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2006-07-22 09:10
日本の国際協力のあり方を考えよう
島崎友江
教員
7月11日付け「JFIRコラム」に掲載された中西寛氏の「イラク自衛隊 制約下、大きな政治的効果」を拝読した。中西氏は「与えられた制約の中で派遣部隊は努力した」と述べており、派遣の政治的効果については私も同感である。しかし中西氏が言及していない日本の国際協力のあり方という面について、私見を申し上げたい。
最近のメディアの論調では、「国際平和協力・イコール・自衛隊の派遣」という認識が散見される。確かに1992年の国際平和協力法制定後、自衛隊はカンボジアを皮切りに8つのPKOに要員を派遣してきた。私も自衛隊が国際協力の分野に力を入れることに異論はない。むしろ国際社会の一員として、自衛隊派遣を含め国力相応の貢献をすることは極めて当然のことであると思う。しかし「国際平和協力・イコール・自衛隊の派遣」という短絡的な見方の定着には危惧を覚える。そもそも軍事組織に単独で援助に当たらせることは、緊急かつ非常事態にのみ許されるものであり、かつかかる方式はコストが高く効率に欠ける。
一般に平和の構築には次の三段階が必要であると言われる。即ち、「ピース・エンフォースメント(平和の強制)」、「ピース・ビルディング(平和の創造)」及び「ピース・ キーピング(平和の維持)」である。現在の日本の憲法で自衛隊が活動できるの は最後の「平和の維持」がせいぜいであろう。しかし「平和の維持」のためには長期的、 持続的な支援政策が必要であり、その重要性は国際社会も認知するところである。日本は開発援助の分野では1970年代より一貫して実績を挙げてきたので、このノーハウを活用すべきである。「平和の維持」に自衛隊が関わる場合には当然にある程度の危険を伴うため、リクルートは必ずしも容易ではないかも知れないが、民間の開発援助の専門家と自衛隊との共同チームを作るという新しい形式が提案されても良いのではないだろうか。
今回の派兵のために施行されたイラク特措法は、「混乱するイラクにも非戦闘地域がある」、「多国籍軍には参加するがその指揮下には入らない」という無理な論理のもとで成立した。無事犠牲者を出すことなく任務を終えたからといって、今後の自衛隊の国際協力の前例とはならないであろう。日本社会は自衛隊のイラク撤退を機にその実績を検証し、先に述べた「民間専門家との共同チーム」案などの今後の自衛隊が参加する国際協力のあり方を考察すべきであろう。
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島崎友江 2006-07-22 09:10
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大川 靖 2006-07-30 18:14
┗
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大西 健 2006-08-11 01:27
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