親善」などの巧言が費やされようとも、日本国民が手放しで受け入れないのは、この40年間の歴史を「鑑(かがみ)」としているからである。

わが国の北極戦略はどうあるべきか   
投稿者:四方 立夫 (東京都・男性・エコノミスト・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-10-23 13:37 [修正][削除]
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 駒澤大学教授の三船恵美先生は10月16日付け投稿「中国・欧州関係から日本の安保への影響を考える」の中で北極海航路の問題に関し論じておられるが、まさに正鵠を得た議論である。北極には平和利用を定めた南極条約のような国際ルールが整備されていない。1996年に北極圏国(ロシア、米国、カナダ、フィンランド、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、アイスランド)を中心とした北極に関する唯一の政治組織である北極評議会が設立され、日本、中国、英国、フランス、ドイツ、インドなどがオブザーバー国となっている。ロシアは国連海洋法条約(UNCLOS)21条(無害通航に関わる沿岸国の法令)及び234条(氷に覆われた水域)を根拠に北極海航路の規制制限を主張しており、航行に際し事前通知、水先案内及び砕氷船の随行などを義務付ける法令を適用している。また、北極海は大陸棚が非常に広くかなりの部分を延長区域に区分けできる可能性があることから、ロシアは大陸棚延伸の主張を行っている。さらに、連邦保安庁(FSB)に所属するロシア国境警備隊により国境管理が強化され、北洋航路管理局を新設し、2013年プーチン大統領は「北極はロシアがここ数世紀に亘って主権を保持する不可分の地域だ」と述べ、北極開発を推進している。

 中国はデンマーク、フィンランド、カナダ、など北極圏国との関係を強化すると共に、北極調査の実績を重ね、北極海航路を航行し、将来的には中国の国際貿易の最大15%が北極海経由となる、とも言われている。さらに、北極海における米露の原潜の活動が活発化する中で、中国原潜も新たなアクターとして登場する可能性もある。一方、ロシアは北極海のアジアとヨーロッパの中間にあるヤマル半島においてLNGの開発を行い今年末には年間1,650万トンが生産される予定であり、さらにその対岸に年間2,000万トンのLNGプロジェクトを計画する中で、年間8,400万トンを消費する世界最大の消費国である日本も参加を求められている。このLNGの掘削コスト並びに製造のランニングコストは安価であり、極地の気候はマイナス162℃に冷却/液化して輸送する LNGには有利であるとされているが、日本着ベースでの価格競争力に関しては慎重に検討する必要がある。ヤマル半島~日本への北極海ルートの距離は約5,000海里、LNGの主要輸出国であるカタール~日本の距離は約6,600海里であるが、海上運賃は単純に航海日数に比例して決まるものではなく、海上の状態並びにそれに伴うリスクによって大きく異なる。且つ砕氷LNG船の建造コストは通常の1.5倍、これにロシアの水先案内人並びに砕氷船の随行コスト、及び海上保険料を考慮をすると、中東~東南アジアからの輸入の方が安価で且つ安全である公算が大である。

 現在ロシアはサハリン1原油生産プロジェクトにおいて日米民間企業など5社を「不当な収入を得た」として提訴中であり、サハリン2LNGプロジェクトにおいても当初外資100%でスタートしたにも関わらず、販売先が確保されLNG価格が急騰すると突然環境アセスメント不備を理由に中止命令を出し、最終的にはガスプロムが「50%+1株」を取得して主導権を握ることにより決着した経緯がある。従い、北極海航路の開拓並びに資源開発には、複雑な政治リスク並びに経済コストの問題がある故、「北方領土問題を解決して平和条約を結ぶ」ことに前のめりになり、ロシアと経済的合理性に乏しい契約を締結することが無きよう、厳しくリスク及びコストの見極めを行うことが肝心である。また、世界中で大規模な構造変革が進行するエネルギーの分野に於いて、戦前から唱えられている「石油の一滴は血の一滴」の如く「量」の確保のみならず、価格競争力及び契約の柔軟性を担保することが肝要である。特に、今後炭化水素の世界のエネルギー全体に占める割合が相対的に減少し、超長期の硬直的な契約が主体であったLNGに於てもシェールガスの登場により短期の柔軟な契約が可能となってきたことから、民間のビジネスの視点を踏まえていくことが重要である。世界地図を90度回してロシア~中国の側から日本列島を見れば、まさに我が国は北方領土~尖閣諸島に至るまで南北に亘り両国の太平洋への進出をブロックする移置にあり、北極海航路並びに資源の開発が進むにつれ日本の戦略的地位は益々重要となる。今後とも日米同盟を基軸としながらも、関係各国との二国間~多国間のパートナーシップを構築し、日本の国益に沿った北極戦略の構築が喫緊の課題である。

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