ホーム
新規
投稿
検索
検索
お問合わせ
本文を修正後、投稿パスワードを入力し、「確認画面を表示する」ボタンをクリックして下さい。
2025-05-27 00:00
(連載2)煽り系メディア・学者評論家層の国際問題論評について
篠田 英朗
東京外国語大学大学院教授
ところが、停戦なければ交渉よりも制裁、の話は、思い出されることはなく、なぜ制裁なしで停戦交渉が行われるのかは全く論評されることなく、話題は次に、「ゼレンスキー大統領がプーチン大統領のイスタンブール交渉への参加を要求! いよいよ首脳会談か」に移った。ロシアは単に最初からこの「要求」を全く相手にしていなかっただけだったのだが、5月16日イスタンブール交渉の際には「プーチンは逃げた、臆病者だ」の大合唱が起こった。そして「ロシアの要求は絶対のめない!交渉拒絶で、戦争継続だ」の解説が見られた。
ところが、実際には、今のウクライナに余裕はない。いっこうに交渉そのものを拒絶するような声明は、ウクライナ政府からは出てこなかった。そこで次に関心の対象になったのは、「次はバチカンで停戦協議か」だった。想像たくましく膨らんだ法王調停なるものが話題になった。その根拠は、トランプ大統領が、5月19日のプーチン大統領との電話会談の後にSNSに書き込んだ「ローマ法王に代表されるバチカンも、交渉をホストするのに関心がある(The Vatican, as represented by the Pope, has stated that it would be very interested in hosting the negotiations.)と述べた」という一文だけだった。しかし、これは、「さあ、早く交渉を始めよう、多くの人々が期待している、バチカンも期待してくれている」といったことを、停戦機運を盛り上げるためにトランプ大統領が書き込んだだけの文章であったことは、文脈からは、明らかだった。トランプ大統領ですら、現実的可能性がある、などとは、一言も書いていなかった。盛りたいメディアが、飛びついて盛っただけだった。
ところが、ロシアがバチカンにおける交渉の可能性はないことを表明すると、なぜそのような話題になっていったのかの検証などはなく、全てはトランプ大統領の勘違いだった、という話に戻ることになった。今度は「複数の関係者の話」として、19日に行われた米露首脳会談直後にトランプ大統領が「私は、ウラジーミルは和平を望んでいないと思う」と述べたといったことを、いかにも大ニュースであるかのように取り上げている。これで「バカなトランプも遂にわかったか」の地点に戻ったということで、無限ループの完成のようである。
メディアも商業ベースで仕事をしており、「盛る」といった操作がなければ、やっていけないことは、当然だ。だが学者や評論家層までいっしょになって「盛る」活動だけに専心している様子は、控えめに言って、異様だと感じてしまう。ただし、もちろん、異様だ、というのは、私の主観的な印象であり、少なくともそうした「専門家」の方々が少数派、ということではないのは、よく知っている。(おわり)
投稿パスワード
本人確認のため投稿時のパスワードを入力して下さい。
パスワードをお忘れの方は
こちら
からお問い合わせください
確認画面を表示する
記事一覧へ戻る
公益財団法人
日本国際フォーラム