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米ロ首脳会談と世界秩序の行方   
投稿者:河村 洋 (東京都・男性・外交評論家・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-07-16 13:25 [修正][削除]
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4200/4200
 米露両国の首脳会議では、大国間の競合をめぐる世界の戦略的な光景が特にヨーロッパと中東で変わるとも考えられる。ヘルシンキで7月16日に開催される太った男と筋肉男の首脳会談は、北朝鮮という特定の核の脅威についての交渉に過ぎなかったシンガポールでの太った男と太った男の首脳会談よりもはるかに重要である。さらに、この首脳会談が開催される時期に合わせて12人のロシア人スパイが2016年アメリカ大統領選挙への介入で起訴された。ヘルシンキ首脳会談と事前のNATO首脳会議を前に、ドナルド・トランプ大統領はドイツからの米軍撤退ばかりかロシアのクリミア併合承認まで口走って、批判を招いた。これは西側同盟と国際政治での法の支配の完全な否定である。さらにスティーブン・ウォルト氏は「NATOとEUがなければヨーロッパは戦前のような国家中心の競合の場となるので、どちらの多国間安全保障機関もアメリカの国防費削減に一役買っていることをトランプ氏は理解していない」と指摘する。アメリカの安全保障関係筋ではヨーロッパ同盟諸国の不安を鎮めようとあらゆる手を尽くしている。クリミアに関しては外交問題評議会のリチャード・ハース会長が「ジョン・ボルトン国家安全保障担当補佐官が7月1日放映のCBSニュース『フェイス・ザ・ネーション』に出演した際に、トランプ氏がプーチン政権による非合法的な強奪を承認しないと確約することができなかった」と指摘する。さらに問題となるのは、トランプ氏がスタッフの同伴なしにロシアのウラジーミル・プーチン大統領と会談することである。

 トランプ氏とプーチン氏は強権的なリーダーシップを好み、同盟を尊重しないという思考様式で共通している。よって専門家達はトランプ氏が選挙介入とシリアでプーチン氏に宥和姿勢をとるのではという危機感を抱いている。そうした中でトランプ政権はシリア南西部でヨルダンとロシアに支援されたアサド政権の間での停戦を模索している。そうした事情からトランプ氏はロシアとの妥協に余念がないが、アメリカの政府高官はアサド政権が再び化学兵器を使用しないか警戒している。アメリカの同盟国の間でもイギリスとウクライナはそれぞれが、ソールズベリ毒攻撃とクリミアおよびドンバスでのクレムリン代理勢力の活動によってロシアと厳しい対立を抱えている。そのため両国ともヘルシンキで致命的なディールが結ばれないかという重大な懸念を抱いている。最も危険な問題点は、トランプ氏がアメリカ外交にとっての同盟の重要性を評価できないままにプーチン氏と会談することである。ビクトリア・ヌーランド元駐NATO大使は『ニューヨーク・タイムズ』紙7月6日付けの論説で「戦後を通じてアメリカの歴代大統領はヨーロッパ同盟諸国の支持を固めてソ連およびロシアの指導者との会談に臨んだが、トランプ氏はNATOがアメリカの対露外交に多大な力を及ぼしていることを理解していないがためにこうした立場を弱体化させている」と論評する。さらに「ロシア国民はシリアやクリミアでの軍事的な成功によって自分達の愛国心を満足させるよりも、西側の制裁解除による経済の好転を望んでいる」とも述べている。言わばアメリカはロシアとの外交上のやり取りで相手よりも強い立場にある。しかしヌーランド氏は「トランプ氏がクリミアや選挙介入の件でロシアとの妥協に傾き過ぎることで、最終的にプーチン大統領の立場を再び強くしてしまうのではないか」と深刻な懸念を述べている。

 しかし問題がトランプ氏自身より根深いのは、共和党がプーチン大統領が仕かける工作の簡単な餌食に陥ってしまったからである。以前の共和党はクレムリンに対してはより強硬であり、ビル・クリントン政権がボリス・エリツィン政権のロシアをG8に加盟させる決定を下した際には警戒の念をあらわにしていた。しかし現在の共和党が国家安全保障よりも党利党略を優先していることは、ヒラリー・クリントン氏のeメールへのロシアのハッキングの一件に典型的に表れている。このような雰囲気の中で、トランプ氏は外交政策のエスタブリッシュメントが長期的な同盟関係の構築に向けてきた取り組みを無下にあしらい、自分のビジネスの利益のための外交を追求している。それがかれの個人的な勝利のために行なわれるディール志向の外交である。そうした共和党の劣化に関してブルッキングス研究所のジェイミー・カーチック氏は昨年7月18日付けの『ポリティコ』誌でさらに深い分析を進めているが、ここで注目すべきはジェブ・ブッシュ氏やマルコ・ルビオ氏の下であれば彼が共和党の外交政策の一翼を担っていた可能性のある人物だということである。よって「トランプの共和党」についてこれから述べる批判は、間違っても民主党革新派の観点からではない。クリントン氏のeメールの件で最も致命的な問題は、選挙期間中に大多数の共和党政治家はロシアが盗み取ったeメールを入手してクリントン氏への誹謗中傷を行なったことである。見過ごしてならぬことは、マイク・ポンペオ現国務長官もプーチン大統領とウィキリークスが仕掛けたこの誹謗中傷に積極的、しかも事情を承知のうえで関与したということである。共和党の中でもジョン・マケイン氏やマルコ・ルビオ氏などごく一部がプーチン政権の工作への支援を拒絶した。実のところアメリカの保守派の間で親露的な考え方が見られるようになったのはトランプ氏の台頭以前のことで、特に反LGBT運動など社会問題において顕著になっていた。またプーチン氏とトランプ氏の支持層は世界的に広まるミー・トゥー運動を馬鹿にしきっている。ポリティカル・コレクトネスやグローバル化に困惑した今の共和党支持層は、プーチン氏がKGBでの経験を通じて抱くようになった非自由主義的で反西欧的な価値観に惹かれるようになっている。彼らのアメリカ第一主義がプーチン氏の世界観と共鳴するのは、リベラルな世界秩序を下支えするNATOやEUのような多国間安全保障機関に対して彼らが懐疑的だからである。これぞ共和党の政治家や支持層が今や国家よりも党利党略を優先するようになった重要な理由である。「レーガンの党」はこのようにして「プーチンの党」に堕落してしまったのである。

 最後にヘルシンキ首脳会談がヨーロッパと中東を超えて及ぼすであろう影響について述べたい。中国外務省はこの首脳会談がグローバルな課題を解決するうえで一役買うことを望むと表明した。そうした中でインドはトランプ政権がユーラシアから手を引くようになれば、この大陸全土で自国の影響力を強める新たな好機が訪れると見ているが、ヨーロッパはその結果もたらされる巨大な力の真空を憂慮している。中国と北朝鮮の脅威増大に直面する日米同盟は、トランプ氏の問題発言はあっても表面上は上手く機能しているように見える。しかし彼の法外な選挙公約が本気であってハッタリでないことは、全世界を相手にした貿易戦争や先のNATO首脳会議での罵詈雑言にも見られる通りである。重要な問題は世界の中でのアメリカの役割と同盟ネットワークについて、トランプ氏が基本的にどのように考えているかである。ヨーロッパでも見られたように、トランプ氏は在韓米軍の撤退を口にして、日本を含む東アジア諸国の間に不安が広がった。それらの失言からは、彼の経営センスに基づく視点からはアメリカの同盟国など負債としか見ていないことがわかる。さらにウクライナでのクリミアおよびドンバスへの侵入、ソールズベリでのロシアの元スパイとイギリス人一般市民に対する毒攻撃、ヨーロッパとアメリカでの選挙介入といったクレムリンの所業に対するトランプ氏の宥和的なアプローチでは、国際政治における法の支配を侵害するプーチン氏の行動に青信号を発したのも同然である。それでは南シナ海での航行の自由作戦へのアメリカの関与にも疑念が生じる。また、ヨシフ・スターリンによる非合法的な北方領土の強奪に対する日本の訴えも土台から揺らいでしまう。トランプ・プーチン首脳会談にはあまりにも多くの懸念材料がある。

はやぶさ2への期待   
投稿者:船田 元 (東京都・男性・衆議院議員(自由民主党)・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-07-13 10:43 [修正][削除]
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4199/4200
 去る6月29日には観測史上はじめてという、6月中の梅雨明けが宣言された。雲一つない夜空に、満月がまるで作り物のようにぽっかり浮かんでいた。地球からの距離が約37万キロメートルにある月の、さらに1000倍近く離れた小惑星リュウグウに、探査機はやぶさ2が、3年半かけてようやく到達したとのニュースも飛び込んで来た。

 はやぶさ1号機は同様に小惑星イトカワに、10年以上前に到達したが、機材のトラブルに次々と遭遇し、一時は諦めかけようとしたが、スタッフたちの不屈の対応により、奇跡的に地球に帰還させることができた。その時の感動的な経過がのちに映画化されて、人々の記憶に焼き付けられた。1号機はサンプルが満足には採取出来なかったが、今回は幸い故障もなく、地球誕生と同じくらいの45億年前の岩石サンプルを、リュウグウから持ち帰ってくれるのではと、大きな期待が寄せられている。風化してない45億年前の岩石を調べることによって、地球の生命の起源を探ることが出来ると言われる。

 昨今は科学技術振興予算にも、費用対効果の厳しい目が向けられている。民主党政権時代の事業仕分けでは、スパコン開発を巡り「2位じゃダメなんですか?」と言われたり、JAXAの大切なPR予算が削られたこともあった。今も基礎研究より応用が大事だという風潮がある。今回の小惑星探査ミッションも「生命の起源を探る」という、純粋科学的な研究の典型である。しかし実は、3億キロも離れた天体に30数億キロをかけて飛行させるスウィング航法や、羽根のない扇風機と理屈が同じイオンエンジンや、太陽風に長時間晒されてもビクともしない新素材など、私たちの暮らしに直結する技術も生み出しているのだ。我が国の科学技術政策の弱点は、しばしば基礎か応用かの二者択一を迫ることである。「基礎なくして応用なし」「応用なくして基礎なし」の構え、大谷翔平ではないが「二刀流」の心持ちが、とても大切なのではなかろうか。

死刑制度をめぐる議論と憲法9条   
投稿者:篠田 英朗 (東京都・男性・東京外国語大学大学院教授・40-49歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-07-12 18:36 [修正][削除]
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4198/4200
 先週末、オウム真理教の死刑囚たちの刑の執行が行われ、大きなニュースになった。1995年の地下鉄サリン事件当時、私は留学先のイギリスにいたが、欧州のメディアでも大きく取り上げられていたことは鮮明に覚えている。そのため欧州の人々も、今でもこの事件をよく覚えているだろう。そこでEU諸国は、死刑執行の報に接し、被害者への同情を表明しつつ、死刑制度への反対を表明、つまり死刑執行を批判した。違和感が残るのは、EU諸国の動向を伝える記事に「戦後最大規模の死刑執行、世界に衝撃 非人道的と批判も」という題名をつけるときの「世界」という概念の使い方だ。この場合、「世界」ではなくて、「欧州諸国」だろう。他方、7月6日、大雨災害とオウム事件死刑囚の死刑執行と同じ日、「リンちゃん事件」の犯人に「無期懲役」の判決が出された。ベトナム人のご両親は、死刑判決を求めて署名運動をしている。欧州諸国が「世界」であって、ベトナムや日本は「世界」ではない、ということはない。

