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2013-08-12 12:56
(連載)パノフ・東郷共同提案の問題点(1)
茂田 宏
元在イスラエル大使
ロシアのパノフ元駐日大使と日本の東郷元外務省欧州局長がロシアの『独立新聞』に「日ロ間の北方領土交渉を前進させるための一つの案」であるとして、共同提案を発表している。日本の『朝日新聞』もこれを報道している。提案には、秘密交渉など話の進め方に関する提案のほか、実質的には二つの提案が出されている。第1点は歯舞、色丹について、その引渡しについての条件などを話し合う交渉を行うことである。第2点は国後、択捉について「双方が受け入れられる法的な地位を持つ特別共同経済特区を作るための交渉」をするということである。
私は両名ともよく知っているが、パノフがこういう提案をするのはある程度理解できるが、東郷君がこういう提案に賛同しているのには驚きを禁じえない。歯舞、色丹については、1956年の日ソ共同宣言第9項で日本に引き渡されることになっている。ただ現実の引渡しは、日ソ平和条約締結後に行われることになっている。歯舞、色丹の引渡しは平和条約の締結が条件で、それ以外に歯舞、色丹の日本への引渡しの条件はない。
1960年、ソ連は日米新安保条約の締結に関連し、「平和条約の締結に加え、日本から外国軍隊が撤退することを、歯舞、色丹の引渡しの条件とする」と一方的にグロムイコ書簡で通告してきた。日本側はこれに強く反発し、日ソ共同宣言に違反すると抗議した。この事例に見られるように、日本側は歯舞、色丹の引き渡しに平和条約の締結以外の条件はないとしてきた。
「日ソ共同宣言に書かれていること以外に話し合うべき条件がある」ことを前提にした、こういう提案に東郷君が賛同していることに私は驚いている。こういう提案はとても日本側として受け入れられるものではない。これでは、極端に言えば、例えばロシアが日本に「ロシアに友好的な政府が成立することを条件とする」などと、歯舞、色丹の返還を引き延ばす余地をロシアに与えることになり、国益に反する。(つづく)
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