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2025-06-30 15:58

トランプに引きずられて少々疲れているというのは偽らざる心境

古村 治彦 愛知大学国際問題研究所客員研究員
 第2次ドナルド・トランプ政権が発足して、まだ半年も経っていないが、既に数多くのことが起きており、また、トランプが起こしており、それに右往左往する毎日と言っても過言ではないだろう。こうした状況に少々疲れているというのが本音だ。「トランプ疲れ(Trump Fatigue)」と言ってもよいだろう。

 第2次トランプ政権が発足する前、高関税やウクライナ戦争停戦へ向けた仲介ということは実行するだろうと考えていた。イスラエルとハマス、イランとの戦闘、ガザ地区の状況については、ジョー・バイデン前政権よりも、よりイスラエル側に立った姿勢となるだろうとは考えていたが、ジェットコースターのように、アメリカが攻撃してみたり、停戦の仲介をしてみたりというようなことが起きるとは思っていなかった。国際関係論やあメリカ政治の専門家であっても、第2次トランプ政権の動きを予測することは難しかった。そして、これからどのようになるかということを正確に予測することは難しい。

 私がこれまでのトランプの動きを見ていて、「過激な発言や過激な行動をした後は必ず引く」「最低限の線は越えない」ということがあると考えている。今回のイランの核開発関連施設に対するアメリカ空軍機での攻撃でも世界に衝撃が走ったが、非常に「管理された」攻撃であると考える。アメリカの攻撃はイスラエルとは違い、イランの都市を狙ったものではなかった。また、一部報道では、イラン側は重要な資源や機材は移動させていたということだ。これは、アメリカがイランに対して、事前に攻撃を通知していたことを示唆している。また、イラン側がカタールにある米軍基地を攻撃する際にも、予め通知していたために、死傷者は出なかった。このように、アメリカとイランは大国らしく今回の状況に対応している。

 中東情勢にとって一番の脅威となっているのはイスラエルだ。イスラエルが中東地域を、そして、世界中に戦争の脅威を与えている。イスラエルがイランに対して攻撃を行わなければ、今回の状況は生まれていない。現在のイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、戦争状態が落ち着いて、退陣するとなれば、家族ぐるみで、汚職などのスキャンダルで逮捕され、これから刑務所暮らしをしなければならない。私から見れば、ネタニヤフは戦争に戦争を重ねて、個人の身の安全を確保している。そして、政権内の極右派を利用している。より正確には、お互いが利用し合っている。イスラエルがアメリカの意向を無視して、不羈奔放に行動することは、世界を危機に陥れる許し難い行為だ。私は、イスラエルとネタニヤフ政権を区別すべきと考えている。このような危険な勢力は一掃されるべきだ。同じことは、ウクライナにも言える。

 第2次トランプ政権が成立していろいろなことが起きて、私たちはうんざりしながら、不安を感じている。しかし、トランプは、ギリギリのところで行き過ぎないというバランス感覚があると私は考えている。しかし、ウクライナやイスラエルのような、不確定要素があると、不測の事態が起きる可能性がある。両国については、事態をエスカレートさせないために、政権の交代が肝要と考える。
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