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2006-07-30 18:14
自衛隊と民間専門家の共同チームは機能しない
大川 靖
会社員
7月11日付け「JFIRコラム」に掲載された中西寛氏の「イラク自衛隊 制約下、大きな政治的効果」に関連して、7月22日付け「政策掲示板『百花斉放』」への投稿の中で島崎友江氏が、「自衛隊と民間専門家の共同チームによる平和維持活動の展開」を提唱されました。この案は、自衛隊、民間援助団体双方の利点を損ない、両者の身を危険にさらすだけなので、機能しないと思います。以下にその理由を述べます。
まず、軍事組織が正常に機能するためには、厳格な指揮系統が維持されなければならず、そこに民間専門家が入ればその指揮系統に乱れが生じ、自衛隊員の身が危険にさらされます。また、紛争地域で非武装の民間専門家が自衛隊に参加すれば、自衛隊員が自衛手段を使わなければならないケースが増え、紛争当事者になってしまう可能性が高まります。
さらに、民間の専門家チームが自衛隊の指揮下で行動すれば、フットワークの軽さと政治的中立をもとに草の根の支援を得意とするNGO(非政府組織)の援助団体の利点が失われてしまいます。また、民間の開発専門家は非武装と中立的立場を厳格に守っているからこそ、不安定な情勢下でも身の安全を保証できるのであり、もし自衛隊に参加すれば、自らの命を危険にさらすだけでなく、活動の内容と行動範囲も大幅に制限されてしまいます。
今回のイラク復興支援は、島崎氏が言及しているように、「混乱するイラクにも非戦闘地域がある」という前提のもとで、自衛隊が治安維持と復興支援を同時に行いました。非戦闘地域であるならば、民間の援助団体が活動することが可能であるはずですが、その論理自体が実は破綻していたため、軍事組織である自衛隊が本来業務ではない復興支援を行なうことになったのです。しかし、治安維持と復興支援が効果的に行われるためには、本来、この二つの業務は区別されなければなりません。つまり、自衛隊は、自らの利点を最大限に生かせる活動、すなわち停戦監視、非正規軍の武装解除、治安維持、基礎インフラの修復・整備に専念し、民間の援助団体はPKOあるいはPKFによって戦闘終結と治安回復が行われた後に、草の根の援助を開始し、自衛隊とは独立して平和の創造と維持に貢献していくべきなのです。
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投稿履歴
日本の国際協力のあり方を考えよう
島崎友江 2006-07-22 09:10
┗
自衛隊と民間専門家の共同チームは機能しない
大川 靖 2006-07-30 18:14
┗
自衛隊・民間合同チームは有効ではないか
大西 健 2006-08-11 01:27
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