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”グローバリズムの格差是正は再分配で”は正しいのか   
投稿者:倉西 雅子 (神奈川県・女性・政治学者・50-59歳) [投稿履歴]
投稿日時:2018-08-29 11:30 [修正][削除]
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No.4230
 グローバリズムへの主要な批判点の一つは、富の少数への集中とそれに伴う格差の拡大です。こうしたグローバリズムの格差問題に対する解決策として提唱されているのが、再分配機能の強化です。”再分配”の実施主体は、凡そ政府と民間の二つ大別され、前者はさらに国内レベルと国際レベルの二者に分かれます。しかしながら、何れの方法にも難点があるように思えます。最初に民間による再分配について見てみます。民間主体の再分配とは、富裕層による自発的な慈善事業や寄付活動を意味します。マイクロ・ソフトのビル・ゲイツ氏やフェイスブックのマイケル・ザッカーバーク氏など、アメリカのIT長者の多くはこの立場にありますが、富裕層の節税対策としての側面がある上に、支援や救済の対象は、これらの人々が自らの好みで選別するため、その恩恵がグローバリズムの負の影響を受けた全ての人々に及ぶわけではありません。この側面は、アメリカの中間層が破壊されるがまま冷たく放置された姿を見れば明らかです。それでは、政府による再分配機能を強化すればこの問題は解決するのでしょうか。

 政府主体の解決方法の内、最も一般的な方法は国内における財政移転政策です。この方法は、累進課税制度を強化し、高額所得者に対して税率を高くする一方で、政府が、低所得層を中心に家計支援的な意味を持つ給付を増額させるという方法です。中間層が崩壊した諸国では、全国民に一律同額の給付を実施するベーシック・インカムもこの類型に含まれるかもしれません。グローバリズムの”勝ち組”を抱える先進国や中国等の途上国にあっては一定の効果は期待できますが、それでもグローバル化の時代ですので、パナマ文書等が暴露したように、富裕層は、節税のためにタックスヘイブンに財産を隠したり、居住国を変えてしまう可能性があります。また、もとよりグローバリズムの煽りを受けて”負け組”となってしまった国では高額所得者の層も薄く、財源の確保にさえ苦しむことになりましょう。何れにしても一国の単位での再分配政策には問題が山積しているのですが、その理由は、先述したように、グローバリズムのメカニズムが働くと、国境を越えて富が偏在、あるいは、少数に集中するところにあります。それでは、”勝ち組”となった国が、”負け組”の国に対して財政移転を行えばよいのでしょうか。この点は、EUが既に経験済みです。EUでは、共通税源の下で、地域政策など、様々な再分配機能を有する共通政策を実施してきました。ところが、ソブリン危機は今日なおも完全には収束しておらず、マクロン仏大統領によるさらなる財政統合の提案も、EUの再分配機能不足に対応したものです。メルケル独首相は賛意を示すものの、財政負担が増すドイツ国民がこの案に快く同意するとは思えません。ましてや、EUのような枠組もないにもかからず、中国が、アメリカの中間層のために再分配政策を実施するといった展開はシュールな幻想でしかないのです。

 以上に再分配に関する問題点を述べてきましたが、そもそも再分配は、人類にとって望ましいのでしょうか。この基本問題に立ち返ってみますと、あらゆる”仕事”というものは、他者の必要とするものやサービスを提供することであり、所得とは、その対価を得ることですので、単なる給付金の提供には、人と経済や社会との繋がりがありません。社会保障や福祉政策としての意味での再分配政策には弱者救済という意義はありますが、一般の人々が何もせずして給付金のみを受取るという状態は、人類がこれまで経験していない未知の世界の出現なのです(再分配機能の”権化”のような社会・共産主義でされ労働を基礎としている)。そしてそれは、人々から生き甲斐やこの世に存在する意義を見失わせ、アパシーへと導くかもしれないのです。

 このように考えますと、グローバリズムに付随する格差問題に対する解決策の一つは、各々の”仕事”の適正評価や収益分配の見直しかもしれません。AIに対して、経済全体の成長を実現する条件を問うてみれば、企業利益の分配は、株主配当よりも一般消費者でもある社員の給与に重くすべきと答えるでしょうし、CEOや投資家の報酬水準は、その業務内容からすれば高すぎる、と回答するかもしれません。富の集中が問題なのですから、その最もシンプルで合理的な解決方法とは、”仕事”の意義に応じて、富の分散を積極的に図ることなのではないでしょうか(おそらく、AIもこのように”考える”はず)。共産主義が誕生して以来、資本主義か共産主義かの二者択一を迫られる嫌いがありましたが、経済体制としては、共産主義にも、資本主義にも重大な欠陥があります。グローバリズムがもたらした格差問題は、国際社会、国、企業、個人によって織りなされる経済という活動分野の、将来に向けた在るべき姿をも問うているように思えるのです。

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