 もちろん世界の半数の国々で死刑制度は廃止されている。それに加えて、心情的に廃止に近く、事実上の執行停止をしている国々も多い。とはいえ、欧州以外の地域では、対応は分かれている、という言い方もできる。イスラム圏で死刑制度が廃止になる見込みはない。私自身、平均的な日本人とともに、死刑制度を容認する気持ちを持っている。しかし、このことが、「世界」に反しているとまでは思わない。そういうふうに単純に世界を「白黒」で分けるような問題ではないのだ。欧州に行けば、死刑制度廃止は、常識である。私は、そういう欧州人が嫌いかと言えば、そんなことはない。欧州人は付き合いやすいし、欧州は住みやすいし、今は日本より豊かだ。欧州には、実力がある。ワールドカップもベスト8から欧州勢だけになってしまった。寛大な移民政策と自由主義社会の魅力のなせるわざだ。価値観の共有は、統合力のある欧州の強さの源泉だと言ってもいい。私は死刑廃止論者ではないが、アムネスティの会員である。死刑廃止の点だけをとって、アムネスティの行っている素晴らしい活動を否定するのは、馬鹿げている。というか、死刑を容認するからといって、死刑廃止論者の意見を劣ったものとみなすのは、馬鹿げている。人間の命を奪う行為に、単純な黒白があるはずがない。死刑廃止論というのは、実は、「終身刑」導入論のことである。「死刑」の代わりに「終身刑」を課すべきだ、というのが、実は欧州諸国における死刑廃止論と呼ばれている思想のことである。私には、正直、どちらがいいのか、よくわからない難しい問いだと思う。

 問題なのは、議論の構図そのものが日本ではよく理解されていないことだ。日本の「法律家共同体」は、議論を深めるために、努力を払っているだろうか。「世界」は死刑廃止なのに、日本は「世界」から外れている、ただし「法律家共同体」だけは「世界」と一緒にいる、といった話になっていないだろうか。日本国憲法はフランス革命によって成立した、護憲派であれば「世界」と一緒だ、改憲派ならナチスの再来だぞ、みたいな話に持っていこうとしていないだろうか。日本には「終身刑」がない。結果として、大きな矛盾を作り出していることは、周知の事実だ。「無期懲役刑」では、実際には、30年くらいすると、仮釈放されてしまう可能性がある。理論上は、更生の可能性があるから「無期懲役」なのだが、実態としては一人の殺人だけだと死刑にならずに「無期懲役」になる、という習慣になってしまっている。殺したのが一人か、二人か、という機械的な算術で、「無期懲役」と「死刑」の差に振り分けるのが、日本の「法律家共同体」の「良識」となっているのだ。はっきり言って、優れた習慣だという気はしない。

 憲法9条をめぐる「法律家共同体」の「良識」と同じである。何のことはない。同業者だけの内輪で談合のように習慣を決め、その習慣から逸脱する者には人事上の不利益という制裁を加えるという仕組みで、司法界だか学界だかの権力構造を維持し、権力者が権力者のままでいられるようになっているだけだ。だが実態としてそういう習慣もあり、日本で死刑制度を廃止するのは、難しい。まずは終身刑を導入してみたら、大きく変わるところもあるだろう。「無期懲役」が減るだけでなく、「死刑」も減るはずだ。死刑制度を廃止する前に、実態として死刑判決を減らすことができる。とすれば、「死刑廃止」と叫ばず、「終身刑導入」を着実に説明してみたらどうか。実は憲法9条も同じだ。まずは9条を廃止にしなくても、「世論に沿った良識」を働かせて、憲法制定趣旨にそった運用または解釈確定のための改憲をすればいい。つまり自衛権の行使を認め、その行使主体の合憲性を明示する国際法に沿った憲法の運用または解釈確定をすればいいのだ。しかし、「法律家共同体」の「良識」は、そういうふうには働かない。「法律家共同体の良識」は、そういう柔軟対応を認めない。「護憲派」ではないとなれば、もう即座に「ナチスの再来」「ヒトラーに酷似」「戦前の復活」「いつか来た道」、要するに「軍国主義者」か「三流蓑田胸喜」、せいぜい「従米主義者」だと糾弾し、全否定を加えなければならない。法律家の方が率先して「I respectfully disagree」と言ってくれる社会にはならないものか。

貿易戦争には「利」をもって応えよ   
投稿者:四方 立夫 (東京都・男性・エコノミスト・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-07-11 12:30 [修正][削除]
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4197/4200
 遂に米中貿易戦争が勃発した。さらに、EU、カナダ等を巻き込んだ世界規模に発展する虞も無しとしない。「貿易戦争に勝者はいない」ことは、1930年フーバー米大統領が署名したスムート・ホーリ-法案による関税大幅引き上げが、前年の株価暴落を世界大恐慌にまで拡大させた一因であったことからも明らかである。しかしながら、トランプ大統領は歴史に学ぼうとせず、目先の中間選挙~次期大統領選挙を最優先し、自身のコアの支持者層の支持を強固にすると共にさらに共和党保守層の支持も増やしつつあり、もはやトランプ大統領に自由貿易の「理」を説いても聞く耳は持たないであろう。

 我が国が日EU・EPAおよびTPP11の合意に続き、TPPへの参加国の拡大、さらに従来必ずしも積極的ではなかったRCEPの年内合意に向けて舵を切り、米国をメガFTAsで囲い込み同国のTPPへの復帰を促そうとしていることは、安全保障の面からも極めて重要であり今後とも粘り強く交渉すべきである。関税引上げはその意図に反してハーレー・ダビットソンの生産の一部国外移転表明を招くなど、米国製造業の保護並びに雇用の増加に貢献するかは疑問なしとしない。貿易が二国間の単なる輸出入に留まらず、設計~原材料~部品~中間製品~完成品のサプライチェーンが世界中に複雑に張り巡らされたネットワークとなり、米国もその主要な一員となっている現在、保護貿易が短期的経済利益だけを見ても米国自身にとって結局はマイナスとなる可能性が高い。

 米国は我が国に対してもFFR(Free, Fair, Reciprocal)協議を求めFTA締結を迫っているが、これはまさに1980年代のデージャビューであり、数量規制、価格規制、為替規制、などの管理貿易に陥ることは何としても避けなければならない。従い、議論を貿易赤字にのみ焦点を当てるのではなく、米国のラストベルトを始めとする伝統的製造業の衰退しつつある地域に対する日本の「政官民」挙げて、特に「民」を中心として、米国産業界との密接な連携を通じ競争力強化、産業構造転換、人材再教育、新規事業投資、など日米経済協力により、「理」ではなく「目に見える利」によって対応していくことがトランプ政権には有効である。短期的な貿易赤字削減には米国防衛産業からの輸入の拡大などの「速攻」も必要となろう。貿易戦争の目的は赤字削減に加え中国の知的財産権侵害の阻止にある。「中国製造2025」の最大の目的は「コア技術の自主創新」であり、その為に積極的にハッキンング等により米国を始めとする先進諸国の技術の盗用を実行している。言わばテクノヘゲモニーを巡る米中の戦いである。皮肉なことにITの現場では米中の相互依存が進行しており、多くの中国出身者が米国の大学を卒業し米国の企業で働きIT業界に於いて重要な役割を果たしている。問題はその中国人技術者が中国政府からの好条件提示を受け次々と帰国し、米国の技術が中国に流出していることにある。

 中国による知的財産権侵害は米中の問題に留まらず、広く中国vs自由主義世界の問題であり、本件においてこそ日米欧並びにカナダ、オーストラリア等の自由主義国が結束して中国と対峙し、新たにITの世界における「世界標準」となるルールの構築に臨むべきである。その為には、先ず目先の利益に捉われているトランプ政権に対し、日、EU、カナダ、オーストラリア等が、かかるルール構築が米国の利益に適うことを「利」をもって説くことが肝要である。また、我が国自身も世界に後れを取っているAI、量子コンピューターを始めとするIT人材の育成に産学協力により最大限尽力すると共に、ノーベル賞受賞者の大隅氏の「日本の大学の状況は危機的で、このままいくと10年後、20年後にはノーベル賞受賞者が出なくなると思う」との強い危機感を払拭すべく、国を挙げて優秀な理系人材の育成を図ることが「技術立国日本」の再生に繋がり、貿易戦争に負けない基礎体力の養成に貢献するものである。

安倍一強にないないづくしの候補ら   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-07-10 05:20 [修正][削除]
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4196/4200
 宮本武蔵の決闘伝説のようで、初めから勝負が分かっている果たし合いが行われようとしている。9月の自民党総裁選である。どこか首相・安倍晋三に隙がないかと鵜の目鷹の目で探してみるが、はっきり言って兎の毛で突くほどの隙もない。だからときの声を上げる元幹事長・石破茂や総務相・野田聖子も、横綱にふんどし担ぎが群がるような感じであり、岸田文雄に至っては土俵に上がるのさえちゅうちょしている。はっきりいって50数年政局一筋で観察してきて、これほど簡単に見通せる総裁選も珍しい。だから面白くないが、筆者としては正直に書くしかない。豪雨被害優先は当然で、政局は休戦の状態だが、反安倍に凝り固まったような民放テレビ出演などでホットなのは石破だ。8日のTBS「時事放談」では、昔の親分の渡辺美智雄の言葉を引用して、出馬の弁をまくし立てた。石破によれば渡辺は「政治とは勇気と真心を持って真実を語ること」と述べていたそうで、石破はこれを踏襲するのだそうだ。踏襲すれば「国民に分かったもらえる」のだそうだ。この発言から分かることは石破は「国民」に照準を合わせているのであって、国会議員は二の次なのである。石破戦略は、今後党員票獲得に向けて発言を強め、その“効果”を背景に、国会議員票を動かそうとしているかのようである。

 石破のこの戦略は12年の自民党総裁選で石破が地方票で勝って、安倍の心胆を寒からしめたことが経験則として根強く存在する。しかし、12年の総裁選は安倍が首相になる前であり、今回の総裁選で同様の地方票が出るかというと甘くない。首相になった安倍を地方組織といえども敵に回せばどうなるかは自明の理であり、安倍側に油断のない限り、勝てっこない石破に投ずる地方票は激減することは確実だ。それでは国会議員票はどうか。まず国会議員の心理を読めば、3選確実の現職首相をさておいて、誰がみても敗北する石破に自らの“身命”をなげうって投票するケースが大量に生ずるだろうか。石破支持は、今後3年間の“冷や飯”につながりかねないのである。議員は陳情などで選挙区とつながっているのであり、陳情の効果がない議員からは票が逃げるのが実情だ。加えて、石破派なるものの実態がどうも弱々しいのだ。2015年に旗揚げしたときは、石破を含めて20人であったが、それ以来増えていないのである。立候補するには本人を除いて20人の推薦人が必要だが、誰か派閥以外から引っ張り込まないと立候補できない。その注目の「誰か」のなまえがなかなか出てこないのである。

