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(連載1)中国・欧州関係から日本の安保への影響を考える  ツリー表示
投稿者:三船 恵美 (東京都・女性・駒澤大学教授・-) [投稿履歴]
投稿日時:2018-10-15 10:22  
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No.4265
 今月開かれた日中与党交流協議会で、中共中央対外連絡部長の宋濤氏が自公両党に対して「日本のメディアへの指導」を要求した、と報道されている。このような時期だからこそ、中国研究者には、いっそうPanda-hugger(親中派)でもDragon Slayer(反中派)でもない冷静な視点から中国を観ていくことが必要とされていよう。日中平和友好条約は今月23日に発効40周年を迎える。しかし、中国の日本に対する動向をみていると、「友好」とか「平和」といった言葉をなかなか思い浮かべることができない。今月、沖縄県尖閣諸島周辺の排他的経済水域(EEZ)内で中国がブイを設置していたと日本政府が明らかにしている。また、先月には、中国が一方的にガス田開発を進めている東シナ海の日中中間線付近で、中国が深海で掘削できるリグを新たに設置したことが明らかになっている。米中対立の最中に微笑外交を見せられたところで、中国の行動が日本の安全保障環境を脅かす「新たな段階」に入っていることは明らかであろう。そこで懸念されることの一つは、中国がとても上手に「一帯一路」を使って政治と経済のプレゼンスを向上させており、そのことが日本の安全保障環境にネガティヴな影響を及ぼす可能性である。

 筆者は現在、日本国際フォーラムの総合研究事業「パワー・トランジション時代の日本の総合外交戦略」の「分科会2:変容するユーラシアの国際戦略環境と日本の対応」(主査:渡邊啓貴教授)に参加する機会を頂いている。同研究会で口頭報告した「中国の『一帯一路』と欧州」の分析から、本稿では紙幅の都合で3点のみに絞り、中国・欧州の関係から考える日本が警戒すべき点について論じていく。第一に、イギリスのEU離脱(Brexit)の後に懸念されるEUの対中武器禁輸解除問題の行方である。2014年の中国の「対EU政策文書」のなかで「政治分野での協力」として挙げられていたように、中国は武器禁輸解除を含む「安全保障協力」の拡大を、人権対話の継続とともに、EUに求めてきた。ブレグジットは中国にとってチャンスである。

 EUは、1989年の天安門事件をめぐり、中国に対して武器禁輸制裁を行ってきた。現在に続くこの措置をめぐり、EUでは「禁輸の解釈」を「各国の解釈」に任せており、フランスを筆頭にドイツ、スペイン、イタリアが中心となって、「軍事関連物資」の輸出やライセンス生産などの形で中国への軍事移転を拡大している。ストックホルム平和研究所=SIPRIのTrends in international arms transfersによれば、2008~2017年におけるフランスの第2位の顧客だったのは中国であった。SIPRIによれば、 世界の主要武器輸輸出国として、フランスのシェアは、2008~2012年6%(4位)のうち中国のシェアが12%(2位)、2009~2013年は5%(5位)のうち中国のシェアが13%(1位)、2010~2014年は5%(3位)のうち中国のシェアが14%(2位)、2011~2015年は5.6%(4位)のうち中国のシェアが13%(2位)、2012~2016年は6.0%(4位)のうち中国のシェアが11%(2位)、2013~2017年は6.7%(3位)のうち中国のシェアが8.6%(2位)であった。フランスの軍需産業にとって、中国は長らく「お得意様」である。

 中国とEUが「包括的な戦略パートナーシップ」を表明した2003年頃から、EU諸国は対中武器禁輸解除を検討してきたが、米英日の反対により、その解除が見送られてきた。その賛否についてEUが真っ二つに分かれてきたなか、解除反対勢力の中軸はイギリスであった。「ポスト・ブレグジット」にイギリスという“たが”が外れて、ヨーロッパでの対中武器移転競争に拍車がかかれば、それが中国の軍事現代化を加速させ、アジアの安全保障環境に多大な悪影響を及ぼす可能性は否めない。ヨーロッパ諸国にとって、中国は安全保障の直接の脅威ではないからである。EUは「誰にでも何でも売らないため」に、武器輸出の際に考慮すべき8つの基準をEUの共通外交・安全保障政策(CFSP)の下、「共通の立場」として2008年に採択した。その一つが、「輸入国内での人権の尊重や国際人道法の尊重」である。しかし、この10年間、欧州の多くの国は中国の人権問題に対して「寛容な姿勢」に転じている。例えば、中国の民主活動家でノーベル平和賞受賞者であった劉暁波氏が亡くなった後、軟禁状態にあった劉氏の妻・劉霞氏をドイツは今夏受け入れたものの、今年4月に亡命申請していたウイグル人男性をドイツ政府は「行政のミス」により中国に強制送還していたことが報道されている。中国における強制臓器収奪に関して、イギリス議会はBloody HarvestやThe Slaughterなどで著名なジャーナリストのイーサン・ガットマンなどを証言させている一方、ドイツやフランスは、中国に忖度してウイグル問題で沈黙を続けている。ここで留意すべきなのは、「中国の人権問題」は、価値観の問題というだけではなく、欧米の対中武器禁輸と密接に関係しているという点である。「ポスト・ブレグジット」に懸念されるEUの対中武器禁輸解除問題は、中国とEUの貿易問題だけではない。それが中国の軍事現代化を加速することになれば、日本の安全保障への脅威を増すことになる。(つづく)

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