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2010-08-02 20:20
(連載)わが国の対露外交に欠けているものは何か(1)
木村 汎
北海道大学名誉教授
ロシアのメドベージェフ大統領は、6月23~25日の3日間、アメリカ合衆国へ初の公式訪問をおこなった。“リセット”を米ロ関係のキャッチフレーズに掲げるオバマ政権は、メドベージェフ大統領を歓待した。カリフォルニア州のシリコンバレー視察を事実上訪米の第1目的とするロシア大統領の意向を適えることにも、快く承諾した。米ロ両大統領の関係がいかにインティメイト(親しい)で、くだけたものとなったか。ワシントンDCにおけるチーズバーガー昼食は、このことを全世界にしめす象徴的な映像となった。ところが、これらはあくまで最近の米ロ関係の一側面にすぎない。この小稿は、そのことについてまず述べる。
メドベージェフ大統領がまだ米国滞在中の6月24日、ホワイトハウスの報道官は「米ロ関係―“リセット”の事実シート」と題する声明を発表した。同声明は、グルジア問題にかんして全く臆することなく、次のように記した。「オバマ政権は、グルジアに関してロシア政府との間に深刻な相違点を持ちつづけている。われわれは、アブハジアと南オセチアというグルジア領土の占領にロシアが終止符を打つように要求しつづける」と。
同声明発表の直後、案の定、グルジアのミヘイル・サーカシビリ大統領は、このホワイト・ハウス声明を大歓迎し、次のように語った。「米国政府は、グルジアにおけるロシア軍の存在を『占領』と公式的に承認したのだ。『占領』という言葉は、もはや私個人に限って使われている用語ではなく、国際的に認められた言葉となった」と。
さらにそれから約10日後の7月5日、ヒラリー・クリントン米国務長官はグルジアを訪問し、首都トビシリでの演説や発言のなかで、ロシア軍によるグルジアの「侵略」と「占領」という言葉を繰り返し用いた。同長官は、簡単な譬えを用いて、オバマ大統領の立場を説明した。「米国がロシアとの関係をリセットすることと、グルジアとのパートナーシップを維持すること――これら2つは、必ずしもゼロ・サム・ゲームの関係ではない。あたかも歩くこととチューインガムを噛むことが同時に可能なことにも等しい」と。(つづく)
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