 自民党幹部は「石破さんのないないづくしはきりがない」と揶揄しているが、そのないないづくしとは「カネがない。面倒をみない。閣僚や党役員のポストを取ってこない」のだそうだ。石破のただ一つの期待は筆頭副幹事長小泉進次郎の支持だ。小泉はこのところ反安倍色を強めており、その発言も民放テレビで頻繁に取り上げられている。新潟知事選で党本部が応援を依頼しても、独自路線を行く小泉は応じなかった。石破派は、この小泉を抱き込んで気勢を上げたいのだ。これを察知した安倍陣営は、官房長官・菅義偉が小泉と会談、言動に気をつけた方がよいと忠告している。一方、野田聖子も口だけはやる気十分だが、立候補できるかどうかも危うい。危ういと言うよりできない公算の方が強い。とても推薦人20人が集まるような雰囲気ではないのだ。本人は「安倍さんとの約束は大臣の職を務め上げることだ」と言うかと思えば「独自の政策を7月の終わりか8月には発表する」と立候補に意欲を見せたり、大きくぶれている。どうも器ではないような気がする。

 岸田は主戦論者から「いつまでハムレットをやっているのか」とじれる声が出始めているが、まだ悩んでいるようだ。岸田はかつて「熟柿が落ちるのを待っていられるほど世の中は甘くはない。ただ戦う以上は勝たねばならない」と“名言”を述べている。その“ハムレット路線”を打ち消すために「派閥のメンバーの意見を聞かせてもらいつつ最後は私が判断する」と言明しているが、このような優柔不断の背景には、安倍からの禅譲を期待する心理状況が垣間見える。所属する池田勇人以来の名門派閥宏池会は、2000年の「加藤の乱」でみそを付けて分裂。以来首相を輩出することなく、今日に至っている。ただ3年後のポスト安倍を見渡したところ、やっと“本命”の呼び声がかかりそうな気配となって来ている。ここは安倍に協力して立候補せず、次を狙うのが常道であるかのように見える。 

不確実性増大、トランプの陥穽   
投稿者:鍋嶋 敬三 (神奈川県・男性・評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-07-09 11:13 [修正][削除]
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4195/4200
 D.トランプ米大統領が目指してきた北朝鮮の「完全で検証可能、不可逆的な非核化(CVID)」の実現という目標の短期達成は過去と同じように困難であるという現実が目の前に突き付けられている。M.ポンペイオ国務長官が7月6~7日、ピョンヤンで金英哲朝鮮労働党副委員長と会談した。6月12日の米朝首脳会談を受けて、非核化の履行と検証に向けた作業部会の設置で合意した(米国務省)。同長官は会談が「建設的だった」と述べたが、北朝鮮は外務省報道官談話で米国が「一方的で強盗のような非核化要求」を持ち出したと非難し、米朝双方の食い違いを印象付けた。北側の反応は今後の交渉を有利に進めるための恒例の戦術としても、米朝間の齟齬(そご)はトランプ大統領が事前の周到な外交交渉抜きでサミットの開催に合意し、会談で北に「体制の安全の保証」を見返りなしに与えた場当たり外交が招いた結果である。

 ポンペイオ長官は7月8日に安倍晋三首相、河野太郎外相と会談、日米韓3カ国外相会談でも同盟関係結束の形を整えたが、米中貿易戦争に突入した現状では対北朝鮮制裁の緩和に走り出した中国の圧力維持は期待できず、CVIDへの展望が開ける情勢にはない。小論は米朝首脳会談の翌日に「国務長官らによる第二段階の交渉は難航を極めるに違いない」と予測した。北朝鮮は「体制の保証」さえ取れれば、「打ち出の小槌」である核の放棄が実現しないように延々と交渉を続ければよい。トランプ大統領の任期が切れる2年半後には「時間切れ」になる。その間、後ろ盾の中国、さらにはロシアと組んで米大統領と対等に渡り合ったという「実績」を世界や国内に誇示することができる。使用済みの核実験場を爆破してメディアに見せたところで、何も失うものはないのである。

 米朝首脳会談10日後に現れた「なぜ北朝鮮の非核化はほぼ不可能か」と題する中国人研究者の論考に筆者は注目した。その理由として彼は(1)金正恩委員長にとって100%完全な安全のため核兵器は何ものにも代えがたい、(2)北朝鮮の憲法に「核保有国」と明記している、(3)核兵器を保有しながら国際社会に受け入れられているインドがモデル、(4)非核化のプロセスは核兵器の凍結、解体、査察、検証など極めて複雑で10年はかかる、(5)中国は対米貿易報復のため、制裁圧力強化を受け入れないーとしている。さらに非核化のある段階で北朝鮮が天文学的な金額を要求し、米国が拒否すれば、それ以上プロセスを進めないもっともな言い訳になる、というわけである。著者の崔磊氏(中国国際問題研究院副研究員)は「悲しいかな、我々が生きている間に非核化された北朝鮮を見ることは決してないだろう」と結んだ(The Diplomat誌)。この論文が中国政府の意向を反映したものかどうかは知るよしもないが、6カ国協議の議長国として合意とりまとめに苦労しながら水泡に帰した中国ならではの感慨がにじむものである。

 これより先にサミットの1週間後に公表されたロンドンの王立国際問題研究所(チャタム・ハウス)の特別報告「2018年展望」によれば、米朝首脳会談は「非核化に向けた本質的な進路を示すものではなかった」と断定。むしろ米国の対北譲歩が日本と韓国の安全保障上の課題の妨げになり「地域を不安定にする危険を冒す恐れがある」と警告している。特に日本については拉致問題とともに、日本を射程に収めたノドン中距離弾道ミサイルの脅威の問題が進展を見せなければ「日米間の不信感が増大する危険」を指摘。日本が保険を掛けて「自立的な軍事態勢の追求」を促される可能性を予測し、「同盟関係のデカプリング(切り離し)」の危険にも言及した。安倍内閣の下での日中関係改善の動きはこの文脈の下にあると観測している(J.ネルソンーライト上級研究員)。米朝の非核化交渉は米中、中朝、日中、日米韓の同盟関係を巻き込んだアジア太平洋地域の地政学上の不確実性を増大させる副作用が広がりつつあるという現実を見失ってはならない。

わが国の死刑制度について感じたこと   
投稿者:犀川 幸雄 (兵庫県・男性・学生・20-29歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-07-07 22:36 [修正][削除]
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4194/4200
 昨日、オウム真理教の麻原彰晃こと松本智津夫ら7名の死刑が執行された。彼らが主導・実行して有罪判決を受けた13の事件のうち、1995年の地下鉄サリン事件は、20年以上を経た今日でも、日本史上最悪のテロ事件として記憶されている。今回の死刑執行については、海外メディアも日本のメディアの報道を引用する形で速報で伝えられた。オウム真理教や麻原彰晃に関する詳細な解説のほか、日本の死刑制度を批判する報道も見受けられた。とくに欧州諸国からは、「死刑は、非人道的な刑罰であり、犯罪を抑止する効果はない」とし、「日本は死刑制度を存置している数少ない先進国であり、死刑制度の廃止を求めていく」という声が上がっているようだ。

 死刑執行については賛否両論あるが、日本は主要先進国で死刑制度を維持する数少ない国の一つである。日本国内では死刑制度を容認する声が依然多数を占めている。死刑制度容認派の主張としては、「被害者やその遺族の心情を尊重するために必要」、「人を殺すということは、コミュニティが自身への社会的制約と引き換えに保障してくれる権利を拒絶し、またその秩序と正当性を否定することであって、すなわち自らが殺されることを受け入れるのに他ならない」などがある。しかし、これらの主張は、それぞれ「加害者の生命を奪うことは必ずしも被害者の救済を意味しない」、「コミュニティが、その秩序を乱した人間を何らかの形で罰する理由にはなっても、その生命を奪うことまで容認する積極的な理由にはならない」などの点で議論の詰めが甘いと言わざるを得ない。また、死刑の手続きについて詳しい情報公開がなされていないことも見逃してはならない問題の一つであろう。

 死刑廃止が世界の潮流となっている背景には、加害者の根源的な生存権、誤判のリスクの高さ、犯罪抑止との関連性の低さといった理由から、死刑が刑罰として効果的なものではなく、また、「人間は変わり得る」という価値観の広がりとともに、刑罰制度そのものの意義が変わりつつある、という思想が定着しつつあるように思われる。言うまでもなく、死刑制度は、人の命を絶つ極めて重大な刑罰であるとともに、刑事司法制度の根幹や人々の死生観にも関わる重要な問題である。今回の死刑執行を機に、日本国内においても、死刑制度の存廃について改めて議論すべきではないか。

我々は沖縄戦と島守の塔の存在を忘れてはならない   
投稿者:船田 元 (東京都・男性・衆議院議員(自由民主党)・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-07-05 15:02 [修正][削除]
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4193/4200
 6月23日は太平洋戦争最大の激戦地、沖縄戦が終結した日である。以来沖縄ではこの日を慰霊の日として、糸満市摩文仁の丘にある「平和の礎(いしじ)」を中心に哀しくも静かな祈りの日となっている。この戦いで、我が国の戦闘員約10万人、非戦闘員約9万人、米軍兵士約2万人の命が失われた。その礎にほど近い森の中に「島守の塔」がひっそり佇んでいることを知る人は少ない。

 悲惨な沖縄戦の蔭で、非戦闘員の犠牲をできる限り少なくしようと奔走した人物が二人いた。一人は神戸市出身の島田叡(あきら)県知事、もう一人が栃木県出身の荒井退造警察部長(いまの県警本部長)である。(以下敬称略)「島守の塔」にはこの二人の名前が刻まれている。沖縄県外から赴任していた多くの内務官僚が、身の危険を感じて早々に沖縄を後にする中、この二人は最後まで力を合わせ、県民の県外などへの疎開のため渾身の努力を続けた。その結果として7万3千人もの沖縄県民が県外疎開を果たし、約15万人が県南部から北部に移動して、辛うじて難を逃れた。しかし二人の行為、とりわけ荒井のおこないは、戦後しばらく経っても悲惨な歴史の中に埋もれていた。郷土史研究家がこつこつと調査してその存在に光を当て、埋もれた功績がようやく掘り出された。

 警察部長の荒井退造は、宇都宮市清原村上籠谷という、静かな郊外の村に生まれ、旧制宇都宮中学校、明治大学を卒業後内務官僚となり、昭和18年沖縄県に赴任した。堅実で粘り強い県民性を持ち合わせていたが、加えて本人の卓越した正義感と使命感が、この困難な仕事を遂行させたのだろう。同校後輩の一人として大変誇りに思う。今は沖縄、兵庫、栃木の三県の関係者が、この二人を軸に交流を始めている。島田知事は高校野球の前身である「中等学校野球優勝大会」に出場、東大野球部の名選手でもあっため、以前から沖縄県高校野球の新人大会の優勝校に「島田杯」が贈られている。

 栃木県でも荒井の母校の宇都宮高校硬式野球部と、沖縄県の高校との親善試合が行われたり、部員の練習のメニューとして、高校グランドと荒井の生家の間をマラソンで往復したこともある。このような活動を通じながら、戦争を全く知らない若い人々に、その悲惨さとともに、懸命に生きようとした人々がいたことを、しっかり受け継いで行ってほしい。6月23日を永遠に忘れないために。

米に北の「非核化」に対する懐疑論   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-07-05 06:48 [修正][削除]
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4192/4200
 どうもおかしいと思っていたら、米大統領トランプと北朝鮮労働党委員長金正恩の米朝首脳会談での非核化合意は、危うい土台の上に築かれた砂上の楼閣であった可能性が強まっている。米国内で北朝鮮の非核化の意思を疑問視する報道が相次いでいるのだ。トランプも気まずいのか、国務長官ポンペオを5日北朝鮮に派遣する。この訪朝は一種の仕切り直し的な色彩を濃くしている。ポンペオは帰途日本に立ち寄り首相・安倍晋三や外相河野太郎と会談し、日米韓外相会談も開催する。歴史的に米国は過去二人の大統領が、北朝鮮に非核化でだまされており、6月の会談も、疑問視する見方が強かった。合意された包括的文書では、トランプが北朝鮮に体制保証を約束する一方、金正恩は朝鮮半島の「完全な非核化」にむけて、断固として取り組むことを確認している。今回はその合意の土台が、早くもぐらつき始めているのである。

 米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは2日の社説や記事で、米朝首脳会談の本質を暴露して、警告している。同紙は米ワシントンのシンクタンク、スティムソン・センターの専門家の分析によると、寧辺核施設のプルトニウム生産炉の冷却システムが改修されているという。別の建物の屋根にある汚れは、遠心分離器を使って兵器級の濃縮ウランが生産されていることをうかがわせるという。さらに咸興(ハムフン)市にある主要ミサイル製造拠点の大幅な拡張工事を完了させつつあることも分かった。新たな衛星写真で製造拠点を検証した専門家らが明らかにしたという。この拠点では日本などアジア圏に展開する米軍に素早く核攻撃をしかけられる固形燃料型の弾道ミサイルが作られている。また米本土も射程圏内に入る長距離ミサイルの弾頭向けに、再突入体も製造されているという。北朝鮮はミサイル発射や核実験を中止したが、大量破壊兵器を造る能力は維持しており、核開発プログラムを継続させていることが明白となったのだ。

 こうした状況について当初「北朝鮮の脅威はもうない」と断言したトランプは、この発言を修正しはじめた。トランプは議会に送った文書で「朝鮮半島での兵器に使用可能な核分裂物質の拡散の現実とリスク、および北朝鮮政府の行動と方針は、米国の安全保障、外交、経済に引き続き異常で並外れた脅威をもたらしている」として、元大統領ジョージ・W・ブッシュが始めた経済制裁を延長すると宣言したのだ。これはトランプが北朝鮮の非核化の詳細は未定であり今後の交渉で決めなければならないという判断に戻ったことを意味する。国務長官ポンペオの極東への派遣もその一環であろう。米大統領報道官サンダースの発表に寄れば、ポンペオは5日に北朝鮮訪問に出発する。平壌到着は6日の予定。ポンペオの訪朝は6月12日の米朝首脳会談後初めてで、通算3回目となる。ポンペオは過去2回と同様に金正恩と会談する見通し。首脳会談で合意された「完全な非核化」の具体的手順について詰めの協議をする。ポンペオはその後、7~8日に初来日し金正恩との会談内容を日本政府に報告する。一方、韓国外務省は4日、外相康京和が8日に訪日すると発表した。東京で開かれる日米韓、日韓、米韓の各外相会談に出席する予定だ。

 米国はできれば「完全な非核化」へのタイムスケジュールを確認したい方針だが、金正恩がやすやすと応じるかどうかは、予断を許さない。ポンペオも6月下旬に米メディアに工程表の作成は時期早々との判断を示している。こうした情勢を反映して、国務省報道官ナウアートは3日「交渉の予定表を作るつもりはない」と言明、具体的な期限にこだわらない方針だ。一方で、金正恩には常に中国国家主席習近平の影がつきまとっており、最近3回の会談で、金正恩は習近平に“教育的指導”を受けている感じが濃厚だ。中国にとって北の核保有は日米同盟や米韓同盟への牽制となる可能性があるからだ。朝鮮半島をめぐる極東情勢は依然として大国の利害や思惑が交錯する場であり続けるのだ。さっそく朝日新聞などは、政府が国内東西2個所に導入を進めている陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」のレーダー購入に反対の社説を展開している。その理由として朝鮮半島情勢が緩和の流れに入ったことを挙げているが、これはまさに国防の素人論議だ。国家の防衛は普段から二重三重の体制を確立してこそ、仮想敵の戦意をなくすことが可能なのである。

トランプ大統領はなぜ国連人権理事会を離脱したか   
投稿者:赤峰 和彦 (東京都・男性・自営業・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-07-04 20:22 [修正][削除]
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4191/4200
 6月19日トランプ政権が国連人権理事会からの離脱を表明しました。昨年10月のユネスコ脱退表明に引き続いての国際枠組みからの離脱です。この背景には、トランプ大統領自身の国連のあり方そのものに関する疑念があるようです。トランプ大統領は国連人権理事会の主要なメンバー国に中国があることに不満を感じています。世界で最も多くの人権問題を抱えている中国が理事国であること自体が矛盾した組織であると考えているのです。また、国連関係者が人権問題を恣意的に取り上げたり、高額な運営資金を無駄に使ってきたことも背景にあります。トランプ大統領は、既成の概念や規範にとらわれずに行動をする人物です。トランプ大統領の今回の行動により、肥大化し機能マヒになった国連組織の実態がまた一つ明るみになろうとしています。

 国際連合は、第二次世界大戦の連合国の集合体が原型です。両者とも英語表記はUnited Nationsとなっています。したがって、最初から加盟諸国を平等に扱う精神はありません。「国際平和と安全の維持」とは連合国だけのための謳い文句に過ぎません。国連とは常任理事会を構成する五大国のエゴが絡み合って何も決められない組織なのです。それにもかかわらず、わが国では「国連は国際平和をもたらす最高機関」との神話が出来上がっているため日本では、「外国からの侵略があっても国連軍が守ってくれる」という国連信仰が形成されました。筆者自身、そのような言説を小学校の授業で聞きました。

 一方、共産党をはじめとする左翼政党の関係者は、国連に虚偽の情報を上げて国連の権威を使い日本政府への勧告を導き出そうとしています。事実、昨年に発表された217項目からなる対日勧告の中には、「旧日本軍の従軍慰安婦問題では中国と韓国が元慰安婦への誠意ある謝罪と補償、公正な歴史教育の実施」「特定秘密保護法による報道の自由の萎縮」などが盛り込まれています。

 トランプ大統領の言動は一見、唐突に見えますが、共通していることとして機関、組織、政策などあらゆるものに対して、その理念と目的は何か、それが価値あるものとして存在しているのか、成果を上げているのかを厳しく問うていることがわかります。既存の思考にとらわれず大胆な変革を試みるトランプ大統領の言動をこれまでの通念だけで批判するだけでは本質を見誤ることになるのかもしれません。

中国国内経済に要注意   
投稿者:四方 立夫 (東京都・男性・エコノミスト・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-07-02 11:02 [修正][削除]
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4190/4200
 日本国際フォーラムが刊行した『JFIR WORLD REVIEW』創刊号の「中国外交のユーラシア的展開」と題する論文における駒澤大学の三船恵美先生の「一帯一路をユーラシアにおける経済圏構想として語っている人々は、目先の経済活動の利益にばかりとらわれて、日本の安全保障の将来を差し出そうとしている」との御指摘は誠に至言である。一帯一路、AIIB、東/南シナ海進出、等の対外活動に加え、我々は中国国内経済動向にも注意する必要がある。従来より中国の不良債権、過剰債務、過剰生産、過剰在庫は中国経済の根本的な問題であると広く流布されてきたが、今年に入り政府系港湾運営会社、国有建設会社、等の債務不履行が報じられ、1-6月で日本円換算4,000億円超となり通年では過去最悪となる怖れも指摘されている。

 その背景には過剰債務を解消するための政府による金融引き締めがあるが、最も憂慮すべきはバランスシートに記載されず、不良債権発生率の高いシャドーバンキングである。その2017年6月末の規模は61.8兆元に上り2016年GDPの83%に相当する、との試算もある。1990年代の日本は「バランスシート不況」に陥ったと言われていたが、中国も同様に過剰債務/過剰投資が重荷となり、その解消のために企業の資金需要が悪化し、経済成長率の下落を招き、労働需要が減少することによる大量失業の発生は、共産党による一党支配の屋台骨を揺るがしかねないリスクがある。

 一方、中国は「中国製造2025」を邁進し2049年までに世界の製造強国のトップに立つことを目指しているが、その「九つの戦略任務」の中で特に重要なものは「製造業のイノベーション能力の向上」、並びに「情報化と工業化の高度な融合の推進」である。その鍵となるのは「コア技術の研究開発の強化」である。その目標達成のため中国は長年に亘りハッキング等により知的財産権を侵害してきており、現在トランプ政権による対中経済制裁の主目的は貿易赤字削減と同時に、中国による米国技術盗用の防止がある。

 我が国もかなり以前から中国のハッキングの対象となってきているが、サイバー・セキュリティーが弱く現在も技術流出が継続しているのが実態である。中国の昨年秋からの「微笑外交」の主目的はまさに我が国の先端技術の取得にあり、中国と取引をするに当たっては先ず企業秘密に対するセキュリティーを確保することが肝要である。また、政府としてもセキュリティー専門家の育成が喫緊の課題である。安倍首相が強調する「戦後最大の安全保障上の危機」は軍事に留まらず、広く経済、技術、社会、など多方面にわたり、既に国民生活を脅かしていることを肝に銘じなければならない。

(連載2)マクロン大統領は西側の道徳的普遍性を代表できるか ← (連載1)マクロン大統領は西側の道徳的普遍性を代表できるか  ツリー表示
投稿者:河村 洋 (東京都・男性・外交評論家・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-06-30 23:55 [修正][削除]
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4189/4200
 これまで述べてきたような世界情勢の中でマクロン大統領はトランプ政権のアメリカにどのように対処するのだろうか?現在、ドイツではメルケル首相の指導力は低下し、イギリスは国民投票によるブレグジットを受けてキャメロン政権を引き継いだテリーザ・メイ首相も対米特別関係の強化は上手くいっていない。これはマクロン政権のフランスにとって米欧関係でヨーロッパの代表として行動できる千載一遇の機会である。しかしマクロン氏がどれほど懸命に説得してもトランプ氏にはパリ協定とJCPOAに戻る気などさらさらない。また、レックス・ティラーソン国務長官とH・R・マクマスター国家安全保障担当補佐官を解任し、ナショナリスト色の強いマイク・ポンペオ氏とジョン・ボルトン氏を登用している。IFRIのレポートでは2020年のトランプ氏再選という最悪のシナリオまで想定しているが、それはこの研究チームが民主党の勢いも充分ではなく共和党内で反対派は事実上存在しないばかりか、弾劾が直ちに行なわれる見通しもないと考えているからである。そのような傾向が続くようであればアメリカがこれまで以上に国際社会の問題児に陥ってしまうことは、G7シャルルボワで典型的に表れている。

