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2008-05-17 16:04

(連載)戦後平和主義について(3)

茂田宏  元在イスラエル大使
 近隣諸国にとって脅威にならない「弱い日本」というテーマが、戦後の東アジアの安定に一定の役割を果たしたし、日本自身もそれで概ね満足してきた。それで通るのであれば、それでよい。しかし東アジア情勢は大きく変化した。「先軍政治」を標榜し、核兵器保有国になった北朝鮮、20年間2桁の軍事費増強をし、かつ被害者意識に裏打ちされたナショナリズムに燃える中国、現在を軍備競争の時代と規定するプーチンのロシア、それらに軍需増強で備えようとする韓国、中東に足を取られ、同盟より有志連合での対応を重視する米国など、問題は多い。

 日本は否応なくこの東アジアの政治に巻き込まれざるを得ない。時勢を良く見て、それに対応することが必要であり、憲法の理念を言い立てるだけでは、安全保障政策にはならない。宮沢さんの発言にも時代を超えた意味を付与すべきものではない。私の考えを言うと、日本は「強いが、平和愛好的な日本」を目指すべきである。「強さ」と「平和愛好」が矛盾するかのような考えは、払拭すべきである。

 日米同盟は堅持すべきであるが、「巻き込まれること」と「見捨てられること」を心配することから解放されるだけの強さを持ち、日米両国が共にアジアの平和を保障するパートナーになるのを目指すのが良い。それが日本人の力を超えるものとは思えない。なお最近ある歴史学者に「中国のナショナリズムを適切なレベルに抑制するには、どうしたらよいか」と質問したところ、答えは「戦争をして負けるのが一番でしょうね。ドイツも日本もそうだった」との答えであった。しかし核の時代にはそんなことはあってはならない。(おわり)
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