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2010-07-22 19:31

(連載)まず選挙制度の改正から始めよ(2)

大藏 雄之助  異文化研究所代表
 今世界で最も評価されているのは、ドイツの比例代表・小選挙区併用制であろう。ご存じの方もあろうが、一応その骨格を説明しておく。基本はあくまでも、得票数に応じた比例代表制である。ただし、選挙民との距離を縮めるために、定数の半分を小選挙区に割り当てて、そこで第1位になった候補者を優先して最終的な議席を確定する。ある政党が少数の選挙区で当選者を出すと、小党乱立防止策としての5%足切りによって比例配分の議席はないはずだが、この場合は例外として議員総定数外の議席を認めることになっている。

 最近出てきた新しい改善策は、小選挙区そのものの死に票を減らそうというものである。日本では候補者の名前を書く規則であるが、同姓や同名などで紛らわしい票が出ると、比例按分などの厄介な判定が必要になるし、何か余計なものを書けば無効票になる。開票作業の苦労はこの辺に集中している。多くの国では候補者名が印刷されていて、選挙人は選ぶ人の欄に○じるしをつけるようになっている。この欄を広げて、好ましい候補者順に数字を記入させようというのである。

 そこで、かりに、A・B・C・D4人が立候補者し、そのうちA・B・Cの主張が似通っていて共食いすると、A28%、B20%、C17%で3人分合わせれば65%に達するのに、Dが35%で漁夫の利を得て当選する。連記順位選択制にしておけば、まず1位だけで集計して、票数のいちばん少なかった候補者Cの落選を決定して、その票を2位の意思表示にしたがってA・B・Dに再配分する。それによって、Aに6%、Bに8%、Dに3%いけば、新しい集計では、A34%、B28%、D36%になる。そこでまた最下位のBを落選として、その票を仕分けすれば、最終的にA62%、C38%というような結果で、Aの当選が確定することになるだろう。

 このやりかたは、かつて私が『一票の反対』(麗澤大学出版会)に書いたアメリカの平和主義者ジャネット・ランキンが提唱したものであるが、候補者が多いと再計算が面倒だった。今はコンピューターが発達しているから、集計作業そのものは瞬時にして可能である。民意が適正に反映されるよう抜本的な選挙制度改正を望む。(おわり)
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