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2013-08-14 19:00

(連載)パノフ・東郷共同提案の問題点(3)

茂田 宏  元在イスラエル大使
 国後、択捉については、日本側としては返還を要求していくべきであり、それが交渉の本当の主題である。ロシアの態度が硬いから譲歩案を示すべし、というのは間違った考えである。この返還の話を決着させることを中心に物事を考えるべきで、日本側の立場を害する中間案をあれこれ考えても、北方領土問題の解決にはならない。

 『朝日新聞』がこのパノフ・東郷共同提案を意義深いものと大々的に報じていることを私は不思議に思っているが、マスコミは色々なことをするので、やむを得ない。しかし東郷君のように日ソ、日ロの交渉経緯を承知しているはずの人がこういうことを言い出すのは、誠に奇怪であり、遺憾であると言わざるを得ない。

 日ロ間の領土交渉については、我々の原則的な立場を堅持しつつ、交渉のための適切な時期を待つしかないのではないか。そして過去の経験に鑑み、そういう時期は必ず来るであろう。プーチンはいま領土で日本と取引する意向をもっている、あるいは取引し得る立場にある、とは考えられない。

 日本がいま譲るようなことをすると、尖閣など他の領土問題への波及がある。更に、これまで日本の立場を支持してきた欧州各国や米国の信頼を揺るがすことになる。譲ることで我々が得る国益はないと言ってよい。なおロシアと組んで中国に対抗するというようなことを言う人がいる。ロシアは今は中国の対抗者ではなく、ジュニア・パートナーであると考えるのが正しいだろう。そのことは2001年の中ロ善隣協力友好条約の規定とその運用ぶりに明らかである。米国ではドミトリー・サイムズが中ロ関係について「中ロ結託を用心しろ」と論じているほどである。(おわり)
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