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2022-09-08 10:39

(連載2)「沖縄本土復帰50年」:日米地位協定を再考する

奥住 莉奈 JFIR 特任研究助手
 その後、1996年には、日米合同委員会において航空機騒音規制措置に関する合意が承認され、「飛行場の場周経路は、できる限り学校、病院を含む人口稠密地域上空を避けるよう設定する」と明記された。また、前述の沖縄国際大学での墜落事故のあと、2007年8月には、日米合同委員会において、「普天間飛行場に係る場周経路の再検討」に関して合意がなされているにも関わらず、その後2017年12月には再び、普天間第二小学校の校庭に重さ7.7キログラムの窓枠が落下する事故が発生した。事件後、小学校にはシェルターがつくられ、航空機が小学校側を向いた際には児童にシェルターへの避難をよびかけるという戦時中さながらの対策がとられている。
 
 加えて、低空飛行航訓練の問題もあげられる。例えば、日米地位協定の実施にともなう航空法特例法では、航空法の最低安全高度の規定を米軍に対しては適用除外としているが、日米合同委員会は1999年1月の合意書で次のように定められた。
「最大限の安全性を確保するため、在日米軍は、低空飛行訓練を実施する区域を継続的に見直す。低空飛行の間、在日米軍の航空機は、原子力エネルギー施設や民間空港などの場所を、安全かつ実際的な形で回避し、人口密集地域や公共の安全に係る他の建造物(学校、病院等)に妥当な考慮を払う」
「在日米軍は、国際民間航空機関(ICAO)や日本の航空法により規定される最低高度基準を用いており、低空飛行訓練を実施する際、同一の米軍飛行高度規制を現在適用している。」
日米間では様々な規定が合意されているものの、残念ながら、その後日本全土で住宅街ビル群での目撃情報が相次いでいるのが事実だ。
 
 国家を維持する上で、国防は最優先事項であり、地政学的にみてもアメリカ側、日本側双方において、沖縄県をはじめとして米軍基地を配置する必要性は多いにあるだろう。だが、その背景にはどのような課題や問題があるのかを明確に把握するとともに、そもそも国防とは誰のためのものであるのかを我々は忘れてはならない。
 
 今後、日本がアメリカとの対等な関係性を目指しつつ、かつ昨今の世界情勢をふまえるならば、アメリカだけに頼る国防ではなく、その他諸外国とも協力関係を維持・強化することが肝要であろう。日本国憲法において定められた9条を方針に、自国を守る上でのさらなる自衛隊の強化と、NATOとの関係強化、隣国の韓国との協力関係の強化を急務におきつつ、それらを一つずつ実践していく必要性があるといえよう。(おわり)
 
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(連載1)「沖縄本土復帰50年」:日米地位協定を再考する 奥住 莉奈 2022-09-07 20:39
(連載2)「沖縄本土復帰50年」:日米地位協定を再考する 奥住 莉奈 2022-09-08 10:39
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