 大国間の勢力競争が激化する世界におけるフランスの外交政策の方針の全体像に鑑みて、現時点で突き付けられている外交上の課題とマクロン大統領の実績について述べたい。何よりも内政の安定は国際舞台での指導力の前提条件である。5月に起きた雇用規制の緩和政策への反対運動などの労働運動への対応を誤れば、マクロン氏もメルケル氏の轍を踏みかねない。当面は中東、特にイランとシリアの危機が重要である。イラン核合意に関してはトランプ氏の突然の離脱によってロシアが中東に影響力を拡大する好機となり、E3(英仏独)はアメリカの抜けた穴を埋めねばならなくなった。またトランプ氏はイランへの単独制裁に乗り気とあって、EUがアメリカによる制裁の対象になりかねない。トランプ氏によるディール・ブレーキングには国内から厳しい批判が寄せられているが、彼は断固としてオバマ政権期の成果を破棄しようとしている。マクロン氏はあらゆる手段によってJCPOAの存続をはかる一方で、微妙な舵取りでアメリカとの致命的な衝突を避ける必要がある。専門家の中にはトランプ氏がイランでのレジーム・チェンジを追求して中間選挙で親イスラエルの福音派の票固めをするのではないかとの懸念も挙がっている。しかし私がそれには懐疑的なのは、トランプ氏は費用効果へのこだわりが異常に強いがために中東への介入に消極的なことはイラク戦争への批判からも知られているからである。ボルトン氏はその案を支持するかも知れないが、本物のネオコンではない彼にはイランを民主化しようという明確な決意はない。他方でヨーロッパは核合意をめぐるアメリカとの認識の相違を利用もしている。E3はJCPOAの存続を働きかけながら、アメリカの圧力を利用してイランの弾道ミサイル計画と域内でのテロ支援を封じ込めようとしている。しかしE3はトランプ氏が好む単独行動とは正反対に、この地域のステークホルダーの地政学的なバランスの再調整と国連安全保障理事会との協同を通じてこれらの手段を実施しようとしている。シリアに関してマクロン氏はトランプ氏に性急な撤退を思いとどまるよう何とか説得はできたものの、アメリカの中東戦略はイラク戦争後の非関与から対テロ作戦のための関与の間を一貫性もなく揺れている。マクロン氏の助言はアサド政権による度重なる化学兵器使用が人道上の懸念をよんだ時に、トランプ氏がアメリカ国内で自らの選挙基盤の非介入主義と安全保障関係者の対テロ戦略の折り合いをつけるうえで有効だった。しかしマクロン氏もトランプ氏もシリアでの長期的な戦略はない。どちらの場合でもフランスの中東政策は、いかにマクロン氏の方がトランプ氏よりも国際社会での評判が高くてもアメリカの外交と内政への考慮なしに実行は難しい。

 重要な点は、『USニューズ&ワールド・レポート』誌による2017年の国力ランキングではフランス第6位に過ぎないので、マクロン大統領が国際的なリーダーシップを発揮するにはヨーロッパとアジアで民主国家のパートナーが必要になる。ヨーロッパで最も厳しい問題は米欧関係の悪化である。JCPOAをめぐる見解の相違の他に、ヨーロッパとアメリカの間ではトランプ政権がEUを国家資本主義の中国と同様に扱うので貿易戦争が激化している。より問題になるのは、現政権下で米欧間の意思疎通が大幅に少なくなっているということだ。実際にフランスのフランソワ・ドラットル国連大使は「アメリカはトランプ政権以前にも単独行動は頻繁に行なっていたが故に、ヨーロッパ人はアメリカの孤立主義が今後も支配的になると見ている」と語っている。その結果、ヨーロッパは集団防衛による自立と外交の一体化を模索している。しかし問題はドイツの政治的安定である。メルケル氏の指導力低下ばかりか、ドイツはフランスより共同防衛に消極的で大西洋同盟志向が強い傾向はトランプ氏との個人的な関係が悪くても変わらない。 そうなってくるとブレグジット後のイギリスとの関係が、特に防衛面で重要になってくる。イギリスの国防当局はマクロン氏が提唱する欧州対外介入軍に重大な関心を寄せている。デービッド・リディントン内閣府担当相は今6月の『フランクルルター・アルゲマイネ』紙とのインタビューで「イギリスとEUは防衛面で強固な関係が必要であり、両者が完全に袂を分かてばロシアを利するだけだ」と述べた。実際にマクロン氏が提唱する有志連合に積極的な国は少ない。特にドイツがヨーロッパ圏外での海外派兵に消極的なことは、マリとシリアの例が示す通りである。よってイギリスはきわめて重要なパートナーになる。この観点からすれば、FCAS(Future Combat Air System)戦闘機計画とガリレオ衛星計画からイギリスが締め出されていることはきわめて奇妙である。イギリスの軍事産業はBAEシステムズやロールスロイスに代表されるように、数十年にわたって戦闘機、爆撃機、軍艦などアメリカの兵器システムに部品を供給してきた。EUの防衛計画にイギリスの技術は絶対的に必要で、さもなければ兵器の質や世界の武器輸出市場での競争力でアメリカ、ロシア、中国と渡り合うことは難しい。マクロン氏は英・EU防衛協力がより一貫性のあるものとなるようリーダーシップを発揮する必要がある。 

 アジア太平洋地域ではマクロン氏の国際舞台でのリーダーシップの強化とアジア政策の明確化には、中国が貿易と投資でどれほど突出していようとも日本が鍵となる国である。中国は地政学志向が強く、アメリカの影響力を排除して自国周辺に冊封体制さながらの勢力圏を築こうとしているのに対し、日本が提唱するインド太平洋構想は平等なパートナーシップと各ステークホルダーの国力に応じたバードン・シェアリングに基づいている。最も重要なことは日本が西側同盟諸国に脅威を与えないがばかりか、中国からの投資よりも日本からの投資の方がフランスで雇用を創出している。貿易に関してはフランスの対中赤字は対日赤字の5倍になる。いわば、中国との経済関係は一般に思われているほどの利益をもたらしているわけではない。他方でG7シャルルボワが「G6+1」とまで言われたようにトランプ氏は西側主要民主主義国からアメリカを孤立させてしまい、日仏両国にとってはリベラルな世界秩序を彼の破壊行為から守ることが至命課題となった。特に両国はインド太平洋構想では安全保障でも経済でも利益を共有しているが、この全体像は依然として明確ではない。マクロン氏はG7などの多国間首脳会談の場で日本の安倍晋三首相と面識があるが、この地域での相互協力の方針決定と強化には二国間会談が不可欠で、しかもフランスはニューカレドニアとポリネシアという海外領土を持つ太平洋国家でもある。ジャン=イブ・ル・ドリアン外相と河野太郎外相は4月の日仏外相会談で、両国の首脳が7月にパリで開催される日本文化のイベントと革命記念式典の機会に会談することで合意した。

 これまで述べてきたようにフランス自身は一国ではそれほど強力ではないので、マクロン氏がリベラルな世界秩序の再建でリーダーシップをとるには民主主義国のパートナーが必要である。またトランプ政権にアメリカには微妙なバランスのとれたアプローチが必要で、彼の高圧的な要求に宥和してはならないが、超大国を相手にした致命的な衝突は避けねばならない。だがG6全体の経済規模はG1よりも大きいことを忘れてはならない。しかしながらG6の連帯を損なうような問題もある。ドイツ内政でのメルケル首相の指導力の低下ばかりでなく、防衛面での独仏間の相違は一般に思われているよりも大きいことはIFRIのレポートでも触れられている。問題は戦後の平和主義と地政学だけにとどまらない。日本と同様にドイツは道徳的普遍性を堂々と掲げて国際的な法執行作戦に参加するには良い立場でなく、国民は第二次世界大戦での過ちに悔恨の念を抱いている。日本はさらに消極的平和主義な国で、自国の周囲での安全保障環境が悪化しているにもかかわらずいまだに憲法改正さえままならない。こうした観点からブレグジット後のイギリスとの政策調整が重要になってくることは、JCPOAと自由貿易の事例でも示されている。テリーザ・メイ首相は保守党内の親欧派と反欧派の間で綱渡りを強いられている。ブレグジットのディール成立を成功させることが双方にとって必要不可欠である。現在、アメリカは被害妄想的なポピュリズムの蔓延で国民は自分達が海外からの経済的な競争相手、同盟国、移民にたかられていると見ている。米国民の間でトランプ氏がもたらす悪性の影響力が伝染している状態では、世界には明確なビジョンを持った指導者の主導で西側の理念を代表する有志連合が必要である。マクロン大統領がアメリカ連邦議会の演説で示したグローバル主義の理念は多くの人々に感銘を与えた。しかしそうした道徳的普遍性が、彼の外交政策に見られるネオリアリズム、資本主義的リアリズム。およびゴーリズム的な側面との整合性があるのかは今後見守ってゆかねばならない。(おわり)

(連載1)マクロン大統領は西側の道徳的普遍性を代表できるか  ツリー表示
投稿者:河村 洋 (東京都・男性・外交評論家・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-06-29 23:15  
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4188/4200
 本年4月末には日本、フランス、ドイツの最高指導者が次々にホワイトハウスを訪問した。その中でフランスのエマニュエル・マクロン大統領は日本の安倍晋三首相とドイツのアンゲラ・メルケル首相をはるかに上回る強烈な印象をアメリカ国民と国際社会に与えた。それはマクロン氏がアメリカ連邦議会での演説で、反グローバル化ポピュリズムという背景に対して世界の中でのアメリカのリーダーシップの中核となる価値観を思い起こさせるメッセージを発信したからだ。実際にマクロン氏にはメルケル氏のようにトランプ氏と感情的な衝突を抱えることもなかった。また、安倍氏のようにトランプ氏に対してお願い姿勢をとることもなかった。その代わりに西側の民主的価値観と多文化主義は世界の平和と繁栄の礎になると、強く明快に訴えた。それはまるでトランプ氏ではなくマクロン氏が本当の合衆国大統領であるかのようにさえ思わせた。トランプ大統領に対するマクロン氏の対処はバランスのとれたもので、政治ビジョンも未来志向である。しかしマクロン大統領はポピュリズムを背景としたナショナリズムの時代に、地政学的な競合が激化する世界で道徳上のリーダーシップを発揮できるだろうか?

