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2013-08-13 14:17

(連載)パノフ・東郷共同提案の問題点(2)

茂田 宏  元在イスラエル大使
 歯舞、色丹の引き渡し手続きについて、1955~56年交渉時にソ連が提案した手続きがある。引き渡し時期については平和条約発効後6カ月以内、両島にある財産は無償で日本に渡す、両国は歯舞、色丹がソ連に編入されていたことに伴う賠償要求はしない、などが規定されている。こういう手続き問題と引き渡しに条件を付け得るかは、別の問題である。

 そしてこの手続き問題はパノフ、東郷両氏がいうように難しい交渉になるものではない。歯舞、色丹の日本返還問題を蒸し返すというロシアの策謀に惑わされてはいけない。なおプーチンがその点を勘違いしている恐れがあるので、機会を見て念を押しておく必要がある。

 国後、択捉については、これら両島を特別な法的地位を持つ特別共同経済特区にするとされている。この共同経済開発提案については、どう考えるべきか。こういう提案をロシア側がするのは別に新しいことではない。プリマコフは首相の頃にこういう考えを推進していた。日本側は日本の法的立場を害さない限りで応じると言う態度をとってきた。

 この話が進まないのは、特別な法的レジームをロシア法で作るというのがロシア側の一貫した考えであるからである。そうロシア側は明言してきた。これは日本側に「ロシアが北方領土において現実に行使している管轄権を正統なものと認めよ」と要求しているに等しい。日本の法的立場に鑑み、そういうことが出来るわけはない。このロシア側提案は北方領土に関する日本側の立場を掘り崩そうとする提案であることは明らかである。(つづく)
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