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2020-04-10 13:30

(連載2)「緊急事態宣言」をどう受け止めるべきか

荒木 和博 拓殖大学教授
 ちなみに、「非常事態宣言」と「緊急事態宣言」は厳密には違います。報道でも何でも山ほど「非常事態宣言」と言っていましたし、いまでも混同している人が多くいるのではないかと思います。実のところ、私も最近まで「緊急事態宣言」とすべきところを頭の中では完全に「非常事態宣言」になっていました。
 
 このことを指摘して下さった方によれば、今回の「宣言」は現行憲法で対処できる新型コロナウイルス特措法憲法を根拠とすることから「緊急事態」であり、拉致問題のような現行憲法の枠内で対処できない問題は「非常事態」ということではないかとのことでした。確かにそう考えると「緊急事態宣言」の意味も分かるような気がします。まあ、少なくともまだ「非常事態」ではないということです。
 
 さて、米空母「セオドア・ルーズベルト」の中で多数の感染者が出てメディアにリークするかたちで対処を求めた艦長が解任され、横須賀に停泊中の「ロナルド・レーガン」の乗組員にも感染者が出ました。事実上西太平洋で任務に就ける米空母はいないという状況です。感染者数や死者数を過少に発表し、終息しつつあるかのように宣伝する中国は内部の矛盾を逸らすために覇権主義を強める可能性もあり、日本の安全保障は必ずしも安定的ではありません。そのときに日本が頼るつもりの米軍が機能していないかもしれない、米軍に国土の安全を期待するのは無理かもしれないということを示唆しているニュースといえます。
 
 北朝鮮もあの状態でのミサイル乱射の行き着く先は日本の陸地への発射かも知れません。「合理的に考えればそんなことをやるはずがない」と思う方も多いでしょうが、北朝鮮がこれまでやってきたことはことごとく非合理なことばかりです。コロナ騒ぎで四苦八苦しているときに「頼むぜ、シンゾー、今、国の中が大変なんだ。そっちはあんたの縄張りだからよろしく」と言われるかもしれない。ひょっとしたらもう言われているのかもしれませんが、そうなればそれこそ「非常事態」です。まあ、この先に「非常事態宣言」があるかもしれないと思えば「緊急事態宣言」もあまり慌てずに受け止められるかもしれませんが。(おわり)
 
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(連載1)「緊急事態宣言」をどう受け止めるべきか 荒木 和博 2020-04-09 17:49
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