 まず始めに米連邦議会での演説について述べたい。マクロン氏はトランプ氏を名指しで批判はしなかったものの、グローバルな課題での政策ではホワイトハウスとは違う立場を鮮明にした。マクロン氏はイラン核合意から気候変動に関するパリ協定にいたる広範囲な問題に言及し、中でもリベラルな世界秩序の礎となる多国間外交におけるアメリカのリーダーシップの役割を強調した。民主党はトランプ氏がグローバル化を受け入れるよう説得してくれることへの期待から、そして共和党はアメリカの軍事作戦でのフランスの貢献に対する敬意からということでマクロン氏の演説は超党派での称賛を受けた。マクロン氏は以下の手順でアメリカ第一主義に反駁した。その演説の根底となる前提は「西側民主主義諸国が直面するグローバルな課題は非常に重大で複雑なので、孤立主義やナショナリズムはリベラルな世界秩序に致命的な打撃を与えかねない」ということである。この状態を21世紀の世界秩序に再建するために、マクロン氏は「過剰に人間性を喪失したグローバル化を緩和するとともに低炭素経済をさらに推し進め、民主化を促進してゆくべきだ」と訴えた。言うならば、マクロン氏はアメリカの大統領が誰であれ行なったように、西側の道徳的普遍性を代表して演説を行なった。これはアン・アップルボーム氏らアメリカの知識人達がマクロン氏の演説を絶賛した最大の理由である。『ワシントン・ポスト』紙4月25日付けの論説でアップルボーム氏はまず両首脳の間の一見友好的な関係について「トランプ氏を革命記念式典に招待したマクロン氏は、相手の気分を良くしていた。そしてトランプ氏から肩のフケを払われて優位を誇示されても従容と受け入れた。」と記した。そして演説内容については「しかし一度演説を始めると、マクロン氏は反グローバル主義、反環境保護、そして 最も重要なことにリンドバーグ的なナショナリズムと孤立主義といったトランプ氏の世界観を明確に否定した。」と評した。最後にこの演説の意義については「たとえトランプ氏が上手くおだてられてマクロン氏の演説の真意を理解できなくても、それにはヨーロッパとアメリカの双方から称賛が寄せられた。トランプ氏は気候変動からJCPOAや貿易にいたるまでアメリカ第一主義を変えるつもりはないだろうが、マクロン氏はトランプ現象の悪影響から大西洋同盟を救済するためのメッセージを発したのである」と締め括っている。

 しかしマクロン大統領が現在の国際政治でリーダーシップを発揮できる潜在的な余地について適正な評価を下すには、彼の外交政策の方針を理解する必要がある。米議会での演説は多くの者に感銘を与えたが、国際戦略研究所およびジュネーブ安全保障政策研究所のフランソワ・エイスブール会長は「マクロン氏はネオリアリストでドナルド・トランプ氏ばかりかロシアのウラジーミル・プーチン大統領、中国の習近平国家主席、トルコのレジェップ・エルドアン大統領、そしてエジプトのアブデル・エル・シシ大統領に代表される独裁者との取引さえ躊躇しない」と見ている。何はともあれトランプ氏はマクロン氏の政治的価値観など気にも留める様子はなく、JCPOAと気候変動について何の譲歩もなしに互いのブロマンスを誇示した。そうした状況でマクロン氏はアメリカとヨーロッパの橋渡し役、特にトランプ氏とメルケル氏の厳しい関係の間を取り持とうとした。マクロン政権牡外交政策の全体像についてはIFRI(フランス国際問題研究所)が本年4月に発刊した“Macron Diplomat: A New French Foreign Policy?”(仏題:“Macron, an I. Quelle politique étrangère ?”)と題するレポートについて述べたい。このレポートでは気候変動、人口移動、テロといった広範囲にわたる多国間の問題とともに、デジタル産業に代表されるフランスの戦略的な国益について議論が進められている。このレポートの冒頭では2つの前提が述べられた。第一にマクロン大統領はヨーロッパ統合に確固と寄与してゆくという方針で、先の大統領選挙ではこのことを他の候補者以上に強く訴えた。しかしマクロン氏の当選がヨーロッパでの右派ポピュリズムの台頭の緩和にはつながっていない。AfD(ドイツのための選択肢)は昨年9月のドイツ連邦議会選挙で史上初の94議席を獲得し、イタリアでは本年3月の総選挙で欧州懐疑派の連立が勝利した。第二に戦略的な環境の悪化への対応としてフランスはヨーロッパの防衛協力を主導してトランプ政権下のアメリカからの戦略的自立性を追求し、自己主張を強めるロシアと中国による現行の世界秩序への挑戦で多極化の進行と裏腹に多国間主義が衰退する世界に対処しようとしている。短期的にはイランとシリアが重要である。トランプ政権のJCPOA破棄ばかりでなく、イランの弾道ミサイルとテロ支援は依然として地域に重大な脅威を与えている。またアサド政権による度重なる化学兵器の使用によって、シリアでは思慮深い人道的介入が必要になっている。それらの観点からIFRIのレポートの中でも以下の問題を中心に議論を進めたい。それはフランスとドイツ、ロシア、中東、アジア、そして最も喫緊の課題であるトランプ政権のアメリカとの関係である。

 ブレグジットとトランプ政権のアメリカ第一主義によって独仏枢軸の重要性はこれまで以上に増している。しかしフランスとドイツは必ずしも共通の大義に基づいて行動するわけではない。そうした立場の違いとともに、昨年9月のドイツ連邦議会選挙によるメルケル氏の指導力低下は独仏両国主導のヨーロッパ統合に遅延をもたらしている。マクロン大統領がさらなる統合を呼びかける一方で、ドイツ連邦議会は国家主権をブリュッセルに委ねることに難色を示している。またドイツはユーロ圏の財政規律について、より厳格である。ヨーロッパの防衛協力に関しては、フランスは防衛政策のために強力で費用効果の高いパートナーシップを志向しているが、ドイツは地域統合のためにより多くの国の参加を志向している。実際にドイツはフランスほどヨーロッパの自主防衛には関心を抱いていない。またマクロン氏が防衛協力に熱心なのはゴーリストの伝統によるものであることを忘れてはならず、彼に寄せられるグローバリストという評判に惑わされてはならない。こうした点を考慮すれば、トランプ氏との関係ではメルケル氏は冷え切っていてマクロン氏は「ブロマンス」にあるように見えても、ドイツの方が大西洋同盟志向である。さらにヨーロッパ大西洋圏外での軍事作戦についてはフランスとドイツの優先順位は違ってくる。独仏枢軸はこれらの戦略的な相違を乗り越える必要がある。ヨーロッパの安全保障ではロシアとの関係も重要である。マクロン氏は民主化の促進と選挙介入の排除を強く打ち出しているが、露仏経済関係は対外投資、航空宇宙、民間航空事業、エネルギーといった部門を中心に強固である。政治面ではマクロン大統領はドゴールおよびミッテラン両政権期のようにロシアとは実利的な関係を追求しているが、プーチン大統領は西側優位の世界秩序を弱体化しようとしているので民主主義陣営の強化を目指すマクロン氏の方針とは相容れない。特に両国の間にはイギリスでの元スパイ毒攻撃、シリアでの化学兵器使用、ウクライナ周辺の安全保障といった懸案がある。IFRIのレポートから、マクロン氏はフランスにとってヨーロッパで最大の友好国と対立国との関係で非常に多くの問題を乗り越える必要があることがわかる。

 マクロン政権のフランスが世界の中で指導的な役割を担うためにはヨーロッパとフランンコフォニー諸国だけでなく、特に中東とアジアで安全保障および経済のプレゼンスを高める必要がある。中東でマクロン氏が注目しているのはグローバル化に向けて改革を進めるカタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、そしてテロ掃討で成果を挙げるエジプトとの経済関係の強化である。フランスはこの地域でインフラおよび民間航空事業の売り込みに力を入れている。さらに2016年の湾岸協力会議の危機の際には、マクロン氏はサウジアラビア、アラブ首長国連邦、エジプトに兵器を売りつけたばかりか、域内で孤立したカタールにも兵器を輸出した。しかしこのような全方位で経済中心の外交に立ちはだかるのが、依然として弾道ミサイル実験と代理勢力への支援を続けるイラン、そして一般市民に化学兵器を使用するシリアである。トルコに関してはシリアでエルドアン政権の協力が必要なため、マクロン氏は人権問題での批判を軟化させるという妥協に転じている。そうした中でアジアでは、フランスは北朝鮮の核問題および南シナ海の領土紛争のような重要な地域問題ではルールに基づいた多国間主義を主張している。この地位で最も重要なパートナーであり対立相手となるのは中国である。本年初頭にマクロン氏はこの国を訪問してフランスが中欧関係の主導権をとると印象づけた。マクロン氏は一帯一路構想で互恵的な経済関係を模索する一方で、ヨーロッパの安全保障を脅かしかねない中国からの投資を監視するために域内諸国の共同行動で主導的な役割を果たしている。日本、オーストラリア、インドは日本が提唱しアメリカも賛同する「自由で開かれた」インド太平洋構想にフランスも参加しているので、安全保障上のパートナーである。それでもなお、マクロン氏の訪日によるアジア政策の明確化が望まれている。中東とアジアの双方についてIFRIのレポートではマクロン氏が地域大国との経済外交優先していることが述べられているが、そうした資本主義的リアリスト外交もトルコや中国のような専制国家との関係では国家の生存と道徳的側面への考慮とバランスをとる必要がある。(つづく)

党首討論は存在意義を問われる、抜本改革を   
投稿者:杉浦 正章 (神奈川県・男性・政治評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-06-28 06:29 [修正][削除]
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4187/4200
 与野党党首が党首討論の歴史的使命が終わったと言うのだから、本当に終わったに違いない。党首討論は英国の議会を参考にして自民党幹事長の小沢一郎が主導、大局的見地から質疑をしようと2000年に始まったものだ。しかし、最初から指摘されていたが討論時間が45分間と短く、ほとんどの党首が自らの主張を繰り返すにとどまり、一問一答型の紳士的な質疑応答によって、国政に新風を吹き込むという構想からは、ほど遠い形となってしまった。各党の思惑が空回りするばかりで、存在意義が問われる事態だ。そもそも党首討論のあり方を否定したのは立憲民主党・枝野幸男が最初だ。前回5月の討論後、枝野は、首相の答弁が長いことを理由に「今の党首討論はほとんど歴史的使命を終えた」と語った。これを27日の討論で取り上げた首相・安倍晋三は「枝野さんの質問というか演説で感じたが、前回党首討論が終わった後、枝野さんは『党首討論の歴史的な使命は終わった』と言った。まさに今のやりとりを聞いて、本当に歴史的な使命が終わってしまったなと思った」と述べた。枝野は「安倍政権の問題点を7つ列挙したい」として、短い15分の質問の7分を使って森友・加計学園問題の問題点を延々と並べ、「演説」を行った。これでは大所高所からの討論ではなく野党の演説会になってしまうのだ。枝野が党首討論をマスコミ受けに“活用”しようとしたのは言うまでもない。

