ところが、実際には、今のウクライナに余裕はない。いっこうに交渉そのものを拒絶するような声明は、ウクライナ政府からは出てこなかった。そこで次に関心の対象になったのは、「次はバチカンで停戦協議か」だった。想像たくましく膨らんだ法王調停なるものが話題になった。その根拠は、トランプ大統領が、5月19日のプーチン大統領との電話会談の後にSNSに書き込んだ「ローマ法王に代表されるバチカンも、交渉をホストするのに関心がある(The Vatican, as represented by the Pope, has stated that it would be very interested in hosting the negotiations.)と述べた」という一文だけだった。しかし、これは、「さあ、早く交渉を始めよう、多くの人々が期待している、バチカンも期待してくれている」といったことを、停戦機運を盛り上げるためにトランプ大統領が書き込んだだけの文章であったことは、文脈からは、明らかだった。トランプ大統領ですら、現実的可能性がある、などとは、一言も書いていなかった。盛りたいメディアが、飛びついて盛っただけだった。