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2021-11-03 21:25
(連載2)『砂の器』『破戒』、そして『人形の家』
葛飾 西山
元教員・フリーライター
親が抱えている金銭問題などのトラブルを衆人環視の中で多くの人が納得できるよう明快に説明することなど、一体何人の人ができようか。だがいったん燃え上がったバッシングが終わることのなき袋叩き状態になった。国民大衆の心理に漠然とした「雲の上のやんごとなき世界はこうあってほしい」という夢のような理想と、伝統美としての皇室制度があり、秋篠宮家と内親王と一般人である圭氏がそれを損なうものだという烙印を押したのは否定できないであろう。中には「学習院大学に通わせていれば圭氏と出会うこともなく、皇室の伝統が守られたはずだ」という心無い批判まであった。また結婚問題を批判するのは皇室と眞子内親王のことを思えばこそだという、一方的強者の論理によるバッシングの正当化も見られた。
日本国民が憲法で保障され、享受している権利を、日本国民統合の象徴であるはずの天皇及び皇族には認めようとしない、ある種の矛盾したねじれた空気が感じられた。令和の時代になってもなお社会的評価に裏打ちされた家系との婚姻を良しとするのは、日本国民の心理にいまだ、旧体制の家制度・身分制度を懐古し、皇族・旧華族・財閥を仰ぎ見てそれを誇りに感じていたいという思いがあるからであろうか。
ただ、一般人でも宿命から逃れることはそうそう簡単なことでない。人間は結局、宿命から逃れることができないという悲劇性をあぶり出したのは松本清張『砂の器』である。それでもなお宿命から逃れたければ、もはや日本で生きてゆくことはできず、新天地に逃れて活路を見出すしか解決策はない。島崎藤村『破戒』で描かれた結末である。まさに小室夫妻がとった選択そのものである。眞子さんの記者会見で「これまでの経過はすべて私が圭さんにお願いしたこと」主旨の一文があった。
二人はもはや多く語る気すらないであろうから、これは憶測になるが、恐らく二人が「未熟だった」と言って結婚を延期した時から、父君と宮内庁には真子さんが対応し、圭氏はとにかく海外での生活拠点を構築するという役割分担をしていたのではなかろうか。そう考えると「幼い」と批判されているが、なかなかどうして、両人の実行力・突破力には恐れ入る。バッシングの槍玉に上がった瞬間から『破戒』のような結末の付け方を二人は描いていたのかもしれない。天城山心中事件のようにならなければ、という心配はまるで杞憂だった。(つづく)
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