 こうした討論のやり方には疑問がある。第一に挙げられるのは討論時間の短さだ。首相の答弁を含めて45分間では、1日に7時間から8時間も質疑を行う予算委員会の集中審議と比べても短すぎる。各党首の質問も数問で終わってしまう。加えてイギリスの質疑は紳士的な傾向が強いが、日本の場合は政権を陥れるような質問が繰り返される。27日も共産党委員長・志位和夫の暴言が目立った。志位は「愛媛県と今治市で加計学園への補助金は50億円から93億円に膨れあがった。首相の『腹心の友』加計孝太郎理事長が経営する学園が首相の名をたびたび使い、巨額の税金をかすめ取っていたのではないか」と発言した。「かすめ取る」とは下卑極まる表現だが、安倍は 「補助金は県と市が主体的に判断することだ。私はあずかり知らない」と全面否定した。事程左様に理性に欠ける質問に、応答をするわけだから、とてもイギリス議会を手本にした紳士的討論とはほど遠くなるのである。枝野や志位に比べて国民民主党共同代表の大塚耕平が、外国人労働者問題を取り上げたのは建設的であった。外国人労働者の受け入れ拡大は、国の政策の大転換であり、安倍からも外国人労働者受け入れに前向きな答弁を引き出した。
 
 だいたい自民党執行部の感覚も疑う。極東情勢を見れば北朝鮮をめぐってトランプと金正恩の動きが活発化し、日本はまごまごすると潮流に乗り遅れかねない側面がある。にもかかわらず野党の提案に乗って1年半も論議して、何の疑惑も政権を直撃していないモリカケ問題を取り上げることに応じてしまったのである。ここは、大きく極東の安全保障の構図を変えかねない北朝鮮問題やトランプ外交への対応など、国家の命運に関わる外交安保問題を取り上げるべきであった。党首討論も確かに現在のやり方では、予算委質疑へのプラスアルファ的な側面ばかりが目立つ。質疑時間といい、内容といい、真に与野党が対話を通じて国の政治を切磋琢磨する場に変貌させる必要があることは言うまでもない。たっぷり時間を取って首相が野党に質問しても良いではないか。抜本的な党首討論改革に与野党とも取り組むべきだ。

長島昭久先生のご提言に賛同します ← (連載1)米朝首脳会談後の日本外交  ツリー表示
投稿者:四方 立夫 (東京都・男性・エコノミスト・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-06-27 14:47 [修正][削除]
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4186/4200
 6月21、22日付け長島昭久先生の投稿「米朝首脳会談後の日本外交」に大いに賛同致します。特に以下ご指摘は大変重要な点であると共感致します。
・「我が国安全保障の主要課題が、中国の動向であることを忘れてはなりません」
・「『力の均衡』も不可欠です」
・「『自分の国は自分で守る』だけの独自対処能力を確立するため、効率的な防衛力と多角的な情報収集能力の整備に努めるべきです」
・「重層的な安全保障環境の安定化に向けた不断の努力が必要です」

 中国は軍備力の急速な増強に加え、「中国製造2025」により独自の技術開発能力を身に着けるべくハッキング等による知的財産権の侵害を繰り返し、昨年の党大会において「全ての企業の定款に共産党の指導を明記させる」ことを決定し、さらにインターネット法を制定したことは「中国においては全ての情報は共産党が把握する」ことに他ならず、中国が2049年までには米国に匹敵する強国となるとの強い決意の表れです。昨今の中国の「微笑外交」に乗せられ「一帯一路」を単なるビジネスチャンスと捉えることは、我が国の安全保障を損なうものです。

 昨年2月の日米共同声明に「あらゆる種類の米国の軍事力を使った日本の防衛に対する米国のコミットメントは揺るぎない」とあることをもって、我が国では「トランプ政権になっても引き続き米国は日本を守ってくれる」との安堵の声が広がりました。しかしながら、その文言の後に「日本は同盟におけるより大きな役割及び責任を果たす」とあり、さらに2015年の「日米防衛協力のための指針」が参照されており、その中には「自衛隊は、日本及びその周辺海空域並びに海空域の接近経路における防勢作戦を主体的に実施する。米国は、日本と緊密に調整し、適切な支援を行う」とあり、まさに「自分の国は自分で守る」強い意志と能力があってこその日米同盟であることを肝に銘じなければなりません。

 現在「従来の延長線上ではない防衛大綱の見直し」が検討されておりますが、中国および北朝鮮との「力の均衡」を念頭に置いた抑止力並びに防衛力の強化が喫緊の課題である、と考えております。その為には日米同盟の維持・強化に加え、EU、カナダ、オーストラリア等の自由主義国との連携を深め、米国のアジアにおけるプレゼンスを確保すると共に、本来自由貿易の最大の受益者たりうる米国をTPPを始めとするメガFTAsに引き戻すことが、経済のみならず安全保障の上においても肝要であり、「重層的な安全保障環境の安定化」に繋がるものであると信じております。冷戦期、米国では民主共和両党は外交・安全保障に関しては基本的な姿勢は一致しており政策の一貫性が保たれてきたことが、ソ連崩壊への一助となりました。我が国においても「戦後最大の安全保障上の危機」に直面している現在、政府・与野党が一丸となって眼前の脅威に対峙すべく中長期戦略を構築することが必須である、と考える次第です。

今こそ、新しい国際的枠組み「G11」を設立すべきだ   
投稿者:松井 啓 (東京都・男性・時事評論家、元外交官・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-06-27 11:20 [修正][削除]
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4185/4200
 「G11」といっても、現在ロシアで開催されているサッカーのワールド・カップの話ではない。国際社会に11カ国による新しい対話の枠組みを作ることを提案したい。ソ連の崩壊により東西冷戦は終焉し、フランシス・フクヤマ著『歴史の終わり』のようなユーフォリアがあったが、アメリカの一極主義(G1)は長続きせず、国際社会は多極化流動化した。2017年に登場したトランプ米大統領は「偉大なアメリカの再現」「アメリカ・ファースト」を唱え、TPPや環境保護のパリ協定、さらには国連人権理事会などからの離脱(Amexit)を表明している。他方、EUは、イギリスの離脱(Brexit)後、移民受け入れを巡る各国の利害対立を軸として結束が緩んできている。中国は急速な経済発展(GDPでは2010年に日本を抜き今では3倍)により、政治経済軍事面で大幅に発言権を強めている。習近平国家主席は憲法改正により自己の任期を無期限なものとし、その権力を集中し、「中国の夢」を掲げて、覇権拡大の動きを加速させている。また、ロシアは、プーチン大統領が本年5月の選挙で再選され、任期をこれまでの18年に加え2024年まで伸ばし、「偉大なロシア」を夢見てソ連時代の失地回復を図っている。さらに、中露両国は時には連携しつつ、既存の国際秩序の変革すら狙っている。

 国際社会で最大の機関は1945年に設立された国連(加盟国193カ国)であるが、重要問題にはP5(国連安全保障理事会常任理事国(米、英、仏、露、中))の賛同が必要であるため事態に迅速に対処できずにいる。また、加盟国が51から出発して今や193まで増えているにもかかわらず、抜本的な改革はなされていない。G7(主要先進国7カ国首脳会議:仏、米、英、独、日、伊、加)は1973年のオイルショックに対処すべく発足し、その後検討課題を拡大させ、年1回サミットを開催している。さらに発展途上国を含むG20(主要国首脳会議:米、英、仏、独、日、伊、加、EU、露、中、印、ブラジル、メキシコ、南ア、オーストラリア、韓国、インドネシア、サウジアラビア、トルコ、アルゼンチン)が1999年来、定期的に会議を開催しているが、所帯が大きすぎて首脳が一堂に会することに意義があるようになっている。2006年には経済成長著しいブラジル、露、印、中、南ア(BRICS)が国際会議を開催しているが、現在は存在感が薄れてしまっている。その他、世界の政財界の要人が多数参加する「ダボス会議」があるが、これは、交流、情報収集、自己PRのスピーチコンテストのようなもので、具体的な意思決定機関とはいえない。

 こうした現状を受けて、私は、主要な先進国および発展途上国の首脳が現在直面する政治的経済的問題を討議する場として新たに「G11」を設立することを提案したい。構成国はG7(伊、加の存在感は薄いが今さら外すことは説得困難)に加えて、国連P5のロシア、中国を入れ、さらにインドとオーストラリアを加え、これら11カ国の首脳によるサミットを定期的に開催し、国際社会が直面する主要問題につき一定の方向付けをする枠組みとしてはどうだろうか。これからの時代に中国とロシアを村八分とすることはあまり意味がなく、中露を一定の枠組みの中で責任ある行動をとらせることは重要である。また、「自由で開かれたインド太平洋戦略」を推進するためには地政学的にも政治力学上もこれら4カ国の参加は必須である。この枠組み形成に日本が仲介役となって一汗かくことは大きな意味がある。

米朝首脳会談とその後   
投稿者:船田 元 (東京都・男性・衆議院議員(自由民主党)・60-69歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-06-26 11:24 [修正][削除]
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4184/4200
 去る6月12日シンガポールのセントーサ島にて、世界の人々が固唾を飲む中、初の米朝首脳会談が開かれた。2週間経った今でもその余韻が残るほど、歴史的な出来事だった。その評価は甲論乙駁、様々な意見が出されているが、正確な評価はまだ早いし、今後のフォローアップの仕方により、変わりうるものだろう。

 会談後に出された合意文書やトランプ大統領の単独会見を見ると、「朝鮮半島の完全な非核化」に合意したというが、我々が望んでいる「検証可能で、不可逆的な」非核化には言及していない。また中・短距離ミサイルや大陸間弾道弾(ICBM)、さらには日本にとって極めて重要な拉致問題に関する表現もない。会談そのものでは触れられた可能性はあるが、公表された文書になかったことは誠に残念である。

 しかしこの度の外交「イベント」は、65年間全く動かなかった朝鮮半島情勢や米朝関係が、明確に動き出したという点で、歴史に刻まれるだけの価値はあるだろう。拉致問題の解決も含めて、今後の関係国の努力により、本当の価値が決まるものと思う。否、その価値を高めなければならない。そうした中、私が最も心配しているのは、「朝鮮半島の非核化」が在韓米軍の規模縮小や撤退に繋がりはしないかという点だ。定期的に実施されてきた、各種の米韓合同軍事演習が当面中止することが、既に決まってしまった。在韓米軍のプレゼンスは、朝鮮戦争の置き土産でもなく、対北朝鮮への軍事的圧力だけではなく、中国さらにはロシアとの軍事バランスをしっかりと保つことにもなっているのだ。

 仮に在韓米軍の縮小が始まると、日本は軍事強国の中国と直接向かい合うこととなり、在日米軍や自衛隊の編成見直しに手をつけなければならなくなる。今後日本政府はこの観点を重視して、アメリカとの綿密な協議や交渉を、精力的に、迅速に行うべきである。

