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(連載1)地政学的観点からユーラシアの将来をみる  ツリー表示
投稿者:渡邊 啓貴 (東京都・男性・東京外国語大学教授・60-69歳) [投稿履歴]
投稿日時:2018-03-08 12:51  
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No.4098
 ユーラシアの将来について地政学的観点から考えてみたいと思います。わたし自身は今世紀に入って中国の台頭、ロシアの復興は「多極化」、ないし「多極・一極並存型体制(軍事的に突出したアメリカ)」と考えていました。しかしこのところ事情は米中二極G2というような様相を帯びてきています。それはアジアにだけ言えることではなくなってきているように思えます。そうした意味から本稿では、具体的には中国の台頭による世界とユーラシアでのパワー関係の変化と日本の立場について述べたいと思います。日本の立場については、簡単に言えば、いろんな不可測的要因が高い中で、柔軟に多角的に対応していく発想を持たねばならないということにつきます。実際には2025年にはポストパワーシフトが完全な形で実現すると考えている人は少ないと思います。中国の台頭といっても、中国が総合力でアメリカと対等なパワーになると考えている人は少ないと思います。まだまだ総合的な意味でアメリカは世界のヘゲモンであり、影響力は落ちていても世界の警察官であってもらわないと困るという見方が強いと思います。しかし米中の力関係が接近し、相対的にアメリカの脆弱化に向かっていることも多くの人が認めるところです。そんな時代が来たとき、地政学的には日本が米中パワーの間で板挟み状況に陥る可能性がなくはないないということも考えておかねばなりません。

 第一は、先ず日本は太平洋国家だが、同時にユーラシアの国だということです。福井県の逆さ地図というのがあります。大陸から見た極東地図ですが、その地図だと日本海は日本列島と大陸に囲まれた「内海」のように見えます。日本はもともとユーラシア大陸のパワー、中国の勢力圏の一部でした。中国を中心にした朝貢貿易圏の一部でした。しかし大陸の大国、つまりランドパワー中国が西欧列強によって植民地化され、脆弱になるとユーラシアの東側、つまり極東でのパワーバランスが崩れました。日本は米欧、シーパワーとの協力関係を重視するようになりました。1930年代から終戦までの例外的な不幸な時期を別にすると、19世紀後半以後の近代日本外交はそうしたシーパワー、米英との協調外交を行ってきました。改めて言うまでもないことですが、日本はランドパワーとシーパワーの間に挟まった国だということです。さてそこでランドパワーの中国が経済・軍事的に台頭してきてこのパワーバランスが崩れる、いや逆転する。そうならないまでも、少なくともシーパワーとランドパワーである米中が拮抗し、均衡が取れていくことになると、それは近代以後の東アジアのパワーバランスの大変化です。それに合わせた新たな日本外交を模索していかねばなりません。G 2と言われる米中二大国の世界支配という状況になるのか、そのとき米中は衝突するのか、妥協して共同統治による体制を構築していくのか。そんな時が来るかもしれないのです。

 第二に、もうひとつ今度は世界大の地図で地政学的なユーラシアの位置づけを考えてみましょう。北極海からみた鳥瞰図です。温暖化によって北極海の氷が解けて北極海ルート、中国の言い方では「氷上のシルクロード」の重要性が一層大きくなるということは最近よく議論されます。昨年版のフランスの地図アトラスに北極海から見た米海軍の配置図がありました。改めてそれを見ていて気が付いたのですが、地球儀を東西を横軸にしてみるのではなく、あくまでも球形として地球を北から見ると、この場合北極から見た北半球ですが、米国大陸とユーラシア大陸はくっついてみえる。アメリカ大陸とユーラシアの西欧側の間には隙間があるけれども二つの大陸は北極海を円を描くようにして取り囲んでいます。大西洋を挟んで米欧、太平洋を挟んで米・ユーラシア、そこには日米も含まれますが、そして西欧と日本を両端としたユーラシア大陸がつながって見えるわけです。そしてここでも「内海」としての北極海の存在が浮かび上がり、それが海の交通路となります。そして北極海沿岸地域が海の要衝路として重要な意味を持つことになります。北極海は19世紀的な地政学によるユーラシア中央部の後背地として「氷で閉ざされた天然の要塞」というわけにはいかなくなるわけです。以上の二つの地図を見ていく中で、ユーラシアをめぐる日本の役割はシーパワーとランドパワーの橋渡し役にあると思います。

 次に、パワーシフトが進むユーラシア大陸をどのように見るのか、という点です。その最も大きな要因はアメリカの影響力の後退です。ここでは省略しますが、冷戦終結後のアメリカ一極支配とも呼ばれた時期からイラク戦争を通してそれは明らかです。オバマ大統領時代のオフショアポリシーやよくいわれる「関与とヘッジ」という中国を国際社会に取り込んでいく解決と警戒的な待機姿勢が近年のアメリカの特徴です。「アジアへの回帰」といいつつ、中国の海洋進出も北朝鮮の核ミサイル開発の抑止にも成功していないというのが実情です。このアメリカの影響力の後退を前提としてユーラシアでの勢力再編成と中露の反米連合が進んでいます。そこでユーラシア全体の新しい事態を考えねばなりません。その前にここではその構造について述べてみたいと思います。

 私はここでユーラシアを三つのパワー勢力圏(パワー圏)を通して考えてみたいと思います。まず、パワー勢力圏としては、中国勢力圏、次にロシア勢力圏、ヨーロッパ勢力圏です。もちろんこれに加えて、インド、そして中東という地域についても考えなくてはいけませんが、その場合はむしろ「ユーラシアの五つの文明圏」という括りがふさわしいように思います。インドはこの国自体の成長や潜在力は評価できますが、中国と中東諸国との複雑な関係を反映して勢力圏の中心となるほどの求心力は弱いように思います。ヒンズー圏と呼ぶことはできると思いますが、勢力圏と言えるほどの強い結びつきを持った地域を形成しているということはできないと思います。中東に関して言えば、大雑把に言ってイスラム文明圏ということができますが、地政学的な意味でのまとまりのある勢力圏であるとは言い難いと思います。ここで私の言う勢力圏とは、パワーとして核となる国があり、その国を中心とした勢力圏のことです。ヨーロッパの場合には核となる複数の国と言った方が良いかもしれません。具体的に地域パワーを中心とする多国間協力枠組みの形で示されます。(つづく)

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