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2025-05-26 22:35

(連載1)煽り系メディア・学者評論家層の国際問題論評について

篠田 英朗 東京外国語大学大学院教授
 欧米のメディアの政治的偏向は、以前から問題視されていた。欧米に関する記事が多すぎて非欧米の記事が少なく、欧米中心主義的な見方で事態を断定したり論評したりする傾向のことだ。これが、最近は、いっそう深刻化しているように思われる。というのは、メディア側がかなり感情的に意固地になっているように見える場面が多々あるからだ。一つの理由は、ロシア・ウクライナ戦争が、欧米メディアに当事者意識を作り出したことだろう。「ウクライナは勝たなければならない」を自分事として取り扱い過ぎて、期待した通りに進んでいかない現実が受け入れられない。そこで、感情的に苛立っている人々の存在が目立つ。そこにトランプ大統領が登場した。世界の良心としてのメディアの役割を、アメリカの大統領が否定する場面が頻繁に起こる。それに感情的に反発する場面も目立つようになった。
 
 ここ数年で特に目を引くのは、学者・評論家層にも、感情的な事情による偏向が目立ってきていることだ。ロシア・ウクライナ戦争の勃発以前には、見られなかった現象だろう。ホワイトハウスでゼレンスキー大統領が、トランプ大統領とバンス副大統領との間で口論になったとき、「ロシア寄り」のトランプ大統領憎し、の声が巻き起こった。「アメリカを見捨てて、日・欧同盟を結んで、ロシアをやっつけよう」といった呼びかけを学者「専門家」層が行っているのが、話題となった。
 
 ところが、その後、バチカンでトランプ大統領とゼレンスキー大統領が、二人きりで15分話した画像が出回ると、ゼレンスキー大統領を絶賛する声が巻き上がっただけでなく、「これで潮目が変わった」といった解説を繰り返す学者・評論家層が出現した。欧米メディアが欧州の「匿名政治家」の話として、「アメリカは制裁に参加してくれる」という報道をすると、「識者」の方々から、「遂にバカなトランプでも事実がわかったらしい、これでいよいよロシアも崩壊だ」といった解説が出回り始めた。
 
 ところが、5月12日を期限とした「30日間停戦」をロシアが拒絶した後も、なかなか約束された制裁は実施されなかった。それどころか、5月20日になってようやく「第17弾(!)」となる対ロシア制裁パッケージをEU理事会が発表した後も、アメリカの参加はなかった。独・仏・英首脳の「コカイン騒動」まで引き起こしたリラックスした格好でのリラックスした表情での電車移動キーウ出張時の「余裕しゃくしゃく」の発言では、ロシアが「30日間停戦」を拒絶するなら、停戦交渉も行わず、ただ制裁だけを行ってロシアを叩き潰すかのような話だったにもかかわらず。(つづく)
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