秩序破壊に暴走するトランプ外交   
投稿者:鍋嶋 敬三 (神奈川県・男性・評論家・70-79歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-06-25 10:53 [修正][削除]
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4183/4200
 「米国第一主義」の米トランプ外交が任期半ばの中間選挙(11月)に向け暴走のスピードを上げている。世界の安定と平和維持の要となってきた西側同盟関係にきしみを生じさせ、不公正貿易を正すとして制裁関税を課しては報復を招く泥仕合が止まらない。国際協定や制度から一方的に離脱してリベラルな国際秩序を自ら破壊している。トランプ外交の原理は長期的展望に立つ戦略に基づくものというよりも安全保障も国際経済もカネの尺度で判断し、個々の取引が米国の国益にかなうかどうかである。その外交展開の最大の被害者は同盟国と米国の消費者であり、勝者は米国と覇権を争う中国に外ならない。

 「歴史的な」米朝首脳会談(6月12日)を終えたD.トランプ米大統領は記者会見で恒例の米韓合同軍事演習の中止を発表した。韓国には寝耳に水だったろう。その理由として挙げたのが、北朝鮮に対して「非常に挑発的だから」であり、中止によって「莫大なカネが節約できる」からであった。「非核化」の見返りのないまま、北朝鮮にアメを先に提供した。「非核化」の交渉が米国の思惑通りに進まないからといって演習を再開すれば、北は「米国の新たな挑発」と攻撃し交渉に応じる対価の要求をつり上げるだろう。これは北朝鮮の常套手段である。トランプ氏は二重取りの餌をまいたに等しい。「非核化」に伴う米朝関係正常化においても日本や韓国を当てにした対北援助の姿勢を示している。「非核化」の工程表も期限も全く不明のまま、大量破壊兵器やミサイルで武装する北朝鮮が相手である。トランプ大統領は日本や韓国という最も重要な同盟国との関係にきしみを生じさせないよう特別な配慮を払わなければならない。それが米国自身の戦略的な利益にかなうからである。

 トランプ政権が3月23日に鉄鋼やアルミ製品の輸入品に高率の関税を課すと発表してから3ヶ月。欧州連合(EU)やカナダ、メキシコ、中国、インドなどが各種の米国からの輸入品に報復の追加関税を表明。日本も世界貿易機関(WTO)に対抗関税の準備を通知した。トランプ大統領は6月18日、知的財産権の侵害を理由に2000億ドル(約22兆円)相当の中国製品に10%の追加関税の検討を発表、中国側も即時、報復措置を表明した。6月初旬、カナダでの主要国(G7)首脳会議は日欧と米国の対立が激化、先進国の結束の乱れが露わになった。これは中国やクリミア併合で西側から制裁を受けているロシアを喜ばせるだけだ。新興国だけでなく先進国も巻き込んだ貿易戦争はリーマンショック後、ようやく回復してきた世界経済に深刻な打撃を与えることは必至である。特に世界第一と第二の経済大国である米中両国の対立激化がもたらす影響は計り知れない。

 トランプ外交は国際的な機構や制度にも破壊力を加えている。大統領就任時の2017年1月の環太平洋連携協定(TPP)離脱宣言に始まって、気候変動の「パリ協定」、ユネスコ、イラン核合意そして6月の国連人権理事会からの離脱表明と立て続けである。米国が第二次世界大戦後、欧州の先進諸国とも協力して築き上げてきたリベラルな国際秩序が危機に瀕している。人権理事会からの脱退について中国は「国際人権事業の健全な発展のために貢献する」(外務省報道官)と見得を切った。チベットなど少数民族の容赦ない圧迫、人権活動家に対する弾圧を続ける国が口にするのは笑止千万という他はない。中国はトランプ政権の保護貿易主義に対しても「自由貿易の旗振り役」をアピールした。トランプ大統領の選挙対策最優先の「米国第一主義」が世界の中で米国の孤立を招いている。自ら失点を差し出すオウンゴールが続けば、待っているのはトランプ氏が主張する「偉大なアメリカ」ではなく、自由世界のリーダー自滅への道である。

(連載2)米朝首脳会談後の日本外交 ← (連載1)米朝首脳会談後の日本外交  ツリー表示
投稿者:長島 昭久 (東京都・男性・衆議院議員/元防衛副大臣・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-06-22 10:32 [修正][削除]
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4182/4200
 とはいうものの、すでに「賽は投げられた」のです。たしかに、トランプ大統領のやり方は常識破りです。普通の外交交渉であれば、首脳会談の前に実務協議を重ね議題など詳細を詰めておくものです。しかし、その真逆が「トランプ流」なのでしょう。とにかくトップ同士で握手を交わし、あとは実務者に丸投げ。先行きは不透明ながらも、非核化に向けて物事をスタートさせたことは間違いありません。しかも、ボールは北朝鮮のコートに投げ込まれました。今後は、北朝鮮が「迅速に」非核化のプロセスに入るかどうかが最大の焦点です。専門家の間から譲歩し過ぎだと批判を浴びていますが、米韓合同軍事演習の中止も北朝鮮の行動次第ではいつでも再開できるわけで、逆にこの米国の「善意」を反故にした場合には軍事行動へ転換する口実とすることもできますから、トランプ氏にしてみれば譲歩でもなんでもないということになるのでしょう。

 さて、ここから日本外交はどう進められるべきでしょうか。私は、中長期的な視点が重要だと考えます。当面、戦争の危機が回避できたことは歓迎すべきですが、非核化のプロセスは長く険しいものとなるでしょう。その間に我が国最大の懸案である拉致問題を解決するために、日朝首脳会談を真剣に模索すべきです。その前提として、ストックホルム合意に基づく拉致被害者に関する真の調査報告を求めねばなりません。史上稀に見る警察国家たる北朝鮮においては、(国民であれ外国人であれ)住民の動向は当局が完璧に把握していますから、拉致被害者の安否調査に時間がかかるはずがありません。その上で、非核化支援のための国際的な費用分担には誠実に応じればよいと考えます。

 さらに、中長期的な我が国安全保障の主要課題が、中国の動向であることを忘れてはなりません。過去30年に軍事費を51倍にまで拡大し、近代化された核ミサイル戦力が我が国を射程に収め、東シナ海や南シナ海で強硬姿勢を崩さない中国は、北朝鮮の脅威よりもはるかに強大で複雑です。その中国との関係を安定させるためには、経済的な結びつきの深化と同時に「力の均衡」も不可欠です。そのためには、常識破りの外交を展開するトランプ大統領率いる米国との同盟関係をどう維持、強化していくかが大事なポイントとなります。たとえ北朝鮮の核ミサイルの脅威が首尾よく低減されたとしても、弾道・巡航ミサイルに対する脅威は存在するのですから、それに対する抑止力のカギを握る陸上イージス防衛システムの配備は粛々と進めていくべきでしょう。同時に、できるかぎり「自分の国は自分で守る」だけの独自対処能力を確立するため、効率的な防衛力と多角的な情報収集能力の整備に努めるべきです。

 いずれにせよ、朝鮮半島に平和と安定をもたらすためには、単に南北朝鮮や米朝関係、日朝関係といった二国間関係の改善を図るだけでは足りません。米中や日中、日露、さらには日米間、日中韓関係など重層的な安全保障環境の安定化に向けた不断の努力が必要です。そのための戦略的な日本外交を、引き続き与野党の垣根を越えて提案し実行してまいります。(おわり)

(連載1)米朝首脳会談後の日本外交  ツリー表示
投稿者:長島 昭久 (東京都・男性・衆議院議員/元防衛副大臣・50-59歳)  [投稿履歴]
投稿日時:2018-06-21 10:30  
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4181/4200
 6月12日のシンガポールにおける米朝首脳会談は、たしかに歴史的ではありましたが、具体的な中身を期待していた人々の間には一様に失望が広がっています。とくに、専門家からは酷評されています。なぜなら、肝心の「非核化」について、会談前にトランプ大統領は、北朝鮮にCVID(完全(Complete)かつ検証可能(Verifiable)で不可逆的(Irreversible)な核廃棄(Denuclearization))を呑ませると豪語しておきながら、共同声明には「完全な非核化」(VとIは欠落!)としか謳われず、非核化の定義も、期限も、検証の枠組みすら示されなかったことから、非核化プロセスを限りなく先延ばししようとする金正恩氏の思うつぼではないかと。おまけに、長年北朝鮮が要求してきた米韓合同軍事演習の中止まで(同盟国に相談もなく)約束してしまったのは、あまりに軽率だとの批判を浴びました。

 私も、米国のシンクタンクで研究員として勤務していた1997年以来、朝鮮半島問題に関わって来た者としても、功名心(11月の中間選挙を有利に進めたいという動機か?)が先に立つトランプ大統領のやり方はあまりにも拙速で、北朝鮮やその背後にいる中国の術中に嵌ってしまうのではないかと憂慮を禁じ得ませんでした。実際、欧米の識者の間では、「会談の勝者は中国」だといわれています。中国は、これまで一貫して朝鮮半島の平和的解決を主張。そのためには、北朝鮮による核やミサイル実験の停止と(米国の対北敵視政策を象徴する)米韓合同軍事演習を凍結する(「ダブル・フリーズ」政策)必要がある、と米朝双方に呼びかけてきました。今回の首脳会談の結果は、まさしくその通りになりました。

 しかも、米朝の共同声明によれば、両首脳が合意したのは「朝鮮半島の完全な非核化」でした。国際社会が求める北朝鮮の非核化ではなく、「朝鮮半島」全体の非核化というのには実は、深い意味があります。今や朝鮮半島の南側(韓国にも、在韓米軍にも)には核兵器は存在しません。にもかかわらず、非核化の対象を「朝鮮半島」全体とするのは、韓国に対する米国の「核の傘」も排除するという意図が潜んでいるからなのです。米国が核の傘を提供する根拠は、ひとえに米韓同盟です。米韓同盟を支えているのは3万余の在韓米軍です。中国の基本戦略は、朝鮮戦争以来一貫して朝鮮半島に対する米国の影響力の排除(換言すれば、中国による朝鮮半島支配の確立)です。今回のトランプ氏の示した方向性は、ずばり中国の思惑と合致するのです。

 そうだとすると、我が国にとっては一大事です。我が国の基本戦略は、戦後一貫して米国による韓国および日本への安全保障のコミットメントをいかに維持、強化していくかにあるからです。米韓合同軍事演習の中止にとどまらず、(将来的な)在韓米軍の撤退にまで言及したトランプ大統領の交渉姿勢を看過することはできません。しかも、我が国最大の懸案である拉致問題についても、トランプ氏が首脳会談の中で繰り返し言及したとされていますが、共同声明にも盛り込まれませんでした。それだけにとどまらず、トランプ氏は、非核化の経費は日本、韓国、中国が負担することになるだろうとも述べました。さらに、懸念されるのは、北朝鮮を真剣な対話のテーブルに向かわせた「最大限の圧力」が、米朝首脳による握手によって溶解してしまう可能性が高まることです。すでに中朝国境の交易は活発に行われているといわれていますし、韓国もロシアも北朝鮮への経済支援に前向きです。(つづく)

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