国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2021-11-02 21:22

(連載1)『砂の器』『破戒』、そして『人形の家』

葛飾 西山 元教員・フリーライター
 言わずと知れた名作のタイトル。だがこれは小室夫妻の成婚に至るまで両人に投げかけられたバッシングの帰結を見てすぐに私の脳裏に浮かんだものである。
 
 日本国憲法で職業選択の自由と婚姻は両性の合意のみに基づくことが国民に保障されている。これは戦前の旧体制の身分制度とそれに起因する差別を払拭するため、生まれ落ちた家庭環境によって受ける、身分や差別という本人ではいかんともしがたい制約を一生背負って生きてゆかなければならない運命、つまり宿命から人間を解放することが根幹にある(はずである)。ただし民主国家の憲法は国家権力から国民の自由と権利を保障するための法であり、前時代において国家権力の頂点にあった皇族が国民に含まれるかどうかは、結論を見ない争点ではあるが、現状としては天皇とそれに準ずる皇族は、前時代の帝国という旧体制の支配者から一転して、「象徴」として憲法の名において国民の管理下に置かれているとも言えよう。そして皇族には象徴という曖昧な概念のもと、国家・国民が期待する伝統に沿って立ち居振る舞い生きることも求められる。
 
 好んでその世界に入ったのならともかく、好んで皇族に生まれたわけでない以上、この生き方は当人にとっては「宿命」以外の何物でもない。皇族が「神」として存在するならば、国民と同列には論ぜられないという意見に肯首せざるをえないが、昭和天皇が人間宣言をした時点で天皇とその一族は「人間」となったのであるから、少なくとも皇族は国民と同等の「人間」として扱われ、「宿命」から逃れることは、人間として許容されるべきで、あくまで宿命を受け入れて生きてゆくかどうかは一人の人間の決意に依るべきものであろう。ところが上皇が体力の限界からの退位を表明された際も、それすら「伝統」の名のもとに許容せず、崩御されるまで退位を認めるべきでないとする意見もあった。眞子内親王の婚約にあっては、小室圭氏の家族の金銭問題が露呈して以後、圭氏や内親王の人格や、秋篠宮が皇女を学習院以外で教育したことがそもそもの過ちとして批判の対象となった。群集心理は他人に対しては宿命を受け入れて生きてゆくことを一方的に強要する嫌いがある。
 
 そもそも金銭問題は圭氏に何らの法的責任はなく、仮に母親が亡くなって残された負債を相続する立場になったとしても、一切の相続権を放棄すれば債務の継承から免責されるのは世の常識である。ましてや母親と男性の恋愛感情のこじれに起因する民事問題である以上、双方の言い分が一致するはずもはく、民事裁判の調停以外に解決策はないわけで、圭氏の主張が「一方的な言い分」だとして批判の的になるのはそもそもお門違いなことであった。(つづく)
 
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム