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2022-09-07 20:39

(連載1)「沖縄本土復帰50年」:日米地位協定を再考する

奥住 莉奈 JFIR 特任研究助手
 本年令和4年に本土復帰50年を迎えた沖縄県で、琉球新報が5月15日に発刊した特別号が話題をよんだ。この特別号では、50年前の記事の1面を復刻させ、その見出しも50年前の記事と同様の「変わらぬ基地 続く苦悩」と付けて、現在も変わらない沖縄県の基地負担を訴えた。
 
 筆者は1995年沖縄県那覇市に生まれた。未だに記憶している基地に関する事件では、2004年沖縄国際大学にアメリカ軍普天間基地所属のヘリが落下した事件がある。奇跡的にも民間人の犠牲者はでなかったが、激突した同大学校舎1号館の損壊をはじめ、周辺38世帯延べ61件に甚大な被害を与えた。当時、事故現場には、米軍からの意向もあり、学生、職員、取材陣はおろか、日本当局側の立ち入りも禁じられ、日本側には一切の調査を行うことが許されなかった。その後、放射性物質の飛散も確認されたものの、その発表は3週間経っても行われず、現場に最初に到着し消火活動を行った市の消防隊員への放射能検査も行われなかったことから、米国側の対応への非難が高まった。
 
 この事件後の2016年12月には、名護市安部の海岸に普天間基地所属のオスプレイが墜落、大破したほか、翌2017年10月には、同基地の大型輸送ヘリが東村高江の民間地域に不時着、大破炎上したが、いずれも上述の事件と同様に日本側による調査、原因解明は米軍側によって拒否された。
 
 日米地位協定によると、第17条第10項bに、「前記の施設及び区域の外部においては、前記の軍事警察は、必ず日本国の当局との取極に従うことを条件とし、かつ、日本国の当局と連絡して使用されるものとし、その使用は、合衆国軍隊の構成員の間の規律及び秩序の維持のため必要な範囲内に限るものとする。」とあり、米軍基地外での米軍事故・犯罪の捜査について、米側は「必ず日本の当局との取極に従う」と規定されている。一方、別紙の日米地位協定合意議事録によると、「日本国の当局は、通常、合衆国軍隊が使用し、かつ、その権限に基づいて警備している施設 若しくは区域内にあるすべての者若しくは財産について、又は所在地のいかんを問わず合衆国軍隊の財産について、捜索、差押え又は検証を行なう権利を行使しない。」と記載されており、いずれの事故についても後者の規定が適用されたことになる。(つづく)
 
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